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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章二節 それぞれのイマージュ  ラトゥールの想い
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第五章2-8 雷と破壊の上位精霊バアル

ラトゥール視点になります。


 生きとし生けるもの『終末の場所』、霊峰カタトゥンボに入り、二日ほどが経つ。

 ここまでの間、ラトゥールは何度も雷の直撃を受けていた。




 もし、ラトゥールがディケムから貰っていた『オリハルコン糸で作られた装備』を着ていなかったら…… 既に息絶えていたかもしれない。


 七属性の耐性加護が、雷を攻撃とみなし、ダメージを軽減してくれている。



 しかし、ディケムが説明した通り、ディケムは雷の弱点属性『土の精霊』とはまだ契約できていない。

 そのため、この装備も雷に対して完全耐性ではない。



 そして、いまはまだ普通の雷でのダメージだ。


 『雷と破壊の上位精霊バアル』と『雷嵐竜シュガール』の攻撃が………

 これ以下の雷撃であるはずがない。

 こんな雷如きでくたばっていては、私の欲しいものなど手に入るはずもない!


 ラトゥールは自分に活を入れながら先を急ぐ。




 そこからさらにカタトゥンボの奥地に進むと……


 いままでいたる所に転がっていた、魔物の骨が少なくなり、

 今度は砂で出来た木の根が地面から生えているような、

 閃電石フルグライトという奇妙な岩が目に付くようになる。


 この閃電石とは……

 雷が地面に落ち、落雷で融かされた地中の物質が管状になったガラス質の岩石の事だ。


 この閃電石が増えたと言う事は、目的地も近い。




 さらに進むと、十メートルほどの巨大な竜の骨を最後に魔物の骨は無くなり、

 閃電石と地表から突き出す巨大な水晶だけの景色になる。



 そして……

 閃電石の林の中に、一際大きな水晶が立っている。

 その巨大な水晶は雷を蓄電するように光を放っている。



「――――ッ!  ここか!」



 ラトゥールはすぐにその光を放つ大きな水晶に駆け寄る。



 ラトゥールが水晶の前に立つと―――!

 水晶に人影が浮かび上がり、潤沢な髭を蓄えた老人が現れる。




「ほぉ………  ここまで辿り着ける者が居ようとは。 なかなかやるのう」


「お前がバアルか?」



「そうだ。 ワシがバアルじゃ。  そしてお前は…… ワシを『バアル』と知ってここに来たと言うことだな?」


「ワレは魔人族が五将の一人、ラトゥールだ!  バアル、お前の力を得るためにここにきた!!」


「フン、ワシは雷と破壊の精霊。 力無きものに力など貸さぬ。 このバアルの力欲しくば見事ワシに打ち勝って力を示して見せよ!!  ワシを倒せた者の従属となる事を約束しよう!!!」



「いいだろう。 言質は取った! ワレの力を示しバアルお前の力をもらい受ける―――! では行くぞ!!!」




 それがこれから始まる激しい戦いの合図!

 ラトゥールの宣言のすぐ後――― 雷鳴が轟く!!!



 ズドォンッ!!  バリバリバリバリ――――――!!!!

 ズドドドドドォン!!!   バリバリ――――――!!


 ゴロゴロ…… ゴロゴロゴロロ……!!!



 霊峰カタトゥンボ山頂に、一斉に数百の雷が落ち、

 水晶の柱は溶け、生えていた閃電石の林が消し飛ぶ!!



 一瞬で勝負は決まったかに思えたが―――

 ラトゥールは一足飛びに、雷撃の範囲外に退避している。



 そして―――

 自分の攻撃に慢心しきっているバアルに、ゲイボルグを刺し穿つ!



「我の命に従い神罰の棘をもって全ての敵を刺し穿て―――!」

「いけ! 神槍ゲイッ――! ボルグ――――――!!!」


  ゴオォォォッ──!!!!  ズッ——ガガガガガガッ———!!


 回避不可の破壊の一撃がバアルを貫く!!!




 己の胸をゲイボルグで貫かれ、バアルは目を見開きラトゥールを見る。


 そして―――

 一閃の巨大な雷がバアルに落ちる。


 その一瞬で、バアルは胸に空いた風穴を治し、失った大量のマナを補充する。


 ラトゥールは瞬時にバアルから離れ、戦闘態勢を維持する。




「フン。 まぁ戦う相手としては認めてやる。 だがこの程度の攻撃ではワシを滅する事は出来ぬぞ!」




 精霊戦―――

 精霊はエネルギー体、この星のマナそのものでもある精霊は死ぬことはない。


 だが、一時的に消滅させることはできる。

 内包するマナを枯渇させればいいのだ。


 しかし………

 精霊は自分の力を補充するために、自分の属性に適した場所に住む事が多いい。

 ウンディーネならば水が豊富な場所、イフリートならば炎やマグマ。


 そしてバアルならば稲妻豊富なこの地、霊峰カタトゥンボ。



 この霊峰カタトゥンボでバアルと戦っても、直ぐにマナを補給されて、傷は治り消費したマナも直ぐに回復されてしまう。


 この地でのバアルはまさに無敵、不滅なのだ。



 もし精霊が人と契約した場合、精霊のマナの供給源は契約した人からとなる。

 その為、人と契約する事で精霊は、自分の弱点を作り出すことになる。



 ちなみにディケムの場合は、星のマナをディケムが吸い上げ、精霊に供給している。


 しかし、普通の人はマナとは繋がっていない。

 もしマナと繋がらない人が精霊と契約してしまえば………

 自分のマナを精霊に供給しなければならない。


 人が持つマナなど微量でしかない。

 下級精霊ならば問題ないが………

 もし中級以上の精霊と契約してしまえば―――


 じきに人のマナが枯渇して、人も精霊も消滅する。





 ラトゥールは戦闘態勢を維持して仕切り直す。

 このバアルにとってはまさに無敵、不滅な環境で………


 ラトゥールには絶望の色は窺えない。

 『だからどうした?』と―― 勝ち筋を見据えて不敵に笑っている。



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