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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章二節 それぞれのイマージュ  ラトゥールの想い
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第五章2-4 魔神族五将

ラトゥール視点になります。


 魔神族領帝都ミストラル帝城へと入城して、そのまま謁見の間へと向かう。


 勝手知ったるこの慣れ親しんだミストラル城。

 謁見の間へと向う途中、待機室にエリゼを待たせる。


 そこからはラトゥール一人で、カステル王に謁見する。




 謁見の間に着くと―――

 カステル王の回りには五将のマルゴー、オーブリオン、ムートンの姿が見受けられる。



「カステル陛下、ただいま戻りました」


「ご苦労だったラトゥール」



 堅苦しい形式上の挨拶を済ませ、人族領での報告に移る。


 人族の動き、エルフ族との交流、魔神族とのかかわりなど、諸々を報告した後―――

 本題に入る。



「それでラトゥール、ラフィットはどうなのだ」


「はい。 ディケム様は着実に力を取り戻されています。 そしてさらなる力を手に入れています」


「更なる力?」


「はい。 ラフィット様は武としての個の力が突出していました」


 『うむ』 カステル皇帝以下、五将が頷く。


「個の力としては、今のディケム様はまだまだラフィット様には及ばないでしょう」



 『当り前だ!』 ――と、かつてのラフィットを知る五将はつぶやく。



「ですが……、ディケム様はまだ十四歳。 この年で今の技量はその行く末は末恐ろしいものがあります」



 『………………』 みな黙り込む。





 先のエルフ戦役……。

 各国が―― メガメテオ消滅の報せを受けて、この好機を逃すまいと、我先にエルフ族への侵略案を進めた。


 しかし―― 進軍を開始する直前、エルフ族陥落の報がもたらされる。

 しかも、メガメテオを消滅させた人族のディケムの手によって………



 さすがにどの種族も、この報には驚を禁じえなかった。

 『速すぎる………』 ――と。

 どうすれば、この速さであの大国エルフ族を陥落させられるのか?



 それまでディケムの名は、それほど他種族には知れ渡っては居なかった。


 魔族軍の『カヴァ将軍』が敗れた――

 『カヴァ将軍が敗北を期したのが…… たしか人族のディケムとか言ったかな?』

 程度の知名度だった。


 むしろ魔族のカヴァ将軍を敗ったディケムよりも……

 魔神族のラフィットを敗ったとされる、ラス・カーズの方が、名が知れ渡っていた。



 しかし、メガメテオの消滅と、エルフ族の陥落。

 この事変により『ディケム』の名は、全種族に知れ渡る事となった。





「しかし、今のディケム様の真価は―― 『個の力』など…… そんな事ではありません」


「真価……? と言うと?」



「ディケム様はすでに七柱の精霊を従属させています。 そして先日暗黒竜ファフニールを従属させました」



『『『なっ!』』』 


 カステル皇帝は『ほぅ』と感心するだけだが……

 五将は暗黒竜ファフニールの情報に驚愕した。



「ディケム様の力は、もう既にその総合力で優にラフィット様を超えているでしょう」



 『なにっ!』 五将のみなが驚く中――


 五将の一人、ラフィットの実の妹、ムートンが少し『ムッ!』とする……

 だが『ディケム = ラフィット』だったと気づき……

 むしろ『当然です!』という顔をする。


 この天真爛漫なコロコロ表情を変える小娘が……

 ラフィット様と血が繋がっていることが驚きだ。




「そして―― ディケム様とマナで繋がる者が三人います。 この三人はディケム様より力を貰い、そしてディケム様もこの三人から力を得ています」



 『そんな事が可能なのか?』 皆が驚く。



「もし我々五将の力が繋がる事ができたのなら―― 恐ろしい力になると思いませんか?」


「フン! マルゴーと繋がるとか、反吐が出る!」

「ムートン……」



「ディケム様と繋がる事で力を得ているこの三人。 ディケム様と同じ、尋常ではない速さで成長しています。  残念ですが…… 近い将来、私よりも強くなるでしょう」


「ッ――なっ!」



 五将のラトゥールよりも強くなる。

 それは、同等の力を持つ他の五将よりも強くなると言う事。


 前世がラフィットだったディケムは別として――

 魔神族が人族に後れを取るなど、プライドの高い彼らには許せない事だ。





「そして私が一番驚いたのは………」


「まだあるのか?」


「ディケム様はイグドラシルの幼生、神木をその支配下、眷属に置かれている」


「イグドラシルの幼生? 神木を眷属にすると何かあるのか?」


 いつも五将の会議では口を動かなさい『オーブリオン』が珍しく聞いてくる。


「オーブリオン…… その事の意味が分からぬのか?」


「あぁ…… 俺は頭を使う事があまり得意じゃないのでね、説明してくれ」




「イグドラシルの幼生は精霊を介して恐ろしい速さで成長している………  幼生から成体へ育つのもそう遠い話では無いはず。 もし神木が成体のイグドラシルへと成長すれば―――」



 皆、息をのむ………。



「神木がイグドラシルに昇格した時! 眷属がイグドラシルまで昇格すれば、主がそれ以下になるはずがない!  世界の(ことわり)がディケム様を昇格させ神格化させる!」



「なっ―――!」

「か、神だと………」

「――――――♪」


「ほぅ〜 そこまであいつは事を進めたか」



「やはり彼の方は素晴らしい!  私の此度の帰郷はディケム様の力になるために帰ってきた!  カステル王。 もう人族の品定めは辞めて、全面協力することを具申いたします!!」


「フン!  ラトゥール。 はなから俺は品定めなどとしておらぬ。 マルゴーが勝手に動いていただけだ。 マルゴー、これで少しは納得できたか?」


「さすが我が師たるラフィット様。 彼の方の思惑など私の思い至る所では無い様です」


「フン! 当たり前でしょ! お前などがお兄様を語る事がおこがましい!」

「ムートン……」





 カステル皇帝陛下、以下五将への報告は終わった。



 ⦅しかし…… カステル陛下は、ディケム様の動きをご存じの様子だった。 ラフィット様の死についても…… 何か隠している⦆




 愛する人が、私に秘密で行った壮大な(はかりごと)………

 悔しくもあるが――


 わたしの人生をこれほどにドキドキさせてくれるのかと――

 

 改めてあの人を思う………



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