表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章二節 それぞれのイマージュ  ラトゥールの想い
178/553

第五章2-1 存在意義

ラトゥール視点になります。


 ラトゥールの日課は、朝起きてジョギングから始まる。


 早朝のジョギングは、運がいいとディケムに会えるから……

 と言う理由もあが―――


 長年続けて体に染みついた訓練の習慣はそう変えられない。

 そして一通りのトレーニングを終えたあと、水浴びをし、汗を洗い流し、朝食に向かう。



 朝食は毎朝、ディケムの家族と幼馴染達と一緒に取る。

 ララの妹、ルルが作ってくれる食事は、驚くほどおいしい。

 ラトゥールはこっそり、ルルに食事を習っている事は秘密だ。



 魔神族にいた時は、このような団らんの食事など想像もできなかった。

 あの寡黙なラフィット様が、このような暖かなコミュニティを作られるなど……


 だが…… この暖かな居場所は、ラトゥールも居心地が良い。




 朝食が終われば、みな自分の仕事や学業、各々のスケジュールに散っていく。

 

 ラトゥールは……

 イグドラシルの下のテラスでティータイムを楽しみながらのデスクワーク。


 そして、しばらくすると……

 ソーテルヌ邸に王国騎士団の騎士達と、ソーテルヌ総隊の隊員達が集まり出す。

 その騎士達、隊員達へ指導する事も、ラトゥールの日課だ。




 夕方からは総隊所属の学生達が集まりだす。

 その学生隊員達にも指導をする。


 特に総隊所属の者達はメキメキ実力を伸ばした。

 その成長速度は異常なほどだ……


 やはり、固有結界を使っての訓練と――

 総隊員しか許されていない『精霊の召喚宝珠』を使っての訓練が大きいのだろう。


 精霊召喚は、マナに精通していなければ召喚など出来ない。

 それをディケム様の『精霊の召喚宝珠』を使う事で、安全に召喚することが出来る。


 そして召喚する事で、精霊召喚、マナの使い方を―――

 いわば強制的に体に覚えさせるのだ。



 『精霊の召喚宝珠』


 その実用性も驚異的だが―――

 それを行う事で起こる副産物、その驚異的な総隊員の成長こそが……

 実は最も大きな成果かもしれない。



 偶然なのか………

 それとも、そこまで考えて事を進めているのか………


 ディケム様(ラフィット様)。


 アナタはどこまで、この世界を見通していらっしゃるのですか?

 アナタには何が見えているのですか?


 ディケム様とマナで繋がるあの三人には――

 ディケム様と同じモノが見えているのでしょうか………





 王国騎士団の騎士達、ソーテルヌ総隊の隊員達を教えていると……

 やはりその中でも、ギーズとララの特異性が目立つ。


 ディックも普通の騎士に比べれば格段に成長が速いが………

 やはり精霊と繋がり、マナの(ことわり)に近づけば近づくほどに、マナの扱い操作が格段に上手くなるのだろう。



 【ディケム様とマナで繋がる】

 【精霊とマナで繋がる】



 この二つが何よりも特別で重要な事だと―――

 普通の騎士 < ディック < ララ

 この三者を比べれば誰が見てもわかる。




 ラトゥールの脳裏に、あの『ファフニール戦』がよぎる………

 『ギリッ……』 歯を食いしばる。


 あの時私は何もできなかった…… なのにあの二人は……



 このままでは私はディケム様のお役に立てなくなってしまう………

 近頃のラトゥールはその事ばかりを悩んでいた。


 魔神族五将のラトゥールに、そんな事を思わせてしまうほど――

 ディケムを筆頭にララとギーズ、この三人の成長は常軌を逸していた。






 ある日――

 ラトゥールは魔神族の皇帝ボー・カステルより連絡をもらう。



「元気か? ラトゥールよ。 お前が探し求めていたものを、やっと見つけたぞ!」


「なっ……! 本当ですか? カステル陛下! では直ぐに向かいます!」



「ほぅ………  それほど急いで力が欲しいのか? お前程の者ならば、こんな危険なカケに手を出さなくても十分であろうに……」


 ⦅………………⦆


「カステル陛下。 ディケム様の成長は著しく……、 私の想像をはるかに超えています。 そして、ディケム様に繋がる者達の成長も目を見張ります。 このままでは私は、ディケム様に必要とされなくなってしまいます」


「ラトゥールよ……… なまじ五将などと大層な肩書きがお前を縛っている様だな。 ディケムが求めることは力が全てではないだろうに」


「それは私の矜持が許しません。 私はディケム様の一番で有りたいのですから」



「ディケムのそばに行くまでは、近くに居られるだけで良いと言っていたではないか。  失敗すれば……  それすらも叶わなくなるのだぞ」


「その時は…… 私はそれまでの存在だったと言う事。 ディケム様のそばにお仕えし、少々欲が出てきてしまったようです」


「………………」



「ここでは―― 他の者がディケム様のために命を削って日々成長しています。 その中で、どうして私だけが今の私で満足していられるでしょう」


「そうか……… この成熟して停滞した魔神族とは違い、それほどアヤツの周囲は流れが活性化しているのだな――― ラフィットの奴が望んだ通りになったということか………」


「ラフィット様が望んだ通り?」


「いゃ…… まぁ良い。 ラトゥールよ、里帰りも兼ねて帰って来るといい。 ムートンもお前に会いたがっているぞ」


「ム、ムートンですか…… ラフィット様の妹―― あのブラコン娘に今のディケム様をどの様に説明したらいいのか……… 悩ましいところです」




 私はディケム様にお願いし、

 魔神族領へ、仕事の報告も兼ね、少しの間里帰りする事にする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ