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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章一節 それぞれのイマージュ  ララと妖狐
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第五章14 妖狐討滅

ララ視点になります。


 今まで様子見ばかりで、積極的に動かなかったララが動く。



 ララは、聖の属性を持つ【月光の矢】を作り出し、妖狐を射る。



 妖狐は今まで通り、尻尾で薙ぎ払うが………

 はじかれた矢は、いつの間にか空中にいくつも漂っている鏡に反射して、側面から妖狐を穿つ。


「グッァ——! な、なぜ?!」


 妖狐は苦痛に顔をゆがめ呻く。

 矢を薙ぎ払い、安心したところに、予想外の方向から矢が刺さり混乱しているようだ。



 ララは、空中に作り出した鏡を、反射する寸前に角度を調節して、妖狐を狙っているのだ。

 今度は二本、月の光を集束して作る【月光の矢】を射る。

 妖狐は薙ぎ払うが、また反射して妖狐を二本の矢が穿つ。



「グァッ! ………小癪な!」



 月光の矢は妖狐にかなりのダメージを与えているようだ。

 さすがに、妖狐は焦りを見せている。


 次は三本、月光の矢を作り出し射る。

 同じように反射した矢が、妖狐を穿つ………


 合計六本の矢が妖狐に突き刺さり、妖狐に甚大なダメージを与えている。


 月光の矢による浄化の力は、妖狐の弱点を突いているようだ。

 精神的にも追い詰められている妖狐を見て、ララは構える。


 次は四本、月光の矢を作り出し、ララは妖狐に問いかける。




「ねぇ妲己、これが…… あなたが望んだ結末なの?」


「フン! お前が何を言いたいのか分からんが! これは私が望んだ結末だ!」



「私にはあなたが泣いている子供のようにしか見えないのだけれど?」


「ッ――なっ! うるさい! もう私を倒したつもりでいるのか?  こんな攻撃など私には効きませんよ!  領民を助けたかったら、お前の最大の奥義を見せてみろ!」



「そうですか…… とても残念ですが私も人族の守り手のはしくれ。 領民の命には代えられません!  妲己よ、次の攻撃であなたを滅します! 悔いの無いようあなたも全力で来なさい!」




 妖狐が『ニヤリ』と笑い、額の赤い紋様が光を帯びる、紋様に妖気を集中させ、最後の一撃に力を溜めているようだ。



 ⦅ウンディーネ様の加護がある今ならば、私も一気に出来る筈!⦆



 ララも一気にマナを活性化させる、ララの前に次々と月光の矢が作り出される!

 さらに妖狐の周りの鏡が分裂を繰り返し、妖狐を包む鏡の丸い球を作り上げる。


 ララの前には、百本以上の月光の矢がずらりと作り出された。

 その圧巻の光景に、ヴィニコルもヴォルタ達も感嘆の声を上げる!




 最初に動いたのは、妖狐!

 口を開け、極限まで溜めた妖気で、顔の目の前に炎の玉を作り出す。

 その炎の玉は、1m程の大きさだが、そのマナの質量は桁違いだ!




 妖狐がその炎の玉を発射した瞬間―――!


 『――――――――――――』


 音は止まり、衝撃波が起こり、ララが作った妖狐を囲む鏡は全て砕け散った……

 そして音が後から追いかけてくる!



 ドッォォォォォォンッ──―――!



 次の瞬間! ララの目の前に巨大で分厚い氷の壁が、何層も出来上がる!

 ヴィニコルがフェンリルの力で作り上げた、氷の壁だ。



 ズッガガガガガガッ———!!



 妖狐の全魔力を使い切って放たれた『炎の玉』は、衝撃と爆音と水蒸気を上げ氷の壁を砕いていく———


 だが、上位精霊フェンリルの氷はそれ程軟ではない。

 妖狐の攻撃はララに届くことは無かった。





 妖狐の周辺で粉々に砕かれた、クリスタルの鏡が、一瞬で復活する!

 そして、突然妖狐を、ララの形をしたクリスタルゴーレムが周りを囲む!



「なっ! いつの間に!」


「さっき、ガシャ髑髏が消滅した後、消さないで隠しておいたの、必ずあなたが来るって思ったから」


「ッ――くっ! 小細工を!」



 クリスタルゴーレムが光を放ち、妖狐を囲う魔法陣が発動する!



 次の瞬間、無数の月光の矢が妖狐めがけて発射された————!


 妖狐を目がけ月光の矢が殺到する!

 無数の光の矢は、妖狐を囲む鏡の球の中で何度も何度も反射して飛び跳ねる。



 ズッガガガガガガッ———!!



 妖狐は反射して飛び交う100本を超す月光の矢に、前後左右上下全方向から襲われる。


 鏡の球体は、中で飛び交う圧倒的な光の渦で、日が暮れだし夜になり始めた宵の口の街を照らす。


 その様は、人々には希望の光、妖狐には絶望の光だっただろう……

 全ての人が息をのみ、その結末を見守っている。





 そして、ララが魔法陣に向けて、とどめの演唱を行う————!



 ⋘… ——μετάσταση(・・・・・・・・・)(………)—— …⋙



 夕闇の街を照らしていた鏡の球体が、一瞬強く光り———

 そして光が収束していく。



 最後は鏡の球体も粉々に砕け散り、妖狐が居たその場所には、全てが消滅して何も残っていなかった。





「討伐完了です」

「お疲れさまでした。 ララ」



 妖狐の消滅を見届けて、領民は湧きあがる。

 領民、憲兵隊、大人、子供、男、女、全ての人々が、ララの元に雪崩込み――

 口々にララを称え、その日はお祭り騒ぎになった………



 歓喜に沸く人々に揉みくちゃにされながら、ララは横目で見ていた………


 ただ一人、呆然と妲己が消滅した場所をじっと見つめるアダテ領主ナイアードの姿を。




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