第五章13 妲己の本性
ララ視点なります。
「お見事でした————!!!」
憲兵隊、領民、多くのアダテ領の者たちが集まったこのタイミングで、妲己宰相が現れた!
「妲己様! 勇者ララ様がやってくれました!」
「妲己様! 勇者様へお礼の言葉を!」
「妲己様! これでアダテ領は救われました!」
「妲己様—————………」
領民の歓喜の声に、妲己は大声で笑う!
「アッ~ハハハハ——! あなた達は本当に愚民どもですね~ ほんと愚かすぎて反吐が出る!」
領民は、突然の妲己の罵倒に理解が追いつかない。
「え? あの……妲己様? なにを……?」
「今まで騙されていた事も知らず、幸せそうに笑う、お前たちバカの愚民どもに反吐が出ると言ったのです!」
妲己は領民を睨みつける……
そして妲己の口が裂ける様に大きくなり、見る見る狐の顔に変わっていく―――!
体は白い毛に覆われ、体長は五m、尻尾は二本、妖狐の姿にかわる——!
「ッ————なっ! だ、妲己様が妖狐!?」
「ワレは妖狐! 勇者ララよ、よくも一〇年もの間、時間を費やした計画を潰してくれたな! 一〇年前、一〇一人の領民を湖に沈め、やっと今ガシャ髑髏が生まれたというのに! 馬鹿な領民をだまし、ワレは手を汚さず計画は順調だったというのに!」
領民も憲兵隊も皆、『そんな…… 』と真っ青な顔をしている。
「もぅ、こうなっては仕方がない! ワレが直接相手をして、全てを灰にしてやる——!」
妲己の周りに妖気が巻き起こり、驚いて動けないでいた領民達を吹き飛ばす!
「ヴォルタさん達は領民と憲兵隊の避難を! ヴィニコルは私のサポート!」
「イエス、マーム!」
「ララ様! 私達アダテ憲兵隊もお使いくだ———」
「——ごめんなさい! 足手まといです! 早く避難して——!」
今まで騙されていた憎しみで、アダテ憲兵隊は戦いたがったが、悔しそうに私の指示に従い引き下がった。
妖狐の実力を知っているヴォルタさん達は、初めから自分たちの出来る事をわきまえている。 領民と憲兵隊を避難誘導してくれている。
さすがは勇者、その判断力を称賛したい。
妖狐は領民には一切目もくれず、ララに襲い掛かる――!
それをヴィニコルが防ぐ!
そしてララがクリスタルの矢を作り出し、聖属性を付与して【破魔の矢】として打ち出す。
しかし、妖狐は二本の尻尾で破魔の矢を薙ぎ払う。
ララはヴィニコルと『言霊』の魔術具を使い念話を繋げる。
『物理攻撃のクリスタルの矢は、聖属性を付与しても効果は今一ね』
『ララ、妖狐は炎吐きますけど、水はどうですか?』
『妖狐の色白いから、水効かなそうだけれど…… やってみましょう』
私はウンディーネ様の力を借り、水の矢を作り出し、聖属性を付与して放つ。
妖狐は今回も尻尾で薙ぎ払うが、さっきよりは少し嫌がっている。
『う~ん、クリスタルよりは効果あるみたいだけれど…… 微妙ね』
『私今回、フェンリル様を連れてきているので、氷の矢に聖属性を付与してくれますか?』
『了解!』
ヴィニコルが【精霊の召喚宝珠】を取り出し、氷の精霊フェンリルを呼び出す。
遠くから見ているヴォルタさん達が驚いている。
ヴィニコルが精霊様を使えるとは思わなかったのだろう。
「おぉ! ヴィニコルとやらも上位精霊を出してくるか! 予想以上だぞお前たち!」
なぜか妖狐がフェンリルを見て喜んでいる。
ヴィニコルはフェンリルに乗り、機動性を生かして妖狐をけん制する。
そしてヴィニコルがフェンリルの力を借りて氷の矢を作り出す。
ララがその矢に聖属性を付与して、ヴィニコルが矢を射る!
だが…… 妖狐はまた尻尾で薙ぎ払う……
『う~ん、 水と同じくらいかな?』
『ですね………』
『ではヴィニコルはフェンリル様の力で、タンク役をお願いね』
『了解!』
私たちの試し撃ちは大した効果はなかったが、妖狐の怒りは爆上がりした。
妖狐が爆炎を撒き散らしながら、もの凄いスピードで爪と牙を使い襲いかかってくる!
妖狐の炎と、爪と牙の物理攻撃のコンビネーションは、戦士系のヴィニコルだから反応出来ているが、ララは目で追うのが精いっぱいだ。
ヴィニコルは妖狐の炎を、氷の霧を空気中に発生させ弱らせ、さらに氷の壁を作り、弱った炎と爪と牙の物理攻撃を防いでいる。
『ララ、打開策は?』
『ごめんヴィニコル! 少しだけ時間を引き延ばしたいの!』
『了解!』
ヴィニコルは『なぜ?』とは言わない、二人が築き上げた信頼が心地いい。
すると二人の会話に、別の声が割り込んでくる。
『ララ待たせたね』
『ディ、ディケム様!?』
『待ってたわ、ディケム!』
『沼の鑑定は、ララの予想通りの結果だったよ…… ララ、あとは君のお手並みを拝見させてもらうよ!』
『ありがとうディケム、私に全部任せてくれて…… 最後まで頑張ります!』




