第五章12 念い(おもい)
ララ視点になります。
ガシャ髑髏のそばまでたどり着いた私は―――
その勢いのままクリスタルドラゴンゴーレムを一気に解除する!
「散!!」
パッァァァ————ン!
解除されたゴーレムは、微かにクリスタルの粉を散らして一瞬で消滅する!
そして次の瞬間、私は自分の姿のゴーレムを五体作り出す。
「散開——!」
私の掛け声で、ゴーレムはガシャ髑髏の周りに散らばっていく。
術に入ろうとしている私に、ガシャ髑髏とスケルトンの攻撃が飛んでくるが、ヴィニコルが私を守る。
私達のいつものコンビネーション。
ヴィニコルとララはアイコンタクトも『言霊』を使わなくても、その空気間だけで伝わる。
敵が強敵になればなるほど、この意思疎通が大事になる。
一瞬のタイムラグが命取りになるからだ。
ララの大魔法は発動までにどうしても隙が生まれてしまう。
しかしララはヴィニコルが守ってくれることを知っている。
だから―――
術演唱に入ったララは、いくら攻撃されようと怯むこともなく、演唱を続けられる。
ゴーレム達が私の指定した場所にたどり着く。
そして私は一気に呪文を唱える———!
「五行—! 木!・火!・土!・金!・水! 相克の意……」
ガシャ髑髏の周りに配置した、ララのゴーレムが光り出し、マナの線がゴーレムを繋ぐ。
するとガシャ髑髏を囲む巨大な【五芒星】の魔法陣が完成する!
ララは、クリスタルゴーレムを魔法陣を描く起点として活用したのだ。
五芒星:ペンタグラムは浄化の魔法陣!
そして、ララは術を発動する!
「いっけぇ—————————!!!」
⋘――――κάθαρση(浄化)――――⋙
その巨大な魔法陣が膨大な光を放ち、夕刻の時間にもかかわらず昼間のように街を照らす!
光り輝く魔法陣の中、ガシャ髑髏は暴れて逃げ出そうとするが、魔法陣からは出られない。
そしてガシャ髑髏は必死に消滅から抵抗しようと、膨大な暗黒の瘴気を撒き散らす。
だが瘴気は光に触れ浄化されていく―――
ガシャ髑髏の長年蓄積された膨大な瘴気が尽きるか……
ララの浄化の魔法陣を維持するマナが尽きるか……
尽きた方の負けだ……
だがララにはウンディーネが居る。
この勝負は最初からガシャ髑髏に勝機は無かったのだ。
ガシャ髑髏の瘴気が徐々に少なくなり……
ガシャ髑髏は自分の敗北を悟る。
それまで、アダテ領主官邸だけを目指し―――
ララの事など見向きもしなかったガシャ髑髏がララを見る………
その目には―――
『なぜ?………なぜ?………なぜ?………なぜ?』
ガシャ髑髏の積年の恨み、積もり積もった恨みがララに向けられる。
『なぜお前は我々の邪魔をする?』
『結局弱い者だけが苦しむ世界なのか?』
『このアダテ領の罪をお前は知っているのか?』
『権力者は罪を免れ、我々弱者だけが裁かれるのか?』
ガシャ髑髏へ変わってしまった人々の……
多くの人々の想い(念い)、恨みがララに流れ込む――。
【退魔師】は、その性質上【退魔】を行ったときに、その怨念の想い(念い)に当てられることがある。
退魔師の力が強ければ強いほど、その傾向は強くなる。
ララは浄化の属性、月の精霊ルナと繋がることにより、その力は怨念の対極に位置すると言っても過言ではない。
その為、ララは多くの怨念の想い(念い)を今までも見てきた。
怨念も…… 滅せられる前に誰かにその想い(念い)を伝えたいのかもしれない。
今回のガシャ髑髏はS級妖怪だ。
多くの人々の強い恨み怨念によって生まれた妖怪。
その分ララに流れ込む『念い』も強くなる。
『ごめんなさい…… 成仏してください』
『ここは人の世。 恨みにとらわれ、この地に縛られないで――― マナは全ての人に平等です。 あなた達にもきっと素晴らしい来世が待っています』
瘴気が尽きた時―――
ガシャ髑髏は消滅した。
「ふぅ~。 浄化完了です」
「お疲れさまでした。 ララ」
ヴィニコルもララが浄化のたびに………
怨念の『念い』が彼女に流れ込んできている事を察している。
スケルトンの討伐もあらかた完了したのだろう。
ガシャ髑髏の消滅を確認して、ヴォルタさん達も駆け寄ってくる。
「ララさん、お見事でした!」
「ありがとうございます、ヴォルタさん」
私は地面にしゃがみ込み、笑顔で答える。
スケルトンの討伐を終え、兵士たちも駆け寄ってくる。
そして、多くの領民の野次馬も押し寄せる。
私は一緒に戦った憲兵隊の人たちと、お互いの検討をたたえ合う。
生き残れた安堵感…… 町を守ったという高揚感。
憲兵たちと領民も一緒になって喜び合った。
私もその輪の中心で、皆と笑っていると―――
ウンディーネ様から念話がくる。
⦅ララ…… 分かっておろうな?⦆
⦅ウンディーネ様、もちろんです!⦆
『ヴィニコル! 全領民の目がここに集まりました。 そろそろ妲己、妖狐が来ますよ! 気を引き締めて!』
『え?! ちょっ! えぇッ————!!??』




