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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章一節 それぞれのイマージュ  ララと妖狐
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第五章7 妲己宰相

ララ視点になります。


 妖狐が走り去った後。

 ララは頭を切り替えて状況の確認をする。



 『被害状況を教えてください?!』 アダテ領の警備兵に問いかける。


「はっ! 勇者様のお陰で領民、建物全てに被害はありませんでした! ありがとうございました!」


「えっ! 被害ゼロって………」


 いくら何でも、あれだけの戦闘を街中で繰り広げ、被害なしとか……

 ララは信じられなかった。




 ララたちは、戦闘後の情報収取で現場を調査。

 アダテ領憲兵隊の兵士達は、戦闘の後処理をしている。



 すると、新たな憲兵が馬に乗って現場に現れる。


「勇者様! 妖狐の撃退ありがとうございました! ぜひお礼を申し上げたいと、ナイアード領主が申しております。 できれば領主官邸までご足労願えないかと、宰相補佐(・・)の『呂尚様』より連絡がありました。 一緒に来て頂けないでしょうか?」



 宰相補佐(・・)の『呂尚』とは初めて聞く名だ………

 この後、どうしても妲己宰相に会いたい。


「参りましょう!」


 私が即答すると、ヴィニコルが驚いて『言霊』で話しかけてくる。


 『どうしたのララ、官邸での謝辞とかそう言うの苦手でしょ?』


 『さっき妖狐の左腕を破魔矢で射抜いたでしょ、破魔矢の傷はそう簡単に治せないわ。 是が非でも妲己宰相にお会いしましょう!』


 『なるほど!!』




「さぁ! ヴォルタさん達も行きますよ!」


 私が嬉々として、皆で官邸に行く意を示すと

 ヴォルタさんは『あぁ……』と嫌そうに賛同する。


 まぁ―――

 宰相にカッとなって斬りかかった前科があれば、官邸には行きたくないよね……

 だけれども、そんな私情は却下です。

 ヴォルタさんも引きずってでも連れていきます。





 領主官邸


 ララ達が領主官邸に着くと、宰相補佐(・・)の『呂尚』に出迎えられ、謁見の間に通される。


 謁見の間では、領主ナイアード・アダテがまっていた。

 ナイアード領主の横には、妲己宰相ではなく、呂尚宰相補佐が立っている。



「シャンポール王国、ソーテルヌ総隊所属 近衛隊のララ・カノンと申します」

「同じくソーテルヌ総隊所属 コルヴァス隊麾下、ヴィニコルと申します」



「これはシャンポール王国の勇者ララ様、お噂はこの地にも響いております。 私がマルサネ王国 アダテ領を治めています、ナイアード・アダテ女男爵と申します」



 ナイアード・アダテは、ララと同じ十四歳。

 小柄な女性だが、とても聡明で、幼少のころに父を亡くして、幼いながらも領地を治め、この歳で今では領主としての威厳さえうかがえる。


 いつもポワポワしているララとは大違いだ。




「この度は、突然の妖狐の襲撃を防いでいただいたと言う事、大変感謝しています。 領民にも民家にも被害がなく、ララ殿の手腕に感服しています」


「いえ、あの妖狐の尻尾は二本ありました。 たぶん【仙狐(せんこ)】にまで格が上がった妖狐、仙狐(せんこ)の力があの程度で有るはずがありません。 本気を出されたらどうなるか分からなかったので…… この度は逃げてもらう事にしました、実力不足で申し訳ありません」


「それでも、ララ様が居なければ、妖狐の撃退すらできなかったでしょう」



 ナイアード領主のお礼の後、宰相補佐の呂尚より、お礼品の目録を貰った。

 内容は、まぁこの土地の名産品だ。


 一通りの慣例行事が終わった後、本題に入る。




「呂尚宰相補佐殿、一ついいでしょうか?」


「ララ様、どうぞ?」


「では、私たちがマルサネ王国からの依頼でこちらに来ている事はご存知ですね?」


「はい伺っております」


「では、問題の発端になったアダテ湖への通行許可と、調査のために各村の通行書、あと宰相妲己殿との面会をお願いしたい」



 謁見の間を沈黙が支配する………

 しかし———



「分かりました、許可書はすぐにご用意いたします。 それと宰相妲己は今所用で席を外していますが、直ぐにお呼び致しましょう」



 ⦅———え? 良いの??⦆



 正直、こちらの要望が簡単に通ってしまった事に困惑する。

 そして…… 半時ほどで宰相妲己が謁見の間に姿を現す。


 妲己は、ケガを隠すこともなく左腕に包帯を巻き現れる……




「妲己宰相、お初にお目にかかります。 シャンポール王国、ソーテルヌ総隊所属 近衛隊のララ・カノンと申します」


「これはこれはララ様…… この度は妖狐の撃退ありがとうございます。 ララ様のお噂は聞き及んでおりました、一度お会いしたいと兼ねがね思っていましたので、お会いできて光栄です」


「噂など…… お恥ずかしい限りです。 現実はこのようなただの小娘(・・・・・)です」


 ヴォルタが苦い顔をしている。


「フフ、勇者ヴォルタが苦笑いしてますが…… 初対面でそのように言われましたか。 それで郊外で力試しの手合わせをしたと………」



 ⦅やはり、妖狐に気づかれたのはあの手合わせか! そして妖狐も力を見に来たと……⦆



「あら…… よくそこまでご存じですね?」


「それくらいの情報を集められなければ、宰相など勤まりません」



 ⦅あの時私は、マナを薄く広げ、感知で他に人が居ない事を確かめた。 あの戦闘はマナが感じられる者でなければ気づけないはず⦆



「あの…… 妲己様、失礼とは思いますが、その左手のお怪我はどうされましたか? 」


「これはお恥ずかしい…… 今朝軍事訓練で怪我をしてしまいました。  もともと体を動かすことが苦手でしたので、似合わない事をすると……このザマです」



 ⦅勇者ヴォルタを手玉に取った人が、どの口が言っているのだか………⦆



「そうですか…… お大事になさってください。 お怪我をしているところ申し訳ないのですが、いくつかお聞きしたいことが有るのですがよろしいですか?」


「どうぞ」



「では、アダテ湖はどうして未だに、領民が入ってはいけないのでしょうか?」


「アダテ湖は、強力な呪いに侵されています、これが解決するまでは領民を入れるわけにはまいりません」


「呪い?…… ですか?」


「はい、アダテ湖ではたびたび、大きな骸骨の妖怪と、それに引き連れられたスケルトンが目撃されています、呪いはそれが原因かと」



「大きな骸骨……… ガシャ髑髏(どくろ)?!」


「ララ! ガシャ髑髏(どくろ)ってなに?」


「ヴィニコル、ガシャ髑髏(どくろ)とは、強い恨みを持って多くの人々が亡くなったとき、怨念が集まり、強大な骸骨の悪霊になることがあるの、その強さは冒険者ランクでA~S級だと聞きます」


「え…… S級…………」




「妲己宰相…… では今日襲撃が有った妖狐はたびたび現れるのですか?  妖狐はS級を超える大妖怪、この小さな領地にS級相当の妖怪が二体など異常事態です!」


「確かに…… この小さな領地でS級一体でも滅んでしまう事態です。 私がこの地に来る前の話ですが…… 一〇年ほど前に妖狐はガシャ髑髏と一緒に現れたそうです。 それから一〇年、妖狐もガシャ髑髏も姿を現しませんでした」



「一〇年前に…… そして一〇年後の今、ガシャ髑髏の目撃と妖狐が再び現れた……」


「ハイ、私どもは妖狐が引き金となり、ガシャ髑髏が現れたのではと推測しております」



 ⦅妖狐とガシャ髑髏は関係があるって事? そしてそれをあなたが言うの? 妲己……⦆



「分かりました…… 私達もこの地に来たばかり。 ガシャ髑髏のお話は初めて聞きましたので、許可書をいただき次第すぐに調査に向かいます」


「ありがとうございます。 許可書はすでにここにお持ちしました、どうぞ……  S級の妖怪がらみですから、私達ではとても対応しきれません。 勇者様が二人もいらっしゃる幸運を感謝いたします」





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