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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章一節 それぞれのイマージュ  ララと妖狐
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第五章5 勇者ヴォルタ

ララ視点になります。


 翌日、私たちはマルサネ王国の勇者ヴォルタと酒場で会った。




「初めまして。 シャンポール王国、ソーテルヌ総隊所属 近衛隊のララ・カノンと申します」


「同じくソーテルヌ総隊所属 コルヴァス隊麾下、ヴィニコルと申します」



 ヴォルタは私たちを品定めするように見まわしてから名乗る。


「マルサネ王国のヴォルタだ! そしてこいつらが俺のパーティーのミデゥスとクインスだ」




 お互いの紹介を終えた後、ヴォルタは私達にお酒を進めて来る。


「すみません……… まだ未成年なのでお酒は飲めないのです」


 私が言った『お酒は飲めない』の言葉で、ヴォルタは露骨に嫌な顔をする。



「ほぉ、あのエルフ族を落とした、豪傑ソーテルヌ公爵の片腕。 勇者ララ、ゴーレムマスターララ、白の退魔師……… 貴女の噂はこのマルサネ王国でも飛び交っている。 どんな豪傑が来るかと思っていたが―― 未成年の少女とは……」


 ヴィニコルの殺気がヴォルタへ向けられるが……… 殺気は軽くいなされる。



「ヴォルタ様、私たちは喧嘩をしに来たのではないのです。 ですが、私はソーテルヌ公爵の名代としてここに居ます。 我らが主を軽視なさる発言は看過出来ません」



「俺はソーテルヌ公爵を尊敬している。 我々マルサネ王国の民は長年エルフ族と戦ってきた、だからその強さを身をもって知っている。 そして俺達はソーテルヌ閣下のエルフ族攻略隊の末席に加わった。 俺は今でもあの時のソーテルヌ閣下の姿を忘れることが出来ない」


 ⦅ディケムを軽視しているわけではないみたいね……⦆


「だから、その尊敬するソーテルヌ公爵の近衛隊! 四門守護者……白の王と謳われるララが来ると聞き、共闘できることを楽しみにしていたんだ! それなのに…… まさかこんな小娘が来るとは………」



 ⦅こ………、いま完全に小娘って言いましたね! このオヤジ!⦆



 すると、横で聞いていたヴォルタの仲間のクインスが慌てて話し出す。


「ララ様! 申し訳ありません! このアホのヴォルタは口が悪いですが悪い奴じゃないんです!」


「こらクインス! アホとはなんだ! アホとは!」


「このアホヴォルタ! なんで素直に会いたかったですって言えないの!」


「………………」



 そのやり取りに、思わず笑みがこぼれてしまい……

 なんか毒気を抜かれてしまった。



「クソ…… まぁしょうがない……… 勇者ララ、貴女に会いたかったのも本当だし、正直、若すぎて不安になったのも本当だ! 俺は妲己宰相に挑み軽くいなされた」


「…………。 あの勇者がカッとなって斬りかかり、手玉に取られた話ですね?」


 クインスとミデゥスが真っ赤な顔をしている。


「はぁぁぁ~ そ……その噂って広まっているのですか?」


 ミデゥスが真っ赤な顔で居たたまれなさそうに聞いてくる。


「少なくてもシャンポール王国には轟いていますね………」


 ガスガスとヴォルタが二人に殴られている………


「イタ・クソ…… 真面目な話! ララ、一度貴女と手合わせ願いたい。 妲己宰相は最上級の妖魔だ、まだ若い勇者を死なせたくないんだ」


 ほぉ……… 心根は良い人のようですね。


「分かりました。 私たちもここに来るまでの調査で、妲己宰相は神獣クラスのS級妖魔だと聞き及んでいます。 その妲己宰相の力量を量ったあなたに、私たちが挑んで大丈夫か見極めてもらいましょう」



 私たちは街はずれに移動し手合わせをする事になった。




 手合わせはパーティー対パーティー、三対二になる。

 数の不利を訴えることは出来ない、二人でここに来たのだから。

 実戦では、数の不利有利は当り前の事。



「俺の勇者の証し、オリハルコンはこの剣だ」


「私のオリハルコン装備は、この弓です」


「勇者ララ! まさかそのお洒落ローブのままで戦うつもりか? そっちのお嬢ちゃんもお洒落貴族服のままとか…… 先ほどの非礼は詫びるが、俺たちを舐めるのはやめていただきたい!」



 どうやら、ヴォルタはこの服のマナ量を量ることが出来ないらしい……

 という事は、オリハルコンの剣も力を引き出してはいないのだろう。


 この時点で、私は勝利を確信した。



「勇者ヴォルタ! この装備が我々の最高装備です。 御心配なさらず、全力で来てください」


「負けてから言い訳は聞かんぞ!」


 少し怒ったヴォルタが言い放つ。





 戦闘開始の合図とともに、私はクリスタルゴーレムを一体出す。

 イメージしやすいので、形は私の分身だ。


 私はまだ一人ではクリスタルゴーレムを六体作るのが限界だ。

 クリスタルドラゴンなら一体が限度。


 通常の戦闘では、私とヴィニコルは後方系だから、

 クリスタルゴーレムをタンク役として使っている。



 さらに私はディケムに渡された『言霊』を付与した精霊結晶が組み込まれた腕輪にマナを送る。

 ディケムに説明された通り、『言霊』が発動しヴィニコルと会話が繋がる。



 『さぁ、ヴォルタ達の実力を試させてもらいましょう!』


 ヴォルタ達が私たちを試すように、私たちもヴォルタ達を見定める。


 『ヴィニコル、最初は動かないでね!』

 『了解』






 『こ…… これは………』



 ヴォルタ弱すぎないですか?

 一体出したクリスタルゴーレムがヴォルタ達を追い込んでいく。


 『ちょっとヴィニコル! ヴォルタ弱く無いですか?』


 『…………。 これは…… どうなのでしょう? マルサネ王国の勇者ヴォルタと言えば、それなりに名は通っているはずですが――』


 『この服にケチ付けだした時、ちょっと底が分かっちゃったんだけど………』


 お話にならないので、クリスタルゴーレムを停止させる。




「勇者ヴォルタ…… これでは私たちの実力を見せる事にはなりませんね……」


 ヴォルタ達は肩で息をして、こちらを睨む。


「私たちの実力を見せるために、少し試しましょう。 勇者ヴォルタ、先ほどあなたが言っていたこのお洒落ローブ。 そのオリハルコンの剣で攻撃してみてください」


「な…… なんだと! 無抵抗のお前を攻撃しろと?」


「私を傷つけることが出来るのならばどうぞ!」


 おこったヴォルタが私を切りつけるが、一向に攻撃が届かない………



 こ、これは! 防御力もアダマンタイト級と聞いていたけど―――

 その前に七精霊の加護で、他愛ない攻撃は服に届くこともできないようだ。

 この服凄い! ありがとうディケム!


 『ヴィニコル! ミタミタ?! 七精霊の加護で、他愛ない攻撃は服に届くことも無いみたい!』


 『これ私の服も、その七精霊加護は同じだとディケム様言ってましたよね! ね!!』


 ヴィニコルも嬉しそうだ!





 一向に届かない剣にヴォルタがいら立つ。


「勇者ヴォルタ、ちなみにあなたの剣が届いたとしても、このローブの防御力はクリスタルゴーレムを超えています。 クリスタルゴーレムを倒せないあなたでは、私を傷つけることは出来ない」


「な…… なんだと………」


「勇者ヴォルタ、あなたはマナを見ていない。 表面の情報だけしか見えていないのです。 マナが見えていれば、このローブがどのような物かを知ることが出来る」


 ローブがアダマンタイト級の防御力が有る時点で、オリハルコンの剣は効かない。

 まぁそんな情報は言わないけどね。


「そして勇者ヴォルタ、あなたはオリハルコンの剣を使いこなせていない。 その剣の力を引き出せていないのです」


 ヴォルタが目を見開く!




 私はオリハルコンの弓を天に向ける。

 そして光の矢を二〇本ほど作り出し、矢を射る――!


 二〇本の矢は、ヴォルタ達の周囲に降り注ぐ……



 ドドドッォォォォォォ―――ン!!!   ズッ——ガガガガガガッ———!!!



『あれ、ライトアローの威力上がってない?』


『ララの力が上がっているのと、多分ローブに精霊アウラ様の加護が付与されているからでしょうね』


『装備の性能を上げる、アウラ様の加護か!!!』




 周囲に降り注ぐ破壊の嵐に、成す統べなくヴォルタ達は立ち尽くす。



「オリハルコンの装備は、マナを操るのに適しているのです。 ただ斬るだけでは宝の持ち腐れです」


 ヴォルタ達は戦意喪失して立ち尽くしている。



「もう勝負はついたのではないですか?」


「あぁ…… 貴女の実力を疑って、小娘呼ばわりしたことを謝罪いたします」


「もうそれは良いのです、あなたなりの若者の命を気遣って言った言葉ですから」



 ヴォルタは苦い顔をする。





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