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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章46 幕間 マディラとギーズ

ギーズ視点になります。


 暗黒竜ファフニールとの戦いを終えた翌日。

 シャンポール王から国民への演説、ファフニールのお披露目が終わり。

 ディケムはじめ、僕、ララ、ラローズ先生、ポートも謁見の間に集められた。




 そして――

 謁見の間にて、僕はとうとう貴族の仲間入りをすることになった!

 『騎士爵』の叙爵だ!


 陛下より、『フィジャック』という貴族名を頂き、ギーズ・フィジャック騎士爵となった。



 これは本当にうれしかった!

 ララが騎士爵を叙爵された時、とても羨ましかったのを覚えている。

 『自分もいつかは――!』と思って頑張ってきた。



 貴族にならなければ、マディラの傍にいくことが出来ない。

 元平民の僕なんかが、マディラを射止めようなんて、そんな大それたことは考えてはいない。


 ただマディラを守りたいだけだ。

 もしマディラに危険が及んだ時に、身分の違いで傍に居られない、僕が守ることが出来ないのは嫌なんだ。

 マディラに命を助けられたあの日――

 僕は騎士としてマディラを守ると心に誓ったのだから。





 謁見の間での叙爵が終わり――

 ボールルームでの舞踏会へ向かう。



 ララからは聞いてはいたが、僕のような元平民には縁のない所だと思っていた。

 でもそこはとても華やかで、夢のような世界だった……

 なぜって、マディラ達も着飾って、参加しているからだ。



 舞踏会の主役はディケムだ。

 この舞踏会自体が、ディケムの功績をたたえ、それにかこつけて皆の社交の場を作っているという感じだ。



 ディケムの傍にはララとラトゥール様がいる。

 そしてさらにその周りを、各国の要人が取り巻いている。


 なぜかその中に、戦士学校のティナ・ソレイ先輩も一緒に居るのはご愛敬だ……

 ダンジョンで助けられてから、ティナ先輩のディケムを見る目は違っていたからな。

 まぁ、あの状況で助けられれば…… 誰でも惚れてしまうだろう。

 男の僕でも惚れると思う。


 しかし、あの面子の中に入っていける、ララとティナ先輩の豪胆さには感服させられる。




 ボールルームを見渡すと…… 何人も見知った知り合いを見かける。


 着飾ったラローズ先生は、もちろんラス将軍と一緒にいる。

 そしてポートはカミュゼがエスコートしている。

 この暗黒竜事変の陞爵・叙爵のメンバーは、僕を除きみな相手がいるようだ。




 僕は居場所がなく、壁際に居るマディラ、コルヴァス先輩、エミリア先輩を見つけてそこに行く。


「ギーズ! フィジャック騎士爵位の叙爵おめでとう」


 マディラから祝辞をもらう。


 そして、コルヴァス先輩からも言葉を貰う。


「おめでとうギーズ、君は自分の力で爵位を手に入れた。 君の爵位は、我々が親の爵位にあやかって貴族を名乗っているものとは全く違う。 同じソーテルヌ公爵の下で働く同志として、とても誇らしく思う」


「ララも、もうお父様と同じ准男爵位。 ディケム様は、お会いした時でも伯爵様、上級貴族だったけど…… もう公爵様だなんて。 ディケム様は誰かの下で仕える器ではない気がします」


「たしかに、ディケム様は貴族の枠では収まらないな。 アウラ様もファフニール様もおっしゃっていた。 始祖シャンボール様のようだと」



 『ねえ…… ギーズ』 マディラが話しかけてくる。


「私はどうすればディケム様のお役に立てるのかな……」


 マディラは少し思い詰めた顔をしていた。


「マディラ。 どうしたんだよいきなり?」


「なんか…… ディケム様が突出してるのは今まで通りなんだけど…… ギーズやララは、もともと私と同じラインにいたと思ってたの。 なのに…… 二人ともいきなり、飛び抜けちゃったから、同僚として焦るわよ……やっぱり」


 確かにマディラと会った時は、僕達の実力は皆それほど変わらなかった。

 それがダンジョンでディケムに、一気に引き上げられた感じはある。


 だけどそれは……

 僕たちが元々は騎士団第一部隊の人たちと何年も訓練していて、もともと下地はあったと言う事もあると思うけど……


「マディラはよく頑張っていると思うよ。 僕もララも、やっぱりソーテルヌ邸での固有結界での訓練、あの地道な訓練の下地があったからチャンスを活かせたのだと思う。 今はチャンスが来た時に逃さない下地を作っておくことが大事じゃないかな」



 思っていることを素直に話しただけなのだが……

 当たり障りのないアドバイスになってしまったと思う。

 それでも、マディラは嬉しそうに聞いてくれた。



「あの固有結界は、初めて知った時驚かされたよ、さすがディケム様だ! あれは精霊様の固有結界。 戦闘用にアレンジしてあるが…… おとぎ話に出てくる森の奥にあると云う『精霊と妖精の国』だと思うんだ。 精霊様と繋がっている者しか入れない筈のその場所を軍の訓練用に使ってしまわれるとは―――」



 コルヴァス先輩が、そんな舞踏会には似つかわしくない話をしていると……

 ボールルームに音楽が響き渡り場の雰囲気が一気に変わる。




 ボールルームの中央ではディケムとラトゥール様がダンスを踊り出す。

 その周りにはララとティナが次は私と競い合っている。


「噂には聞いていたけど、ディケムはダンス上手いんだな」



 僕がディケムとラトゥール様に見惚れていると……

 コルヴァス先輩に脇を肘で小突かれる。

 そしてそっと小声で囁かれる。


「ギーズ、ダンスは男から誘うのがマナーだぞ!」


 そう言いマディラの方に押し出される――


「えっ! あ、あの!? ――――ッ!」


 コルヴァスが世話の焼けるやつだなとニヤける。


「あの…… マ、マディラ!」


 僕は声にならない声を出し、精一杯の勇気を絞り出した。


「ぼ、僕…… 踊ったことなくて、踊り方分からないんだけど、教えてくれないかな……」


 生まれてきてこの方、これほど緊張したことは無いかもしれない。

 マディラの返事が返ってくるまで、途方も無く時間が長く感じた。



「喜んで!」



 マディラは少しイタズラな笑顔で……

 ダンスを受けてくれた!





 その日………

 僕はずっと壁際でマディラからダンスを教わっていた。


 他の貴族には笑われていただろう。

 沢山の嘲笑される視線を受けた。


 でも…… マディラは『気にしない!』とずっと僕と踊ってくれた。

 僕はマディラしか見ていなかった、周りなんて何も見えなくなった。

 評価、視線そんなものどうでもいい。


 大好きなマディラが僕の為だけに時間を使ってくれる。

 僕だけを見てくれる。

 それだけで僕は幸せだった。




 幸せな時間はあっという間に過ぎてしまった。

 ダンスの時間が終わり、マール宰相による閉会のお言葉が合図だ。


 ボールルームのペアになれなかった貴族たちは、次々に退出していく。

 ペアが出来た貴族達は、この後どこかで二次会的な事も有るのだろう。

 グループで二次会に行く貴族たちも居るようだ。




 僕はマディラに、『家に送るよ』と話してみる。

 もちろん心臓はバクバク言っている。


「うん」


 マディラが素直に応じてくれた――

 どうしよう、マディラが可愛くてしょうがない。


 ⦅ッ―――! ダメだろう!⦆


 僕はマディラの幸せを願うただの騎士でしかない!

 僕がマディラを幸せにするだなんて、そんな大それた夢を抱いてはいけない!


 僕は…… ただの元平民。

 サンソー村の道具屋の息子。


 准男爵家に生まれた、生粋の貴族令嬢のマディラとは、住む世界が違うんだ。




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