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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章45 幕間 結界班

ギーズ視点になります。


 グラディアトル大会が終わった後、突然暗黒竜ファフニールが復活した。



 その禍々しい姿と圧倒的なマナの質量に触れ、見る者全てに絶望と自分の存在の小ささ、無力さを思い出させた。



 僕たちはディケムの指示により、急きょディケムと暗黒竜を結界内にと閉じ込めることになった。

 ララは泣きそうになっていた。

 ディケムに閉じ込めろと言われた時に躊躇していた。

 もちろん僕も躊躇した。

 一緒に中に入ったら、あれは絶対に死ぬというマナ量を感じたからだ。


 だけど今、ここは戦場に等しい。

 戦場では、個人の感情よりも上官のディケムの指示が絶対だ!

 ララと僕は自分の感情を押し殺し命令に黙々と従った。




 四属性の十層精霊結界!

 これ程高度な結界は、まだ僕、ララ、ラローズ先生、ポートでは作ることは出来ない。

 最初の構築はディケム自身が行い、その結界の維持・修復を四人で担当する。


 結界の強度は、メガメテオを防いだ時の王都シャンポールに張られていた結界と同じ強度のはずだ!


 この精霊結界の層数は、二十層張られている王都の結界の半分だが……

 僕の風属性、ララの月属性、ラローズ先生の水属性、ポートの木属性。

 四人分の属性が付与されている。

 あの時の王都の結界と同じ属性数、四属性だから一層当たりの強度はほぼ同じはず!


 四属性の精霊結界が十層あれば、メガメテオすら防げるはずだ!



 正直、『僕なんかが、この結界を維持できるのだろうか……?』と心配になるが……

 僕の中に居るシルフィードが『大丈夫だから自信を持て!』と言ってくる。





 僕はディケムが構築した、ソーテルヌ総隊全員に作った『言霊』グループとは別に、僕の『言霊』で別のグループを作る。

 僕、ララ、ラローズ先生、ポート、結界を維持しているメンバー四人の専用グループだ。


 そして僕は三人に言う。

「みんな、ディケムには戦闘に集中してもらいたい! 結界維持班だけでグループ作るよ」


 『『『はい』』』三人から了承をもらった。



 このグループはすぐに功を奏した。

 ファフニールとディケムの戦いは、壮絶だった!

 暗黒竜が火を噴くごとに、結界が壊れる。

 僕たちはすぐに修復する事に追われ、連携が必要になった。


「ディケムは、僕が『言霊』を使える事を織り込み済みなのだろうね」

「もしくは、分かるまで自分たちで苦労しろって事かもね!」


 そう言いラローズ先生が、苦笑いする。


「ギーズ! ララ! 正直この高度な結界は、あなた達二人にかかっています。 悔しいけど下級精霊しか使えない、私とポートでは、あなた達の補助的役割しかできないわ! 試合直後の疲れたあなた達に負担ばかりかけて申し訳ないけれど、この結界に多くの人の命がかかっているの! お願いしますね」


 『『はい!』』 僕とララは答える。





 僕たちが必死に結界を修復維持していると――

 結界内で信じられない攻撃が来る。



 暗黒竜が『メガフレア』を放ったのだ――!

 『メガフレア』は、メガメテオと同等の結界を八層まで砕いた!

 信じられなかった………


「なんなんだ…… この暗黒竜って! 四属性の精霊結界を八層まで壊されるって…… 今の攻撃、メガメテオと同じ質量だったぞ!」


 『ディケムはあんな攻撃の中にいて大丈夫なのか?』誰しもが頭によぎる疑問だったが……

 僕はあえてその言葉は飲み込んだ。


 ララの心情を考えると、ディケムの状態を心配する言葉は禁句だ!

 僕たちは圧倒的に実力が足りていない。

 ディケムの隣に立ち、一緒に戦う事すら許されない、足手まといなのだ。


 せめて、ディケムが望んだ結界の維持だけでも遂行しなければ……

 これすら出来なければ、さらにディケムの足を引っ張ることになる。




 だがやはり僕の懸念はあたり、ララが蒼白な顔をしている!

 まずい…… ララは今にでも結界を解き、ディケムを助け出したい顔をしている。

 現実的には不可能な事でも、そんな事は恋慕する少女には関係ない。

 王都民全ての命とディケムの命、今のララはディケムを取るに違いない。



「ララ! 結界が維持できているってことは、ディケムも大丈夫なはずだ! 『言霊』も生きている! 俺たちは結界を維持することを指示されている! それすら出来なければ…… さらにディケムの足を引っ張ってしまう! 気を持ち直せ!!」



 『ディケムの足を引っ張るな!』 その言葉を聞きララが持ち直す。



 だが、ララの心は持ち直したが……

 現実的なラローズ先生とポートの魔力と体力がもう限界だ。


 ディケム――!

 次同じ攻撃受けたら、俺たちの結界ももう限界だ!

 たのむ! 早く何とかしてくれ――!



 僕がそんな身勝手な願いを願った直後――!

 結界内に何百本という数の光り輝く剣が浮いていた。

 剣の向かう先には、黒色の丸い結界がある……

 たぶんあれは暗黒竜が張った結界なのだろう。


 光り輝く剣のマナを感じ取ると、ディケムのマナに満たされている。

 ディケムも僕たちの今の状況を考え、一気に片を付けに行くのだろう。



「みんな! ディケムの攻撃が始まるぞ! 衝撃に備えて結界の維持に気合を入れるんだ!」



 皆が頷き気合を入れた直後、光の剣は一気に発射され、結界内に光の衝撃が渦巻く!

 僕たちは衝撃に備えて歯を食いしばる―――!



 しかし驚くことに、その攻撃の衝撃はすべて暗黒竜に向かう!

 僕たちの張っている結界は、少しのダメージも受けていない。

 ディケムの攻撃は、エネルギーを拡散させること無く、攻撃の力を全て攻撃対象に向かわせ集中させて見せたのだ。


 結界内では、これほどのエネルギーが渦巻いているのに、無駄なくダメージは全て暗黒竜だけに向かっている。


 僕はディケムの攻撃の緻密さに感嘆させられた。





 暗黒竜との戦闘が終わり、ディケムと暗黒竜のやり取りが、『言霊』を通して聞こえてくる。


 あの暗黒竜を使役して、『召喚獣』として契約する!?

 ディケム…… 信じられない事をする。

 これほどの竜を制御できるというのか?



 暗黒竜とディケムのやり取りを聞いていると……

 いつの間にか、結界の周りには、王都住人の避難誘導を担当していた、総隊メンバーや、戦士学校のコルヴァス先輩たちも集まっていた。


 みな僕と同じ、ディケムと暗黒竜のやり取りを聞いて、絶句していた。





 全ての決着が着き、翌日にはシャンポール王より国民に、ファフニールがお披露目になる。


 ディケムがファフニールと契約している時は驚いたが……

 現実ファフニールが守護竜になるとこれほど頼もしい味方は居ない。


 恐怖が大きかっただけに、それが味方になると分かれば、国民は大いに沸きあがった。





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