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第一章14 王国騎士団第一部隊


  家族会議の翌日から、早速俺たちの訓練が始まった。


  王国騎士団第一部隊が村の近くにキャンプを設営するのには一~二カ月ほどかかる。

  それまでは基本俺の家に集まり、近所で訓練だ。

  と言っても、ウンディーネの最初の訓練はとても地味だ。


 【魔力量を上げる】

 【魔力のコントロール】

 【基礎体力訓練】


  皆、しばらくは自力を上げるために基本的な訓練のみ。

  大きな声では言えないが俺だけは、表面上皆と同じ訓練をしているが、マナの訓練を同時に行っているので、中身は全く違っている。

 マナの訓練は、三人にも追々行っていくらしいが、今はまだ早く学ぶには順序があるらしい。


 そして………

 一カ月半ほどで、王国騎士団第一部隊の訓練キャンプ施設が村の近くに出来上がった。

 訓練場所をそこに移すため、今日は全員で挨拶に行く。


 俺たち四人は、ラス・カーズ様に連れられて、二百人ほどの騎士達の前に連れてこられた。

 二百人でも、王国騎士団第一部隊のごく一部でしかない、総勢では二千人は居るのだそうだ。

 ちなみに、王国騎士団は一~十二部隊まであるので、騎士は総勢一万四千人程になる。

 さらに騎士の下には一般兵がその五十倍ほどいる。


 一般兵士から騎士団に昇格するには。

 【年一回の倍率五十倍の騎士試験に合格する】

 【戦士・魔法学校で優秀な成績をとり校長先生の推薦をもらう】

 【騎士団副隊長以上からの推薦】

 これらの狭き選抜で選ばれたエリートが騎士団に入れる。


 もちろん貴族はこの規定には当てはまらない。

 爵位を持つ家に生まれれば、自動的に騎士団に入る。


 しかしこの不文律も今の戦争の世の中では、決して贔屓にはなりえない、いくら騎士になったところで、弱ければ死ぬのだ。


 今の世の中では、貴族に生まれれば、子供の時から騎士になる訓練を行う。

 民を守るため、戦場では前線に出て戦わなければならないのだ。

 平民の一般兵よりも、強くて当たり前なのだ。

 貴族は騎士団に()()るのではなく、()()()()()()()()()()のだ。




 俺たちはその、王国騎士団の中でも最もエリートとされる王の懐刀、第一部隊の二百名の前に連れて来られた。

 ラス・カーズ様の話では、第一部隊二千名、その中でも精鋭部隊とされる五十名がいるそうだ。

 その精鋭部隊がここで俺たちとしばらく訓練につく、残りの百五十人は一カ月おきに、本国の人員と交代する。

 二千人が一度に来ると、本国の軍備が手薄になるのと、小さなサンソー村が大変なことになるので、二百人が限界だという判断になったらしい。


「ラス・カーズ将軍に敬礼!!」

 二百人全員が一糸乱れぬ敬礼をする。


「お前ら! この四名が前から話している子供たちだ。 これからお前らと一緒に訓練に参加する。 だが基本はこちらにいらしゃる、精霊ウンディーネ様との訓練が主になる。 慣れてきたら選抜でうちの隊からも、訓練に参加させてもらう。彼らの訓練に協力を惜しむな!」


「――イエス、マイロード!」

 二百名の騎士たちが一斉に答える。


「そして、情報統制をおこなっているが、この地はマナの力に溢れている! 予想だが王国が管理している他の地よりもマナの濃度が濃い。 ここで我々がどれだけ強くなれるかで、王国軍の将来が決まると思え! 精霊様の下、マナの力に溢れた地で訓練を行える貴重な時間を無駄にするな!!」


「―――イエス、マイロード!」


 ラス・カーズ将軍の号令で、騎士達は一斉に訓練へ向かう。


 俺たち四人は、五〇人の精鋭の中でも更なる精鋭、ラス・カーズ将軍の冒険者時代のパーティーメンバー六人と顔合わせになる。


 【タンク :ドーサック(男)】

 【黒魔術師:ビーズ(男)】

 【精霊使い:ラローズ・グリュオ(女)】

 【白魔術師:ネィラック(女)】

 【シーフ :ギロー(男)】


 ラローズさんはグリュオ伯爵家の長女、ラス・カーズ将軍と同じ貴族階級の人だ。

 そして、ラローズさんはラス・カーズ将軍の婚約者でもある。


 ちなみに、ラス・カーズ将軍は、元平民だったが勇者としての功績が認められ名誉伯爵を叙爵(・・)(爵位を与えられること)されている。

 名誉(・・)伯爵は伯爵とは違い、代々子供に爵位を受け継ぐことが出来ない、一代限りの爵位になる。



「俺の冒険パーティーは、俺を合わせてこの六人だ。 典型的なパーティー構成だが長年やってるとこの構成に落ち着いてくる。 本当は良いやつがいれば青魔法師も欲しいんだがな」


 ――ん? なぜかラローズさんがこっちを見て、真っ赤な顔をして、目を見開いている。


「ラス! 堅苦しい挨拶はもういいから、早く自由に話しさせてよ!」


「こらラローズ、一応軍の中ではそれなりのお約束(・・・)と言うものがだな……」


「――もお! お約束(・・・)と言っちゃった時点でダメでしょ」


「あ~ もうわかった! って事で親睦を深めるとよう!」


 挨拶が終わるとラローズさんが、ものすごい勢いこちらに来る。

 ――え! なにコレ! ちょっとコワイ!


「ディケムく――ん! 会いたかったよ――♪♪」

「精霊ウンディーネ様、ラローズと申します。ご尊顔を拝することが出来、光栄でございます!」


 なにこの落差、コワイ!


「ディケムと申します。よろしくお願いします」

「ウンディーネじゃ、よろしゅうな」


 『きゃ~~! きゃ~~! きゃ~~! 』

 ラローズさんが、飛び跳ねて喜んでいる。


「ちょっとラス! 聞いた? 精霊様と話しちゃったよ~~!」


 ハイテンションのラローズさんに、ラス・カーズ様がペシペシとはたかれている。

 いつまで、このテンションが続くのだろう、ちょっときつい………。

 だが、すぐにその場の雰囲気が変わることになる。


「オヌシが、精霊と契約したいというヤツか?」


 ウンディーネのこの一言で、一気に場が凍り付く。


「オヌシ、ラス・カーズの婚約者なのであろう?」

「ラス・カーズお前はなんと惨いことを考えているのだ!」


「――ウンディーネ様! 発言をお許しください。 契約を望んでいるのは私自身です。 ラスは逆に私を止めているのです」


「……何故じゃ? 契約のリスクは精霊使いなら知っていよう。 オヌシ死ぬぞ!」


 ラローズさんは少し黙り込み、ラス・カーズ様達を見た後、意を決してウンディーネに話し出す。




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