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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章31 鏡の迷宮

マディラ視点になります。


 突然の、戦士学校校長先生との交流には驚きました……

 ディケム様は初めから気づいていたはずなのにお人が悪い!




 さぁ、ララ達の次の試合がもうすぐ始まります!

 ディケム様は急いで打ち合わせに戻りました。



「ララ、ギーズ! 正直、精霊魔法は対人に使うには強力過ぎる。 威力を抑えて使うなら、もうこれ以上は威力を示す意味が無い、次からは違う使い方をしよう」


 そう言って、ディケム様は、細かい打ち合わせをしていました。

 ディケム様は勝つことだけではなく、勝ち方にも拘っているのですね……



 王都守護者としての責務、国民の士気を上げる事――

 このようなことまで考えて、このグラディアトルに臨んでいる方が他にいるでしょうか?


 その責務を果たす為、ディケム様の力になれるララを羨ましくも誇りに思います。





 そしてララ達の試合、決勝トーナメント準決勝が始まります。



 バトルアックスのカヴァクリデは、タンクの居ないララ達には、かなり相性が悪い相手だと思います。


 カヴァクリデのパーティー構成は。

 タンク、大斧、大斧、白魔法、と攻撃特化型です。


 唯一の白魔法師も、戦士学校のヒーラーは、魔法学校の白魔法師より戦士寄りのヒーラーです。

 戦える白魔法使いになります。





 両チーム、武舞台に上がりお互いを見ます。


 大抵、大斧を使う戦士は大柄な方と決まっています。

 体が大きくなければ、大きくて重い大斧を扱うことは出来ません。

 その大斧使いの大男が二人も居るチーム……


 ララ達と武舞台で向き合うと、大人と子供くらいの差があります。

 あんな大斧持った大男に襲われたら、私なんてすぐに死んでしまうでしょう。



「ララ…… あんな大男と戦うなんて、本当に大丈夫かしら!」


「いくら何でも…… この体格の差は止めた方が良いんじゃないかしら……」


 私達三人はお友達が心配でたまりません。




 ですが…… 無情にも試合開始の合図が鳴ります――!!!





 開始の合図の直後――!

 カヴァクリデパーティーのタンクは下がり、ヒーラーを守る!


 『っえ!?』 普通タンクは前に出るのでは?!


 そして―― 大斧二人が、一瞬でディックとギーズの前まで来る!



 ララ達相手に長期戦は不利と見たようです!

 『キャ――!』 私達はその迫力に怖くて叫びました!


 でもララが冷静な様です!

 瞬時にディックとギーズの前にクリスタルの壁を作ります。



 しかし――! カヴァクリデは簡単にそのクリスタルの壁を砕く!

 カヴァクリデが『獲った!』と笑う……



 私達は、怖くて見ていられず、目を伏せました!



 でも……、クリスタルの壁の向こうにはディックとギーズは居ませんでした!

 砕いた壁の向こうには無数の壁、いやクリスタルで出来た鏡が立っています。


「な、なんだと……」


 苛立ちを見せたカヴァクリデ達は、次々に力まかせに鏡を砕いていきます!



 割れた鏡は不自然なほど、粉々になり、風に舞う。

 ララは割られる側から、次々に鏡を作っていく。



 私達も最初、大斧持った大男が怖くて見ていられませんでしたが……

 ララが、冷静にカヴァクリデチームに対処しているのを見て、落ち着いて試合を見ることが出来る様になりました。




「ねぇマディラ、なんでララは割れないクリスタルの壁をつくらないのでしょう?」

 トウニーが呟く。


「多分ディケム様は、ショー的な戦略を立てたのでしょうね? 力を見せるだけならば、先ほどまでの試合で十分ですから。 ほら、武舞台が輝いて宝石のようにきれいじゃない」



 気づけば武舞台はクリスタルの鏡で埋め尽くされ、鏡の迷路のようになっている。

 そして砕かれた鏡の粉が宙を舞い、ダイヤモンドダストが空をゆらゆらと舞っているように、大気がキラキラと輝く幻想的な光景を作り出す。


 クリスタルの粉が、あれほど宙に舞うはずがない、ギーズが風の精霊で飛ばしているのでしょう。

 宙を舞うクリスタルと、鏡の乱反射で、武舞台は至る所でキラキラ煌めいている。

 観客は、まるで大きな宝石箱、万華鏡でも見ているように息をのむ。



 しかし、武舞台に居るカヴァクリデ達は、たまったものでは無い。

 観客には幻想的でも、その中に居るカヴァクリデ達は、乱反射で目が眩み……

 敵を前に、ろくに目を開ける事すら出来ない!


 さらに迷路のように立ち並ぶ鏡に、ララ達が無数に映り、どれが本物か見分けることが出来ない。

 前後左右からいつ攻撃が来るか分からない恐怖!

 ララ、ディック、ギーズが現れては消え、消えては現れる。


 そして、それを攻撃すれば、鏡は砕けダイヤモンドダストは増えていく。

 カヴァクリデ達が状況を打開しようと、頑張れば頑張るほど、状況は悪化した。




 鏡の迷宮が出来上がったとき、ララは最後の仕上げにかかる。



 全ての鏡にララが映る―――

 そして全ての鏡の中のララが弓を構える!


 カヴァクリデは目を見開き身構える!


 そのカヴァクリデ目がけ……

 ララは『これで決める!』と渾身の矢を射る―――!



 『カァッ――ン!』 弦音(つるね)の音が会場に響く!



 本物の矢は一本、カヴァクリデの背後に居るララが放った一本だ!

 カヴァクリデは背後のララに気づいていない!



 誰しもが『これで決まった!』 ――と思ったとき!

 カヴァクリデが矢を紙一重で躱す!



 『………………』



 カヴァクリデもそれを待っていたのだ!

 どれが本物か分からないのなら、相手の攻撃を待てばいい。


 カヴァクリデは矢をギリギリのところで避け、すぐに矢が放たれた方向のララ目掛けて飛びかかる!

 そしてララに向けて渾身の攻撃を繰り出す!



「やっと見つけたぞ! 俺の勝ちだ―――!」



 カヴァクリデのバトルアックスがララに直撃する―――

 しかし―― ララは砕け、カヴァクリデはその勢いのまま場外に落ちた。



 『………………』



 結局、カヴァクリデが攻撃したのは――

 武舞台の端に作られた鏡に映ったララだった。


 ララが別方向に飛ばした矢を、ギーズが風を使い曲げてカヴァクリデに向けさせた……

 ただそれだけだった。




 結果、カヴァクリデのチームは全員、場外負けで試合終了。

 ララ達の頭脳戦の勝利! 労せずしてカヴァクリデ達の自爆を誘ったのだ。


 カヴァクリデは、不完全燃焼の不満いっぱいのようだったが……

 観客はその幻想的な戦闘を楽しんだ。




 ララ達は予選と決勝トーナメント初戦で力を示し――

 さらにこの試合では、パワー系のチームに対し、力に頼らなくても工夫すれば勝てる事を観客に示し魅了た。




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