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第一章13 家族会議


 ウンディーネとラス・カーズ将軍の話も粗方終わり、俺たちは家族に報告する為に各自家に帰った。


 しかし案の定、みんな家族に報告した後大騒ぎになり、明日はみんなの両親と一緒に我が家に集まる事になった。

 さらに村長とラス・カーズ将軍も参加してみなで会議をする。




「それで…… 会議は明日ですがラス・カーズ様」


 さきほど各家族の父親がうちに飛び込んで来て、明日会議をする段取りをつけ、各自の家に帰っていった。

 皆解散したのになぜかラス・カーズ様だけがうちに残っている……。


「いや…… 宿探したら、この村宿が無くってさ~! 相談したらご両親がここに泊っても良いって言ってくれてね」


「イヤイヤ おかしいでしょ! 父さん!」


「ディケム! ラス・カーズ様は国の英雄だぞ! 我々の憧れの人だぞ! なっ、母さん!」


「私たちも若いときは、勇者ラス・カーズ様の武勇伝を聞いて、冒険に憧れたものよね~♪」


 …………だめだな、この二人は。


「いや~申し訳ありません! それと追加事項だが近々俺の王国騎士団第一部隊がこの村の近くに訓練場を作る事にした。 それまでの間よろしく!」


「ッ――えっ! こんな田舎に? それはなぜでしょう?」


「どうせ、王国はどう転んでもオヌシらを確保しておきたいのじゃろう」


「ウンディーネ様…… 否定は致しません!」


「加えて言うなら、マナが豊富だと知って、訓練に最適な場所だと思ったに違いない」


「おぉ!さすがウンディーネ様! 我々人族には、マナが豊富な場所を探し出すことは難しく、すでに知られている場所はとても貴重なため国が厳重に管理しています。 申請を出しても部隊の訓練に長期で使える事は皆無なのです」


 なるほど……… 俺にはマナが見えることは黙っていた方が良さそうだ。


「ふん、好きにするが良い。だが、この村の先に神珠杉という神木がある、そこには絶対に近づくな! 近づいただけで、妾は王国の敵になると覚えておけ!」


「肝に銘じます、軍には徹底させます!」


「うむ、それでオヌシ。 まだ隠していることがあろう?」


 ラス・カーズ様が難しい顔をして脂汗をかいている!


「オヌシ……。 あわよくば妾を使って、オヌシの部隊の精霊使いに、精霊との契約をさせようなどと考えていまいな?」


「ッ――えっ! イヤ…… その――」


 図星だったらしい。


「過ぎた欲は身を亡ぼすぞ! せっかく育てたオヌシのカワイイ部下を、死なせたくはなかろう? それでも、もしオヌシが部下に精霊と契約するよう命令を下すのなら、それは部下に死んで来いと命令する事と同義だと知れ! それほど契約に成功する確率は低い!」


 ッ――な! 精霊と契約することはそれ程のリスクがあるのか?!

 俺はマナの本流と繋がってしまうという、別のイベントのどさくさにウンディーネと契約をした。   

 ウンディーネの言葉が本当なら、精霊と契約することへの認識を改めないといけない。


 ラス・カーズ様は真剣な顔で頷き、何も言わず苦しそうに下を向いてしまった。


「軍人とは難儀なものじゃな、王にでも命令されたか……。  まぁどうせ精霊と契約出来る器に育つまで、そうとう時間がかかるだろうから、その時までにじっくり考えておくのじゃな」




 夕食の時間は、すべて忘れて楽しい時間を過ごした。

 父は昔聞いて憧れた、勇者ラス・カーズの冒険譚を本人から聞くという至福の時間を過ごしていた。


 そして母は、ウンディーネが食事を食べれるようになって大喜びだ。


「あらあらまぁまぁ~妖精さん♪ 食事食べられるようになったのね~♪ これもたべて~  はぁいア~ン あれも食べて~ はぁいア~ン♪」


「母さん、なんか楽しそうだね………」


「フィローよ、世話になっているからどうでもよいが、妾は妖精ではない、精霊というもっと高貴な………コラやめよ………モグモグ」


 母さんが、ウンディーネで人形遊びをするように、楽しんで食べさせている。

 ウンディーネもまんざらでも無さそうに、楽しんで食べているので良しとしておこう。


 夕食のあとは、明日に備えて早く休む事にした。

 俺は布団に入り、ラス・カーズ様の冒険譚を思い浮かべ、いつかは幼馴染四人で冒険に行ってみたいと、思いを馳せて眠った。



 翌日、村長とディック、ギーズ、ララが両親を連れて、続々と集まってくる。


 どの家族も、ラス・カーズ様を見て興奮している。

 昨日もチラッと見たのに、今日は直接話もできるとあり嬉しそうだ。



 皆が集まり、一段落したところで、村長が話し出す。


「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。 今日集まっていただいたのは、皆さまお分かりだと思いますが、ディケム達四人の子供たちが魔法使いの能力(スキル)だと判明しました。 これはこのサンソー村始まって以来の出来事です。 そして王都より王国騎士団隊長のラス・カーズ将軍がお見えになっています。 子供たちの今後の事、恩賞金の事、いろいろ分からないことがありますのでこれから説明していただきます」


 村長より紹介されたラス・カーズ将軍が、昨日の俺達四人の出来事を説明してくれた。

 そして、ラス・カーズ様たち王国軍が俺たちを全力でバックアップすることも。


「村長とも話し合い、わが王国騎士団第一部隊の訓練キャンプをこの村の近くに設置することとなりました。 彼ら四人はその訓練キャンプにて、我々と一緒に訓練に励んでいただきます」


 両親たちは目を見張り驚いている。

 王の懐刀、王国騎士団第一部隊がこのような田舎村に来ることも、子供たちがその騎士団と一緒に訓練をする事にも。


 しかし、いまの人族の現状は風前の灯火、どのような才能であっても、女でも十六歳になったら、戦争に行かなければならない。

 子供たちがどうせ戦争に行くのならば、一流の人にしっかり教えてもらい、少しでも生き残れる確率を上げさせたい。

 ――と言うのが、全家族の総意だった。


「何か質問のある人は?」


「はい! これから毎日、王国騎士団第一部隊の訓練キャンプに集まり、訓練を行うのは良いのですが、家の手伝いは出来なくなりますよね? まぁそれは……能力が分かり次第、十二歳からの進学に向けて、手伝いどころではなくなるのはどこの家庭も覚悟はしていたのですが……」


「はい。 まずは恩賞金についてですが、魔法使いは人族にはとても貴重な戦力、それを輩出した家庭には、金貨一〇〇枚、そして輩出した村には、白金貨一〇〇枚が授与されます」


 ————おぉぉぉ!

 両親たちが驚きの声を上げる。


 通貨は、銅貨一〇枚で大銅貨、大銅貨一〇枚で銀貨、銀貨一〇枚で金貨、金貨一〇枚で白金貨だ。

 平均的なパンの金額は銅貨五枚ほど、家族四人が外食すればだいたい銀貨二枚あれば御釣りが来る。


「そして、ディケム君の精霊使いですが………。 精霊使いは魔法使いが魔法を極めた後に、さらなる力を求めて、精霊と契約するものとされています。 しかし現実には今精霊様と契約できた魔法使いはいません、さらに上位精霊様と契約できた記述は二千年以上前にさかのぼります。 ですので恩賞金という形にするのは難しいのですが、一応形式としてアラン家には白金貨一〇〇〇枚が授与されます」


 ―――白金貨一〇〇〇枚!

 アランもフィローも固まっている。


「さらに、ディケム君たち四人は、王国騎士団と合同訓練という事で申請しています。ですから彼らには国から給料が出ます。彼らにはひと月金貨一〇枚、精霊使いのディケム君はひと月金貨二〇〇枚が支給されます」


 ッ―――な! ひと月金貨二〇〇枚って………


「王国軍も必死じゃな! これはすでに軍に囲われているのと同じ事じゃ」


「………ですがウンディーネ様、この国の法律上どのみち徴兵されるのであれば、いまから給料が出るほうがまだましだと、我々家族は思います」


 ディックの父親が代表して了承の意を示す。


「では恩賞金という形で、各家に資金援助があるのであれば、子供たちを訓練だけに集中させるのに異議はありません。 むしろこのような大金を便宜して頂き感謝いたします」


「ちなみに、ディケム君には精霊様がいらっしゃいますが、ほかの三人は誰が魔法を教えてくれるのでしょうか? ラス・カーズ様は剣士ですよね?」


「それは、先ほども言ったように、王国騎士団第一部隊がここで訓練キャンプを行うので、うちの部隊の魔術師が教えます。 それに、彼らはウンディーネ様の庇護下にあります。 基本の訓練方法は、ウンディーネ様からの指示も頂けます」


「おぉ! それは凄い!」


「うちの子が精霊様とラス・カーズ将軍から習うことが出来るなんて!」


 どこの家族も大はしゃぎしている。

 俺達四人は、クレープを頬張るウンディーネとラス・カーズ様しか見ていないので、ピンと来ていないが、両親たちの世代は、みな勇者ラス・カーズの冒険譚で育ったそうだ。

 両親たちの説得にはこれ以上無い人選だった。


 質問事項もすべて無くなり、王国からは過分すぎる金額の提示があり、各家の両親たちはみな納得して帰っていった。


 過分すぎる金額の提示………、これは今後俺達四人が戦争の最前線で働くことを意味している。

 金額に見合うだけの働きをしろと言われていることに、親たちは気づいているのだろうか。


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