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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章25 閑話 羨望と憧れと自戒2

コルヴァス視点になります。


 魔王討伐に向け、細かい打ち合わせを済ませダンジョン攻略に向かう。


 戦う前にララさんが、精霊ルナの加護を全員にかけてくれる。

 これで、悪魔にも普通に剣でダメージを与えられ、逆に悪魔からのダメージを減らせられるらしい。

 補助魔法の重要性を改めて認識する。



 十四階層の広間に行くまでは、ダンジョンから溢れたモンスターを二チームで殲滅していく。

 ラトゥール様が雑草を刈るように雑魚を薙ぎ払っていく、俺にとっては雑魚では無いのだが……

 格の違いを見せつけられる。


 広間からは二チーム分かれる、ディケム様やラス・カーズ様のチームに居ると安定感、安心感が凄い。

 ティナ達も最初は全く動けなかったが、このチームに居る安心感が、徐々に彼らにも気力を取り戻させたようだ。


 私は、個人とはパーティーを強くさせるために有るのだと思っていた……

 しかし、このパーティーに居ると、パーティーが個人の能力を引き出している……




 ティナ達と別れた後、今までの戦いを見て、ディケム様が陣形を組みなおす。

 というか……


 前衛:俺

 中衛:カミュゼ 

 後衛:ララさん

 

 この三人だけだ。


 たまに、ディックが黒魔法で援護してくれるが……

 ギーズは強くなりすぎて、後ろで待機だとか…… 強くなりすぎたって何だ?



 しかし、この三人のチームが凄くいい感じだった!

 特にララさん! 彼女はこんなに凄い魔術師だったのか!

 サポートもヒールも、隙をついての狙撃も―― 

 欲しいと思ったところに彼女のサポートが来る。

 痒い所に手が届く感じだ!

 しかも、これでも精霊ルナ様の力を、使わないようにかなり抑えている。


 カミュゼはまだ実戦慣れしていないが、それをララさんが補ってくれる。

 この三人のリーダーは俺のはずだが、実質はララさんが俺達二人を誘導している。

 奥さんが実は影の大黒柱的なやつだなこれは……


 このパーティーだったら、

 十階層であのような事にはならなかっただろうなと思ってしまう。



 俺たちは危なげなく、フロアボスの部屋の前にたどり着く。

 ここで、ララさんの精霊ルナの加護を掛けなおし、追加でディケム様が、数々の精霊の加護を掛けてくれた。


 そして、ボス部屋へ突入する――!




 目の前に魔王が玉座に座って居た!

 獅子の頭と腕、ワシの脚、背中に四枚の鳥の翼とサソリの尾!

 その風体に俺は飲まれた………


 そして突如、部屋全体に『アバドン』が吹き荒れる―――!


 俺は死を体感した……

 魔王の――

 あまりの圧倒的力の暴力に、心が死を悟ってしまった。



 死んだはずの俺の前に、ディケム様が割り込み、ラトゥール様が俺とカミュゼを後方へ投げ飛ばす。

 壁に衝突した衝撃で俺とカミュゼが我に返る。


 ラトゥール様から怒鳴られる!

 『ディケム様の邪魔をするな!』と……


 そしてラトゥール様が俺達に言う!

「ディケム様の戦いを見て学べ! 戦いのさなか、敵を前に戦意を失うなど致命的だと知れ!」


 まだ俺は死んでいない、それどころか体は加護とララさんのヒールのおかげで無傷なのだ!

 なのに…… 心が負けてしまった!



 俺はまた失敗したのか? 

 『クソッ! クソッ! クソッ! クソッ! クソッーーーーーーーーー!!!!』

 


 泣きたくなっている俺の横で、カミュゼがディケム様達の戦闘を食い入るように見ている。

 カミュゼは、先ほどの失態などすぐに忘れ、次に進もうと貪欲に経験を積もうとしている。


 ディケム様、ラトゥール様と一緒に魔王と戦う。

 こんな経験、一分一秒無駄にしていいはずがない!

 カミュゼはそれを分かっている!


 おれは今までカミュゼを格下だと見下していた。

 力もないくせに、グリュオ伯爵の息子の地位を使い、ディケム様の側近入りを果たしたのだと。

 なぜこの大事な攻略組にカミュゼなどが入っているのか? ………と。


 しかし、このメンバーで、俺が一番心が弱い! 一番ダメなのは俺だった! 

 カミュイゼに負けていられない!




 ディケム様とラトゥール様は圧倒的だった。

 あの魔王相手に、ディケム様は力を封印したまま、押している。

 そして、ギーズのラーニングの為、ラトゥール様も力を抑えている。

 それでも少しずつ、パズズを追い込み『アバドン』を使わせる。

 何度も、何度も『アバドン』を使わせる。



 何度も瀕死になるギーズを、すぐに立て直させるララさんにも驚かされる!

 ディケム様から何も指示を受けなくても、自分のやるべき仕事が分かっている。

 目立つディケム様とラトゥール様だけに目が行ってしまうが――

 その実、この変則的に動く状況下で、俺たち以外全員が自分の役割をしっかり担っている…… 凄い!



 そして、とうとうギーズがOKのサインを出す!

 嘘だろ? 本当なのか? 『アバドン』をラーニング出来てしまったのか!?

 俺は信じられなかった、こんな魔王の切り札の『アバドン』をラーニング出来るなんて!


 ギーズのOKサインの後、嬉々としてラトゥール様が戦おうとしたとき――

 ディケム様は俺たちに行けと言った!


 あの魔王相手に、俺たちの訓練をしている、経験を積ませようとしている!

 ここでやらなければ、俺はディケム様の元へ行く資格がない!

 カミュゼと目を合わせ、二人で魔王へ挑む!


 大丈夫、俺は冷静だ! 加護のおかげで、アバドンは怖くない!

 ディケム様達の戦いを見て、魔王の強さと癖、攻撃パターンは把握できている。


 俺達二人が魔王へ対峙すると、後ろにララさんとディックが着く!

 嘘だろう? この二人ずっと戦い通しじゃないか?

 そう言えば、ララさんとディックは、ディケム様の指示に従い、すべての戦いに参加している。

 この二人も、俺なんかよりずっと上に居るのか……

 摸擬の時に、俺たちの力を確かめていたのは、ディケム様だけでは無かったのだな。



 冷静になった俺たちは、魔王パズズとなんとか戦えていた。

 流石に魔王のほうが格上で、たまに致命的な攻撃を受けそうになる……

 だが、ラトゥール様がそのたびに、小石などをパズズに飛ばし、タイミングをずらしてくれる。

 俺達はとても集中した濃密な時間を得ることが出来た。


 だがそろそろダンジョンの耐久が危ないと、ディケム様が判断する。


 すると、なにか鳥が肩に乗ってきた!

 そして、ディケム様の声が聞こえる。

 肩に乗ってきたのは精霊シルフィードの眷属『言霊』だそうだ。

 パーティーメンバー全員に『言霊』が憑りつく。

 これで、メンバー全員が念話で会話できるらしい。


 これ――! 凄くないか?! これが有れば連携などとてもうまくいく!


 念話で、ディケム様の指示が飛ぶ!

 俺は二分間、一人で魔王を食い止める!

 誰も守らなくていい、自分と魔王のみに集中する。

 防御には絶対的な自信があるが、相手が魔王となると…… 二分が果てしなく長い。


 そしてカミュゼからのOKの合図が来る。

 だが…… おれは魔王の攻撃に押され、バランスを崩す……

 クソッ! もう少しだったのに!


 パズズの爪が俺の胸を貫こうとする―――! その瞬間!

 ラトゥール様から凄まじい殺気がパズズに叩きつけられる!

 パズズは驚き飛びのき、殺気の余波だけで、俺は気絶しそうになる。


 そしてディケム様のギーズへの指示、ギーズから『アバドン』が放たれる!


 『なっ! ほ、本当にアバドンを―――!』 俺は目を見開き驚く。


 しかも風の精霊シルフィード様の力を加え、明らかにパズズより強化されている!

 パズズは俺よりも驚いたのだろう、驚きのあまり棒立ちになり、『アバドン』をまともに食らいズタズタに切り裂かれ、疫病に侵食され、瀕死の状態だった。


 そこに最後の仕上げ、皆でお膳立てした決め技!

 カミュゼの『次元連斬四連撃』が発動する―――!



 ………………………パァ――ン!!!



 発動と同時に、カミュゼの剣が爆散した………


 結局、ディックがパズズを貫き、とどめを刺した。

 ラトゥール様はカミュゼを散々罵っていたが……

 俺はあのカミュゼの『次元連斬四連撃』が発動したら、凄い威力だったのだろうと期待で高揚が止まらなかった。


 次回は、その威力見せてもらう事が出来るだろう。




 そのまま十五階のラスボスに挑んだが―――

 デーモンメイルは愚者の手を汚染するのに力を使い果たし、既に死に体だったようだ。

 これから本番と嬉々として飛び出したラトゥール様に一撃で串刺しにされていた……




 俺とカミュゼは、今回ただ育ててもらった、経験を積ませてもらっただけだったが……

 アウラ様から、ミスリルのフルセットを頂いてしまった。

 自分の良心の呵責が、断らないとダメだと言っているのに……

 やはりミスリルフルセットの誘惑には敵わない。

 ディケム様の素直にもらえの一言で、頂くことにした。


 その後に、ラス将軍から散々いじめられたが、ミスリルフルセットは譲れない。



 今回のディケム様との戦闘経験は、たった一日なのに物凄く濃密な時間だった。

 側近のカミュゼは、このような毎日を送っているのだろうか?



 俺はなんとしてでも、ディケム様の部隊に入れてもらえるよう、頑張ろうと思う。




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