第四章23 金の精霊アウラの奪還
魔王パズズを倒して、宝箱も回収したので、仕切り直して俺は皆に言う!
「皆よくやってくれた! このまま十五階層に突入する! ここからは力を温存した俺とラトゥールがメインに行く! カミュゼとコルヴァスは後ろで待機! ララは念のためクリスタルの剣をカミュゼに渡してくれ!」
「「「はっ!」」」
そして俺たちは、そのまま十五階層に降りた。
階段を下りた場所は大きな広場だった。
そしてその真ん中に、鎧の悪魔、デーモンナイトが佇んで居る。
俺たちはすぐさま陣形を整え、戦闘準備に入ろうとしたとき……
ラトゥールが一人飛び出した――!
「ウォォォリャァァァァァァァァァァァァ――――――――!!!」
ラトゥールのゲイボルグの一撃がデーモンナイトを貫く!
『はぁ?』 みな目が点になる………
そしてデーモンナイトは倒れ、崩れ始める………
『なっ!?』 皆絶句している!
ラトゥールが叫ぶ!
「ちょ! おま、おまえ――! ラスボスのクセにすぐ死んでどぉする――! これからやっと私がディケム様に良い所を見せられる見せ場ではないか!」
『復活しろ! 立て! 戦え!』 とラトゥールが理不尽な要求をしている………
だが、ラトゥールの願いも虚しく…… デーモンナイトは塵となって消えていった。
『………………………』 みな呆然だ。
その塵となったデーモンナイトの上に愚者の手だけが残る。
「まぁ…… 言いたいことは色々あるけど。 目的達成って事で良いだろう」
そう言い俺が『愚者の手』を拾い上げる。
そして、瘴気に染まりかけている愚者の手に、俺は膨大なマナを送り込む。
愚者の手から瘴気は抜けていき、マナで満たされ―― 金色に輝く!
そして愚者の手からアウラが出てくる。
「ありがとう! ディケム様、これで二つの国は救われるよ! 僕の大切な子供たちを守ってくれて本当に嬉しいよ」
「あぁ、約束を守れてよかったよ」
これで、今回のミッションは無事達成した。
少しだけ、これ以降のダンジョンも気になるのだが……
このフロアにも他のボスが居そうだし……
だが探索はこれでお終いにしよう、色々と後始末やら報告もある事だし。
それに、このダンジョン最下層には暗黒龍が封印されている、あまり深追いしない方が良いだろう。
おれは今後の事を少し考える。
今回の件、地底の迷宮都市ウォーレシアと封印された暗黒龍の事を、どうシャンポール王国の国民に説明するのか?
本当に国民に知らせてしまっても良いのか?
一番の問題はやはりこのダンジョンの奥に封印されている暗黒竜の事だろう。
まぁ、これは俺ではなく、シャンポール王とマール宰相が考える事だな。
どちらにしろ、問題は山積している。
そんな事を考えていると、アウラから話がある。
「ディケム様、今回のお礼をしないといけないね。 僕は金属鉱石の精霊、武器防具などを作ることが出来るよ~」
おぉ!カミュゼの剣が折れた時に、なんてタイムリーな提案なんだ!
「なんでも作れるのか?」
「いや、ゴメン…… 僕は暗黒竜を封印しなくちゃならないから、この地に縛られているんだ。 もっとマナも増え、神気が上がれば色々なものを作れるんだけど…… 今はこの土地の力に則したものしか作れない。 この土地の力は鋼だけど、命一杯頑張れば、ミスリル素材までは作れるよ」
「おぉ!凄いじゃないかアウラ!」
ミスリルの名前が出て、みな驚く!
「なら、ここのメンバーの武器と防具、全部ミスリルで作れるか?」
俺の望みに、みなが目を見張る!
そしてカミュゼとコルヴァスが悩み言葉にする
「ディケム様、今回の攻略同行で、我々は得難い経験を積ませていただきました。 その上さらにミスリル装備まで…… 貰っては……」
最後のほうがモゴモゴになった、絶対欲しいに決まっている。
欲しいと二人の顔にかいてある。
ミスリルのフル装備など、多分一生かかっても揃えられないだろう。
もう、代々受け継ぐ家宝とかにするレベルだ。
「お前らにはもっと上に上がってもらわなければならない! チャンスを逃すのは阿呆の所業だそうだ―― なぁラトゥール?」
ラトゥールが頷き、カミュゼとコルヴァスに教育的指導を施している。
「アウラ、マナを補充してやるから、全員分頼むな! もちろんララのオリハルコンの弓と、もうすでに有るミスリルの武器の分は必要ないから」
アウラは快く引き受けてくれた。
こうしてディケムのパーティーは、ミスリルのフル装備を手に入れた!
おれも、日ごろから妖炎獄甲冑など装備しないから、ミスリルの鎧は嬉しい。
しかも、リクエストに応えて、アウラがデザインをカスタマイズしてくれる。
ララのミスリル鎧など、鎧っぽく無くておしゃれに出来ている。
⦅やばい…… アウラが欲しくなったが……⦆
だがアウラはウォーレシア王国の神であり、暗黒竜の封印など重要な役割がある、諦めるしかない。
全ての装備を整えて、転移魔法陣で十三層のウォーレシア王国へと戻る。
俺たちがパズズを倒した時点で、十四階層から悪魔は出てこなくなったようだ。
王国の広場に転送してくると、ヴィラドルジャ王をはじめ、エティ姫巫女、ミュレフ将軍、ラスさん達も皆いる。
そして、リザードマンの兵士たち何百人も待っていた。
俺たちが姿を現すと、王国広場は大喝采が起こった。
俺たちは皆に手を上げ、声援に応えた後、ヴィラドルジャ王とエティ姫巫女の前に進む、そして愚者の手をエティ姫巫女に手渡す。
「おぉ! 勇者ディケム様、なんとお礼を申し上げて良いか! 誠にありがとうございました!」
俺は頷き――
「お礼ならアウラに頂きましたから。 後はウォーレシア王国を守ってほしいと私に頼まれた、シャンポール王にお礼を言ってください」
俺がシャンポール王から頼まれたことを話すと、ヴィラドルジャ王は驚いていた。
地上の王は、地下の魔物の王国を良しとはしないと思ったからだろう。
そのあと俺たちは、事の顛末を皆に告げ、あとは地上に戻ることにする。
だがその前に、俺はお土産の買い出しに町へ繰り出す!
ルルと母に鋼の包丁セット、フィノに鋼のハサミをお土産に用意した。
ラトゥールも包丁を買っていた、ルルに料理でも習うのだろうか?
みなお土産などを用意して、戻る準備をしていると。
ラス将軍、ラローズ先生、ドーサック先生が聞いてくる。
「ディケム君…… その…… 攻略組の皆の装備が、ミスリルのフル装備になっていませんか? しかも…… ララさんの弓って、まさかオリハルコンじゃないですか?」
「おぉ! ラスさん! さすがお目が高い! よくわかりましたね?」
「やっぱり…… そりゃ俺達冒険者上がりの軍人ですから、装備には目が無いですよ」
「ララのオリハルコンの弓は、パズズのドロップアイテムです! さすがは魔王ですね!」
「あの…… ディケム君のパーティーメンバーは分かるのですが…… コルヴァスやカミュゼまでミスリルのフル装備とか! どうやって手に入れたのですか?」
コルヴァスとカミュゼが、バツが悪そうな顔をする……
「ミスリル装備は、アウラのご褒美ですよ!」
俺が答えると、ラスさん達は目を見開く!
『俺も攻略組に入れてもらえばよかった―――!』 などの叫び声が聞こえる。
「俺でもまだミスリル装備フルセットまでほど遠いと言うのに! 学生の分際で、すでに揃えるとか! 許せん!」
ラスさんがキレて、コルヴァスとカミュゼを小突きまくっている。
「いや……あの、すみません! あの、断ろうとしたのですが…… ディケム様から、貰っておけと勧められたので…… つい」
コルヴァスが言い訳するが―― 最後の「……つい」がラスさんの逆鱗に触れる。
「ミスリル装備ってのわな! 『……つい』で手に入れて良いものでは無い!」
ま~、運も実力の内だ、しょうがない。




