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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章18 憩いのひと時


 その日の夕食は、ソーテルヌ邸に戻りルルの食事に舌鼓を打つ。


 俺の一番の羽休めは、家族と、そして気の合う仲間たちと楽しく食事をとることだ。

 明日からの攻略で、しばらく戻れなくなる可能性がある。

 今晩だけはゆっくりして充電したい。



 食事を摂りながら、皆にダンジョンでの成果を面白く報告する。

 父さん母さんが大好きな冒険譚だ、ダルシュも喜んでくれた。

 もちろん、まだ地下都市や暗黒竜の話は秘密だ。

 明日からラトゥールもダンジョンに連れて行くと言うと、ルルが少し拗ねていた。

 どれだけラトゥールに懐いているんだ……




 食後、俺は夜の庭に出てゆっくり散歩をする。

 そして神木にマナを供給する為に薬草園の方へと歩いてゆく……

 見上げる神木は薄っすら光を放ち、周辺にはマナが満ちている。

 神木に抱かれて上級精霊達がまどろみ、その上級精霊達に守られるように、安心した下級精霊たちが、いたる所にぼんやり光りながら楽しそうに飛んでいる。


 『まるでおとぎの国だ』 俺は夢心地で散歩する。


 訓練に訪れる兵士たちは、夕方には帰っていく、夜のこの幻想的な光景を知らない彼らは、かわいそうだと思う。

 ま~ここは関係者以外立ち入り禁止なんだけどね。

 なぜって、それは…… ここが精霊達の為の楽園だから。


 俺は神木にたどり着き、いつものように神木にマナを流し込む。

 そしてそのまま神木横のテラスで少しくつろぐ。

 おかげさまで神木は順調に育っている!

 邸宅地下に作った浄化作用のあるルナの洞窟と繋がり、毎日俺のマナを供給する。

 さらに精霊たちとの相乗効果でいい環境循環が出来上がっている。



 色々と考えながら、まったりと神木を眺めテラスでくつろいでいると……

 向こうからラトゥールが歩いて来る。

 そして俺の隣りに座り紅茶を淹れてくれる。


「ありがとう」


 ラトゥールは微笑むだけだった。

 紅茶を一口飲むと――


 『…………!』 ラトゥールの淹れる紅茶は驚くほど美味しかった。


「ルルにでも習ったのか?」

「バレましたか……」


 ラトゥールは舌を出して、はにかんでいた。

 二人はしばらく何も話さず、紅茶を飲み神木を眺めながらくつろぎの時間を過ごす。


 しばらく寛いだ後、俺はラトゥールに問いかける。


「なぁ? ラトゥールは、俺にどうして欲しいんだ?」


 ラトゥールは目を瞬かせて『どうと言われましても……』と呟く。


「魔神族に帰ってこいとかさ……」


 俺がつぶやくと、ラトゥールは首を振り呟く。


「私の望みはディケム様がやりたい事をしていただく事です。 そしてその横に私が居る事だけですから」


 俺が胡散臭いものを見る目で見ると……


「ひ、酷いです! ディケム様……!」


 そう言いラトゥールは目をウルウルさせた後…… 

 突然表情を妖艶に変える――


「私も、カステル王もこの世の中にウンザリしているだけです。 だからディケム様から目が離せない、ディケム様なら何かしてくれる…… そう思ってしまうのです」


「俺そんなに面白い事してないだろ? 今のところ……?」


「何をおっしゃいます、この一、二年で起こした出来事、やらかした事は凄いではありませんか! もうカステル王もおなかを抱えて笑っていましたよ!」


 『えぇ~?!』と俺が自覚無さそうに驚いていると。


「私がディケム様の元に行くと言ったら…… カステル王が『お前だけずるいぞ! 俺も行く!』とか言い出して、大変だったのですから! 種族の王が直々に遊びに来るとか、自覚が無さすぎるのですあの方は!」


 俺は笑い、『でも素敵な王だな……』と素直な気持ちでつぶやく。

 『はい』とラトゥールも素直にうなずく。



 そんな二人でまったりしていると……


「いたぁぁぁぁぁぁ――! ちょっと! 居なくなったと思ったら! なにこんな所で二人きりでいい雰囲気になっているんですか! ずるいです!」


 ララがものすごい勢いで走ってきた。


「も――――ぅ! ララ! せっかくいい雰囲気だったのに――!! ララ、お前はいつもディケム様と一緒に居るではないか! たまには私だってディケム様と二人きりになっても良いだろう!? ズルいのはどっちだ?!」


 ラトゥールに返され『ムム』と黙るがそのままララは席に座る。

 そんなララにもラトゥールは紅茶を淹れる…… 大人の対応だ。



 三人で他愛のない話をした後、ラトゥールが少し真面目な話を切り出す。


「ララ、お前今、ディケム様の精霊にいち早く繋がり、少したるんでいないか?」


 ララが目を見開く


「確かにディケム様の精霊ルナ様と繋がった今のお前はそれなりには強力だ! だが……精霊様と繋がった者の力は、こんなものではないはずだ! 二流三流の敵なら良いだろう、だが圧倒的な敵と相対した時、お前は余りにもまだ未熟だ!」


ララが何も言い返せなく、うつむいてしまった……

そこにラトゥールは畳み掛ける


「ディケム様と繋がっているのが三人だけだと、安心してあぐらを描いていないか? 毎日毎日、この屋敷で訓練している者たちは、まだ何も出来ない自分達が惨めで、毎日死に物狂いで訓練しているぞ! あまり悠長に構えているとそのうちその立場、足をすくわれるぞ! お前の立ち位置にどれだけの人々が憧れているか、少し自覚したほうが良い」


 ララが息をのむ……

 だがせっかく良い話をしたのに、最後にラトゥールが落す――


「もちろん、一番お前の立場を狙っているのはこの私だけどな! ハハハ~!」


 ララがラトゥールの足をガスガス蹴っている……

 見なかったことにしておこう。



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