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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章17 王族の隠し事


 俺達が転移陣で地上に戻ると――

 ダンジョン入り口にはラトゥールが待っていた。


 俺の姿を見たラトゥールは、『すでに準備は整っています』とおれに報告してくる。


 仕事をお願いしていた手前……

 ラトゥールに『ありがとう』とお礼を言ったが……

 戦士学校でラトゥールは目立ちすぎる!

 魔神五将軍の一人、ゲイボルグにマスターと認められし闘将!

 この学校にラトゥールに憧れない生徒は居ない。


 流石に、ラトゥールに近寄る者は居ないが、一目見たいと集まった野次馬の数がえげつない……


 ラトゥールがここに来ること自体に生徒たちが不振に思うかもしれない。

 俺は管理局への報告を、校長を通して報告すると伝えて、早々に立ち去る事にする。



 俺はその場に転移魔法陣を新たに描く――

 そしてラトゥールを加えて、学校からシャンポール城へ一気に飛ぶ。



 王城への転移魔法は、緊急時のみ使うと約束して、マール宰相と事前に転送場所、座標を決めている。

 今回の案件は緊急時と見なしていいだろう。

 俺達は、学校から一気にシャンポール城の中庭へとたどり着く。



 俺達が謁見の間へ着くと、ラトゥールが招集をかけてくれた皆が集まっていた。


 シャンポール王、ミュジニ王子

 マール宰相、戦士学校校長、魔法学校校長

 ラス・カーズ将軍、ラローズ先生、ドーサック先生。


 そして俺の側近として、ラトゥールとカミュゼ、おれのパーティー四人。

 少し予定の人数よりも増えているがまぁ良い、この国の重大案件だ。



 俺は、今までの事を事細かく皆に説明した。

 地下迷宮都市ウォーレシア、精霊アウラ、暗黒竜、ドワーフのバーデン王、愚者の手を奪った悪魔。


 皆が絶句し、事の大きさに驚き、言葉を失っていた……

 まさか、自分たちが住むこの町の下に、魔物の町があり、暗黒龍が封印されているなど……

 想像だにしなかった出来事だ。


 しかし、シャンポール王だけは、『伝承は真実だったのだな……」と呟いた。



「ソーテルヌ卿、精霊アウラ様とは会えたのか?」


「はい、悪魔に依り代を奪われ、とても弱っていましたが……、少しマナを分け与えましたから、少し時間は稼げるでしょう」


 『そうか……』と王は頷き、意を決して皆について来るように促す。


 俺達は王に連れられ、シャンポール城の地下にある、代々王しか入ることを許されない部屋へ案内される。


 俺は訊ねる。

「シャンポール王、我々が皆入っても良いのでしょうか?」


「アウラ様の話だと、これはシャンポール王都に住む全国民が知らなければならない事、この部屋に王しか入れない決まりは、代々の王族が、真実を隠すために作り上げた偽りの決め事なのだろう」


「ほぉ~ シャンポール王は、なかなか話が分かる御仁のようだ」とラトゥールが褒める。


「そして…… もし暗黒竜復活となれば、今戦えるのは私ではなくその方たちだろう、戦う者こそが知らなければならない真実だ」


 王はそう言って、俺達をその部屋へ招き入れる。



 その部屋には、壁部に大きなタペストリー(壁掛け絨毯)が飾られている。

 そのたタペストリーには、俺たちがアウラから聞かされた昔の出来事が、幾つかのシーンに別れた物語となって織おられている。


「これが…… アウラ様が語られた物語、そしてシャンポール王都に住む人々が忘れてはならない真実だ」


 その見事なタペストリーに感嘆の声を上げ、みな描かれたその内容を何度も何度も熟読した。


 だが、俺は少しだけその絵に違和感を覚えていた。

 アウラが『愚者の手』に宿る前の、竜と人との戦いの絵に………


 まぁ今考えても分からないな……、必要な事ならば、必然とわかる事だろう。



 そして、王はこの部屋の机に施された、隠し扉を動かす仕掛けを起動させる。

 今まで壁だった場所に扉が現れる。

 薄暗いその部屋では、知っていなければ、なかなか見抜くことは難しいだろう。



 俺達は王に案内されて、その隠し部屋の中に入っていく。

 タペストリーが飾ってある部屋の豪華さに比べ、その部屋は石の壁だけの至ってシンプルな部屋だった。


 だが…… 部屋の中央には、厳重にガラスで囲われた、【ダンジョンコア】が浮いている!

 シンプルな部屋が、その宙に浮く【ダンジョンコア】の神秘さを、いっそう際立たせていた。


 皆が一斉に息をのむ。


「ダンジョンコア…… 三分の一が既にドワーフ族により解除され、さらに今アウラが持つ三分の一が解除されかかっている。 このダンジョンコアもとても弱っているように見えますね」


 俺がそう言うと、王が訊ねて来る。


「ディケムよ、そなたの結界はメガメテオすら防いで見せた。暗黒竜は防ぐことは出来ぬのか?」


「もし暗黒竜が、他国から飛んできたのなら、やり様はあったでしょう。 しかし暗黒竜は結界の中に居ます。 暗黒竜と地底王国ウォーレシアを含めて、結界が張られていると考えたほうが良いでしょう。 もし地下都市の住人が全て理性を失い、暗黒竜と地上に出てきたのなら、大惨事は免れません」


 『…………』 みな言葉もなく、蒼白だ……



「ソーテルヌ卿、私の我がままを聞いてくれないか? 私はこの王国の始祖たるアウラ様が作られた、もう一つのシャンポール王国、ウォーレシア王国の民達も守りたい。 傲慢な願いなのは分かっている! そして毎回、其方ばかりに無茶な事を言っている。 それでも願いたい、ソーテルヌ卿! ウォーレシア王国民も含めて王都を守ってくれないか!」


 『御意!』 俺は王に片膝をつき、最大の礼を尽くし言う。



 俺は正直この時初めて、シャンポール王を忠誠に値する人物だと思った。

 俺が一番恐れたことは、地下の魔物の国を排除しろと言われることだった。

 もし、言われたのなら、俺はこの国を見限っただろう。


 俺がそんな事を思っていると、ラトゥールが口を開く。


「シャンポール王、貴方は素晴らしい方だと思うぞ。 もし貴方が魔物の国の排除を願っていれば、この国は最強の守護者を失っていたでしょう」


 ラトゥールが妖艶な笑みで俺に笑いかける。

 シャンポール王国の皆は、引きつった顔で俺を見る。


 笑えない話だが…… ラトゥールが言った事は本当だっただろう。



「それでは、明日より精霊アウラ救出に向かいます。 学校は少し休ませて頂きます」


 先生方が頷く。

 そして俺は、王都守護者として命じる。


「明日からの攻略にあたり、地下都市には、ラス・カーズ将軍、ラローズ、ドーサック。 そして私の直属から、ラトゥール、カミュゼ、ポート。 一緒に同行し、ウォーレシア王国の守りとする。 カミュゼは此処に居ないポートの調整をたのむ。 悪魔攻略は、私を含め、ディック、ギーズ、ララ、この四人で行う!」


 ラトゥールが不満そうな顔をしている……


「ラトゥール、最悪の場合は呼ぶが、これもウンディーネの試練だ。 この国の大事にとは思うが、この大事だからこそ必要な事だ。 今回の事で、ギーズがシルフィードと繋がった。 そして強力な魔法もラーニングできた。 俺たちの目指す所は、暗黒竜だけではない、もっと先の人族の存続…… そしてさらにその先だ。 その時にはお前の力が必要だ、力を貸してくれ」


「はっ!」 とラトゥールは傅く。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王様の一言次第では、この国の全ての人間が滅ぶのを良しとしてたってこと…?
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