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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第四章 地底都市ウォーレシアと封印されし暗黒龍
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第四章15 暗黒龍と始祖三英雄


 俺達がアウラに『愚者の手』を奪い返すことを約束していると――

 突然ウンディーネが出てくる。


 エティ巫女姫もヴィラドルジャ王も、目を見開き驚く。


「こらアウラ。 まずその悪魔の目的と、今どこにいるかを言え!」


 アウラは突然出てきたウンディーネを見て、満面の笑顔になる。

 ウンディーネに会えて嬉しかったようだ。


「ウンディーネ、君の主に依頼をお願いして悪いね。 悪魔は今まだ十五階層に居る。 多分、悪魔の狙いは【暗黒竜】の復活だろう。 悪魔はさらに下の階層に行きたいようだけど…… まだ『愚者の手』に、僕の力が残っていて先に進めないみたいだ」


 ⦅ん? 暗黒竜?⦆


 俺たちは話の内容に驚き、アウラに訊ねる。


「ちょ、ちょっと待って! 『暗黒竜』ってなんだ? 復活とか物騒な言葉が聞こえたぞ!」


 アウラは驚いたように俺たちを見ていう。


「あれ? 君達はこの地がどのように出来たのか知らないのかい?」


 俺たちは頷く。

 話の流れから察するに、アウラはこの地の成り立ちに深くかかわっているようだ。


「そうじゃ、今の人族に暗黒竜を知る者は、ほぼ居ない。 もしかすると王族が意図的に隠している可能性が有るがのぅ。 だからディケム、簡単に『愚者の手』奪還を請け負っていたが…… これは暗黒竜も関わってくる大事じゃ、シャンポール王にも伝えなければならない案件じゃぞ! 下手をすれば、ウォーレシア王国どころかシャンポール王国も滅亡する案件じゃ」


 俺達はもちろん、ヴィラドルジャ王ですら息をのむ。


「そうか……、人族はもうこの土地の成り立ちが、分からなくなるくらい…… 人々の記憶は風化してしまっているんだね。 だけど、この事はこの地下の国ウォーレシア王国に住む者達はもちろん。 地上の国シャンポール王国に住む人たちにも重要な事だ。 多分、今もシャンポール王家には伝承で伝わっているとは思うけど……、そこに住む全ての国民が知らなければならない事だ。 地上に戻ったら、シャンポール王家の者と話し合い、人々に伝えてほしい」



 アウラにとっての大切な出来事が、人々にとってはもう、風化し忘れ去られた出来事だった事に、アウラはとても悲しそうな顔をした。


 そしてアウラは昔々の神話の話をしてくれた。





「昔、そうまだ原初の神ウラノスと全ての種族が仲良く暮らしていた神話時代の話です」


 そう言葉を紡ぎ、アウラは懐かしそうに話を語り出した。



「人族の英雄シャンポールと、ドワーフの英雄バーデンという、とても仲のいい二人が居ました。 二人はいつでも一緒、何をするにも一緒でした」


「そしてこの地には他にも、皆に嫌われていた暴れ者の暗黒龍も住んでいました……」


「ある日、仲良しの二人、シャンポールとバーデンは、いつも暴れて皆を困らせていた暗黒竜をこらしめる為、封印する計画を立てました」


「シャンポールは、防具を作ることが得意だったバーデンに、暗黒竜と戦い封印するための籠手を作ってくれるようにお願いします。 バーデンは快く引き受け、それから二人の籠手づくりが始まりました。 しかし二人が思い描く籠手を作る事は困難を極めました。 作っては壊し、作っては壊し、作り直しは10,000回以上に及んだと言われています」


「それを見ていた者たちは、10,000回も作り直す愚かな所業を嘲笑し、侮蔑を込めてその籠手を【愚者の手】と名付けました」


「それでも二人は、どれだけ皆に嘲笑されようとも、10,000回以上作り直そうとも諦めませんでした。 そして、この二人の執念は会心の籠手を作り上げます! そしてその二人の執念は、わたし、金の精霊アウラを籠手に宿らせたのです」



「人族の英雄シャンポールはこの籠手『愚者の手』を装備し、その籠手に宿る精霊アウラを使い、数多の武器を使いこなし、暗黒竜を地下に封印したのです。 そして暗黒竜の封印を守るために、その土地の上に城を築き、ドワーフ族と人族の友情の町を築いたのです。 その町こそが、今あなた達が住むシャンポール王都です」


「ドワーフの英雄バーデン、人族の英雄シャンポール、金の精霊アウラ。 三人はその街で末永く仲良く暮らしました」


 アウラは懐かしそうに………

 かつての友たちを思い、微笑んでいた。


「ここまでが…… 人族に伝わる物語です。 そして―― ここからは私だけのお話です」


 アウラはそう言い、先ほどまでの昔を懐かしむ優しい顔は一転する。


「長い時が立ち、二人の英雄の子孫の時代になりました……。 精霊アウラは二人の友人との約束を守り、暗黒竜の封印と、二人の英雄の子孫を見守り続けました」


「しかしある時、神の審判が下ります! 全種族がこの地の支配権を賭けて争いを始めたのです。 ドワーフ族と人族も争いはじめました。 長い戦いが起こりドワーフ族はこの地をはなれ、元の自分たちの住んでいた山里へと帰ってしまいました」


「これを嘆いた、金の精霊アウラは『愚者の手』と共に人族の前から姿を消しました。 ですがアウラは二人の英雄との約束を守り、それからも暗黒竜の封印を地下で守り続けたのです。 しかし、アウラは一人の寂しさに勝てませんでした…… 二人の英雄との思い出の地を自分の我がままで地下に築いてしまったのです」


 アウラは悲しそうに顔を上げ『物語はこれで終わりです』と話を締めくくった。


 『…………』なんという壮大な話だろう。

 ララは、目を潤ませている。


「だから、このウォーレシア王都の町並みは、以前のシャンポール王都に似ているのですね……」


 俺が訊ねると、アウラはかつての二人の英雄を懐かしむように頷いた。



 しかし、とんでもない話だった、王都の下に魔物の国があっただけでも驚いたのに……。

 さらにその下には暗黒竜なる、もっと危ない魔物が封印されていた。


 これはもう、俺たちに『愚者の手』奪還を断る選択しは無いだろう。

 いやもう、俺達だけで判断して良い事では無さそうだ……

 シャンポール王とも話し合わなければいけないだろう。


 放っておけば、暗黒竜が理性を無くした魔物の群れを従えて、足元から王都に攻めてくるのだから………。


 ⦅え? ……なにそれ コワイ⦆








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