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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章24 二人だけのダンスパーティー

ララ視点になります。


 ボールルームに音楽が流れだす。

 若い男女たちは相手を探し直ぐに動き出す。

 手慣れた人たちは、このフリー時間にすでにいろいろな準備をしていたみたいだ。

 すでに目星を付けていた人たち、事前に約束を取り付けていた人たち、最初からカップルだった人たち……

 そこにある人間模様も様々だ。



 私は完全に出遅れた、驚いて周りを見渡すと――。

 いつの間にか周りはカップルだらけ……


 あれ?! いつの間にかポートがカミュゼ様と一緒に居る。

 ラローズ先生はラス・カーズ将軍とアイコンタクトだけで分かり合ってるベテランのカップルだ。


 私は直ぐにディケムを目で追うと…… すごい近い距離にラトゥール様が近寄る。

 これは! ディケムにダンス誘えって合図だ! 

 これで誘わないと女に恥をかかせた事になる。


 ⦅やられた―――!⦆


 ディケムは自然にラトゥール様の手を取り、二人のダンスが始まった。

 『えっ……?』 ディケム、ダンス上手くない?


 ⦅ちょ、ちょっと――! 息合い過ぎてませんか?!⦆


 ディケムのダンスなんて初めて見た。

 素人が見ても上手い………

 ふと気づき周りを見渡すと、ディケムとラトゥール様のペアは、ボールルームの花となっていた。


 『ちょ! ちょっと! ディケム様ダンス上手すぎない?』 私と同じ、あぶれたマディラが横に居た……


 『私も初めて見た……』私がつぶやく。


「私も友達のよしみで、後で踊ってもらお~」

「ちょっとマディラ! 私の後にしてよ――!」


 マディラに『ハイハイ』と手を振られてあきれられた。


 舞踏会でディケムは大人気、ダンスは普通女性からは誘ってはマナー違反。

 だけど…… あれだけたかられたら、もう誘っているのと同じこと。

 私なんかの付け入る隙もない。



 わたしに寄ってくる男はみな、元平民の私を見下しているのが透けて見える。

 少し寂しくなって、外で涼むことにする。


 噴水の近くで休んでいると……

 先ほどのラトゥール様とディケムのダンスが目に浮かぶ。


「素敵なダンスだったなぁ…… なんか踊りなれたフィアンセ同士って感じだった。 敵わないな~」


 ふいに涙が零れる…… あれ? なんで泣いてるんだろう……


 私は傲慢なのかもしれない。

 ディケムはなんだかんだ言って私の所に来てくれるとか思っていた。


「私って嫌な女だったんだな~」


「なにが?」


 不意に背中で声がして、びっくりして振り返る――!


「ディケム?!」

「ララいきなり居なくなるから、探しちゃったよ」

「ゴメン、ちょっと居場所無くって……」

「どうした? 目が赤いぞ?」

「ッ――! 何でもない!」

「何でもないことないだろう?」

「ほっといて! 舞踏会とか来ると自分の無力さを思い知るのよ……」


「まぁな~、俺らはしょせん平民の成り上がりもの、貴族共は心の底で俺達を見下してるのが見え透いているよ」


 私は頷く。

「でも、ラトゥール様は心からディケムの事愛してるでしょ?」


 ⦅私は本当に嫌な女だ……⦆


「そうだな~」

「なによ、ディケムも嬉しいんでしょ?」


 ⦅私は何をディケムに言わせたいの?⦆


「そりゃな、好かれて嫌な奴はいないだろう」


 ⦅これ以上聞いたらダメ――!⦆


「どうするのよ?」

「どうするかなんてわからないよ…… もしララが、いきなり前世で恋人でしたって人現れたらどうする?」


 ⦅え?! 自分がそうなった時の事を、考えもしなかった……⦆


「…………。 分からない……」

「しかも俺、彼女の事を愛していた記憶が有るんだよ」


 ⦅なっ! 前世の記憶が有るって………?⦆


「っえ! そ、そんな………」

「おれ…… ずっとララの事が好きで……、 そこに前世の記憶が入ってきて、ラトゥールの事を好きだった自分が居て。 正直、何が何だか―― って感じなんだよ今」


 ⦅ッ―――! 今! 私の事好きって言ったよね?⦆


「私の事好きって言ったよね? いま……」

「ああ」


「じゃ~、それだけでいい。 許してあげる。 私もディケムの事大好きだから」


 ディケムが驚いた顔で私を見る。


「じゃ~ 私とも踊って?」


 ディケムが手を差し伸べて、踊りのエスコートをしてくれる。

 だれも居ない噴水の前で、二人だけのダンスパーティーをした。


「ねぇ…… なんでディケムダンスが上手いのよ?」


 少し考えたディケムが、耳元でこっそり教えてくれる。


「これ秘密なんだけどララにだけ教えると…… この頃ウンディーネとの訓練で、前世の記憶を色々取り戻しに行っているんだよ。 そこにね、ダンスの記憶も有ったんだよ。 この舞踏会あるの聞いてたから、すぐに物にしたでしょ ハハハ」


「ちょっ! それズルくない!?」

「まぁまぁ、使えるものはなんでも使えだよ!」

「じゃ~ 私にはディケムが教えてよ!」

「かしこまりました。 お姫様」


 ディケムがお道化て笑わしてくれる。

 ディケムは、こんなに性格の悪い女、好いてくれるのかな?


「ねぇディケム」

「なに?」


「ラトゥールさんと私…… 比べないで? お願い」


「二人とも全然違うから、比べようもないよ」


「それでも…… お願い」


「わかった、比べない」



 私はきっと、何もかもラトゥールさんに敵わない……

 権力も、強さも、美しさも、女らしさも……

 愛した時間、愛し合った時間も私は敵わない。

 ラトゥールさんのディケムへの愛情は一途の一言だった。

 

 でも…… 愛情の大きさは比べるものじゃない。



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