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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章21 褒賞・叙勲式


 シャンポール王国による『人、魔神、エルフ』の三種族同盟は、人族の歴史にとってとても大きな出来事だった。

 そして人族の各同盟国、非同盟国に大きな衝撃を与えた。


 この会談に同席した、マルサネ王国のコート王子、シャントレーヴ王女は幸運だった。

 人族の歴史的出来事、この大きな流れに他国に先んじて立ち会えたのだから。

 その場に居られたことが、今後の権勢に大きくかかわる程の大事だった。



 そしてエルフとの戦争が終結すると、シャンポール王都はメガメテオですら防いだ防御結界の実績と、水と緑と彫像の美しい観光都市としてさらに人が押しよせ、連日入国と移住を望む人で溢れかえる事になる。




 同盟締結の数日後、改めて此度の戦争功労に対しての褒賞・叙勲式を行うと知らせが来た。

 また、大国エルフとの大きな種族間戦争の終結という事もあり、褒賞・叙勲式の後、王城での舞踏会も執り行われることとなった。


 この舞踏会は、大戦の終結と『人、魔神、エルフ』の三種族同盟を祝したもの。

 その歴史的出来事を祝した大規模な舞踏会など、全ての貴族が参加したいと思うのが必定……。

 いや参加しないと今後の貴族間の力関係に影響すると、希望者が殺到した。


 しかし同盟国、非同盟国の王族と貴族でさえ参加依頼が殺到する舞踏会、全ての貴族が参加できる筈もない。

 この度の戦争の功労者と各国有力者を中心に選定されることになった。



 此度戦争の関係者として、俺とララには招待状が送られてきた。

 舞踏会の出席者を事前に聞く事は出来ないが、一緒に戦ったラローズ先生とポートも当日会う事が出来るだろう。


 ディックとギーズは参加出来ない事を悔しがっていたが、結局は戦時中に出番はなく、活躍は何も出来なかったと、納得していた。




 式典当日、俺とララは馬車に乗り王城に向かう。

 王城は大勢の貴族が集まり大混雑だった。

 俺達が向かう謁見の間には、此度の戦争の関係者と、ごく一部の貴族のみが入ることが出来る。



 謁見の間では。

 ・ただの観客

 (ただし此度のような大きな式典では最上位の貴族のみ、貴族のステータス)

 ・此度の戦争で功績があった者への褒賞。

 ・特に大きな功績を残したものへの叙勲

 (主に陞爵や襲爵が行われる)


 このようにグループが分かれていた。


 俺とララは叙勲者の場所に案内される。

 そこにはマクシミリアン将軍がすでに案内されていた。


 「これはソーテルヌ閣下、おめでとうございます。 此度のこの式典の主役は閣下です」


 「マクシミリアン将軍、おめでとう。 貴方の助力が無ければ成し得なかった事です、感謝しております」


 「ララ殿、おめでとうございます。 叙爵(じょしゃく)(爵位を授けられること)の栄誉は、今代の王ではラス・カーズ将軍、ディケム・ソーテルヌ閣下につぎ三人目の栄誉です。 英雄級にしか行われない。 そして前人のお二人はその後偉大な功績を残している。 ララ殿も期待しております」


 「あ、ありがとうございます…… が、頑張ります……」


 ララが緊張で真っ赤になっている。



 俺達が挨拶をしている最中も、粛々と褒賞者が次々と呼ばれ、王より言葉と褒美を授かっていた。




 そしてついにララの名前が呼ばれる!


「ララよ! そなたはソーテルヌ卿の元で多大なる功績を治めた、ソーテルヌ卿が自由に動くことが出来たのは、そなたの働きがあってこそと聞いている。 そしてそなたの戦う姿が国民に大きな希望を与えた事も聞いている。 そなたの働きが無ければ、王都にも被害が出ていたであろう。 こたびの働きはまことに素晴らしかった。 その功績をたたえナイトの称号! 『騎士爵』を与える。 今後貴族として『ララ・カノン』と名乗るがよい!」


「はい! 今後とも人族の為精進いたします!」


 ララに貴族たちから盛大な拍手を送られる――――。

 とうとうララが貴族になった!

 なんだろう…… 幼馴染が認められる、それは自分の事よりもとてもうれしく感じることだった。

 ディックもギーズも頑張らないとね。


 盛大な拍手に照れながら戻ってくるララと、軽く拳を突き合わし『おめでとう』とララを祝福した。



 そしてマクシミリアン将軍が呼ばれた。

 マクシミリアン将軍が突然俺の方を向き敬礼をする。

 そして陛下の前に進み出る。


「マクシミリアン将軍、此度のエルフ族首都アールヴヘイムの攻略、またそこからのシャンポール王都への救援、其方が居なければ成し得なかったと聞いている。 よくやってくれた。 また其方は七年前のアルザスの悲劇以降、最も激戦のモンシャウ砦を預かってくれている。 その功績をたたえ『伯爵位』へ陞爵とする!」


 謁見の間に盛大な拍手が沸き起こる。

 そしてさらに陛下が続ける。


「そしてこの度、王国騎士団第二部隊隊長ダドリー・グラハム将軍より、騎士団の若返りの進言があった。第二部隊の称号をマクシミリアン将軍に譲り、グラハム将軍は第十二部隊へと下りたいと。 その進言を受けいれ、マクシミリアン部隊を王国騎士団第二部隊とする!」


 『おぉぉぉぉ――!』 謁見の間にどよめきが起きた。


 王国騎士団第二部隊隊長ダドリー・グラハム将軍は云わば生ける武神。

 ラス・カーズ将軍が騎士団に入るまで、ずっと王国騎士団第一部隊隊長をしていた人物だ。

 王国軍は英雄ラス・カーズを迎え、グラハム将軍は第一部隊を譲り、それからもずっと第二部隊隊長として王国騎士団を支えてきた。

 どの将軍よりも尊敬される、名実ともに王国騎士団隊長の代名詞だった。

 そのグラハム将軍が引退はせずとも、第十二部隊まで下がる。 

 それは王国騎士団と言う組織に非常に大きな出来事だった。


 第一部隊とは王国の光り、国民に希望を与えるいわば神輿だ。

 第二部隊は影、縁の下の力持ち、正直騎士団はこの第二部隊が要でもある。


 グラハム将軍はソーテルヌ卿と騎士団の溝を苦慮していた。

 どうしても騎士団としてのプライドが、若き英雄に壁を作ってしまっていた。

 ラス・カーズ将軍だけが、その壁を簡単に崩し、ソーテルヌ卿の恩恵にあずかっている。

 あまりにも騎士団の力に差がつき過ぎた。

 人族の希望とシャンポール王都の騎士団に溝があってはいけないのだ!


 そこに此度のエルフ戦で、マクシミリアン将軍はソーテルヌ卿の信頼を勝ち取った。

 そのマクシミリアン将軍が騎士団の要、第二部隊に就任する。

 グラハム将軍はマクシミリアン将軍に騎士団とソーテルヌ卿の橋渡し役になってほしいのだ。




 そして褒賞・叙勲式の大取、俺の名前が呼ばれる。


「ソーテルヌ卿、この度もまた其方に助けられた。 メガメテオから王都を救ってくれた、そして其方の防衛計画の有用性が実証された。 ラトゥール将軍を派遣してもらった。 そしてエルフ族との同盟を結んでくれた。 其方が行った功績は語りつくせぬ…… この功績に報いたいのだが、我々にはこの功績に見合うだけのものが無い、形式だけの恩賞になってしまうが許してくれ。 ソーテルヌ辺境伯を『侯爵位』に陞爵とする!」


 謁見の間の貴族たちから盛大な拍手を送られる。


「ソーテルヌ卿よ、侯爵となったが…… この激動の時代、王都の守護はそなた以外考えられぬ。 今後も『王都守護者』の任を兼任してほしい」


 『承りました』と俺は了承した。

 いやむしろ大切な人たちが居るこの王都の防衛を他の人に任せる気はない。




 これで褒賞・叙勲式は終わったが…… マール宰相から更なる重大発表が告げられる。


「この度『人、魔神、エルフ』の三種族同盟が締結されました。 そして今後の各種族とのさらなる理解と交流を深める為、魔神族カステル王よりシャンポール王都に大使館を作りたいと提案をいただきました。 我々はこの提案を受け入れ、魔神族の大使館を作る事に致します。 そして魔神族からの大使は、この度の戦争に多大なる尽力を頂いたラトゥール将軍がいらっしゃる! 大使ラトゥール将軍の対応は、ソーテルヌ侯爵にお願いしたいと打診がありました」


 ⦅………………。  ですよね~⦆


 そして王より鶴の一声『ソーテルヌ侯爵、よしなに頼むぞ!』


「………はい」



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