第50章 古(いにしえ)の魔物
カダル王国から北西にある山の洞窟に入って行く数十人の男女がいた。
先頭を歩く黒いローブを着た男は黙って歩いている。
後を歩いているのはこの国のマナ使い達だった。
「国から要請があって来たけど何をしに行くのかしら?」
「さあな、重要な任務だとしか言われていない」
「さっきあの男に聞いたが何も言わない」
ここは立ち入りが禁止されている廃鉱山なのだがこんな所に何の用があるというのか、マナ使い達は怪しいと思っていたが国からの命令に背く事は出来なかった。
歩いていると奥には大きな門が見えてくる。
門は鎖でガチガチに固められ真ん中には水晶が埋め込まれていた。
「なんだこの門は……」
その禍々しい門は近付きがたい雰囲気を醸し出していた。
ローブを着た男が水晶に触れると鎖が砕け散っていった。
門はゆっくり開いて行く。
ゴゴゴ
「入れ」
黒いローブを着た男はそう言って中に入って行った。
マナ使い達は中に入ると奥に何か動くものが見えた。
誰かが黒いローブの男にイラついた感じで詰め寄った。
「おい! いい加減に教えろ! 俺達は何の為に呼ばれたんだ‼︎」
黒いローブの男は薄ら笑いを浮かべフードを下ろした。
マナ使い達は男の姿にどよめく。
灰色の肌に頭にはツノが生えておりまるで魔物のような姿だった。
「お前は誰だ‼︎」
マナ使い達に緊張が走り武器を手に戦闘体制に入った。
しかしそれはもう遅かった。
「ち、力が入らん!」
「マナが吸い取られていく……」
「くくく、光栄に思えお前達は古の魔物を復活させる生贄になれたのだから‼︎」
カダル王国では今後について議論がされていた。
「聖女相手にいくら魔物がいても足りません!」
「それほどなのか聖女の力は」
「1万の兵を戦闘不能にするような者だ。しかも仲間も相当な力を持っているそうだ」
「やはりあの男の言う通り上級を超える魔物をぶつけなければ無理であろうな」
「しかしそんな力を持った魔物を操れるのか?」
「あの男……そういえばさっきマナ使い達を連れて出て行ったな」
王は酒を煽っていた。
(くそ!覇権を取れるはずが‼︎ まさかひとりの人間に阻害されるとは……だがまだ諦めんぞ!)
「陛下‼︎ 大変です‼︎」
家臣が扉の前で叫んでいた。
(どうした? あの男が魔物を連れて来たのか?)
「入れ!」
中に入った家臣は青ざめた顔をしていた。
「この国に魔物が迫っています‼︎」
「あの男が魔物を連れて来たのではないのか?」
「いえ‼︎ 兵を100人程向かわせたのですが全滅しました……」
「では早くこちらの魔物をぶつけろ!」
「それが……魔物に術をかけるマナ使い達は今朝任務に出ていきました」
「なんて事だ……」
「とにかく兵を集めて討伐に向かわせろ‼︎」
「は‼︎」
命令を受けた家臣は急いで部屋を出た。
王はどうすればいいのか分からなくなっていた。
まさか自分達のしていた事が返ってくるなど思ってもいなかったのだ。
「ここは一旦逃げなければ……」
王は部屋を出て隠し通路を通り外へ出ようとしていた。
外へ出れば船がありそこから別荘がある無人島に避難するつもりだったが通路に誰かが立ちはだかっていた。
「誰だ‼︎」
黒いローブを着た男が王へ向いて立っていた。
「おお、お前か魔物はどうした? 連れて来たのか⁉︎」
「おめでたいやつだ、まだ分からないか?」
「何だと‼︎」
男がフードを取ると王は驚き腰を抜かしてしまった。
「何が望みだ! 叶えてやるから……」
男は薄ら笑いを浮かべた。
「その必要はない、もう叶うさ」
男の手が光り始めた。
「ヒィ‼︎」
ドォゴォォーン‼︎
城は爆発し大きな音と共に瓦礫と化した。
城下町ではそれを見た住民が大混乱に陥っていた。
周りでは怒号や悲鳴が響き渡り逃げ惑う人が入り乱れていた。
「もうこの国は終わりだ‼︎」
「この国は安泰だと言っていたのは嘘だったのか‼︎」
「とにかく逃げるんだ‼︎」
「他の国も魔物が襲って来るって言うしもうこの大陸はお終いだ……」
実は国民は魔物を操り兵器として使っていることは知らされていなかった。
兵士や城にいる者は皆術によって口外出来なくなっていたのだ。
その頃魔物は討伐に来た兵士達を破り街に到達していた。
魔物のデカさは20メートルもあり動きは遅いが圧倒的な火力で周りのものを破壊している。
人々は街から次々と逃げ出して行った。
遠くからカダル王国が破壊されているのを見ている者達がいた。
「何だあれは‼︎」
「まさかこんなことになっているなんて……」
「すぐに引き返してギルド長に報告だ‼︎ 急げ‼︎」




