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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第四歴 勇者の盾、その外出。
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第十八話

 俺はいつの間にか切れていた酒の追加を頼み、ついでそれを軽く煽りながら(うーん安酒って味だ、雑味が多い)、さっき詳しく見ていなかったお貴族様(仮)、特に武装の有無(・・・・・)についてじっと観察する。あいつ自体に全く興味は無いが、それでもその危険性は確認しておく必要がある……ふん、ふん、ふん。


 酔っぱらってるせいか身体がゆらゆらとふらついて、その子細までははっきりと読み取れない、が、それでもあの、見映え重視の豪奢(ごうしゃ)な服装。そしてその腰元に差している、……。ああ、あれ刺突剣(レイピア)ってやつか。確か貴族たちの間で流行(はや)ってるんだったか。


 なんだっけ、確か軽くて、細くて、なにより見た目が……あいつら基準で優雅、だったか、そんな理由で護身用に帯剣してるんだったっけ。あいつら本気でなに考えてるかわかんない。なんで武器を装飾品として扱ってんの。使えよ。


 大体あれってけっこう扱い難しいんじゃなかったか? だってあんな、先端以外極力身を削ぎ落とした刀身じゃ、布とかならともかく、鎧なんて、節を狙うか、よほど薄い箇所に当てないかぎり、まず間違いなくへし折れる。


 しかも手札が限定されすぎている。だって攻撃は差し貫く以外、あの細さだと防御も受け流す以外に手段が無い。それも小手先と技巧をきちんと凝らした上で、だ。


 はっきり言おう。よほど扱う才能と、そしてその努力を重ねないかぎり、主武器としてあれを選ぶのは、全くもっておすすめできない。副武器としてなら、まだ牽制なり見せ札なり使いようも有るのだが。素早く取り出せるし、手数も、軽いから簡単に増やせるし。


 そして、あいつがその才と努力を有しているかといえば……うーん、控えめに言って全く無いですね。そもそも手数と速さで勝負するってぇのに、あんな動きにくそうな服着て、しかも見える手には、武芸者なら誰でも作るたこ(・・)ってやつが見当たらない。まさにお飾り。


 ただ、これはあくまでもあいつに戦士としての実力が無いってだけで、また魔法のってなると話変わってくるんだけどな。特に貴族って人種はなんだか魔法とか魔力とかにやたらこだわるやつが多いし……なんでだろ、別に魔法使い目指してるってわけでもないだろうに。


 まあ、でも、いくら魔法に長けてるっても、今あいつの目の前にいるの、その分野では人と比べるのがおこがましいぐらいに隔絶した差がある種族だから、そこを心配する必要は全く無いのだが。


 むしろすべきは三人の堪忍袋。今はまだああして笑顔の画面をかろうじて被れているが、内面は、まあ……心証最悪なやつの酌やって、下らん……今は自慢話か、自慢話聞いて、いちいち見下す言動を受け流して……とかってなると、そりゃもう噴火する寸前に火薬ぶちこまれた活火山なみに怒り心頭だろうなぁ……よく堪えてくれている。


 だが、うん、そろそろ限界か……いや、アラゴさんはともかく、ほかの二人の表情支える筋肉がね……だいぶ無理しているのかぶるぶると小刻みに震え始めている。


 しかし、自分の話という安酒を、今もがぶがふとかっくらっているお貴族様の舌は、液体になっているのかと疑うほどにずるずると言葉を、自慢というくそつまんねえかたちにした上で傲慢という調味料まぶして相手に叩きつけてきやがる──しかもまだまだ終わりそうにない。思った以上に話が長い。長すぎる。


 どうする。このままじゃ、まず間違いなく二人があの貴族の口を封じにかかってしまう……だが、だからって、俺が直接どうこうってのは……うーん……あ。


 そうだ、そうだそうだ、あるじゃん。俺が直接介入しながら、それでいてあいつらだけでどうにかできるかも……って方法。


 でもこれけっこう綱渡りになるな……いや、うん、でもこのままだと死傷沙汰一直線……見誤った俺にも責任がある、ここは勇気と祈りを込めて、いっちょ飛び込んでみるとすっか!

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