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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第一歴、勇者の盾、その決別。
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第四話

「──誰だ、君は?」


 町に入り、とりあえず最低限の服装を整え(大分不審な目で見られた)、まずは定宿に戻り、そのまま自分の荷物を回収しよう、と受付に鍵を借りようと向かう途中、偶然にも仲間たち……つまり勇者一行を見かけ、とりあえず声を掛けてみたところ──



 勇者から、まるで知らん誰かに絡まれたみたいな反応をされてしまった。


 え、え。 ええ?


「いや、あの、ちょ、ちょい、ちょい待て、待ってくれ。

俺だよ、ほら、お前らの仲間の「いや、君の顔に見覚えはないけど……」ライ……え、顔?」


「うん。声を掛けてもらったところ悪いんだけれど、僕は君のこと、顔も声もまったく覚えがない。いや、その背の高さだけは……、かつての仲間を、思い出さなくも、…………」


 え、あれ、なんでみんなそこで急に沈痛な面持ちに……まるでもういなくなった故人を悼むみたいな空気に「う、うぅう、くっ、らいっ、ライト……」あ、これ完全に俺死んでる感じのやつだ、じゃなかったらこんなお通夜みたいな雰囲気にならねーもんよ。


 いや、確かにあの魔王のでっかい火の玉食らって場外までぶっ飛んだよ、数週間王都に戻れなかったし、連絡もとれなかったよ? でもさ、流石に死んだ扱いは……いや残念でもなく当然だわ、当然の帰結ってやつだわこれ……


……、や、でも、でもだよ? だとしてもだよ? あれだけの大冒険を共にした目の前の仲間を別人扱いってのは、ちょっとひどくね?


 ──あ、分かった、分かったぞこれ、これはあれだな、これまでどうして連絡くれなかったんだ的な、そういう怒りとか悲しみとかがない交ぜになってつい言っちゃった的なやつで、つまりちょっとからかって遊んでやろうっていうやつだな。


 ふ、仕方ない。こいつらそういうお茶目で子供っぽいとこあるからな、だったらもういいよーって意味でも、さっさと終わりにしないと………いやいやまったく心臓に悪いいたずらをするもんだぜ、やれやれ。


「おいおいなに言ってんだよ、ほら、俺だ俺、お前らの盾役やってたライト・サン「──馬鹿を言うな」ド……え?」


「彼は……僕らの盾であるライト・サンドは、僕らを守るために、その身を文字通り盾にして、跡形もなく消し飛んだんだ」


「そうよ。私たちははっきり見たわ。

──あの時彼が、魔王の一撃を防いで、……きっちり。後ろにはなにも通さず、そのまま、……そのまま……、…………っ!」


「……、彼のおかげで、あの戦いに勝てたようなものです──あれを防いでくれなければ、わたしたちは今頃……う、く……ライト……!」


 おぅ、ちょ、え? いや、そうか、確かにあの状況ならそう見えても仕方無い……ないか。正確には火の玉弾こうとして盾を先にぶつけたから、恐らくこちらへのダメージはそこまで(つっても何時間か気を失うくらいのそれはあったが)でもなかったっぽいんだが……まあ、そりゃ、食らうと同時に外に吹っ飛んでりゃ消し飛んだように見える……のか? いや、こいつらにとってはそう見えたんだな……いや。


「いやいや、ちょ、ちょっと待てよ! でも流石に俺の声とか顔とかには覚えがあるはずだろ!? 今までずっと旅してきた仲間だぜ!?」


「くどい! 君は彼じゃない!

大体彼なら全てを覆い隠すような兜と鎧を常に身に纏っているはずだ! 彼はどんな時だって防具を外さなかった! あの常在戦場の心構え、僕たちも見習っていたほどだとも!

そんな彼が、いくら町中とはいえ、そんな風に軽装であるはずがないだろう!!」


 ──……、……あ、ああ、やっべ、そうだった、俺こいつらの前で防具外したこと無かったわ……いや、そんな高尚な信念とかでそうしていたわけではなく、単にそっちのほうが安心できたってだけの話なんだが、そうかそんな風に捉えてたか……


 しかし、そうすると、これは……面倒なことに……いや。


 待て、待て。そうだ、そうだよ、まだ、まだあった──例え顔も声も分からなかろうと、たった一つ、俺が俺であることを証明する証拠が……!

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