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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第三歴 勇者の盾、その服飾。
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第五話

 最近のことではあるが、なんでも今から行く場所に、あの巨大猪ぐらい危険な何か(・・)が出没するようになったという。


 あくまで噂だが、なんと、目撃者もいるらしく、その人物によれば、なんと人を幾人も一気に丸呑みしかねないほどの、大きな大きな蛇、っぽいやつらしい。まあ、その人は見た瞬間に踵を返して全力逃走してきたから、具体的な見た目やかたちを覚えていたわけではないそうだったが。


 だが、その目撃者、そのときはとっさに逃げてしまったが、それでは村の安全が脅かされるやも、と危惧し、存在を確かめるため、その現場に改めて足を運んでみたそうだが、……そこはまるで、何かが爆発したのかと思えるほどに、荒れていたらしい。


 木々は薙ぎ倒され、地面は抉れ、何より目についたのは、……潰れた複数の動物(・・・・・・・・)


 初めは黒い何かが地面に染みている、と思ったらしい。だが近付いて確認すると、それはどうやら何かに押し潰されたようにばらばらのぐちゃぐちゃに四散していた動物だった(・・・)何かであり、よくよく目を凝らさなければ、そもそも生物であるかすら判別困難であった、という。


 これは大変だ、と、目撃者は、その巨大な蛇……らしきものに見つからないうちに、最低限の調査を終えると、そのまま村に帰ってこの脅威を、潰された動物の骨の一部と、あと知らされた村長と共に語ったという。


 正直話を聞いて、特にプレスされた動物のそれを聞いて、もう大分吐き気をもよおしているが、しかし俺の体、懸念を覚えるへきはそこじゃない、巨大な蛇っぽいやつのほうだ。


 へび、蛇かぁ……ああいうひょろひょろ動くやつって、俺ちょっと苦手なんだよな、捕まえづらくて……昔同じような魔物を潰したことあるけど、あれも魔法使いちゃんに氷と吹雪で動き止めてもらってから勇者が頭を上からかち割ってようやくだったし……っつーか、


「なんでそんな危険地帯に、いくら材料あるからって行こうとしてんの……ちょっとお前の危機管理どうなってんだよ……」


「い、いや、だって……その、そこが一番近いし……たくさん採れるし……それに出てきたのはそれ一度きりって聞いてたから……」


 だったとしても、まだ死体が確認とれたわけじゃないのに、堂々と向かうってどうなんだよ……いや、まあ? 確かに俺も、出発前に日が暮れるまでには帰りたいから近場でたくさん採れるとこー、とは要求出したよ? でもそれはわざわざ危険を(おか)してまで急ぐもんじゃないからさ、……あれ、なんだろう、ちゃんと言わなかった俺にも非があるような気がしてきたな……


「えっと、でも、村長にはちゃんと許可取ってきたし……あんたが付いていくなら、それほど危険は無いって、そう、言って……」


 あ、これ結果的に俺のせいですね。この前の猪退治が結構効いちゃって、こっちを過大評価しちゃってるやつですね……や、さすがに、さすがに巨大蛇までは撃退できないから。なに期待してんのか知らないけど、例え魔物(殺傷可能)だとしても、体重とか身長の差とかで無理だから、あわよくばとかありえねーから。


 くそ、村長の意図が透けて見えるようだ……俺は化け物退治は専門じゃないの、むしろそれは勇者(あいつ)の管轄だっつーの……ああもう……ったく……


「でも、えっと、あんたなら、倒せはしなくっても、その……逃げ延びる、くらいはできそうよね。だってあんな化け物よりも化け物してる人間たちからにげきれたんですもの……」


 ……ああ、うん、まあ、まあね、それぐらいだったらね……どうせ目的は退治(それ)じゃねーんだし、それにそうそうその大蛇が採取場所(そ こ)に来ていることなんて、よっぽど運が悪い限りは……無いだろ、無いと願いたい。


 だったら、どうせここまで来たんだ、さっさと最大効率で採り終えて、その大蛇とやらが来る前に村に戻るのが、今は最善、か……だよな……よし、そう決めた。


「ああ、任せとけ。お前の、ついでに材料の安全は俺が守ってやるよ。


──約束、したからな」


 とん、と。拳で軽く、自分の胸、もう少し言うと心臓の上を叩く。


 あとは、よし、笑顔でも見せれば、安心できっかな……にぃー、と。


「……ぷ、ふふ、あははっ……なに、その変な顔、おっかしい……!」


 お、笑った笑った、よし、これで少しは恐くなくなった、か? うん、これでこっちも、ちょっと安心した。


 さあ、腹も決まったことだし……大蛇め、来るなら来い、いるならいろ、俺はお前から──全力で、逃げおおせてやる……!



 あれ、なんか情けないな、この台詞……





 予想外にも、あるいは予想通りに、俺たちがたどり着いた場所……天然の花畑には、一切、大蛇の影すら存在しなかった。


 むしろ聞いていた話とは違い、その自然、というのか、少なくとも周囲の花や木々なども一切壊されておらず、その輝かんばかりの姿態を、来訪者である俺たちに見せ付けている。

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