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【短編集】2000字の物語  作者: シャルロット


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10/15

Sweet Devil

 ぱっちりつけまつげ。くっきりアイシャドウ。ピンクでキラキラのリップ。胸元を少し大きめに開けたトップスにタイトスカート。ふわりと巻いたゆるふわカール。身長差10cmになるよう計算されたヒールの高さ。あざといけれど、自分の可愛さを存分に見せつけてくるモテ系女子。


 小悪魔女子、といえばこんなもんだ。いや、僕の偏見がかなり入っているのは否定しないけど。それでも大方の世間の同意は得られるに違いない。


 それがまさか。身長152cm、ボブカットを雑に一つしばりにして、おっちょこちょいを連発し、とてとてと歩く姿はペンギンのようで、みんなから妹のように扱われて、ぽわぽわとしていて、まるでわたあめのような女の子を呼ぶ言葉とは誰も思うまい。


 いや、最近はこういうのが小悪魔系女子なんだろうか。僕が世の中の流行り廃りに疎いだけかも知れないと思えてきた。


 とにかく何が言いたいかというと、高校に入って同じクラスになった茉帆にすごく惹かれているけど、こいつの態度は別に僕だけに対するものじゃないってことだ。


 普段の茉帆を見てれば、女子でも男子でも誰とでも仲いいし、みんなが何かと話しかけに来る。昼休みの間ずっとふたりで喋っていたとか、下らない悪戯を仕掛けてくるとか、もしも僕たちが付き合ってデートしたらどこに行きたいか考えたりとか。そういうのは全部、僕だけに向けられた訳じゃなくて、茉帆がそういう分け隔てない人付き合いをするということに尽きるのだ。


 だから茉帆は小悪魔女子なのだ。


 そして僕は。うん、そういう女子に見事に勘違いしてしまったバカな男子の一人、ということになるんだろうな。


 それでもクラスに着いて茉帆の顔を見ると心が浮き立つのは、自分でも呆れるくらい好きになってしまったんだなと思わされる。あれだ、恋愛は先に惚れたほうが負けってやつだ。


 うだうだと考えながら漕ぐ登校中の自転車。我が高校に続く長い長い上り坂のふもと、その交差点で自転車を止めると、やほやほー、という声が聞こえた。


「茉帆か。今日は遅めだったんだな」


「祐一はいつも遅めだもんね」


「うるせえよ。茉帆だって週の半分くらいはギリギリじゃねえか。僕と途中で鉢合わせるんだからよ」


「そうなの、その日に限って授業で差されたりするの」


「疫病神って言いたいのか?」


「いやーそんなことないよー。祐一と朝会えて嬉しいよ?」


「疑問符をつけるな」


まったく、好きでもない男子にこんなことが無意識に言えるんだから大したもんだよ。おんなじようなことを他の男子に言っているのを見るたびに、僕は悔しくて仕方ないってのに。


「あ、青になった」


茉帆はそのまま自転車を押していく。ざっと200m近い上り坂は、立ちこぎで登り切るやつもいるが女子は降りて押すやつが多い。茉帆と話ができるこの時間はやっぱり嬉しい。だから僕も茉帆と会った日は自転車を降りるのだ。


「そう言えばね、今度隣町の海岸で花火大会あるんだって。やっぱり浴衣着て行ってみたいよね」


「茉帆じゃ無理だよ、浴衣なんか着たら裾踏んづけてすってんころりんに決まってる」


「残念でした。私、自分で着られるくらいには浴衣に慣れてますから」


「それ以外のどこでヘマするか分からないぜ。一緒に行く彼氏が可愛そうだ」


「そこも含めて相手してくれる人を探すからいいんだもん。祐一みたいな分からんちんとは行ってあげないよ?」


「やめてくれ、妹連れで花火大会とかごめんだぜ?」


「可愛い可愛い妹でしょ?自慢の妹でしょ?」


「何が悲しくて妹みたいな女を連れて行かなきゃいけねえんだよ」


「だって彼女いないじゃん」


「お前も彼氏いねえだろ」


「いいの、私は作ろうと思えばすぐできるから」


「その自信はどっからくるんだか」


まあ、ぶっちゃけその通りだと思いますけどね。


「まあね、花火はやっぱり特別だよね」


「じゃあ茉帆はその特別を僕と行くのか?」


「えー、そうだね。祐一だけ特別扱いとか、やっぱり無いかな」


「悪かったね、一般村人Bで」


「ううん、村人Fくらい」


「モブもいいとこだな!」


朝からうるさい僕たちの横を、立ちこぎでクラス委員の里香が通り過ぎていく。


「おはよー!茉帆ちゃん今日は自転車押してくんだね。じゃあお先にー」


風のように通り過ぎていく。


「茉帆ってこの坂自転車のままで登るのか?」


「うん、そゆときもあるよ」


ふうん。


 僕と一緒になったときは一度も乗ったまま登ったところを見たことがない。


「……僕だけを特別扱いしないんじゃなかったっけ?」


一瞬の間。


「……」


風に攫われて聞こえなかった言葉を聞き返したときには、茉帆は自転車にまたがって僕を置いて走り去っていた。

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