第4話 廃神さん...驚愕する(1)
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●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月十三日
【ハルベルト山脈~渓谷の洞窟~花水晶の間】
【カルマ】
(ふむふむ......マジか......まっ、いっか♪)
従来の【創造神の試練】では、此の段階で【カルマ】が獲得出来た称号は【氷狼の加護】のみで、十八才で成人を迎えた時に称号【氷狼の寵愛】を獲得出来るのだったが。
【カルマ】
(【氷狼の寵愛】を越える上位称号があったとは!)
称号【氷狼の加護】の効果は、寒冷耐性と狼系生物への威圧と魅了だった。
その称号効果を活かして【カルマ】は、スノーウルフを仲間にし、鬼畜仕様の縛りで能力情報の身体能力値(筋力・知力等)は、【1】ポイントより上がりも下がりもしないが、個体レベル上げを十八才の成人になるまで続けた。
そして、【氷狼の寵愛】の称号を獲得してから、その効果の寒冷無効と狼系生物への統制と魅惑を使って、スノーウルフの群れを統率して大陸制覇の足掛かりにするのだった。
それが今や、それを越える称号効果を獲得した。
その称号【氷狼の愛息】の効果は、寒冷無効・寒冷操作と狼系生物への支配と傾国だった。
FHSLG【アルグリア戦記】のステータス表示には、【情報表示】・【状態表示】・【能力表示】・【部隊編成表示】があった。
【情報表示】には、氏名・個体レベル・備考(年齢・種族・身分・職業・称号・才能・説明)が、【状態表示】には生命力・魔力・精神力・持久力・満腹度が、【能力表示】には、筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力が、【部隊編成表示】には、統率力・攻撃力・防御力・機動力・持久力・戦法力・士気力・詳細が表示されているのである。
鬼畜仕様の縛りである成長限界身体能力値を、全て【1】ポイント固定で適用される能力値は、筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力で、どれだけ個体レベルを上げても【1】ポイントのままであった。
そんな状態で鬼畜仕様の最高難易度シナリオである【創造神の試練】をクリアするには称号効果と、もう一つのステータス情報である【隠されたデータ】への理解が必要である。
称号【氷狼の加護】、【氷狼の寵愛】で言えば、魅了は現在の魅力値×【10】倍の効果があり、魅惑は×【100】倍だ。
つまり、能力表示上の魅力能力値が【1】ポイントでも、称号効果で【10】、【100】と狼系生物限定で、【隠されたデータ】として反映される。
威圧と統制は称号効果であり、才能ではないので、鬼畜仕様の縛りである才能枠の【0】で固定による、才能を修得出来ない効果は元から適用外であった。
【カルマ】は、威圧と魅了の併用効果でスノーウルフを仲間にして、統制と魅惑の併用効果でスノーウルフの群れを統率したのだった。
【カルマ】
(《氷狼の愛息》、ヤバい......)
称号効果が凄いのは勿論だが、【氷狼】が赤ちゃんを尻尾で抱え込んで離さないのが一番ヤバかった。
【エンプレス】
(か...か...可愛い♥)
称号【氷狼の愛息】の効果である【傾国】は、狼系生物限定で現在の魅力値×【1000】倍だった。
特別難易度のシナリオ【ゲーム世界に転生】をスタートするに当たり、両親と仲間の運命を変える為に、一切の妥協と自重をカルマはしなかった。
特典の成長身体能力限界突破券を使用して、普精霊人と森精霊人の混血の成長限界身体能力値(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力の成長限界値)の壁を突破し、英雄ポイントで限界まで成長限界身体能力値を上げたのだった。
その結果、成長限界身体能力値の各数値が【∞】表示になっている。
つまり、上限なしで育成出来ると言う事であった。
そんな状態で育成出来ないのは俗に言う蛇の生殺しであり、廃人の中の廃人、【廃神】と畏怖を込めて呼ばれていたカルマには我慢が出来ない事だった。
【カルマ】
「あぅあぅあぅあぁぁ~! (育成出来ないじゃないかぁ~!)」
カルマにとって育成とは寸暇を惜しんでするもので、御褒美、否至上の喜び以外の何物でもなかった。
しかし、こう言う事態にも対処する為に、準備万端で生物との意志疎通を図る才能【念話Ⅰ】を、カスタマイズ時にキャラアバター【カルマ】に付与していた。
【カルマ】
『母さん、少し離して欲しいんだけど......』
【エンプレス】
『えっ! ......』
【氷狼】は、赤ちゃんから初めて念話で話し掛けられた衝撃よりも、初めて拒絶された事に衝撃を受けているようだった。
【システムメッセージ】
『が~ん♪ ......特異個体名【エンプレス】が個体名【カルマ】から精神攻撃を受け状態異常【精神崩壊】になりました!』
【カルマ】
(......えっ!?)
『氷狼』は赤ちゃんに拒絶されたと思い込み、初めての【反抗期】の衝撃で魂に大打撃を受けたのだった。
【エンプレス】
(か、か......悲しい......)
【システムメッセージ】
『が~ん♪ ......特異個体名【エンプレス】が個体名【カルマ】から......精神攻撃を受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......受けました! ......特異個体名【エンプレス】は個体名【カルマ】に討伐されました!』
【カルマ】
「あぅあぅあぅあぁぁ~! (えええぇぇ~マジか~!)」
極寒の洞窟の中、驚愕の表情でカルマが真っ裸で叫ぶ!
その視線の先には、白い巨狼のもう一人の母親が、瞬時に【回収】されて消えていく、空虚な空間だけが映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【エルブリタニア帝国】は森妖精人種が統治する軍事国家で、強固な機関である【元老院】が皇帝を支え、帝国を磐石なものにしている。
二百年程前までは、森妖精人種純血至上主義を掲げて、他種族を侵略し迫害していたが、近年は支配領域の拡大と統治に伴い、他種族を積極的に国民として受け入れている。
帝国貴族の中にはまだまだ森精霊人種純血至上主義思想の者が多く、露骨な迫害は鳴りを潜めたが、陰湿な迫害が横行していたのは議論の余地もない。
帝国としては【他種民族国家】を掲げ、アルグリア大陸統一を目指し精力的に領土拡大を行っていたが、他種族間の認識の齟齬もあり、統治に苦慮していた。
そこで、皇帝【ビクトリアス・エルブリタニア】が自ら他種族の血を皇室に入れて、民衆の統治に対する不満緩和を即した事は大きな効果を上げた。
しかし、森精霊人種純血至上主義が色よく残る帝国貴族社会に於いては、建前上は英断と称賛されたが、内心としては忸怩たる思いが有ったのは確かであり、一部の帝国貴族達との間に内面上の亀裂が入ったのは、帝国の未来に暗雲をもたらしたかも知れなかった。
また、同じ祖先を起源として分かれたからだろうか、森妖精人と闇森妖精人はお互いの種族で強く意識し合っていた。
大陸暦千三百七十一年八月、両種族の亀裂の要因である母なる大樹【世界樹】の領有を巡って、森妖精人種国家である【アルバビロニア大帝国】、【エルブリタニア帝国】連合国軍と、闇森妖精人種国家である【ギエロア大王国】軍の間で【世界樹大戦】が勃発した。
当初から圧倒的物量で連合国軍が終始ギエロア大王国軍を押していたが、母なる大樹の領有を理不尽に森妖精人に奪われるのを、黙って見過ごせなかった大王ベルガ・ギエロアは乾坤一擲で、連合国軍の本陣へ奇襲をかける獅子奮迅の大攻勢を行った。
しかし、物量の差は如何ともし難く、闇森妖精人種であるギエロア大王国側の敗戦で世界樹大戦は幕を閉じた。
連合国軍本陣の奇襲時に捕縛された半死半生の大王ベルガ・ギエロアは、後日アルバビロニア大帝国の【帝都プロローズ】の処刑場で、同胞である闇森妖精人に向けて、『雌伏して時が至るのを待て!』と激言を発し断頭台の露と消えたのだった。
併合され支配される事を強く拒絶した多くの闇森妖精人達が、アルグリア大陸全土へと散って行った。
そんな状況の中、アルバビロニア大帝国とエルブリタニア帝国に分配併合された旧ギエロア大王国領には、生き残る為に否応なく森妖精人に膝を屈した【闇森妖精人】達もいた。
エルブリタニア帝国に併合された旧ギエロア大王国領に住む闇森妖精人の中には、忍者と呼ばれる暗部・間者を得意とする【傭兵集団】の姿もあった。
彼らは自ら進んで帝国の【走狗】になる事で、生き残る力のない老人と幼子を身の内に抱え、生き永らえていたのだった。
そして、心無い同胞と森妖精人から侮蔑されながらも、帝国の奴隷の如く酷使されていた。
忍者とは刃の下に心置くが如く、忍耐強く目的を達する者である。
時は戦乱の気運が高まる【戦国時代】、アルグリア大陸は激動の【血の時代】を迎えていた。
弱肉強食の闘争本能剥き出しの獣達が、生存本能を駆使してお互いを喰らい尽くそうと、虎視眈々とその時を待っていた。
戦雲漂うアルグリア大陸には、旧アクリス王国跡の永久に解けないと言われる【氷柩の王国】が氷解し始めた事を知る者は、まだ誰も居ない。
【十の災厄】の一角、【氷狼】が生まれたての混血の【赤ん坊】に討伐された事実を、人類が知るにはもう少し時間が掛かるだろう。
運命の歯車がカタコトカタコト廻り出す、奏でる音色は人々の哀哭の叫び声か、......はたまた欣悦の歓声か、......紡いだ希望の糸で救世の羽衣を織り出し、それを纏う白無垢の魂を何色に染めるのだろうか......
To be continued! ......
ご都合主義の展開には、ガッカリされた人も、おられるでしょう?
ちょっと待って読者さま! 焦ってはいけません! 第12話までお付き合い頂ければ、後悔はさせません! よろしくお願いします!
何か違う? と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/12 改訂しました】
【2020/07/30 改訂しました】