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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第1章 プロローグ
4/40

第3話 廃神さん...再会する(2)

 毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月十三日 

【ハルベルト山脈~渓谷(けいこく)の洞窟~花水晶の間】






【エンプレス】

(なんじゃ、......この赤ん坊は!?)






 禁忌の【ハルベルト山脈】の主にして、【十の災厄(アンタッチャブル)】の一角(いっかく)、【氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は、空中を短距離転移しながら、自分の()()()()だけを見つめながら、(おそ)れもなく進んで来る、真っ裸の赤ちゃんを唖然(あぜん)として見続けていた。






【カルマ】

「あぅあぅあぅあぁぁ~♪ (()()()...いただきます~♪)」






 そして、(おもむろ)に自分の乳房に吸い付いた赤ちゃんに対して、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスはされるがままだった。




 何故なら、十の災厄(アンタッチャブル)である彼女に対して、ここまで無防備に接して来た存在は今まで居なかった事と、この極寒の地を人の身で、()してや、生後間もないであろう赤ちゃんが、真っ裸で短距離転移しながら近付き、一心不乱に自分の乳房に吸い付く姿に、不覚にも完全に思考停止していたからだった。






【エンプレス】

(か......か......可愛い♥)




【システムメッセージ】

『ずきゅ~ん♪ ......特異(エクストラ)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への好感度が一定の値に達しました!』






 それが、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスの母性が目覚めた瞬間だった! ......その瞬間から、一心不乱に赤ちゃんは母乳を飲み始めたのだった。






【システムメッセージ】

『ぽ~ん♪ ......個体名【カルマ】が称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】を獲得しました!』






 従来、【創造神の試練】時の、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスとカルマの邂逅(かいこう)は、一つの奇跡だった。




 極寒の中、放り出されて死の時間制限の制約を課せられ、徐々に減っていく生命力(HP)と寒さで(かじか)んで思う様に動かない身体で、匍匐前進(はいはい)しながら、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスに辿り着いた時には、カルマの生命力(HP)は残り僅か【1】ポイントだった。




 カルマは【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスに辿り着き、母乳を飲む事によって、称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】を獲得して、何とか生き延びたのだった。






 FHSLG【アルグリア戦記】は、体感レベルを調整出来る仕様になっている。




 体感レベルを上げると、現実の世界以上に体感(触覚・痛覚等)が研ぎ澄まされて、より緻密で繊細な動作を行える反面、生命力(HP)魔力(MP)精神力(MSP)持久力(EP)満腹度(FP)が減る行動時には、体感レベル相応の体感(触覚・痛覚等)を伴う、体感レベルを下げると体感(触覚・痛覚等)が鈍くなっていき、動作は大雑把になる反面、戦闘時には殆ど痛みを感じ無くなり、それに伴う恐怖感が薄れ、ステータス管理を怠ると、簡単に突然行動不能になってしまう、所謂(いわゆる)ゲーム感覚に近くなっていくと言う事だった。

 



 高難易度シナリオをクリアした廃人(ゲーマー)達の多くは、体感レベルを最大値により近付けて、PS(プレイヤースキル)を磨いている。

 



 廃人(ゲーマー)の中の廃人(ゲーマー)、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれるカルマの体感レベルは、勿論(もちろん)最大値で設定しているので、現実の世界()()敏感(ピーキー)な体感(触覚・痛覚等)がある。

 



 他の仮想現実ゲームでも常に、体感レベルと痛覚レベル機能の設定調節(ゲーム毎に体感と痛覚との詳細なゲーム設定が各々違う)は最大値設定にして、格闘(ファイト)系、射撃(シューティング)系、隠密(アサシン)系、恋愛(ラブファイト)()のゲームの最精鋭(トップランカー)達と日々(しの)ぎを削っていたカルマのPS(プレイヤースキル)は、現実で実現可能なレベルまで、技術として修得しているのだった。




 それが、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれる所以(ゆえん)の一つでもあった。

 



 しかし、単純に体感レベルを上げれば、ゲームが上手になる訳ではない。




 研ぎ澄まされる感覚を使い(こな)し、痛みとその恐怖に打ち勝って、技術に昇華(しょうか)してこそ上達していくのだった。




 但し、体感レベルを最大値に近付けると言う事は、現実世界で実際に痛みを伴う行為と、同義(どうぎ)以上に近付けると言う事(小さい痛みが体感レベルの上昇値により、数倍の激痛として感じる事)をまず理解しなければならない。




 体感レベルの設定値の制作運営会社の推奨は三十パーセント(現実世界の体感と同等設定は五十パーセント)で、それ以上の設定にするには、ゲーム規約にある体感レベルによる()()()()()()()()()()等はプレイヤーの自己責任で、制作運営会社は一切の責任を負わない(むね)に了解のサインをした、廃人(ゲーマー)だけが挑める変態達(ヤバい奴ら)狂宴(カーニバル)なのだ。




 極寒の寒さで身体が(かじか)み、思う様に動かない生後半年ほどの赤ちゃんが、最適解(さいてきかい)を導き出す為に、凍死を三百十九回繰り返し、試行する【鬼畜の儀式】を、体感レベル最大値設定で、嬉々(きき)として(くぐ)り抜けた。




 ゲームに人生の全てを捧げた変態(ヤバい奴)が、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれるカルマの正体だった。






【カルマ】

(ウグウグっ! ......()()()! 母乳が美味すぎる......ゲポっ!)






 FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、七段階中最高難易度のシナリオ【創造神の試練】が、鬼畜無理ゲー(超難易度過ぎて攻略が不可能、無理でしょうって言うゲーム)と言われるのは、単純にクリアしたプレイヤーが誰一人として居なかったからである。




 その要因は、余りにも【鬼畜仕様な縛り】要素と、選択キャラクターの【苛酷(かこく)運命(シナリオ)】にある。




 その鬼畜仕様な五つの縛り要素のうち、身体限界成長能力値の全てを【1】ポイントで固定(※固定なので筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力は一切成長しない)と才能(スキル)枠を【0】ポイントで固定(※固定なので才能(スキル)を一切修得出来ない)の二つは、年齢を重ねて色々な経験を積んでも、生まれた赤ちゃんと同じ能力値(能力数値は筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力で、生命力・魔力・精神力・持久力は状態数値で育成可能である)で、加えて無才能(スキルシステムの恩恵を、一切()けられない)だと言う事だった。




 そんな状態で、苛酷(かこく)運命(シナリオ)の数々を乗り越えて、大陸制覇する事はほぼ不可能である。




 その不可能に挑戦した廃人(ゲーマー)達が余りの苛酷(かこく)さに、現実の世界で現実(リアル)に廃人になる、それが【アルグリア戦記】の最高難易度シナリオである、【創造神の試練】だった。




 その試練を攻略するには、あらゆる全てのものを活用しなければならない。




 その一つが、【称号の効果】である。




 【アルグリア戦記】には、登場キャラクターが元々所持してる称号と、行動によって獲得出来る称号があり、行動の結果で、所持称号が上位称号に書き換えられる(進化する)場合もある。




 そして、カルマが最初に獲得した称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】の効果は、寒冷耐性と()()()()への威圧と魅了(みりょう)だった。

 



 お腹一杯になりスヤスヤと眠る赤ちゃんを、白い巨狼が己の尻尾で、(いと)おしく包んでいた。




 巨狼は、何故この普精霊人(ヒューマン)種の赤ちゃんは己に対して、こんなに無防備でいられるのか自問自答する。




 そして、己への絶対的な信頼と一途な愛情を感じ、理由を考える事を放棄したのだった。

 



 十の災厄(アンタッチャブル)一角(いっかく)、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスは運命(シナリオ)設定(システム)上、【群れない孤高の狼】だった。




 狼は群れる習性があり、それが本能でもあった。




 それをある意味、強引に螺子(ねじ)曲げた設定(システム)との不条理(ふじょうり)が、【不具合(バグ)】を生んだのかもしれない。




 赤ちゃんの寝顔を見ていると、その存在を守りたい無償の欲求が高まっていく。

 



 その熱い眼差(まなざ)しを感じた赤ちゃんが目を覚し、自分を見つめる巨狼にくしゃっと笑いかけた。

 





【システムメッセージ】

『ずきゅ~ん♪ ......特異(エクストラ)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への好感度が上限に達しました! ......特異(エクストラ)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への好感度が愛情度に書き替えられました! ......愛情度が上限に達しました! ......達しました! ......達しました! ......愛情度が、......限界突破しました!』




【エンプレス】

(か...か...可愛い♥)




【システムメッセージ】

『ぽ~ん♪ ......個体名【カルマ】の称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】が【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】に書き替えられました! ......称号【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】が【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】に書き替えられました!』




【カルマ】

「......あぅ!? (......え、マジ!?)」






 極寒の洞窟の中、巨狼の尻尾で(くる)まれながらカルマが真っ裸で呟く! 




 その視線の先には、慈愛の眼差(まなざ)しで見つめる、蒼い目の()()()()(?)の母親が微笑んでいた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の北北東の中央依りに位置する、【エルブリタニア帝国】は【森妖精人(エルフ)】種が統治している尚武の国で、皇帝も皇族の中から武力・統率力が優れた者が選出され、元老院と呼ばれる九名の元老からなる、皇帝への支援機関(システム)が統治を支える軍事国家である。




 また元老院は皇帝選定の決定機関でもある為、元老は上位貴族の各派閥(皇族派・貴族派・中立派)から三名づつ就任する。




 近年、皇帝【ビクトリアス・エルブリタニア】が病で体調を崩している為、近々(ちかぢか)元老院で、新皇帝が選出され譲位が実施されると言われている。




 最有力は帝国遊撃騎士団を率いる、文武兼備の嫡男(ちゃくなん)【ラクトリウス】で、彼を筆頭に六人が選出される見込みである。




 対抗馬としては、北部帝国騎士団副団長の豪勇無双と言われる、次男【レクトリウス】が挙げられる。




 大穴は()()()をしている、閃光(せんこう)異名(いみょう)を持つ六男【カリトリアス】だろう。




 皇族の身で冒険者をしている変わり者だが、エルブリタニア帝国では民衆からの人気は一番高い。




 但し、今回の新皇帝選出は従来と違い、【森妖精人(エルフ)種純血】の血統統治国家から、【()()()()】の、血統統治国家への脱却の意味合いもあり、混迷を深めていたのだった。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

真っ裸で叫ぶ! カルマにずきゅ~ん♪ とされた人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/11 改訂しました】

【2020/07/29 改訂しました】

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