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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第5章 傭兵騎士団乱舞編
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第38話 廃神さん...再会する(14)

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十一日

【エルブリタニア帝国~ナダリス領~グルト平原】







【エックス・バルブルッチ】

「殿下、大変です! 我が軍は、罠に嵌まったようです! 見て下さい、グルト平原が、泥濘(でいねい)と化し、我が軍の足を絡め獲っています!」




【ベリトリアス・エルブリタニア】

「我らは、態々反乱軍の罠に、意気揚々と嵌まったと言うのか?」






 グルト平原は、平原其のものが表情を、様相を変え、エルブリタニア帝国反乱討伐軍を掴んで離さなかった。


 討伐軍の足が止まり、泥濘(でいねい)に捕まると、反乱軍は前線に魔導師部隊を展開させた。


 水の、土の、魔法が飛び交い、グルト平原を泥濘(でいねい)の牢獄と化した。


 


「殿下、一時撤退を!」




「此の儘では、水戦に利が在る水精霊人(ウンディーネ)海精霊人(トリトン)の近接部隊に、一方的に刈り獲られるは必定ですぞ!」




 本陣の参謀格達が、慌てふためき出す。


 其れを嘆息と、鋭い眼光で制したベリトリアスは、全軍に後退の命令を発した。


 しかし、其れは余りにも遅きに失していた。




「で、殿下! あれを!」




 参謀格の一人が指差す方向を見たベリトリアスは、唖然として固まってしまった。


 此の戦場を覆いかねない黒煙。


 其の臭いに、覚えがあったからだった。




「不味いぞ、臭油(ラディオズミース)だ! 魔導師の水魔法では消せない! 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な! ・・・・・・」




 ベリトリアスの退却の指示が全軍に伝わると同時に、反乱討伐軍を包み込むように、臭油(ラディオズミース)の入った革袋が再度投げ入れられ、其れと同時に火魔法が着弾し一面を煉獄地獄へと(いざな)った。






【ミリウス・ゾロ】

「アダム様、計画通り火計が発動しました! 後は計画に、何か変更はございませんか?」




【アダム・ギエロア】

「間抜けが罠に掛かっただけだ。まだ息をしておる。死兵で軍を疲弊させるな! 逃げ道は作って置いてやれ! 戦いは此れが始まりなのだからな!」






 反乱軍を率いる外套を頭から被ったアダムは、全軍に指示を出し軍を生き物のように統制する副官を横目に、次の戦いの配置を思案していた。


 こうもアッサリと、帝国軍が罠に嵌まるとは想定外だったからだ。


 アダムが脳裏に想い描く戦場で、駒を進めながら、自分の想い描く絵に、筆を振るう。


 臭油(ラディオズミース)、貴重な燃える水を、此の日此の時の為に集め蓄えていた。




 エルブリタニア帝国の最強の剣である帝国騎士団【クリムゾンソード】。


 世界樹(ユグドラシル)大戦でも、ギエロア大王国を無残に切り裂いた紅の剣が、呆気なく溶かされていく。


 拍子抜けしたとて、誰が責められようか?


 


 やはり、率いる者次第で、剣もナマクラと化すようだ。




 白騎士【ビクトリアス・エルブリタニア】率いる白い剣は、まだ帝国に健在だ。


 油断は出来ない。


 あの化物が出る前に、全てを終わらせて置かなければならない。




 白騎士は病に掛かり、伏せっていると言う。


 誰が騙されるか、あの化物に蹂躙されたあの日を忘れはしない。


 ギエロアが、アルグリアの地から消えたのは、全てあの化物の所為なのだから。




 油断は禁物。




 無敗の剣が、化物が、虎視眈々と、我らを(にえ)として、襲い掛かって来る予感に、打ち震えていた。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十二日

【エルブリタニア帝国デルス領~領都ブリュンヒルト~水の神殿《ネロノーズ》】






【フィアルス・ビクトール】

「マイト、行きますよ!」




【マイト・ニス】

「巫女様、外は危険です! 暴徒化した民に、理性などはありません! 水の神殿【ネロローズ】が統制すると宣言したブリュンヒルトで、暴徒が発生するなどありえません! 何者かが画策した仕業としか、今は申せません! ご再考を!」




 神殿騎士団団長マイト・ニスの言は正しかった。


 水の神殿《ネロローズ》が統制すると宣言した領都で暴れると言う事は、海竜様に楯突く行為に他ならない。


 水精霊人(ウンディーネ)海精霊人(トリトン)が、海竜様に、水の神殿《ネロローズ》に刃を向ける事はない。




 其れは天に唾するように、愚かな行為だからだった。




 だが、其れが起こったと言う事は、紛れもなき事実。


 では真実とは何か?




 騎士団長は水の巫女(リヤレヤスネロウ)を説き伏せ、配下に詳細な状況を把握するように指示を出したのだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十八日

【エルブリタニア帝国~帝都エルシィ~貴族街】







【???】

「くっくくく! 闇森精霊人(ダークエルフ)よ、永久に眠れ! 水精霊人(ウンディーネ)海精霊人(トリトン)の民達の恨みの想いで、其の身を燃やせ!」






 帝都【エルシィ】の一画にある館の一室。


 蝋燭の明かりが眉目秀麗な顔を、優しく照らす。


 若い男は、、銀色の細い鎖の首飾りを手に包みながら、静かに涙を溢した。






●ブルーアース暦一年三月十八日(アルグリア大陸暦千五百三十八年三月三十日)

【迷宮都市バベル~迷宮バベル~十階軍事教習施設】






【エンプレス】

「ふむ、まあまあだが。ふっ、目付きが変われば、出で立ちも変わるのう?」




【バルベルデ・ウォルフ】

「はぁ、はぁ、はぁ。くっ、クソッタレめ!」




 特別演習施設【無限の戦場】で、不様に倒れ伏せているバルベルデが毒付く。


 其の姿を見て、言葉とは裏腹に全く感情を顕わさないエンプレスが、屍の如く倒れ伏す獣精霊人(ビーストマン)の群れを、睥睨していた。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十七日

【エルブリタニア帝国~ブルミンス領~ロットン街道付近】






【ジスサット・デンタンジール】

「全軍、停止せよ! 陣形を風神の陣に変更! 敵を薙ぎ払う!」






 帝国南部騎士団団長であるジスサット・デンタンジールは、一万の麾下軍と街道沿いの貴族軍2万の合計三万の軍で、今まさに反乱軍に切り込もうとしていた。


 対する反乱軍の数は一万八千。


 帝国騎士団クリムゾンソードを撃破した反乱軍は、全く其の数を減じては居なかった。




 グルト平原の戦いで、敗走する貴族軍には目もくれず、唯々刃向かう紅の剣を折砕いたからだった。




 帝国南部騎士団と貴族軍の混合軍は、厳格な規律の下で、格下と侮る事無く反乱軍に攻撃を開始した。




 縦深陣を敷く反乱軍に於いて、彼我の戦力の差など関係ないと言い切るアダム・ギエロアは、反乱軍を統率する部下達に計画の続行を伝令する。


 水戦が得意な水精霊人(ウンディーネ)海精霊人(トリトン)が、殆どを占める反乱軍。


 其れを操る副官ミリウス・ゾロの部隊統制の妙が、帝国の剣を撥ね付けるのだった。




 FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、部隊の陣形により攻撃力・防御力・機動力・持久力・戦法力・士気力が変動する。


 部隊を統率する指揮官の統率力が、各数値に付加され、部隊の数値が決定される。




 部隊兵力が多い方が有利では在るが、戦闘区域の状況(地形・兵科など)と、一撃必殺の【部隊戦法】により、其れは不確かに為り、覆る。


 FHSLG【アルグリア戦記】の醍醐味とは、戦場の合戦に外ならない。


 指揮統率する者の手腕一つで、運命(シナリオ)の結果が覆る。


 其れを【(いくさ)(みょう)】と、プレイヤー達は呼ぶ。




 現在、反乱軍が縦深陣を敷き、帝国軍を待ち構える場所は街道から外れた渓谷で在った。


 完全防御の縦深陣に対して、帝国軍は完全攻撃型の風神の陣で一気に戦いを決めようとしていた。


 其の場所が、反乱軍が何年も前から準備した場所だとも知らずに。




 帝国の剣は頑強で鋭かった。


 完全防御の縦深陣を、其の破壊力の回転力で削り上げて行く。


 其の剣は休む事なく回転する風神の陣。


 削り切るか、力尽きるか、矛と盾の激突であった。




 戦いの趨勢が決まったのは一瞬であった。


 帝国軍の右側から現れたオルスカ王国の一撃で、帝国の剣は其の動きを止めたのだった。






【ランジャ・オルスカ】

「全軍、蹂躙せよ!」






 獣王の咆哮で、獣王国軍は、其の獣の牙を解放した。


 剣と牙。


 正対していたら、勝負は如何だったのだろうか?


 横撃を受けた帝国の剣に、獣の牙を跳ね返す頑強さは無かった。






【カルマ】

「因果応報か、……」






 戦場の上空で浮かぶカルマが真っ裸で、静かに呟く!




 其の視線の先には【獣王】の牙が、帝国を易々と引き裂く姿が映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の西南に位置するラグーン湖は、塩水湖として有名だった。


 其の湖では、塩水が湧き、絶える事がない。




 遙か昔、アルグリア大陸を創造した創造神カリダドが流した涙が、大地に落ちた。


 其れがマリエンテ内海と外海に為ったと伝えられていた。




 其の涙の飛沫の一雫(ひとしずく)が、湖と為ったのが塩水湖と謂われている。


 但し、ラグーン湖は他の塩水湖とは違う。




 創造神カリダドの【血泪の雫】と呼ばれる紅い塩水湖だった。








 To be(続きは) continued(改訂版で)!】 ......





 The end(終幕)

読者の皆様にご報告があります。


次の小話に詳細を書いて居りますので、一読頂けたら幸いです。


最後に、読者の皆さまに感謝を、お読み頂き、ありがとうです。

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