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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第5章 傭兵騎士団乱舞編
38/40

第37話 廃神さん...再会する(13)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十一日

【エルブリタニア帝国~ナダリス領~グルト平原】






【エックス・バルブルッチ】

「殿下、反乱軍の陣形は、鳳凰の陣のままで、変化はありません!」




【ベリトリアス・エルブリタニア】

「ふむ、作戦通りに進めろ!」






 エルブリタニア帝国、ナダリス領のグルト平原に於いて、帝国騎士団【クリムゾンソード】を中核とした辺境貴族軍との合同軍一万五千が、風神の陣を敷き、今まさに反乱軍二万に襲い掛かろうとしていた。





 

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十三日

【エルブリタニア帝国~帝都エルシィ~元老院】






【ニックス・バルブルッチ】

「ば、馬鹿な! では討伐軍は敗走したと言うのか!!!」




【ヨハネ・アポカリス】

「其れでベリトリアス殿下は、如何致したのだ?」






 元老院の一室が、喧噪に包まれる。


 旧ガイアス公国領での反乱に対して、エルブリタニア帝国は反乱討伐軍を発した。


 反乱軍の総数は推定2万。即席の軍である反乱軍に対して、帝国最精鋭騎士団【クリムゾンソード】五千を反乱軍に向けたのだった。


 追従する辺境貴族軍一万。計一万五千の陣容で、負ける筈の無い戦いで、負けた。




 海戦では無く、其れも陸戦で。


 敗北の連鎖が、帝国を焦燥に駆り立てる。


 アダーク領の敗戦に続き、ナダリス領でも敗戦を喫した。






【アルスシア・サントーリ】

「詳細を述べよ! 我らは元老なり! 帝国を護る職責を忘れるな!」






 部屋の喧噪と焦燥を、一喝したサントーリ公は、目線でエルヴィス候に議長の職責を促した。




 アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十一日、反乱軍に攻撃を掛けた討伐軍は、終始反乱軍を圧倒していた。


 其れも其の筈、帝国騎士団【クリムゾンソード】は前皇帝であるアリトリアス・エルブリタニアが鍛えし最強の騎士団だった。


 一騎当千の騎士達で構成された、弛まぬ鍛錬で己を昇華し、実践で磨きに磨き抜かれた、抜き身の剣がクリムゾンソードだった。


 皇帝直轄騎士団であるクリムゾンソードの派遣は、皇族派が難色を示したが、ラクトリアス第一皇子の敗戦が帝国に与えた衝撃は由々しきものだった。


 其れを払拭するには完全なる勝利しか無い。其処で否応なく最強の剣を抜き放ったのだった。




 異変は突然起こった。優勢に戦いを進めていた討伐軍の足元が、泥濘(ぬかるみ)其の足が止まった。


 其れを機に、反乱軍が真の牙を剥く。


 水精霊人(ウンディーネ)海精霊人(トリトン)の水魔法が、当たり一面を泥濘(ぬかるみ)と化し、臭油が捲かれ火が付けられる。


 臭油とは、水でも消せない臭い油で、炎を上げながら、其の火が放つ黒煙により、討伐軍は息が出来ない状態だった。


 泥濘(ぬかるみ)で身動きも取れず、反乱軍からは矢が振り注ぎ、炎に身を焼かれ、黒煙に捲かれて息絶えた。


 帝国最強の剣は、其の真価を発揮する事も無く、......折れたのだった。






 ベリトリアス殿下の生死も不明。勿論、次男エックスの消息も。其れにつけ、帝国の国境にオルスカ王国軍が其の威容を隠しも為ずに存在し、バルブルッチ辺境伯領を睥睨(へいげい)している。


 帝国の窮地と、自領の窮地に、目眩で意識を無くすほどに、バルブルッチ辺境伯は憔悴していた。


 オルスカ王国には、帝国南部騎士団一万が既に出発している。街道沿いの貴族軍と併せれば四万。オルスカ王国も開戦に踏み切るかどうかは、未だ不明。国境を侵す素振りは全く見せていない。


 だが、オルスカ王国軍の情報が反乱討伐軍に伝わっていないと報告にある。


 つまり、急使が悉く何者かに狩られたと言う事だ。


 其れがオルスカ王国の仕業と断定する証拠もなく、外交特使をオルスカ軍に派遣して、国境での布陣の真意を測るしかなかった。


 




●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十二日

【エルブリタニア帝国デルス領~領都ブリュンヒルト~水の神殿《ネロノーズ》】






【フィアルス・ビクトール】

「グルト平原で、反乱軍が勝利したと言うのですか?」




【マイト・ニス】

「はっ、巫女様。グルト平原で帝国軍を打ち破った軍勢が、帝国領へ侵攻を開始しました!」






 驚くべき凶報が告げられた。


 勿論、同族である水精霊人(ウンディーネ)を始め海精霊人(トリトン)が与する反乱軍が勝利したと言う事は、喜ばしい。


 其れは生き残ったと言う事だからだ。


 だが、勝利が必ずしも良い未来を約束するものではない。


 其れを知っている水の巫女(リヤレヤスネロウ)は、其の報せを凶報と感じた。


 反乱による統治不能な状態で、民の食料が枯渇する事を懸念していた。


 現状でも十分でない糧食が、反乱軍の侵攻によって枯渇の速度が跳ね上がる。


 戦争とは、資源を糧として動く非生産活動である。




「マイト、此のままではキシソス領・ナダリス領・ミクタス領の飢えた民達が、救いを、食料を求めてデニスにやって来るでしょう! 各領から糧食がブリュンヒルトに運ばれた事は周知なのですから。現在、旧ガイアス公国領の糧食は反乱によって、統制が取れない状況です! 何か策を講じなければ、此処ブリュンヒルトは地獄と化すでしょう!」




「はっ! 糧食の管理と収集を急がせますが、施しにも限界がありますが? 如何致しましょうか?」




 慚愧に堪えない表情で、巫女に下知を求める神殿騎士団団長は、自分を恥じていた。


 巫女の知恵を、指示を得なければ動けない自分を恥じていた。




 


 ああ、海竜様。如何したら良いのでしょうか?


 海産物だけで凌ぐには、余りにも民の数が多過ぎます。


 如何したら、......






 悩める巫女に、悩める騎士団長に、又もや凶報が告げられる。


 デニス領領都ブリュンヒルトで、領都の住民と、各領からの避難民との諍いが、暴動と為ったと。




 FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、住民の忠誠度は大きな意味を持つ。


 此の忠誠度が下がり、食料不足に為ると暴動が発生する。


 暴動が発生すると、治安が著しく下がり、税収も滞る。


 つまり、資金が徴収出来ない状態に為る。


 資金が無ければ、施策も何も実行出来なくなる。


 負の連鎖により、図らずもブリュンヒルトを掌握した【水の神殿《ネロノーズ》】は、窮地に陥る事と為るのだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十二日

【バルブルッチ辺境伯領国境付近~オルスカ王国バルガの森】








【サリエリ・ダークス】

「獣王陛下、グルト平原の戦いに於いて、ギエロア殿が勝利を収めた(よし)にございます!」



【ランジャ・オルスカ】

「では、今暫くは動けんな。上手く事が運び過ぎるのも、困ったものだ!」






 グルト平原からの一報を受けたオルスカ軍は、エルブリタニア帝国の国境を越える事なく布陣したままだった。


 幾重にも貼られた策謀の糸が、エルブリタニア帝国を絡め取り、帝国の栄華を無きものにしょうとしていた。






●ブルーアース暦一年三月十日(アルグリア大陸暦千五百三十八年三月二十二日)

【迷宮都市バベル~迷宮バベル~十階軍事教習施設】






【エンプレス】

「もう終わりか? 降参するのか?」




【バルベルデ・ウォルフ】

「はぁ、はぁ、はぁ。ま、まだ、まだ!」






 特別演習施設【無限の戦場】で昼夜の休みなく続く地獄の特訓。心折れても致し方ない戦いでも、獣精霊人(ビーストマン)達は、苦しみに歪む顔に、笑みを浮かべる。


 戦いが全てだった獣精霊人(ビーストマン)達。


 其の戦う為の牙を折られ、這い蹲りながらも屈辱に耐えて生き残った獣精霊人(ビーストマン)達。


 彼らが求めて止まない喜びが、此処には在った。






【カルマ】

「......脳筋とは、変態だな」






 演習場の上空に浮かぶ真っ裸のカルマが呟く。




 其の視線の先には、戦う為に全てを捧げ、戦いの果てに死す事を夢見る戦士の群れが映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の東の端に位置するフューダー大王国アサン領。




 約数十年前は、其の地にはアサン皇国が在った。




 お家争いの末、国を滅ぼした侍達の国。




 政争の秤とされた十の災厄(アンタッチャブル)の一角、【麒麟(キリン)】の怒りの雷により消し飛んだ国。




 其の麒麟(キリン)の座す霊山【不死山(フジヤマ)】に、霊山の禁忌を破り、分け入る集団があった。


 其の集団は、一様に同じ格好をした集団だったが、人一倍目を引いたのは、両差しと呼ばれる侍の二本の刀を腰に携える姿だった。




 阿爺下頷(あやあがん)、意地が全てを曇らせる。


 目も、心も、命までも、......








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......


新章【傭兵騎士団乱舞編】、エルブリタニア帝国を襲う策謀! 因果応報なのか、其れとも?


バル達にアルグリアで戦って欲しい! と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!

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