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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第5章 傭兵騎士団乱舞編
35/40

第34話 廃神さん...再会する(10)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。



●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月五日

【エルブリタニア帝国~ナダリス領~ピルム街】





【アダム・ギエロア】

「燃えろ! 燃え上がれ! 刻は来た、我らの雌伏の刻は終わったのだ!」






 一人の外套を頭から被った男がそう呟いた。その視線の先には、業火に包まれるナダリス領代官館が映っていた。その男の目は、憎しみと怒りで紅く染まり、復讐の炎で身も焦がさんばかりだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十二日

【エルブリタニア帝国~帝都エルシィ~元老院】






 アルグリア大陸に激震が走った。エルブリタニア帝国の遊撃騎士団【双頭の竜】が壊滅し、帝国第一皇子の消息が途絶えた。其れは取るに足らない討伐のはずだった。


 旧ギエロア大王国領【現アダーク領】で、傭兵集団【フウマ】が反乱を首謀したとして、遊撃騎士団五千が派遣された。


 帝国が動く時、それは全ての準備が終わり、帝国の剣が降り下ろされる事実があるだけだった。


 だが、その剣が折れた。その事実にアルグリア大陸の国々は驚愕した。


 エルブリタニア帝国は【常勝不敗】を誇っており、現皇帝【ビクトリアス・エルブリタニア】に代替わりしてからは、一切の負けがなかったからだった。


 巷の噂として皇帝が体調を崩し、近々譲位が行われると言われていた事もあって、帝国民は帝国凋落の始まりかもと心配を隠せなかった。






【アレグス・エルヴィス】

「何たる事だ! 【隠者の手】からの詳しい報告はまだか! ラクトリアス殿下はどうされたのだ?」






 重厚な造りの、黒檀の長机に座ったカイゼル髭の森精霊人(エルフ)が、一人静かに気焔を上げる。その目は場に座る己以外の八人を見渡していた。




「苛つくな、エルヴィス候。貴殿の気持ちも解らんではないが、詳細な報せが来てからの事だ。此処で貴殿が何を言おうが構わんが、礼儀礼節は弁えて貰いたい」




 此処はエルブリタニア帝国元老院が在る建物の一室。貴族派の重鎮である【エルヴィス】侯爵を諌めるのは、皇族派の【アルスシア・サントーリ】公爵であった。


 【元老院】とはエルブリタニア帝国皇帝の治世を補助し、次代の皇帝を選出決定する機関である。その構成は【皇族派】・【中立派】・【貴族派】から各三名が選出されていた。


 各派ごとに思惑は勿論あるが、元老に選出された九名は総じて、帝国に忠誠を誓っていた。


 自分が次代の皇帝に推していたラクトリウス殿下が、敗れる筈もない戦いの途上で、率いていた騎士団ごと消息を断ったと第一報を受けた。それから一向に報せが届いてこない現状に、苛立ちを言葉の端に乗せたとて、侯爵を責めるのは酷と言うものだった。


 何より、己の嫡(・)男(・)も殿下同様に、行方不明なのだから尚更であった。


 しかし、此処は【元老院】である。エルブリタニア帝国の意思決定機関と言っても、過言ではない。其れ故に、元老には冷静さが求められる。一時の感情で冷静な判断を下せない者は要らない。感情よりも、冷静な判断こそが帝国を支えてきた【元老院】の職責なのだった。




「此れは失礼をした、サントーリ公。我とした事が申し訳ない。皆にも謝罪しよう、申し訳なかった」




 侯爵の謝罪に、八名の元老は在る者は頷き、在る者は片手を挙げ、在る者は黙礼で返答を返した。




「申し上げます! 【隠者の手】より報告が参っております!」




 そして、もたらされた報告の内容に、元老達は焦躁を隠せなかった。其れは遊撃騎士団の件ではなく、【一連の策謀】に連なる報告だった。


 旧ガイアス公国の【ナダリス領】で反乱が発生した報告だった。其れは予測された事態だった。その一連の策謀の首謀者である【フウマ】討伐の決めては、ある内通者からの告発であった。




 告発の内容は、フウマが首謀して、アダーク領で反乱を起こし、続いて旧ガイアス公国領の四領で反乱が起きる。


 討伐軍が旧ガイアス公国領に入ったと同時に、ベニアス王国が帝国に攻め入ると言うものだった。


 最初は一笑に附されたが、証拠と証言が積み重なり、【事実】が密告者の話が【真実】だと証明していく。


 人は己が見たい物を見て、聞きたい物を聞く。




 エルブリタニア帝国に、策謀の仕掛けが鳴り響く。【栄枯盛衰】、曾てガイアス公国を侵略した女皇帝の言葉が、帝国に深い影を落としていく。








●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十三日

【エルブリタニア帝国デルス領~領都ブリュンヒルト~水の神殿《ネロノーズ》】 





【フィアルス・ビクトール】

「海竜様、どうか私達をお救い下さい!」






 水の神殿で、【水精霊人(ウンディーネ)】の少女は、種族の守護神である【海竜リヴァイアサン】の石像に、跪き一心不乱に祈りを捧げていた。


 旧ガイアス公国領公都ブリュンヒルト。現デルス領都ブリュンヒルトは、ナダリス領から発した反乱の渦に飲み込まれていた。


 水精霊人(ウンディーネ)と海精霊人(トリトン)は、同じ守護神である【海竜】様を信奉していた。其れもあり、帝国に敗れた者同士で、旧ガイアス公国領【キシソス領・ナダリス領・ミクタス領・デルス領】を、以前にも増して活気ある地域に塗り替えたのだった。


 帝国も他種族統合国家として、アルグリア大陸の統一を目指しており、旧ガイアス公国領の発展は望ましいものだった。


 但し、反乱の芽が生えるまではであるが。




「巫女様、お時間です。私達をお導き下さい!」




 水の神殿《ネロノーズ》の女官が、【水の巫女(リヤレヤスネロウ)】である【フィアルス・ビクトール】に刻を告げた。刻とは、水の神殿に現在進行形で、収容中の信者達への顔見せの儀式であった。


 反乱が旧ガイアス領の四領全てに波及すると、在る者は剣を、在る者は槍を持ち戦いに馳せ参じる者達で溢れた。其れは帝国の統治下で育まれた意識であり、帝国の暴虐により、祖国を無くした者達の無念が、形として顕れたのものだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十二日

【エルブリタニア帝国~帝都エルシィ~貴族街】







【???】

「ふん、ラクトリウス兄上も存外、他愛なかったな。のう、オフェリス!」




【オフェリス・ベクシス】

「はっ! 申し訳ございません! この度の失態、如何様にも裁きは受けます!」






 帝都【エルシィ】の一画にある館の一室には、蝋燭立てが一つ机の上に置かれ、その周りには、闇が蠢いていた。その闇の一つが蝋燭の光りで、その輪郭を現す。現れたのは、【隠者の手】の統括者である【オフェリス・ベクシス】であった。


 その姿は、漆黒の外套を頭から被り、蝋燭の光りに照された顔には、従来の道化の仮面を付けていた。だが、首筋、そして外套から覗く手には、酷い火傷の後が浮き出ていたのだった。


 フウマの少年の自爆により、エルブリタニア帝国の誇る、遊撃騎士団【双頭の竜】は壊滅した。爆心地に居たオフェリスが助かったのには、ある絡繰りがあった。


 【隠者の手】の統括者には、専用の古代遺物(アーティファクト)である【冥府の指輪】が与えられる。其の効果は、死の淵に落ちる手前で、強制的に指定の場所まで転移する指輪だった。


 其の指輪により、爆心地で爆(は)ぜる寸前に強制転移され、九死に一生を得たのだった。






「殿下、計画はこのまま継続するのでしょうか?」




「勿論だ、闇森精霊人(ダークエルフ)には、未々踊って貰わねばな! くっくくく、ふっはははは!」




 豪奢な出で立ちの若者の笑い声が、蝋燭の光りに浮かぶ眉目秀麗な顔に。醜くい陰影を落としていた。






●ブルーアース暦一年二月三十日(アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十二日)

【迷宮都市バベル~迷宮バベル~十階軍事教習施設】






【バルベルデ・ウォルフ】

「野郎共、出るぞ!」




【ボルゲ・ラッサム】【獣精霊人(ビーストマン)の集団】

「「「おおう!」」」




 特別演習場に響く喧騒の中で、一段と男臭い集団が其の姿を現した。


 其の集団は、黒一色に染めた衣に、黒の革当て、黒の手甲、黒の外套を羽織っていた。其の集団を率いる者は、黒いアダマント製の重甲冑を身に纏いながらも、軽快な動きで集団の士気を揚げていた。


 対する敵は、白い鋼鉄の鎧を身に纏った集団で、一切の声を揚げない、まるで人形のように感情が欠落しているようだった。その集団を率いるは、白い衣に、白鋼の胸当てを付けた無表情な美女だった。




【エンプレス】

「ふむ、全力で我が相手をしてやる! カルマ、母の勇姿を其処で見ておれ!」




 その言葉に、特別演習場の真上に浮かぶ赤ちゃんは、苦笑するしかなかった。何故なら、赤ちゃんの母は、普通の母ではなかったからだった。







 FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、十の災厄(アンタッチャブル)は、死んでも甦る、甦る度に弱点が強化され、個体レベルも強化される存在だった。


 不可避の神罰と言われる理不尽な暴力が、赤ちゃんの言葉攻め(精神攻撃)で、十回もあっけなくお亡くなりになった。其の精神攻撃(言葉攻め)により、才能(スキル)【精神防御Ⅰ】を獲得した【氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】の才能(スキル)レベルも、【Ⅴ】まで上昇していた。


 両軍共に、赤ちゃんの号令を待っていた。一方は静かに、もう一方は騒がしく。






【カルマ】

『始め!(はぁ~)』






 赤ちゃんの号令で両軍が激突する! 片方は静かに、片方は雄叫びを揚げて!




 特別演習場の上空に浮かぶカルマが真っ裸で、嘆息する!




 其の視線の先には、己の母親が、大人気もなく黒の集団を、鎧袖一触で蹴散らす姿が映っていたのだった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸には、【不可避の神罰】と呼ばれる存在がいる。その存在はアルグリアの住民から、畏敬と畏怖を込めて【十の災厄(アンタッチャブル)】呼ばれていた。




 その十の災厄の一体に、【千手蜘蛛(センジュグモ)】と呼ばれる個体がある。其の個体は、【ヘクサ神林】を己の縄張り(テリトリー)として、配下に【蜘蛛精霊人(アラクネ)】を従えていた。




 其の領域に、ヘクサ神林が存在するデソロモア王国は、【蜘蛛精霊人(アラクネ)】と和平を結び、ある種の密約を交わしていた。





 間もなくデソロモア王国で、次期【魔王】を決定する【魔武乱闘(バトルロワイアル)】が魔王の任期終了と共に開催される。強者が弱者を統べる弱肉強食の魔王選出制度は、国家・人種種族・老若男女・貴賤に関係なく参加出来る制度であった。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

新章【傭兵騎士団乱舞編】が、始まえいました! 如何だったでしょうか?


新章、ワクドキ! と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!

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