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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第4章 詐欺師飛翔編
31/40

第30話 廃神さん...傍観する(13)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】






【ナークス・アエニブス】

(くっ、諦めるな! 考えろ、考えるんだ! 何かあるはずだ、母さん、私に力を......)



 詐欺師は、死中に活を求める。




 しかし、端から己の命など捨てている詐欺師にとって、この危機を脱するのに、懸けられるものは残されていなかった。




 詐欺師は諦めない。




 否、諦める訳にはいかなかった。




 詐欺師は、少女を救いたかった。




 詐欺師は、母を救いたかった。




 詐欺師は、()()()()()()()()




 そして、詐欺師は亡き母に助けを求めた。




 亡き母に少女を助ける、一助を願った。




 そう、詐欺師には、もう母親しか残されていなかったのだ。




 詐欺師の心が、悲観し、失望し、絶望し、心が折れるかに見えた。




 しかし、誰もが心折れる状況でも詐欺師の心は折れなかった。




 心の奥底にある“()()”が、詐欺師の心を、崩壊から繋ぎ止めていた。




 そして、心の奥底にある“()()”が己に語り掛ける。




 “諦めるな!”と。




 詐欺師の魔法は解けている。




 脂汗を流し、必死に平静を装う、詐欺師の意識は朦朧として来ていた。




 そして、朦朧とした意識故か、詐欺師は刻が止まった様に感じた。






【カルマ】

『ナークス! 否、ミクナークよ! ......』






 心の奥底の“()()”とは違う、静かで暖かな声が頭に響く。




 その声は、優しく問い掛ける。




 お前は良くやった。




 もう苦しまなくても良いと。




 母を助けられなかった想い。




 その想い故に、煩い、悶え、苦悩したと。




 その想い故に、お前は少女を助けたいと。




 (いや)、己の心を、己の想いを後悔から解放し、楽になりたいだけではないのかと?




 違う、違う、違う!




 私は強く、激しく、それを否定(ひてい)する。




 声は尚も優しく、問い掛ける。




 もう起死回生の手段は、余り残されていないと。




 ()()()()()だけでは、無理だと。




 ()()()()()だけでは、無理だと。




 現実を見ろと。




 明らかに挙動の不審なお前の様に、お前が二枚舌だと皆が覚っていると。




 許容しろ、現実を受け入れ、楽になれと。




 ...だが、それでお前は本当に良いのかと?




 満足なのかと?




 静かに、暖かいその声は、私に問い掛ける。






 (いな)(いな)(いな)






 私の心の奥底にある“()()”が、言霊(ことだま)を紡ぐ!




 俺は母さまとの誓いを守れなかった、己を許せなかった。




 俺は母さまの想いに気付けなかった、己を許せなかった。




 母さまを助けられなかった想いだと?




 そう悔しかった、無念だった、後悔した!




 母さまは死にゆく己よりも、残される私を案じていた!




 俺は後悔した、苦しかった、楽になりたかった。




 ああ、......母さまと重なる、母さまの匂いを、想いを感じる。




 母と少女が重なる。




 あの少女を助けるんだ!




 己よりも、父を案じるあの少女を助けたいんだ!






 その声は、静かに呟く。

 



『少女を助けても、お前の母は生き返らない......』




 私の心の奥底にある“()()”と、私の想いが融合し、それを強く拒絶する!






 そ・れ・が・ど・う・し・た?






 あの少女を助けたい!




 己よりも父親を案じる、あの少女の想いを、願いを、少女自身を、私は救いたいんだ!




 私は問い掛ける。




 あなたは、一体誰なのかと。




 その声は告げる。




 “俺はお前で、お前の願いを叶える者だ”と。




 だったら助けて下さい、あの少女を。




 あの余命幾ばくも無い、あの少女を助けて下さいと。




 それが無理ならば、この危機を脱する力を()にくれと。




 その為なら、()の命も全て捧げると。




 母と重なる少女を助けたいと、...どうか、どうか!




 どうか、助けて下さい! お願いします!




 ()()は、その声に乞い願った!






【カルマ】

『その願い聞き届けた......』






 そして、刻が動き出す。






 詐欺師は、脂汗を()き、朦朧(もうろう)としながらも、声を紡ぐ。





 

【ナークス・アエニブス】

言霊(ことだま)に、......想いを。言霊(ことだま)に、......願いを。我は、さ、詐欺師な、り。......我は、人を欺き、己を欺く者なり!」






 FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、才能(スキル)とはアルグリア大陸に住む、全ての生き物への才能神から贈り物である。




 才能神は見ている、生き物の行いを。




 才能神は知っている、生き物の想いを。




 才能神は叶える、生き物の行いと想いを。




 才能神は授ける、生き物に才能(スキル)を。




 才能神は願う、生き物の可能性を、その才能(スキル)に込めて。





 

 【アルグリア戦記】でナークス・アエニブスで遊ぶプレイヤーが少ないのは、メリットを超えるデメリットがあるからだ。




 余りにも激しい博打性故に、一部の好事家(マニア)しかプレイしないのだった。




 ナークス・アエニブスの才能(スキル)は、《詐術Ⅸ》《話術Ⅸ》《奇術Ⅶ》《催眠術Ⅸ》《交渉術Ⅴ》《鑑定術Ⅲ》《礼儀作法Ⅲ》《薬術Ⅲ》《錬金術Ⅲ》《長剣術Ⅲ》の十枠である。




 そして、称号《二枚舌》の効果は、嘘・虚言の効果(極大)【交渉時の成功率が八十パーセント上昇する】と言う超不正行為(スーパーチート)なものである。




 しかし、交渉失敗時に嘘・虚言が必ず露見する効果(極大)【失敗時に(なにがし)かの罰則が付与される。罰則は交渉内容により変化する】がある為に、一般プレイヤーはナークス・アエニブスを敬遠する。






 詐欺師は言霊(ことだま)を紡ぐ。




 その言葉に、想いを、願いを込めて紡ぐ。




 詐欺師は、人を欺く者である。




 そして、超一流の詐欺師は、己をも欺く者である。




 詐欺師の発した言葉に、周囲の者達は、騒然とし詐欺師を罵倒する。




「やはり二枚舌だったのか! この詐欺師め!」




 その様子を見守っていた大帝が採決を下す。






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「化けの皮が剥がれたか、......二枚舌よ? 我とミクナーク殿が以前からの知人と知らない愚か者よ!」






 大帝の雷の如き威圧を帯びた言葉が、詐欺師に直撃する。




 しかし、詐欺師は何食わぬ様子で大帝に告げる。






【ミクナーク・ベニアス】

「愚か者はお前だ! 俺を忘れるとは呆けたな、爺さん!」






 詐欺師が、事もあろうにアルバビロニア大帝国の大帝を罵倒する。




 騒然とする大広間で、詐欺師は更に吠える!






【ミクナーク・ベニアス】

「馬鹿ばっかりか? 俺はミクナーク・ベニアス。お前達、愚か者に二枚舌と呼ばれる男だ!」




【カルマ】

(ナーク、お前......相変わらず、口悪いな!)





 

 プロロス城の大広間で、姿と気配を消して空中に浮かぶカルマが嘆息する!




 その視線の先には、己の演目に参加した群衆(エキストラ)に、居丈高に罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐く、詐欺師の姿が映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の北北西に位置する風精霊人(シルフィ)が統治する北の大国、イルガリア共和国は、君主が存在しない国家である。




 君主ではなく一般国民の代表が集い、国を統治する。




 国民の代表を評議員と呼び、国を統治する為の意志決定機関を、評議会と呼ぶ。




 そして、評議会の代表を、元首と呼ぶ。




 君臨すれども、統治せず。




 元首を表す端的な言葉である。




 あくまで統治は国民の代表である、評議員の話し合いで決定する。




 評議会の定めた法律が、統治の基盤となっている。




 風精霊人(シルフィ)は自由を愛し、自由を尊ぶ。




 その気風に共感して、イルガリアの国民になる者もまた多い。




 国民が国民の為に存在する国が、イルガリア共和国であった。






 自由の国にも、不自由は存在する。




 その不自由によって巻き起こる、望まれぬ戦いの軍靴の音が、静かに自由の国に忍び寄っていた。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

ご都合主義満載! 出来れば【詐欺師飛翔編】の締めの33話までお付き合い頂ければ、幸いです!


ミクナーク、口悪いな、けど此れからどうなるんだ? と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/21 改訂しました】

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