表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第4章 詐欺師飛翔編
30/40

第29話 廃神さん...傍観する(12)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】






【ジズード・マラッセ】

「はっははははは~! やっぱり偽者だった! 俺は間違ってはいなかった! これでノクレ、お前も終わりだ!」




【ノクレ・オーディス】

「......」






 ベニアス王国の王妃マルガレーテの告発に、動揺する詐欺師ナークス・アエニブス。




 その状況から、己の判断は間違いなかったと確信した大商人ジズード・マラッセは、近衛兵に拘束されながらも、曾ての親友ノクレ・オーディスを嘲笑する。




 そんな状況に唖然としながらも、ノクレはジズードの言葉を受け、()()を悲しげに見詰めるのだった。






 FHSLG【アルグリア戦記】のプレイキャラクターは、アルグリア大陸暦千五百三十八年一月一日午前○:○○からのゲーム開始となる。




 但し、アルグリア大陸暦千五百三十八年一月一日午前○:○○以降に、プレイキャラクターが生誕する場合は、生誕時からのゲーム開始となる。




 では、ゲーム開始時にアルグリア大陸暦千五百三十八年一月一日午前○:○○前の記憶がプレイヤーに存在するかと言うと、それは存在しない。




 故にプレイヤーは、ステータス表示の情報表示から関係図を参照して、アルグリア世界での関係を把握する。




 関係図には、己との関連性と、詳細な部分では、相手の呼び方まで記載されている。




 また、プレイヤーはゲームシステムの情報閲覧で、他のキャラアバターの情報を得る事が可能である。




 そして、商人ノクレ・オーディスの情報閲覧の関係図では、ジズード・マラッセは今も尚、()()と記載されている。






 田舎の村から出て来たノクレに対して、商会長ジノル・オーディスの目に叶ったとは言え、商会の従業員の風当たりは強かった。




 しかし、そんな状況でも親身に接してくれたのが、同年代のジズード・マラッセだった。




 それから、苦難を共にした二人は親友となり、オーディス商会の両輪と呼ばれるまでに成長した。




 ノクレは商売に没頭して色恋には全く興味はなかったので、親友ジズードから付き合っている女性がいると聞いた時は、非常に驚いた。




 親友の恋を応援しようと相手を尋ねると、「今はまだ言えない」とジズードは繰り返すばかりだった。




 そうこうしている間に、商会長ジノルが体調を崩し、次期商会長にノクレを指名する。




 そして、ノクレに娘アリンと結婚して商会を継いで欲しいと、今際の際で懇願した。




 ノクレは恩人であるジノルの頼みを聞き入れ、アリンと結婚し商会を継いだのだった。




 その後、二人の子供を授かったノクレに、妻アリンは衝撃の事実を告げる。




 アリンとジズードは恋仲だったと。




 お互い好意を持っていて、いずれ父に話をして認めて貰おうとしていたと。




 しかし、今際の際の父の懇願を聞き、ジズードと別れたと。




 ノクレは、アリンを責めた。




 何故言ってくれなかったのかと。




 ジズードはたった一人の親友だと。




 彼はどんな思いで、己を支えてくれていたのかと。




 ノクレは、ジズードに謝罪した。




 しかし、その謝罪を聞いたジズードは、「アリンと二人で決めた事だ」と「気にするな」と言うばかりだった。




 そして、ノクレの直感が危険を鳴らす出来事が起こる。




 ノクレにもしもの事があった時に、ノクレの子供が幼い場合には、大番頭であるジズードが一時的に商会長に就任すると言う、覚え書の作成だった。




 確かにこの時期、アルグリア大陸を飛び回っていたノクレは、幾度となく賊の襲撃を受けており、危険な場面も多々あった。




 万が一と言う事もあると考えたジズードの提案を、アリンの件でノクレの為に身を引いた親友の言葉を信じ、己の直感に反してその覚え書を作成した。




 そして、オーディス商会の脱税が、商会の従業員から国に告発された。




 身に覚えのないノクレに対して、ノクレが主導した証拠が提示される。




 その時になって、初めて全てが親友ジズードの策略だと、ノクレは確信する。




 己は無実の罪で、処刑になる。




 家族も同罪で処刑になる処を、ローグレス王の慈悲により、王都からの追放処分で助かった。




 そして、オーディス商会は覚え書の通りジズードのものとなり、家族は()()()()()で亡くなった。




 ノクレは、後悔していた。




 己の直感に反して覚え書を作成した事ではなく、其処まで親友を追い込み、歪ませた己を責め苛んだ。




 済まない、ジズード。




 お前を歪ませた、俺を許せとは言わない!




 昔のお前に戻ってくれ、俺はその為に帰ってきたのだ!




 ノクレは奴隷の身分から解放され、為したいと思った事は、己の無実の証明ではなく、ジズードへの贖罪だった。




 親友を曾ての真っ当な商人に戻すには、罪を償わせなければならない。




 故にこの場を、設けたのだ。




 ジズードが死すなら、己も死のう。




 そう心に決めていたノクレは、悲しげに()()ジズードを見詰めるのだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【帝都プロロース~ロシナンテ商会百貨店付近】






【キルギルス・ノール】

(マリア! ベスを守ってくれ!)






 帝都プロローズの裏社会を牛耳るキルギルスは、部下の配置完了の報告を、苦悶の表情で待っていた。






 キルギルス・ノールは、プロローズの貧民街の孤児だった。




 親の顔も知らない。




 物心付いた時には、生きる為に悪事に身を染めていた。




 孤児仲間を集め、キルギルスは狡猾に勢力を伸ばしていった。




 戦わずに勝つ事を最上として、キルギルスはプロロースの裏社会で、確固たる地位を築いていく。




 そんな中で、孤児仲間のマリアとの間に子供が出来た。




 生まれた子供には、生き残る力強さの花言葉から、ベスティアと花の名を付けた。




 ベスティアは花言葉通り、元気で明るい子に育った。




 しかし、そんなベステイアを見守るマリアは、不治の病に冒された。




「キル、あの子を、ベスをお願い、愛してるキル、......ご免なさい」




 亡き妻は愛する娘を最後まで案じ、己を愛し先立つ事を謝罪していた。




 妻が亡くなってから間もなく、ベスティアがマリアと同じ病に掛かる。




 残酷な運命に、キルギルスは運命と宿命を司る才能神ジェミニを呪った。






 ベスの命の灯火は、消えようとしている。




 ロシナンテ商会への襲撃の前に、件の商会に面会を申し込んだが、商会長は帝城の商談会に参加しており、対応出来ないと告げられていた。




 商会を襲撃しても、()()()があるとは限らない。




 しかし、娘の苦しむ姿を見続ける胆力は、キルギルスには残されていなかった。




「パパ、ごめんね。私......ママに会いたい......」




 涙を(こぼ)し、(うな)されながら寝言を呟く娘に何かをしたい。




 その思いだけが募り、我慢の限界を崩壊させたのだった。




 部下から、準備が整ったとの報告が来た。




 この襲撃により、裏社会でのキルギルスの立場は、危機を迎えるだろう。




 プロロースに鳴り響く、百貨店を襲撃するのだ。




 官憲の追求は、免れない。




 超大国であるアルバビロニア大帝国は、帝都での暴挙を絶対に許さないだろう。




 この襲撃は、己の組織の壊滅を意味する。




 それは、己に従う部下達にも説明した。




 しかし、部下達は笑ってこう言うのだった。




首領(ドン)、俺達はあんたに付いて行くと決めてるんだ! 迷うな唯、命じろ!」




 阿呆共が、......。




 己に付き従ってくれる、孤児仲間達。




 済まん......。






【キルギルス・ノール】

「野郎共、い......」






 今まさに号令を掛けようとしたキルギルスの頭に、()()響く。




 良いのか?




 本当にそれで良いのか?




 お前の娘の為に、一命を懸けている男を裏切るのか?






【キルギルス・ノール】

「誰だ? ......」






 そして、刻が止まった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【帝都プロロース~ノール邸】






【ベスティア・ノール】

「パ、パパ......止めて!」






 (うな)される少女の寝台の真上で、姿と気配を消して空中に浮かぶカルマが憂悶(ゆうもん)する!




 その視線の先には、命の灯火が消えようとする少女が、知り得るはずのない父の暴挙を止める姿が映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の西部に位置するクローマ王国は、普精霊人(ヒューマン)が統治する商業国家である。




 このクローマ王国は一度分割され、再び再興した国であった。






 アルグリア大陸暦三百三十年七月、時の王リステッド・クローマが次期王位を決めぬままに、流行病で亡くなった。




 リステッド・クローマには五人の子供がいたが、王位継承で兄弟の仲違いを憂いた長子ミステッド・クローマは、己の王位継承を放棄して兄弟の融和を図った。




 しかし、長子の想いは兄弟には届かずに、クローマ王国は三つに国を割った。




 次男ルネテッド・クローマを祖とする、ミダス王国。




 三男ジュステッド・クローマを祖とする、ナリス王国。




 四男レセテッド・クローマを祖とする、レクリア王国である。




 そして、長女である王女へレナードは、隣国であったベガ王国に嫁いだ。






 アルグリア大陸暦千三百三十一年五月、西方三国と呼ばれたミダス・ナリス・レクリアの三国は統一され、クローマ王国が再興する。




 その再興の後ろ盾になったのが、アルグリア大陸の北西の雄であるアッバース王国であり、統一戦に協力したのが、クローマ王国に隣接するベガ・シリウス・デネブ・カペラ・スピカ・リゲルの六ヵ国であった。


 

 時が経ち、戦乱の機運が高まるアルグリア大陸に於いて、西方諸国でも争いの兆しは確実に芽吹いていた。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

ご都合主義満載! 出来れば【詐欺師飛翔編】の締めの33話までお付き合い頂ければ、幸いです!


キルギルス、暴挙は止めろと思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/21 改訂しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ