↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第4章 詐欺師飛翔編
26/40

第25話 廃神さん...傍観する(8)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十一日 

【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】






【ナークス・アエニブス】

「お客様、どうぞこちらへ......」






 少年と執事の二人を、二階のある一画へ、従業員に扮した詐欺師が案内する。




 その一画にある扉を開け、二人を先導して、進む詐欺師に少年は問う。




 お前の名はと。






【ナークス・アエニブス】

「名乗り遅れ失礼しました。私の名は、ミクナークと申します。お耳汚しですが、お見知り置き頂ければ幸いです」




【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「......」






 少年に対して、失礼にならない範囲の自然なお辞儀(カーテシー)をする従業員に扮した詐欺師。




 少年は頷き再度問う。




 我と以前に会った事があるかと。




 詐欺師は答える。




 初見であると。




 少年はそれを聞き沈黙する。




 そして、三人はあ(・)る(・)部(・)屋(・)へ入ると一瞬、微弱な魔力の波動を感じた。




 詐欺師は何故か今、閉じた扉を開けて告げる。




 この部屋に我が主が居りますと。




 少年は、頷き何も言わずに進む。




 執事は、それに従うも一切の警戒をしない。




 二人が部屋に入ると、地精霊人(ノーム)の商人が少年に問う。




 好みはと。




 主語の無い問いに、少年は答える。




 このままと。




 商人は、頷き二人を豪華な長椅子へ導く。




 少年は座り、執事はその背後に控える。




 商人が合図をすると、従業員に扮した詐欺師が、お茶と茶請けを長机に用意し、商人の背後に控える。






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「久しいな、ノクレ。確か本国で失脚したと聞いたが......」






 少年が、疑問を呈する。




 商人は、朗らかに答える。




 その通りですと。




 少年は、大笑いする。




 この商人は、アルグリア大陸中の全ての店も、己の家族の命も全てを喪失した。




 その事実を知る少年は、大いに笑う。




 全てを喪失した者の目と違う。




 これから何かを為し遂げる、覚悟の目をその商人はしていた。




 では、聞くのは無粋よな。




 少年は思う。




 全てを喪った者が為す商売ではない。




 況してや、人の身で、為し得る事ではない。




 一日でこの建物が、誰に作れ様か。




 底知れぬ怖さを感じる。




 只、底知れぬ高揚感も感じる。




 為らば我が場を整え、最前列でその催しを見てくれるは。




 少年は、商人に問う。




 五日後の催しに参加するかと。




 商人は、答える。




 是非にと。




 少年は、大笑いし商人に告げる。




 後程、書状を届けると。




 そして、少年と執事が部屋を後にする。




 見送る商人と、二人に付き従う詐欺師。




 詐欺師が、少年との別れ際に土産物を渡す。




 少年は、感謝を告げ立ち去った。






【ナークス・アエニブス】

「舞台は整いそうですね......」






 詐欺師は、己の左小指の指輪を触りながら、独り言(ご)ちた。






 FHSLG【アルグリア戦記】に於ける商業とは、貨幣・物を介する物の取引・交換と言う仕組み以上に、アルグリア大陸制覇を狙う勢力にとり、勢力運営に重要な資金源である。




 資金が底を突くと勢力は資源を売るか、他勢力から資金を奪うかしかない。




 そうしなければ、何も行動が出来なくなると言う、非常に重要な因子である。




 アルグリア大陸の勢力は、各月毎に税金を徴収する勢力もあれば、固定月に一括で税金を徴収する勢力と、各勢力毎に於いて区々(まちまち)である。




 つまり、商会も己の属する国家(各勢力)に、税金を国家が定めた方法で納めなければならない。




 そして、税金を納められない者は、国家の処罰の対象になる。




 只、貧民街に住む等の一部の者達は、税金を納めない代わりに国家から国民と認められておらず、そこに居るがそこに居ない者として扱われる。




 故に商会・国民であろうとも税金を払えない者は、罰則が国家から課せられる。




 特に国家の恩恵を受ける商会が、税金を免れようと脱税をすれば見せしめの為、家財没収の上、親族一同斬首に処す国家も存在する。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十三日 

【帝都プロローズ~ノール邸】






【キルギルス・ノール】

「そうか......」






 大男は報告を受けた。




 詐欺師から、例(・)の(・)物(・)の獲得の見込みが立ったと。




 だが、それは金では交換出来ないと。




 詐欺師の腕、つまり誰かを騙す事の報酬が例(・)の(・)物(・)だと。




 大男は焦る。




 大男の娘に、時間はないのだ。




 もう、何時亡くなってもおかしくない。




 それに、詐欺師の騙す相手が問題だ。




 アルバビロニア大帝国、アレキサンドロス・アルバビロニア大帝陛下だと。




 何の冗談だ。




 悪い冗談にしか聞こえない。




 只、詐欺師は、命に変えても例(・)の(・)物(・)は手に入れると言う。




 何故だ? 命欲しさにあの商会に潜り込んだのではないのか? 




 大男は思考世界を構築し、答えを導き出そうとする。




 何故、あの詐欺師は俺の娘の為に命を賭けるのか。




 答えは、一向に出なかった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十五日 

【帝都プロロース~ノール邸】






【キルギルス・ノール】

「糞、糞、糞! ......」






 大男は苦しむ娘の口に、回復薬(ポーション)を少しづつ挿し入れながら、苦悩に苛まれていた。




 詐欺師を介さず直接に、件の商会と取引すれば良かったのではと。




 刻一刻と衰弱していく娘に、大男は治癒を司る光神アリエスに祈る事しか出来なかった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「今日は双方共に、有意義な商談をしてくれ!」






 アルバビロニア大帝国の大帝自ら仕切る、大商談会。




 この大商談会の大帝の目的は、大帝国内の商業の活性化による税収の増加である。




 双方の片方である貴族の目的は、自領への商人の誘致及び、自領の特産物の流通経路の強化である。




 そして、もう片方の商人の目的は、新興の商人は後ろ楯を求めて、古参の商人は新たな仕入れ先と販路の開拓である。




 只、今回は通常の商談ではなく、件のロシナンテ商会が参加する情報が知れ渡っていた。




 その為今回は貴族も商人も、ロシナンテ商会との縁を求めて、この大商談会に参加している者が殆んどであった。






【ジズード・マラッセ】

「馬鹿な! 何故貴様が此処に居る?」






 帝城プロロスの大広間に、怒号が鳴り響く。




 場違いな怒号に不快な周囲の貴族と商人達は、何者が言い争っているのかと聞き耳を立てる。




 そんな中、二人を知る者は一触即発の場面に息を飲む。




 片や、アルグリア大陸全土に販路を持つ《オーディス商会》の商会長ジズード・マラッセ。




 片や、そのオーディス商会の前商会長ノクレ・オーディス。




 二人を知る人集(だか)りが、大きく輪をつくる。






【ノクレ・オーディス】

「久しぶりですね、ジズード」






 何で、こ奴が此処に居る? 報告では、ザッドロ王国で奴隷として売られたとあった。




 何にせよ、俺に仇為す者だ。




 対峙する俺達に、一人の地精霊人(ノーム)が近付き、ノクレに告げる。




「ノクレ会長、どうされました? 大帝陛下がお呼びで御座いますぞ!」




 うん? ノクレの手の者か、はて何処かで会った覚えがあるような。




 俺に睨まれた地精霊人(ノーム)は、屈託なく笑い俺に話し掛ける。




「お久しぶりですね。マラッセさん。私ですよ、お忘れですか?」




 俺は怪訝な顔をして、その老年の地精霊人(ノーム)の顔を見詰める。




「な、あ、貴方様は! ミクナーク殿下!」




 俺がまだ若き時にお会いした、ベニアス王国王兄ミクナーク・ベニアス殿下の、面影がある顔に、喋(・)り(・)方(・)に驚愕する。




 しかし、何故ミクナーク殿下がノクレと一緒にいるのだ?




 な、なんだと。




 あの件のロシナンテ商会の商会長がノクレだと! 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!




 こ奴を罠に嵌め、こ奴の商会を乗っ取って、まだ三ヶ月も経ってないぞ!




 そんな短時間で、アルバビロニア大帝国の帝都プロローズの一等地に、五階建ての店舗を持つなど、どう考えても無理だ。




 何かの絡繰(からく)りがあるはずだ。




 そうでなければ、辻褄が合わない。




 その時、俺はミクナーク殿下の右手にあ(・)る(・)べ(・)き(・)も(・)の(・)が無い事に気付いた。




 ニヤリ、くっくくくくく。




 なるほど、そう言う事か。






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「ノクレよ、久しいな。そちが今噂のロシナンテ商会の商会長とは、驚いたぞ?」






 玉座に座る大帝が、跪(ひざまず)き頭を垂れる二人の地精霊人(ノーム)の、一人に話し掛ける。




 商人である地精霊人(ノーム)は、恐縮するも答える。




 世は諸行無常に御座いますと。




 大帝は、商人の隣にいる詐欺師を誰何する。




 商人は、この方はベニアス王国の王兄であるミクナーク殿下だと答える。




 大帝は、再度誰何する。




 本物かと。




 はっ、と。




 誰何された詐欺師は、端的に答える。




 初めて御意を得ますと。




 詐欺師は大帝に告げる。




 今やロシナンテ商会の百貨店を知らない、プロローズの住民は居りませんと。




 ついては、ロシナンテ商会として、大帝に提案があると。




 アルバビロニア大帝国が、ロシナンテ商会の後ろ楯(スポンサー)になって頂ければ、アルバビロニア大帝国の他の大都市にプロローズと同じ店舗を展開しますと。




 大帝は、大いに満足げに頷くと詳しい話を別室でしようと告げる。




 すると、一人の商人が進み出て、大帝の前に跪(ひざまづ)く二人を糾弾する。






【ジズード・マラッセ】

「お待ち下さい! 大帝陛下! このミクナークは偽者、二枚舌に御座います!」






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【帝都プロローズ~ノール邸】






【キルギルス・ノール】

「全員を集めろ! もう待てない! 百貨店を襲うぞ! 何処かに例(・)の(・)物(・)があるはずだ!」






 魘(うな)される娘を、薬師に任せ、大男は部屋を飛び出し部下に告げる。




 朦朧とする意識の中、少女は妖精を呼び告げる。






【ベスティア・ノール】

「妖精さ、ん! パパを、お願い! マ、マ! パパをお、願い! パパ......! もう直ぐ、......楽にな、るから、ね!」




【カルマ】

(くっ! ......)



 少女が魘(うな)され、幻を掴む様に手を伸ばす先で、姿と気配を消し空中に浮かぶカルマが苦悶する!




 その視線の先には、己の死よりも、一人になる父親を案じる少女の姿が映っていた。

 





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の西南西に位置するテスラ王国は、龍精霊人(ドラゴニュート)が統治する連邦国家で、バクラ砂漠と呼ばれる大砂漠が、領土の五分の四を占める商業国家でもある。




 水源に都市を展開し、独自の流通網で経済を廻している。




 アルグリア大陸の中で、テスラ王国の位置付けは強国であるが、他国を侵さない中立国家である。




 その為、他国からの亡命者は多い。




 しかし、永住するには、気(プラーナ)を修得しなければならない。




 例え、自国民でも十八歳の成人の儀式までに、気(プラーナ)を扱えない者は国外追放となる。




 他国を侵略せず、自国も侵略させない国是を掲げるテスラ王国では、幼児から気(プラーナ)を練り、気(プラーナ)を纏い、気(プラーナ)を遣う。




 国民は幼き時から武を嗜(たしな)む、国民総兵士と言われる戦闘民族の集合体がテスラ王国である。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

ご都合主義満載! 【詐欺師飛翔編】の締めの33話までお付き合い頂ければ、幸いです!


キルギルス、もう少し待てよと思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/21 改訂しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。