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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第4章 詐欺師飛翔編
24/40

第23話 廃神さん...傍観する(6)

 毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十一日 

【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「ほう......で、あるか!」






 アルバビロニア大帝国の帝宮プロスにて、寛いでいた森精霊人(エルフ)()()が、声だけの存在から帝都の状況について報告を受けていた。






 帝都プロローズ、深夜のセポン通りに一ヶ所だけ光が漏れる、五階建ての建物がある。




 しかし、その建物からは一切音が聞こえてはこない。




 音と言えば、その建物を出入りする人々だけである。




 深夜にも拘らず、かなりの人々がその建物に吸い込まれては、吐き出されていく。




 アルグリア大陸広しと言えど、二十四時間営業で休日なしの店舗は何処にも存在しないし、その店舗の品質と品揃えと接客を一度味わってしまったら、もう普通の店舗では満足出来ない一種の中毒性が、確かにこの“ロシナンテ商会”の店舗に有った。




 そして、何時しか数々の商品が数限りなくある“ロシナンテ商会”の店舗を略してプロローズでは、“百貨店(デパート)”と呼ぶ様になった。

 



 その噂は噂を呼び、人々は熱狂し“ロシナンテ商会”の百貨店に行くのが一種の流行であり、行ける者が世間の羨望を集める一つの目安になった。




 そうなってくると様子見をしていた他の商会も、“ロシナンテ商会”の真似を始めようとする。




 しかし、実際どの様にしてその品質と品揃えを維持しているのか仕組みが全く把握出来ず、従業員から聞き出そうにもその従業員が建物の外に出る事が稀で、殆ど外出し無かった為、八方(ふさ)がりだった。




 そんな時、件の商会が現地従業員を募集して面接採用をすると言う情報が、商業ギルド経由でプロローズ中に広まった。




 そこで、“ロシナンテ商会”の商売の秘密を探るべく、他の商会を始め、()()()()()が密偵を送り込む為、優秀な人物を面接に送り込んだ。




 只、何故かそう言った目的を持った者達だけ面接で落とされ、それ以外の者達()()と、貧民街の首を傾げる様な者達が()()採用されていく光景はある種の意図があった者達からしたら、一種異様な雰囲気を(かも)し出していた。




 そして、その“百貨店”の噂が帝宮にまで届く様になると、その利権の匂いを嗅ぎ取った者達が(うごめ)くのが、アルバビロニア大帝国の一種の風物詩並みに当然の出来事であったが、この利権に関わろうとする、無能な帝国貴族は皆無だった。




 何故なら利権に聡い者達は皆、自分達の祖母・母・妻・娘・孫娘達から、危機迫った様子で(きつ)(きつ)く“ロシナンテ商会だけには手を出すな、近づくな、邪魔をするな”と言われていたからである。






 FHSLG【アルグリア戦記】での、生産品の区分は多岐に渡る。




 大きくは一次産品(農産物・資源等)・二次産品(薬品・工芸品・装備品・兵器等)に区分され、それから各種に区分されるが、一次・二次産品共に品質(クオリティ)が存在する。




 品質(クオリティ)の等級はD等級・E等級・C等級・B等級・A等級・S等級・SS等級・SSS等級の八等級で区分される。




 アルグリア大陸では、この品質区分は商業ギルドの鑑定師が基本、等級を決定する。但し、プレイヤーは己の“透明な板(タッチパネル)”の情報確認から容易に確認出来る。




 商業ギルドの鑑定師が、“ロシナンテ商会”の百貨店の商品を無分別に鑑定した結果、全ての商品がS等級以上の品質(クオリティ)を有している事が確認された。




 つまり、百貨店の商品は全て一流品以上の商品であり、その高額価格も価値からすれば転売しても、十分に利益が出る商品であった。




 その為、他国の商人は我先にと、その商品を仕入れ自国へと荷馬車を送り出し続けた。




 それでも尽きない品質と品揃えに対して、帝都プロローズの商人達は、開店して数日の商会に兜を脱いだのだった。






【アレキサンドロス・アルバビロニア】

「ふむ、美味じゃ。レイ、お前も食せ......」






 森精霊人(エルフ)の少年が執事を伴い、百貨店の一階の“食べ物(フード)祭り会場(フェスティバルコート)”で、どこにそれだけの食べ物が入るのかと言う勢いで、食べ物の山をその小さな体に納めていた。






【レイブルグ・ロシェ】

「はっ、確かに......」






 少年の執事は、器用に給仕をしながら己も食べ物を平らげていく。




 その少年の食べっぷりはまるで、“食べ物を倒す勇者(フードファイター)”の様に、周りの人々から歓声と拍手が送られており、“食べ物(フード)祭り会場(フェスティバルコート)”の盛り上がりは最高潮に達していた。




 しかし、一部の帝国貴族と思わしき者達は、その少年の雄姿を見て、皆一様に口を開けたまま固まっていた。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月九日 

【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】






【キルギルス・ノール】

「貴殿か、例の物を持って来た者とは? まずは感謝する。その上で俺が誰か知っていて例の物を持って来たで良いんだな?」






 顔に大きな傷痕が目立つ巨精霊人(ジャイアント)闇森精霊人(ダークエルフ)混血(ハーフ)である大男が、静かに佇む青年の森精霊人(エルフ)の伊達男に確認をする。




 男は帝都プロローズを裏から支配する、プロローズ闇社会の首領(ドン)、キルギルス・ノール。




 伊達男は答える。




 勿論です、あなたを失望させる事は無いと。




 大男は伊達男の前の大机に、大きな鞄を置き、鍵止めを開ける。




 すると金貨が溢れ落ち、これでもかと言うほど山盛りに詰まった中身が目に入る。




 それを確認した伊達男は、そっと懐から濃紺の布に包まれた物を、大机に置くと同時に手を放す。




 布がゆっくりと広がり落ち、緑色の小さな液体が入った硝子瓶がその姿を現すと、伊達男はご確認下さいと大男に告げる。




 大男が右手を挙げると、怖々(おどおど)とした普精霊人(ヒューマン)の男が、緊張した仕草で小瓶を鑑定する。




 そして、普精霊人(ヒューマン)の男が本物ですと告げると、(おもむろ)に大男は普精霊人(ヒューマン)の男の顔を己の左拳で粉砕した。




 噴き出す血の飛沫(しぶき)が、()せ返る臭いが、部屋に充満する。




 騒然とする大男の配下の男達が、武器に手を掛け伊達男の周りを包囲する。




 伊達男は汗を滴々(ダラダラ)流し、恐怖で体の震えが止まらない。




 伊達男は左手を右手で包み込むように、何かに祈るように震えている。




 狼狽え出し助けを請う伊達男に、周りからの威圧が襲う。




 伊達男は、白目を剥き気絶した。




 気絶から叩き起こされる伊達男。




 大男に事の次第を問い質す部下の男。




 大男は伊達男に告げる。






【キルギルス・ノール】

「この普精霊人(ヒューマン)には俺を騙す悪意の()があった。それと違いお前には悪意もなければ一切の感情の()も見えない。普精霊人(ヒューマン)が死んだ時も一切の感情の()が出ないのは、お前が感情を上手く制御しているからだ。それは別に良いんだが、普精霊人(ヒューマン)のお前を見た時の感情の()が安堵の()をしていた。初対面のはずの者同士が、一瞬でもその()を出すのはどんな言い訳も無用。お前達は以前会っている。つまり俺を騙す共犯者だと言う事だ。お前の失敗はこの間抜けを共犯者に選んだ事だ。何か反論はあるか?」






 大男がそう告げると伊達男は、取次筋斗(しどろもどろ)で焦りながら変装を解いていく。




 それを見て困惑していた大男の部下達が、正体を現した地精霊人(ノーム)の老紳士を吠え立てる。




 老紳士は、土下座で命乞いを始めた。




 先程の感情を完璧に制御していた、同じ人物とは思えない態度を(いぶか)しんだ大男が、老紳士に問う。




 お前の()()の目的は何だと。




 老紳士は、土下座の状態で答える。




 人の感情を()で見える男を騙せるか、己の技術を試しに来たと。




 激昂する大男の部下達。




 だが、大男は逆にその答えに興味を持ち、今の気持ちを尋ねる。




 老紳士は、震えながら答える。




 今度があれば、一人で騙すと大男に告げる。




 大男の部下達が喚き出す。




 巫山戯(ふざけ)るなと。




 俺達が首領が、()()()をどれだけ求めてたかと。




 気を持たせやがってと。




 老紳士は語る。




 ()()()が有りそうな場所に心当りがあると。






【ナークス・アエニブス】

「今噂の“ロシナンテ商会”なら現物、もしくはその情報があるはず。それに今丁度、従業員の面接をしている。私が探って来ますので命ばかりはお助け下さい!」






 大男は考える。




 ここで地精霊人(ノーム)を、一匹消しても娘は助から無いと。




 可能性を潰す必要は今は無いと。




 大男は老紳士を解放し、老紳士を見張る様に指示を出す。




 だが、この老紳士には違和感がある。




 大男は思考する。




 大男が、帝都プロローズの裏社会を制した手腕は見事であった。




 その原動力が、圧倒的武力・組織力・諜報力である事は間違いない。




 しかし、一番の理由は己の思考世界を己で構築し、己で最適解を導き出す、その圧倒的な思考力だった。




 その思考世界で大男は、違和感を洗い出す。




 老紳士は、俺の力をどの経路で知ったのか。




 老紳士は、何故俺の力を知りながら、あの間抜けを使ったのか。




 老紳士は、何故自分から変装を解いたのか。




 老紳士は、何故自分から()()()を探す手助けを申し出たのか。




 老紳士は、何故感情を制御出来るのに、()()()の名が出た時だけ、深い悲しみの()を出すのか。




 大男は、己の思考世界で、何時もの様に最適解を導き出そうとしていた。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十一日 

【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】






【ベスティア・ノール】

「妖精さん、私......早くママに会いたいな。じゃないとパパがずっと苦しむから......ごめんねパパ......もう直ぐ、もう直ぐ楽になるからね......妖精さん、私......パパもママ大好きなんだ......私がいるとパパは凄く辛そうなの......妖精さん、私......」






 少女が、吐息を洩らし(うな)される様に喋る。






【カルマ】

『うん、うんうん......』






 少女の寝台の真上で、空中に浮かぶカルマが真っ裸で相槌を打つ! 




 その視線の先には、己の死に怯えながらも、己の父親を案じる少女の姿が映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸には、数多の神々の伝承が存在する。




 このアルグリア世界を創造した創造神カリダド。そして、創造神は彼の下に十二柱の神々を創造した。






 一柱、英雄と秩序と法を司る、天空神ライブラ。




 一柱、女性と命を司る、魔法神カプリコーン。




 一柱、戦争と武を司る、軍神レオ。




 一柱、戦略と知を司る、知恵神ピスケス。




 一柱、愛と毒を司る、美神スコーピオン。




 一柱、文化と医術を司る、光神アリエス。




 一柱、冥府と輪廻転生を司る、闇神キャンサー。




 一柱、農耕と豊穣を司る、地神バルゴ。




 一柱、海と川と泉を司る、水神アクエリアス。




 一柱、火山と鍛冶を司る、火神タウラス。




 一柱、狩猟と森林を司る、風神サジタリウス。




 一柱、運命と宿命を司る、才能神ジェミニ。





 

 アルグリア大陸には、創造神を筆頭に十三柱の神々の恩寵と、恩恵の雨が降り注ぐ。




 その雨で芽生え咲くは、何色の花であろうか。




 それは、十三柱の神々も見通せない未来と言う名の、可能性の花かも知れない。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

ご都合主義満載! 新章の締めは、第33話!


【詐欺師飛翔編】、ベスティアを助けてと思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/20 改訂しました】

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