第15話 廃神さん...再会する(7)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●ブルーアース世界暦一年一月十二日 アルカディア大陸~世界樹の森
(アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日)
【コジロウ・フウマ】
「なんだ此処は? こ、ここは世界樹の森か? 否、雰囲気が、匂いが違う! それに暑い!」
【ライゾウ・キリガクレ】
「コジロウ様、あちらに見えるは......世界樹では?」
荘厳な雰囲気に圧倒されながらも、世界樹を震える指で差しながら、唖然としてライゾウはコジロウに尋ねた。
狼の圧倒的数の暴力に屈したフウマ探索組六人は、一人だけ失禁した者もいたが至って無事に過ごしていた。
ここは、空中に浮く真っ裸の赤ちゃんが招待してくれた場所だった。
その赤ちゃんは初めて会ったにも関わらず、親しげに彼らに話し掛けていた。
【カルマ】
『じゃあ、少し移動するね!』
ライゾウは全く少しではないと思いながらも、積雪降り積もる山道から一瞬で荘厳な雰囲気に包まれた森に移動して、口が開いたままの仲間達と同じく唖然としていた。
そして、少し後ろを確認すると、一人ゲンタだけが怖々と震えていた。
ゲンダユウ様、必ず息子様を一人前の忍者にして見せます。
新たに誓うライゾウであった。
ライゾウは、ゲンタの父ゲンダユウ・カトウが率いる組衆『雷精』の一員であり、ゲンダユウと共に数々の任務を遂行していた。
ライゾウは、忍者としては技と体は今すぐ上忍に成れる逸材であったが、心の在り方が弱かった。
否、強すぎて感情に流され易いのが欠点であった。
傭兵忍者集団『フウマ』には、見える敵と見えない敵がおり、曾ての敵である森妖精人と曾ての仲間である闇森妖精人からの嘲りと侮蔑、その視線と言葉は全く堪えなかったが、見えない悪意と謀略に対しては神経を尖らせていた。
特にフウマがアダーク領の統治に影で貢献し、一定の評価を受けると、敵意は露骨に、そして物理的にその姿を現しフウマを襲って来た。
その敵とは、エルブリタニア帝国の影と言われる諜謀機関『隠者の手』であり、その影は忍び寄る気配さえ感じさせず、あらゆるものに手が届くと言われた帝国の五感である。
実際、世界樹大戦で、フウマを含むギエロア大王国の全ての諜報部隊を出し抜き、森妖精人種連合国を勝利に導いた影の立役者であった。
隠者の手は狡猾にして、残酷な手段でフウマを苦しめた。
他民族融合を支え尽力した彼らフウマに、他民族からの嫉妬と悪意が突き刺さる様に仕向けたのである。
忍者・諜者とは表に出ないのではない、表に出てしまったら抑も、忍者・諜者の傑出した特性である暗部・間者としての利点が無くなる。
故に、隠者の手もフウマも表に出る訳にはいかないのである。
それを表に出す行為は、影の世界の暗黙の掟を無視した卑劣なる行いであった。
上げてから落とす、それは高ければ高い程に地に落ちた時の落差で傷を負う。
それを、隠者の手は画策したのである。
他民族が多く暮らすアダーク領に於いて、闇森妖精人は先住民族であり、元々はこの地域を統治していた人種であった。
その為、同じ様に帝国に敗れ移住して来た他民族の者達としては、闇森妖精人を同志と認識し合い協力して、この地で根を張る事に異存をはなかった。
しかし、アダーク領の隆盛が闇森妖精人だけの功績だと帝国が認識していると言われると、異を唱える他種族も多く存在した。
それは嫉妬だけではなく、実際に他種族の協力なくしてこれだけの繁栄は実現出来なかったからだった。
その矜持と実績が、他種族の多くが覚えた不満であり、隠者の手が画策した世論誘導であった。
実際は世界樹大戦以降、長い年月を懸け傭兵忍者集団『フウマ』が、闇森妖精人種を主軸として他種族を集団に取り込み、その他種族性からアダーク領の統治を裏から支えたのが真実であった。
しかし、隠者の手の画策により、精神的・物理的に地域からの孤立を一層深めるフウマは世界樹大戦以来の危機に陥っていた。
そんな時に、隠者の手の実行部隊が、里を強襲する事件が起きた。
その襲撃で少なくない人々が亡くなった。
ゲンタの父、組衆『雷精』を率いたゲンダユウも、仲間を庇いその傷が元で亡くなった。
その仲間とは、隠者の手の襲撃に己を激情のまま解放したライゾウであった。
そんなライゾウを諌め庇い傷付き亡くなったゲンダユウに、底知れぬ恩義を感じているライゾウは、ゲンダユウの忘れ形見であるゲンタを一流の忍者にする為、周りが引くくらいの激しい修行をゲンタに課していた。
アルグリア大陸暦千五百二十八年六月、傭兵忍者集団『フウマ』の里《ウイド》を、盗賊集団を装った隠者の手が強襲した。
その襲撃時に、隠者の手の者である道化の仮面を被った女に依って、幼子であったゲンタを人質に取られ、ゲンタを守る為に母シノブは戦う事も出来ずに命を落とした。
自分が母の足枷になり、幻蓮のシノブと呼ばれた母が何も出来ずに殺された。
その時の事を片時も忘れる事が出来ないゲンタは、それ以降何事にも臆病になり一人でいる事が多くなったが、唯一の身内の口の悪い祖母とライゾウだけが人との繋がりだった。
そんなゲンタに追い打ちをかける子供の無邪気と言う名の心無い言葉に、更に傷付きゲンタは孤独を友とした。
FHSLG『アルグリア戦記』のステータス表示の情報表示にある才能には、プレイヤーの多くのある思い込み(錯覚)が働いている。
それは才能とは単体でのみ、その力を発揮するとの思い込みである。
『アルグリア戦記』の制作運営会社が、プレイヤーにゲームを楽しんで貰える様に課した掟の一つである才能最大十枠の制約とは、不自由さの中の自由こそがやり込みの極意と言う制作運営会社の信念とは別にある思惑が存在する。
それは才能の可能性であり、情報表示の文字と数字では現す事が出来ない隠されたデータこそがその可能性を秘めている。
フウマの下忍ゲンタの才能は《身体強化Ⅴ》《雷遁術Ⅳ》《火遁術Ⅲ》《隠遁術Ⅵ》《投擲術Ⅵ》《小刀術Ⅲ》《体術Ⅳ》《逃走Ⅸ》《孤独Ⅸ》が九枠と、ある固有才能が一枠の合計最大の十枠であるが、闇森妖精人種の十五歳の少年の才能としては、高レベルな習熟度は異常と言える。
これは、偏にライゾウの鬼の修行の賜物であった。
下忍ゲンタのフウマでの評価は、才能の習熟度の高さの割りに決して高くはない。
何故なら性根の弱さが、実力を発揮出来ていない事と、その性根の弱さから習得した才能《孤独Ⅸ》の効果である単独時、全能力値×九倍で集団時、全能力値×○.一倍の不正行為才能が悪い方に働いているからだ。
アルグリア大陸の住民達は、自分の能力と才能が文字と数字で表示出来るとは全く思ってもいない。
剣術が、上手ければ剣術の才能がある。
火魔法が、使えれば火魔法の才能がある、位の漠然とした認識でしかない。
だからこそ、下忍ゲンタは仲間内で能力評価が最低で不合格確実と言われたにも拘わらず、下忍試験の試験科目“猫と鼠”で、猫役の試験官から唯一逃げきれた鼠として“逃げ足”のゲンタと呼ばれる様になった。
これは勿論、才能《逃走Ⅸ》の効果でもあるが、この時の試験官であるジョウ・シハスは才能《身体強化Ⅵ》《縮地Ⅴ》《疾走Ⅶ》《持久走Ⅵ》を持つフウマ十二家の一家であり、疾風のジョウと呼ばれる超級忍者“超忍”だった。
速度上昇系の上位才能群と敏捷値五百六十八ポイントを持つ超忍ジョウと、速度上昇系の限定才能と敏捷値四十五ポイントしか持たない少年ゲンタとの、試験科目“猫と鼠”で超忍ジョウが全く追い付けなかったのは異常以外の何物でもなかった。
これこそが、情報表示に文字と数字で現せない才能の可能性を秘めた隠されたデータの反影である。
この可能性の一つとして、才能の併用効果が挙げられる。
下忍ゲンタは、敏捷値四十五ポイントを才能《身体強化Ⅴ》《逃走Ⅸ》《孤独Ⅸ》の効果で上昇させても瞬間敏捷値四百二十四ポイントで、まだ超忍が持つ瞬間敏捷値千五百九十一ポイントには遠く及ばない。
ここでゲンタに奇跡が起こる、臆病と性根の弱さが、ゲンタの両親への思い・師匠ライゾウへの思い・口の悪い祖母への思いから、火事場の馬鹿力と言う無意識の覚醒を引き起こす。
従来の能力値計算は、各才能の恩恵を受けての、上昇値分の加算方式で計算される才能単体の効果の加算でしかない。
だが、覚醒したゲンタの敏捷値は、無意識に才能《身体強化Ⅴ》《逃走Ⅸ》《孤独Ⅸ》の敏捷値に加え《雷遁術Ⅳ》を使用した反射神経肉体強化・《火遁術Ⅲ》を使用した瞬間的な爆風発生に依る速度上昇・《隠遁術Ⅵ》を使用した存在の軽減に依る軽量化・《体術Ⅳ》を使用した効率的動作上昇により、才能の七重併用を実現し計算式は加算から乗算計算に移行される。
その才能の七重併用で叩き出した瞬間敏捷値は、驚異の四千七百六ポイントだった。
これが、情報表示に現れない才能の可能性“隠されたデータ”だった。
●アルグリア大陸千五百三十八年一月二十八日 エルブリタニア帝国帝都エルシィ
【オフェリス・ベクシス】
「殿下、準備整いました!」
赤髪の女は、青年にワインを注ぎながらそう返答する。
【???】
「クククククっ。念願を果たそうぞ、色欲よ!」
エルブリタニア帝国帝都エルシィにある帝城エルドラの一画にある部屋で、眉目秀麗な青年と、それに傅く道化の仮面の赤髪の女が、杯を交わしていた。
この時、まさにフウマ討伐の狼煙が上がったのである。
●ブルーアース世界暦一年一月十二日 アルカディア大陸~世界樹の森
(アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日)
【カルマ】
(おいおい、虐めなんかしている場合か......)
世界樹の根元で、空中に浮かぶカルマが真っ裸で呆れる!
その視線の先には、四人一組の仲間から罵声を浴びながら、一人だけ失禁した少年が何かに怯え震える姿が映っていた。
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アルグリア大陸の東南東に位置する旧ガイアス公国領は、四つの地域に分割統治されている。
領土の三分の二が内海と言う特異な地形だが、その豊富な水産資源から成る商業経済が、キシソス・ナダリス・ミクタス・デルスの各領を潤していた。
元々旧ガイアス公国は、水精霊人種が統治していた国であったが、エルブリタニア帝国に併合されてからは、海精霊人種の移住も進み種族融合政策も実を結び、一層の繁栄が約束されたかに見えた。
しかし、水面下では両種族共に帝国への反逆の炎が燃え上がっていた。
帝国の横暴な侵略から減退した人口も、侵略以前よりも増加した両種族は、虎視眈々と帝国への復讐の機会を待ち侘びていた。
時は戦乱の狼煙が上がる少し前、アルグリア大陸の平穏な時代は終わりを告げ、激動の血の時代が幕を開ける。
人々は、その血の匂いにある者は酔い、そしてある者は、その臭いに戦くのだろうか......
To be continued! ......
ご都合主義満載! 【フウマ激闘編】の締めは第20話です!
ゲンタ、格好悪い! 確りしろ! と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/16 改訂しました】