第14話 廃神さん...再会する(6)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日
【マルカ王国辺境~元ヤスム村跡付近】
【コジロウ・フウマ】
(はっ、なんだ? 囲まれている!?)
吹雪と積雪の中、この六人の集団の長である闇森妖精人の男は、右手を上げて皆の行動を止めた!
今回の探索行の目的は、ある二人の男女の行方探しだった。
但し、依頼人と探索目標が非常に政治的に繊細な問題を孕んでいた為、男の属する傭兵忍者集団『フウマ』が総力を挙げて探索を開始した。
通常の基本形態の四人一組から六人一組の特殊形態での探索行の事情としては、探索目標の片割れが冒険者ギルドのS級冒険者で異名持ちの上、出自がフウマの隠れ里のあるアダーク領を直轄地とするエルブリタニア帝国の皇家の者である為、細心の注意を払ったと言う事が挙げられる。
依頼主も同じ皇家の者と知り得ている男としては、焦臭い依頼に、己の属するフウマが難事に巻き込まれない様に、各部隊に万全の注意を払う事を徹底させたのは、次代の頭領としての気概であった。
男の鋭敏な感覚が、現在自分達が何者かに囲まれていると強く訴えていた。
吹雪で視界不良の中、懸命に敵の気配を探るが積雪の中では思った以上に身動きが取れず、何の気配も探れない。
焦燥感が募るが、長年の経験が気力でその焦燥感を押さえ付ける。
そんな油断なく周囲を伺う六人の目に、何か写るものがあったが、その事実を己自身で否定する。
何故なら六人の目には、空中を浮かびながら近付いて来る真っ裸の赤ん坊が映っていたからだ。
【カルマ】
『やあ! フウマの皆さん、こんばんは! 大人しく指示に従って下さい、敵対すれば命の保証はないですよ!』
六人は赤ん坊からの頭に直接響く声に驚くと同時に、周りに突然出現した気配に瞠目し、出現した気配の圧倒的な数に震駭した。
【コジロウ・フウマ】
「馬鹿な......」
思わず呟いた男の声に、彼の仲間達も漸く自分達の状況を察した。
六人の周りを囲む狼達の数は数百匹に達していたが、一匹足りとも唸り声一つ発さない様は異様であり、只々獲物である六人を見詰める姿に彼等は戦慄したのだった。
【カルマ】
(師匠曰く、敵対する芽は圧倒的戦力で摘め! ......だけど、過剰戦力過ぎる)
FHSLG【アルグリア戦記】の部隊編成は、勢力の規模に応じて、六段階的に拡張が可能である。
部隊編成表示で、小隊編成(六十個体まで編成可能)・中隊編成(二百五十個体まで編成可能)・大隊編成(千個体まで編成可能)・連隊編成(五千個体まで編成可能)・師団編成(二万個体まで編成可能)・軍団編成(五万個体まで編成可能)・勢力編成(五万一個体以上編成可能)と拡張される。
現在、カルマの最大可動兵力は八千個体程である。
母体は旧アクリス王国の兵力であるが、カルマはこれをアルグリア大陸で展開するつもりはなかった。
旧アクリス王国の精鋭中の精鋭五十名程と、ラック村を守護する様に展開している狼八百匹程が実際のカルマの現有兵力であった。
ハルベルト山脈は迷宮である為、魔物を討伐後放置して置くと迷宮に吸収される。
そして、討伐された魔物は一定時間後に再配置される。
この時、再配置される魔物は新しく産み出された個体であり、十の災厄と同様に記憶が継続し復活する個体は、アルグリア大陸では数える程しか存在しない。
何故それが判断可能なのかと言うと、【アルグリア戦記】では魔物もプレイ可能なキャラクターであるからだった。
また、ある条件を満たせば、十の災厄での無双プレイも可能であった。
現在、カルマはラック村の母体の他に数体の分体を、同期同調して動かしている。
この行為を可能にした才能を特典として獲得した時に、プレイしていたのは粘精霊人だった。
粘精霊人の種族才能《分裂融合》が、大陸制覇時に特典の一つ固有才能として昇華し獲得したとカルマは考察していた。
またラック村を警護する警戒網を構築すべく、精力的に活動していた三人目のカルマは、ハルベルト山脈の迷宮としての特性を活かし、雪狼を部隊編成し部隊編成個体の個体レベルを上げた結果、種族進化も二段階(雪狼→白狼→銀狼)進化した個体も出てきて、現在大隊編成まで拡張した部隊を統率していた。
【アルグリア戦記】の部隊編成表示には編成者を頂点にツリー型の組織編成機能があり、狼部隊の組織編成は三人目のカルマを頂点として、カルマ直属の銀狼小隊六十匹を本隊に、銀狼を中隊長にした白狼二百四十匹一個中隊を三個中隊分編成していた。
そして、ラック村守備隊としてカルマ直属部隊六十匹一個小隊が、マルカ王国方面に一個中隊二百四十匹が、旧アクリス王国方面に二個中隊四百八十匹が警戒網を敷きながら、ハルベルト山脈での個体レベル上げを効率的に行っていた。
【ゲンタ・カトウ】
「あぁぁっ~!(怖い、死にたくないよ! ばあちゃん助けてよ!)」
六人の侵入者の内一人の少年が、情けない声を上げ失禁した。
その臭いを嗅ぎ分けた狼達が鼻を鳴らす。
【ランマル・キサラギ】【アカネ・アカツキ】【コガネ・アカツキ】
「「「ゲンタ! マジかよ(なの)(か)!」」」
仲間内から上がる呆れと叱責の気配に、失禁した少年が顔を赤くする。
そして、鼻水と涙で濡れた顔で周りを見渡し、死の恐怖から呆然自失するのだった。
【ライゾウ・キリガクレ】
「くっ、ゲンタしっかりしろ! 亡き父上に合わす顔がないぞ!」
失禁した少年に喝を入れる中年の男が、鬼の形相で睨み付ける。
彼らは傭兵忍者集団『フウマ』の探索組で、今回はある事情により特殊な編成であったが、通常は四人一組(中忍ランマル・キサラギを組頭に下忍アカネ・アカツキ、コガネ・アカツキ、ゲンタ・カトウの三人で組を構成している)で任務に付いていた。
今回は上忍二人(コジロウ・フウマ、ライゾウ・キリガクレ)を四人一組に加えた、六人一組体制での特別な探索行だった。
【カルマ】
「あぅあぅあぅあぁぁぁ~(ライゾウ、......切れ過ぎだ!)」
極寒の吹雪舞う中、空中に浮かぶカルマが真っ裸で呟く!
その視線の先には、数百匹の狼に囲まれ失禁した少年と、それを叱る懐かしい顔が映っていた。
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アルグリア大陸の北東の中央よりに位置するエルブリタニア帝国には、古より帝国の影として仕える隠密集団が存在する。
その集団は、帝国の諜報・諜防・謀略・暗殺を司る特務機関である。
日々、帝国に浸透する諜者・暗部を確認・選別・抹殺し、皇帝・元老院・帝国護剣の命で任務を実行する帝国の五感と呼ばれる諜謀機関【隠者の手】。
帝国が動く時は既に全て終了しており、後は帝国の剣が全てを刈り取るだけであると言わしめた、帝国を帝国たらしめる存在こそが諜謀機関【隠者の手】だった。
エルブリタニア帝国には、表に決して姿を現さない影の集団が存在する。
その影は忍び寄る気配さえ感じさせず、あらゆるものに手が届くと言う。
アルグリア大陸の北北東に位置するザッドロ王国には、奴隷補充を目的とした特務部隊が存在する。
アルグリア大陸中の戦争・紛争地帯で、奴隷を購入補充する部隊で、他国からは侮蔑を込めて“ザッドロの腐肉漁り”と呼ばれていた。
しかし、ザッドロ王国では、その評価は大きく違う。
実際は、奴隷購入部隊を隠れ蓑にしたザッドロ王国最精鋭部隊だったからだ。
その証拠に部隊を統括するレンネン・ジャンヌ伯爵なる人物の正体は、国王ヘルムート・ザッドロの嫡男【レルムート・ザッドロ】その人であった。
王太子が直属で率いる部隊は、奴隷購入以外にも他国の情報収集と部隊の練度向上を目的としており、態とらしく奴隷を現金で買い叩いて購入する為に大量の資金を戦場に運び込んだ。
そして、その資金目当てに襲撃してくる盗賊団、又は盗賊団に偽装した他国の騎士団を返り討ちにして奴隷として仕入れると言う、趣味と実益を兼ねた様な合理的な部隊運営であった。
まさか、自国の騎士団が盗賊団に偽装していたとは言えない各国は沈黙を守り、合法的に戦奴隷を補充出来るザッドロ王国が他国の非を問う事は無かった。
その奴隷購入特務部隊は、【生贄の羊買い】と呼ばれ各国から畏れられていた。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 新章【フウマ解放編】が本格的に開幕!
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最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/16 改訂しました】