第13話 廃神さん...捕捉する(1)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十六日
【ザッドロ王国の王都セルバア~奴隷市場】
【フィリップ・ババロア】
「紳士淑女の皆様! 大変お待たせしました! 選ばれた方々のみ参加出来る特別公開買い付けを開始します!」
特別公開買い付け場で、代表競り人フィリップ・ババロア卿が開始を宣言する。
この買い付けに参加するには、保証金として最低五億ロア(アルグリア大陸通貨単位。一金貨=十万ロア)を奴隷市場に預ける事が第一条件で、前日の内見会で買い取り希望奴隷の承諾を得るのが第二条件、第三条件は公開買い付け場で競り勝つ事である。
但し、複数の購入予定者が居ない場合は、公開買い付けされずに単独購入者が最低落札価格での買い取りとなる。
また、ザッドロ王国の奴隷の待遇が、他国と隔絶している点の一つは、第二条件の奴隷の意思を尊重する姿勢であり、奴隷教育とも合わせてザッドロ王国の奴隷商売への誇りと、熱量を感じるのだった。
【フィリップ・ババロア】
「今回の公開買い付け! 目玉の一つ! カ○三五番! 山精霊人種の二百五十歳、元バロック王国筆頭鍛冶師! バヌエル・アスウォーカーは本人の希望に依り、最低落札価格での買い取りが決定しております! 続きまして......」
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日
【ザッドロ王国の王都セルバア~奴隷市場】
【フィリップ・ババロア】
「こちらです。どうぞお入り下さい!(何者なんだ? 不気味な奴等だ)」
代表競り人でもあり、奴隷市場の市場長でもあるフィリップ・ババロア卿は、黒の一行を特別応接室へ案内して、その素性を探ろうとしていたが、一行の独特の威圧感がその行為を困難にしていた。
【フィリップ・ババロア】
「入れ! ......お待たせ致しました。こちらが今回の特別公開買い付けのカ○三五番、山精霊人種の二百五十歳、元バロック王国筆頭鍛冶師バヌエル・アスウォーカーです。立会人は無しとの事ですので、何かありましたら遠慮なく呼び鈴を鳴らして下さいませ。では、ごゆっくりお話し下さいませ」
山精霊人を部屋に入れ、挨拶して入れ替わりにフィリップ・ババロア卿と使用人達が交渉の準備を整えて部屋を出ていった。
【バヌエル・アスウォーカー】
「お主ら、バロック縁の者達ではないようじゃが、何者じゃ? 儂を買ってどうするつもりじゃ?」
胡乱な眼差しで黒の一行を見詰める山精霊人は、静かに己の購入理由を問うた。
数時間前にバロック王国から依頼された者が、己を買い取りバロック王国に送り届けた後、奴隷解放する旨を山精霊人に伝えたが首を縦に振る事は無かった。
山精霊人には夢があった。
その夢の為に、故郷も王国筆頭鍛冶師の地位も捨て、放浪修行の旅に出たのであった。
その旅の途中で、戦争状態のウリンス王国とメルダボ王国の争いに巻き込まれ、ザッドロ王国の奴隷購入部隊に売り払われたのである。
ザッドロ王国では、大陸中の戦争・紛争地帯へ奴隷購入部隊【生贄の羊飼い】を派遣して、奴隷の補充を行っていた。
【エンプレス】
「我らが誰であろうと関係あるまい。その方の知りたい事は他にあるだろう? これが何か解るか?」
山精霊人は、大いにあると内心で毒突きながらも、黒い子守布に包まれた赤子を片手に抱えた黒仮面の貴婦人が、そっと机に置いた小さい金属製板を見詰めるのだった。
山精霊人は、その金属板を手に持ち色々触りながら、これは某かの古代遺物だと推測した......黒の貴婦人から次の言葉を聞くまでは。
【エンプレス】
「ちなみにそれは古代遺物ではない。我らが作りし魔導具だ」
FHSLG【アルグリア戦記】での生産職が、大陸制覇する殆どが所属制覇で、自分の制作した装備・兵器・道具等で大陸制覇に貢献するプレイスタイルが挙げられる。
しかし、【アルグリア戦記】は、一人用戦争ゲームであり、アルグリア大陸に登場するプレイキャラクター(各種条件を満たせば選択不可能なキャラクターは存在しない)は、誰でも喩え零コンマ以下の確率でも大陸制覇する可能性は全て平等に与えられている。
鍛冶師・木工師・裁縫師・彫金師・調理師・錬金術師・薬術師等様々な生産職で、己独自のスタイルで楽しむのが、【アルグリア戦記】の醍醐味であったが、生産職で大陸制覇を目指すなら奴隷身分と老齢のハンデはあっても、バヌエル・アスウォーカーは外せない。
難易度五段階目の『生産神の願い』で選択可能になるキャラクターの中でバヌエル・アスウォーカーは、物作りが至高の喜びと感じる生産厨のプレイヤーに、特に人気だった。
何故なら、鍛冶・木工・裁縫・彫金・調理・錬金術・薬術の生産才能を高レベルで所持しており、戦闘系才能では鎚術と盾術を所持していたからだ。
戦闘も生産も可能なキャラクターで、プレイヤー次第で兵器チート等のロマンプレイが可能な、自由度の高さがプレイヤー達に愛されていた。
斯く言うカルマもバヌエル・アスウォーカーで完全制覇しており、他の生産職キャラクターも含め生産を極めている。
その数値で表現出来ない高い経験値量と才能の融合が、山精霊人に提示した魔導具《個人認証型住民カード》の試作品であった。
異界ブルーアースでは実装されている魔導具の試作品を、山精霊人に進呈した黒の一行は交渉部屋を出たのだった。
その頃、もう一人のカルマは、暖炉の近くでカルスとマルナに見守られながらスヤスヤと眠っていた。
そして、三人目のカルマは、元ヤスム村跡に程近い山道を進んで来る者達を捕捉していた。
【カルマ】
「あぅあぅあぅあぁぁ~(やっと来たか~)」
極寒の吹雪の中、背後に狼達を従えた空中に浮かぶカルマが真っ裸で呟く!
その視線の先には、積雪の中を黙々と進む帝国の猟犬の姿が映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アルグリア大陸の中央付近に位置する世界樹の森には、最高位の魔物が多く生息している。
それ故に、名声と富を求め多くの冒険者と、世界樹の神秘を求めて多くの探索者が、森に足を踏み入れていた。
そして、力無きものは力有るものの糧となる自然淘汰の地に於いて、平穏に暮らしている者達も存在する。
それは、猫妖精人種が統治する魔法国家であり、独自の結界に依って強力な外敵の侵入を拒み、独自の軍隊を持つ小国であった。
その名はカツンパラデスと言い外界との接触は殆ど皆無だったが、偶に結界近くに迷い込んだ者が猫妖精人の姿を見掛ける事もあり、『世界樹の森の七不思議』の一つ“森の妖精”として冒険者・探索者の間では知られている。
また、『世界樹の森の七不思議』の内の一つとして、“世界樹の蛇”がある。
それは、広大な世界樹の森の中央に聳え立つ世界樹には、大樹を守護するが如く、その巨木の幹に絡み付く巨大な蛇が、超級探索者に発見された事から生まれた謎だった。
そんな七不思議の一つに数えられる巨大な蛇こそが、十の災厄の一角、『禍蛇』の内の一匹『巨蛇』である。
そして、もう一匹、目には見えない大蛇『虚蛇』が存在する事は余り知られていない。
この二匹の大蛇『巨蛇』ヨルムガルドと『虚蛇』ウロボロスは番であり、二匹で一つの十の災厄『禍蛇』として世界樹を守護しているのだった。
そして、『世界樹の森の七不思議』の内の一つに、“宝玉の聖人”と呼ばれるものがある。
此は、世界樹の森で魔物に返り討ちにされた冒険者の手記から得た情報で、石化効果のある息吹を吐く魔獣に襲われ時、偶々通り掛かった宝玉精霊人に依って一瞬で魔獣が倒され、件の冒険者を一瞬で癒し去って行ったと書き記されていた。
そして、その宝玉精霊人には額と一体化した真緋色の宝玉が、輝いていたと記述されていた。
『世界樹の森の七不思議』......その広大な森の神秘を解明した者は、未だ居ない。
人類は己の探求心を満たす為に、何処まで供物を捧げるのだろうか。
“好奇心は猫妖精人を殺す”と言う諺が、アルグリア大陸にはある。
九つの命を持つと言われる猫妖精人でさえも、好奇心故に殺されると言う人類への神からの警告である事は知られていない。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 前章【銀狼復活編】と新章【フウマ激闘編】の狭間話と、新章のプロローグ話!
次回、新章【フウマ解放編】が本格的に進みます! ワクワクすると思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/15 改訂しました】