第12話 廃神さん...再会する(5)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで23日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日
【ザッドロ王国の王都セルバア~闘技場】
仲間達の奮い起つ声が聴こえる。
仲間達を罵倒する声が聞こえる。
俺の仲間達を馬鹿にするな。
頭が朦朧とする、魔獣が醜悪な笑いを浮かべ、俺を嬲る姿が見える。
俺は、魔獣に弄ばれる。
それでも仲間達は、俺を信じ俺に声を揚げる。
仲間達を嘲る声が聞こえる。
俺の仲間達を嘲るな、ぶち殺すぞ。
目が霞む。
体の力が抜ける。
俺は負けるのか?
俺と仲間達のこれからが......崩れていく。
仲間達の声援だけが聴こえる。
仲間達の顔だけが見える。
痩せ痩けた顔が見える。
襤褸を纏った姿が見える。
闘いで傷付き不具になった仲間達が見える。
これからなんだ。
あの仲間達と俺はこれからなんだ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
俺は諦めない。
俺達は諦めない。
そして、俺が全てを懸け魔獣を倒す覚悟を決めた時、頭にその声が響いた。
そして、刻が止まった。
その声は問う。
俺が捨て身で魔獣を倒しても勝負は引き分けで、俺は半死半生で生涯を終えると。
仲間達は俺が死んだと思い殆どが自決し、死ななかった者達も俺と仲間の墓守りの為だけに生き続ける。
そして、一人また一人と、痩せ痩け衰えて死んでいくと。
それでお前は、本当に満足なのか?
本望なのかと?
巫・山・戯・る・な!
否、否、否だ!
仲間達は俺とこれからも一緒に生きていくんだ。
俺は問う。
お前は誰だと。
その声は語る。
“俺はお前で、お前の願いを叶える者だ”と。
なら、俺の願いは只一つ、仲間達と一緒に生きていく未来を俺にくれ!
その為なら俺は、何でもするし何でも差し出す。
どうか、どうか、助けて欲しいと俺は、その声に乞い願った!
【カルマ】
『その願い聞き届けた......』
そして、刻が動き出す。
老剣闘士は、傷付いた両腕を力無く垂れたままで、起き上がろうとしていたが、それを嘲る様に魔獣が吠え、心無い観客が老剣闘士に罵声を浴びせる。
襤褸を纏った不具の一団だけが、大きく声を奮わせる。
老剣闘士は、体を震わしながらも弱々しく立ち上がったが、左目だけは大胆不敵に魔獣を睨み付けていた。
その孅くも壮絶な姿を見て観客達は声を飲み、その姿に打ち震える。
【バルベルデ・ウォルフ】
「膝ま...ずけ! ひ...れ...伏せ! 我は...無...敵の...帝王也!」
老剣闘士が何かを呟くと、その体を銀色に燃える焔が包む!
魔獣は、一瞬本能が逃げろと警告を発したが、目の前の傷付いた獲物の姿が、その本能自体を全力で打ち消し、魔獣は一気に老剣闘士に襲い掛かった。
FHSLG【アルグリア戦記】は、ファンタジー歴史シミュレーションゲームであるが、戦争が注目されるゲームでもある。
その為、集団と集団の戦闘では、ステータス表示の部隊編成(勢力規模で部隊編成・軍団編成・勢力編成等情報表示が追加される)が、大きく関係してくる。
統率者の所持している才能・称号等効果の恩恵を部隊に編成されている者も受けられ、また部隊編成表示の詳細欄で主将一人と副将二人を組み込む事が可能で、結果として三人の才能・称号等効果と統率力計算値の恩恵を部隊全員が受けられるのである。
従来、最高難易度の創造神の試練では、バルベルデは半死半生の瀕死状態で奴隷として闘技場の一室で寝たきりであった。
そして、己の不甲斐無さで自決した仲間達と、己の不甲斐無さ故に、只生きるだけの仲間達を想い、後悔の日々を過ごしていた。
そんなバルベルデをカルマが戦士としてではなく、軍師として勧誘し仲間とした。
勿論、バルベルデの最後を看取り墓守りをする為に、生き残ったバルベルデの仲間達と一緒にである。
バルベルデを軍師として副将枠に配置すると、彼の称号効果も部隊に反映可能となり、カルマの称号《氷狼の寵愛》の狼系生物への統制と魅惑効果も掛け合わされて戦闘集団として、総合力の格が数段上がり大陸制覇の一翼を担うのだった。
そして、その当時からバルベルデが、亡き仲間達に懺悔し続けている事を知っていたカルマは、鬼畜仕様時の心残りの一つとして、バルベルデとその仲間達全てを救うと決めていたのだった。
FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、称号とは所持者の行動と結果で掴み取った勲章に他ならないならない。
稀に遺伝から所持している者もいるが、絶対数は行動の結果で獲得したものである。
バルベルデ・ウォルフは人気のキャラクターである要因の一つとしては、その称号を二つゲームスタート時に所持している事が挙げられる。
また、ゲームの進め方次第で、もう一つの称号を帝王最後の闘い前に獲得可能な件も挙げられる。
それは文言発動型称号《無敵の帝王Ⅰ》で、闘技場での戦績が二万五千戦無敗で獲得でき、効果は一分間、全能力値×千倍での無敵状態である。
尚且つ文言発動後、超回復効果で最長二十四時間前の状態に完全回復する。
また、次回発動待機時間が二十四時間で育成型称号の為、最大《無敵の帝王Ⅹ》まで育成すると十分間無敵状態になると言う埒外不正行為な称号なのだ。
しかし、プレイヤーは称号効果をステータス表示から確認可能だが、アルグリア大陸のキャラクター達は確認不可なので、経験則で才能を使用しているのが現実であり真実であった。
その為、発動条件が文言の場合は、一言一句間違わずに発言する事は不可能であった為、宝の持ち腐れ状態でその存在すら知らない事は必然の帰結であった。
銀色の焔に包まれた老剣闘士の傷付いた体が超回復効果の為、時間を逆回しにした様に体が蛇毒を受ける前の状態へ高速復元した。
そして、老剣闘士は己の両手の爪を武器として、魔獣を蹂躙して行く。
【キマイラ】
「「グッガァァ、ガッオォォ」」
老剣闘士が、駆けると魔獣の翼が弾け飛び、山羊の首を右の手刀で切り飛ばした。
魔獣は逃げようと逃走を試みるが、動作の速さが圧倒的に違う為、老剣闘士の残像から逃げたと同時に獅子の頭が爆砕されたのだった。
一瞬の静寂の後、爆発的な歓声が闘技場に轟き、結界が解除された闘場に、観客が雪崩れ込み勝者の老剣闘士を称えるのだった。
その中を、襤褸を纏った不具の集団が、よろよろと老剣闘士に近付いていく。
その集団が進むと海が割れるように人波が割れて行き、老剣闘士と集団が対峙し、両者とも涙を流すも声を一切揚げずに、只々お互いを抱き締めるだけだった。
アルグリア大陸暦千五百三十八年二月某日、バルベルデと元傭兵集団『銀狼』は、カルマの元に集いアルグリア大陸から一時姿を消す事となる。
【カルマ】
「あぅあぅあぅ......(バルお帰り......)」
闘技場の熱気の中、黒の子守布に包まれたカルマが黒い産着を着て呟く!
その視線の先には、仲間を想う熱い漢達の姿が映っていた。
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アルグリア大陸の東南東に位置するガイアス公国は、国自体の実に領地の三分の二が内海であり、【水の公国】と呼ばれ、風光明媚な観光地としても有名であった。
そして、公都ブリュンヒルトは大陸中から芸術家が集まる流行の発信地、【芸術の都】として栄えていた。
経済も水産業を中心に豊かで、隣国とも婚姻同盟を結び、戦いとは無縁の時代を長く享受していた。
しかし、栄枯盛衰の言葉通り、美しい華は散り行く運命にあった。
アルグリア大陸暦千三百四十二年三月、同盟国であるエルブリタニア帝国がガイアス公国へ突如、侵略を開始した。
時の公王ブエナスカ・ガイアスは、長女ナタリーナが帝国第三皇子ビクトリアスに嫁いでおり、突然の侵略を全く予見出来なかった。
宣戦布告も無い同盟国の暴挙に、ガイアス公国は徹底抗戦の構えであったが、長い平和は公国の剣と盾を錆び付かせていた。
勇壮美麗な【水龍騎士団《ウォータードラゴン》】が迎撃に出撃したが、エルブリタニア帝国女皇帝《アリトリアス・エルブリタニア》率いる帝国騎士団《クリムゾンソード》に、鎧袖一触で粉砕された。
余りの電撃戦の為、公国の他の同盟国も戦力の投入が出来ずに、公国は帝国に屈したのだった。
後年、この侵略戦争が女皇帝と第三皇子との間に絶対的な亀裂を生み、第三皇子が皇帝に即位すると前女皇帝は隠遁し姿を消したのだった。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 本話で【銀狼復活編】終幕となります! お付き合い頂き、ありがとうです!
次回から新章【フウマ激闘編】が始まります!
バル良かったね、仲間と幸せにねと思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/14 改訂しました】