第11話 廃神さん...再会する(4)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日
【ザッドロ王国の王都セルバア~闘技場】
【バルベルデ・ウォルフ】
「ぐっおおおおおぉぉぉぉぉ~!」
闘技場に木霊する老獣精霊人の苦痛の叫びが、無情にも魔獣の愉悦を刺激する。
魔獣の食欲は限界を超えていたが、それをより一層上げてくれる嗜虐性が魔獣を支配する。
魔獣の左前脚の攻撃は、明らかに獲物を甚振る意思に包まれていた。
老剣闘士は右の死角からの攻撃を避け様とするが、体が自分の意志に従わない状態だった。
蛇毒による激痛と発熱と痺れにより、老剣闘士にはもう闘う力は残されていない様に闘技場の観客達には映っていた。
観客が老剣闘士への期待が裏切られた事への反動なのか、心無い言葉を紡ぐ。
観客の多くは闘技場の英雄の呆気無い最後を想い、落胆の色は隠せなかった。
それでも、老剣闘士を信じる者達もいた。
襤褸を纏った不具の獣精霊人集団二百名程が、一時でも老剣闘士を疑った己を恥て、老剣闘士が死ねば己も死ぬ覚悟で闘いを見守っていた。
老剣闘士を助けに行きたい、しかし獣精霊人は特に力に魅入られている種族程、闘いを汚す事に忌避感を覚えるのだった。
況してや彼らは、元団長の想いを汚す訳にはいかなかった。
バルベルデは蛇毒で朦朧とする意識の中、闘技場に入場した時に見た曾ての仲間達の姿を思い出していた。
バルベルデが仲間を奴隷開放しても、不具になった身では闘いの術しか知らない彼らに、闘い以外で生き残るのは容易くは無かった。
誇りでは、腹は膨れない。
しかし約七十年間、バルベルデは仲間を買い戻しながらも、彼らに纏まった金を渡そうとしたが、誰一人として鉄貨一枚受け取らなかった。
馬鹿野郎共、......あんなに痩せ痩けやがって。
襤褸を纏い年老いた不具の獣精霊人集団......だが、バルベルデにとって掛け替えのない誇り高き傭兵集団『銀狼』の仲間達。
待っていろ野郎共、このクソ魔獣をぶち殺して腹一杯、飯食わしてやるからな......。
【キマイラ】
「「グッガァァァァ~! ガッオォォォォ~!」」
嗜虐性を隠しもせずに老剣闘士を甚振り続ける魔獣も、己の食欲の限界をこれ以上我慢する気は無くなったのか、前右脚で老剣闘士の首を刈りに行った。
老剣闘士は朦朧とする意識の中、無意識に左手の盾を翳し致命傷を避けたが、従来の盾捌きも見る影もなく、体ごと吹き飛ばされた。
闘技場を漂う悲壮感がより濃さを増して行く。
そして、従来の老剣闘士の運命は、この後老剣闘士が刺し違える覚悟の攻撃で魔獣を倒すが、結果は勝者無しの引き分けで闘いが終了し、老剣闘士は一命を取り止めるも瀕死状態のまま不具の奴隷として生涯を終えるのだった。
FHSLG【アルグリア戦記】のゲームスタートは、全キャラクター一律のアルグリア大陸暦千五百三十八年一月一日午前○時からである。
又、その日以降に生誕するキャラクターはそのキャラクターの生誕日からの生活開始となる。
勿論、若年齢キャラクターの方がプレイヤーの自由度が大きいので、老年齢キャラクターよりも好まれるのは必然だった。
しかし、仮想現実世界の特に対戦格闘型ゲームの中毒者の多くに人気なのが、三段階目の難易度の『闘神の夢』で選択可能になる、狼獣精霊人《バルベルデ・ウォルフ》だった。
理由は、バルベルデの運命の圧倒的兄貴感の物語が挙げられる。
それと対人戦、対獣戦等格闘型ゲームの中毒者の多くが、己のPSでバルベルデの運命を変える事に熱中したからだ。
バルベルデの所属するザッドロ王国国営闘技場、『価値の証明』は、他の国の闘技場と比べて1日の闘技場での戦闘が最大3回行える。
ゲームスタートから運命の闘技場の帝王最後の闘いまで五十四日あり、プレイヤーが各々の想いを胸に己独自の物語を書き綴る。
斯く言うカルマもバルベルデでプレイして、完全制覇を為し遂げている。
バルベルデはかなり強いキャラクターで、弱点は年齢による老化だが、その弱点を補って余りあるのが、闘技場で五千戦無敗で獲得出来る称号《闘技場の帝王》を既に持っている事。
称号効果は戦場が闘技場限定で、身体能力値×五十倍の不正行為級の身体能力値底上げだった。
そして、闘技場で一万五千戦無敗で獲得出来る称号《無敗の帝王》も所持していて、危機的状況【HP(生命力)が全生命力値三十パーセントを切る状況】下で任意で一分間全能力値×百倍、瀕死状況【HP(生命力)が全生命力値十パーセントを切る状況】下で、任意で一分間全能力値×二百倍の称号効果を得る。
しかも戦場関係無く使用可能で、プレイヤー次第では超不正行為になる称号だった。
今まさに老剣闘士が、不屈の闘志で称号《無敗の帝王》の効果を無意識に発動しようとしたその時に、彼の頭に直接声が響く。
朦朧とした意識の中で、幻聴かも何かも判断出来ない老剣闘士が一時、刻が止まった様な感覚に陥った。
【カルマ】
『バル! いや、狼よ! .........』
その声は、真摯に老剣闘士に問うていた。
今からお前は最後の力を使い魔獣を倒すが、勝負は引き分けとなり、お前は瀕死状態で、不具のまま奴隷として生涯を終えるだろう。
お前はそれでも満足だろうが、お前の仲間の殆どがお前が死亡したと思い自決する。
自決しなかった者も死を怖れてではなく、お前を想いお前の霊を弔う為だけに、生き残ろうとする者達だ。
そして、お前を想い、自決した仲間を想いながら、一人また一人と痩せ痩け、衰えて死んでいくだろう。
それでもお前は、本当に満足なのか?
本望なのかと?
老剣闘士は、朦朧とした意識の中で、はっきり拒絶し慟哭する。
否、否、否と。
そして、お前は一体誰だと老剣闘士が問うと、その声はこう答えた。
『俺はお前であり、お前の願いを叶える者だ』と。
そして、刻が動き出す。
【カルマ】
「あぅあぅあぅあぁぁ~!! (立て! バル~!)」
魔獣の遠吠えが木霊する中、黒の子守布に包まれたカルマが黒い産着を着て叫ぶ!
その視線の先には、傷付いた両腕を力無く垂らしたまま必死に立ち上がろうとする、闘いを諦めない漢の姿が映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アルグリア大陸の西の端に位置するデソロモア王国は、魔妖精霊人種が統治する軍事経済強国である
広大な草原と実り豊かな森林を領し、他民族との融合に成功した稀有な国だった。
商業、生産業共に活発に国が資金を投入して、経済でもアルグリア大陸屈指の国でもある。
軍事面は、独自の階級制で統括していた。
下級兵から三等兵・二等兵・一等兵・軍曹・曹長・準尉・少尉・中尉・大尉・準佐・小佐・中佐・大佐・准将・少将・中将・大将・元帥の基本十八階級に状況次第で、上級・特務を階級に冠する。
デソロモア王国の国王は代々【魔王】と呼ばれ、軍階級では『大元帥』であるが、その選出制度が異質だった。
古代の時代から自然の摂理は、強き者が弱き者を喰らい生き残る自然淘汰が原則であったが、近年は強き者が弱き者を守ると言う意識改革が為されて来た。
しかし、強者の種族の魂が、強き者を求めた。
その名残が弱肉強食の言葉通り、デソロモア王国では強者が厚く遇される『魔王』選出制度、【魔武乱闘】である。
魔王選出時期は、魔王が任期百年を終えるか、任期中に亡くなった場合の二つのみである。
但し、弑逆は禁忌とされるが、大義名分の正統性がある弑逆は認められる。
実に恐ろしきは人の心也。
民衆が納得出来れば魔王とて淘汰される絶対的制度により、デソロモア王国は古代より沈まぬ太陽と呼ばれている。
戦雲漂うアルグリア大陸に於いて、近々デソロモア王国の魔王の任期が終わり、【魔武乱闘】が開催される。
この魔王選出制度には国家・人種種族・老若男女の貴賤は無く、純粋に強き者が生き残る自然摂理の具現化した姿が、その制度にはあった。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 第12話までお付き合い頂ければ、幸いです!
バル負けるな! 立ち上がれ! と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/14 改訂しました】