第9話 廃神さん...創造する(2)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十五日
【ザッドロ王国の王都セルバア~奴隷市場】
【フィリップ・ババロア】
「それでは次の奴隷です! ナ二百三十五番! 地精霊人種の百六十歳、元商人! 銀貨一枚からです! どうぞ!」
喧騒と活気が入り交じった雰囲気が包む一般公開買い付け場では、代表競り人フィリップ・ババロア準男爵が、場を盛り上げながら迅速に売買を成立させていた。
基本、奴隷の競りは場の盛り上げの為に落札予想価格を予想して、最低落札価格の少し下の価格からの競り開始になるのだが、一般公開買い付け場は、誰でも保証金を預けなくても入れる場所なので全く趣が変わる。
只、ここザッドロ王国の奴隷市場は、他国の奴隷市場とは基本が全く違う。
奴隷に教育を施して、見た目も整えて奴隷の価値を上げて高能力・高価格奴隷に仕立て上げるのだった。
商品に付加価値を付けて、仕入れ値よりも高価格で売るのが、ここザッドロの国営奴隷市場の真骨頂だったが、何にでも例外は存在するのだった。
ザッドロ王国の国王ヘルメーロ・ザッドロ曰く、『無能に金を掛けても無駄』の言葉通りに、老い先短い老人に教育を施す時間は無駄として、身嗜みも最低限で競りに掛けていた。
【ノクレ・オーディス】
(このままでは、......終わらない! 誰か、......)
FHSLG【アルグリア戦記】では、才能枠の制限は十枠で枠が一杯になると、キャラクターは新しく才能を覚えて修得する事が出来ない。
枠に余裕があれば修行、又はアイテムスクロールで、新しく才能を覚える事が出来るのだが、枠が一杯時の唯一の修得のやり方は、既存の習得済み才能を習得度Ⅹまで上げて才能を進化させる以外には無い。
プレイキャラクターは、年齢の若いキャラクターの方が、枠に余裕があり時間を掛けて自分好みに育成出来るのである。
但し、【アルグリア戦記】をプレイすれば解るのだが、才能をステータス表示で見る事が出来るのはプレイヤーだけで、アルグリア大陸の住民は明確に才能を判別出来ないのである。
つまり、その人の人種・職業・行動・年齢で大体の経験で判断していて、鑑定系の才能を修得している住民も勿論いるが、何分にも習熟度が低く確実に判別出来る人が殆ど居ないのが現状である。
但し、鑑定眼等の特異眼の所持者は、其れには含まれない。
老人は才能枠に余裕が無い人が多く、教育しても覚えが悪く、枠が一杯で新才能が覚えられない事が多い事から、ザッドロ国王の言葉が生まれたのだった。
しかし、プレイヤーは違う。
鑑定系の才能を所持して無くても、FHSLG『アルグリア戦記』独特の情報閲覧機能で、氏名・備考(年齢・生年月日・人種・身分・第1次職業・称号・才能・人物説明)・能力値等を確認出来るのだ。
そしてカルマは、ゲーム世界へ転生する前に鑑定系の固有才能をカスタマイズしているので、氏名・備考(年齢・生年月日・人種・身分・全職業・称号・才能・人物詳細)・状態値(HP・MP等)・能力値(筋力・耐久力等)・部隊能力値(攻撃力・防御力等)をも判別出来るのだった。
【カルマ】
「あぅあぅあぅ! 『母さん、あの地精霊人の元商人をお願いします!』」
黒い産着と黒い子守布に包まれた赤ちゃんを片手で胸に抱き、黒いドレスと黒い帽子の黒仮面の婦人が、黒扇子で購入の意思を代表競り人に伝える。
傍らには、黒い鎧に身を包み黒い頭巾付き外套を羽織った、黒仮面の騎士が四人控えていた。
アルグリア大陸では、黒色は不幸事で使用する為、不吉な色として敬遠されている。
そんな黒の一行は、奴隷市場の雰囲気もあり、かなり異質で浮いていた。
【フィリップ・ババロア】
「銀貨一枚! 出ました! 他はありませんか? ......『ドン! ドンドン!』落札です!」
従業員が木札を渡して去っていく、......この番号が刻印された木札を、奴隷引き渡し所で決済金と一緒に渡して、奴隷と契約(隷属呪印)を結ぶのが一連の流れである。
【フィリップ・ババロア】
「それでは次の奴隷です! ............」
競りがまだまだ続いていく中、黒の一行は種族関係なく老人を次々と大量に、一人当り銀貨一枚から五枚で買い付けていくのだった。
【カルマ】
(マジか、......銀貨一枚って! 安っ!)
●ブルーアース世界暦一年一月十一日(アルグリア大陸暦千五百三十八年二月二十四日)
【アルグリース大陸~迷宮都市バベル】
【エンプレス】
『なんじゃ、......此処は、......』
迷宮都市バベルの上空に確りと脚を着けたまま、『氷狼』エンプレスは呆然としながら、眼下の巨大な塔を中心として、放射線状に広がる区画整理された広大な街並みを見下ろしていた。
街には活気があり、人々の目には精気が溢れていた。
【カルマ】
『母さん、実は............』
エンプレスの隣に浮かぶカルマが、状況を説明していくのだった......。
迷宮都市バベルの人口は、現在約八万人である。
内訳としては、氷柩の王国に囚われていた、旧アクリス王国の住民約七万六千人と、運悪くアクリス王国を訪れていた他の国々の約四千人の貴族・騎士・商人・冒険者等の人々だった。
当初、カルマはアクリス王ヨハン・アクリスのみを解凍して、アルグリア大陸の現在のアクリス王国の立場と、この異界ブルーアースの成り立ちを説き、ある程度の了解を得ると、次に王弟クリフを含める王候貴族約三百五十人を解凍して、ヨハン・アクリスから王候貴族に説明をさせた。
その過程で、勿論カルマの全能の力の一端を物理的に目の当たりした王候貴族は、精神的にも納得したのだった。
次にアクリス王国の住民約七万六千人と他国の人々約四千人を解凍して、国王・王候貴族に説明させ、再度カルマの全能の力で優しく物理的、そして精神的に理解して貰ったのだった。
彼等に与えられた選択肢は、異界ブルーアースで迷宮都市バベルの住民として生きるか、異界ブルーアースの他の場所で独自の集団として生きるか、再度凍結して永遠の眠りにつくかの三つしか無かった。
彼等の中には、迷宮都市以外での生活を選択した者も居たが、迷宮都市バベルの利便性を体験し、理解してしまうとそんな考えを選択した事さえ忘れる程だった。
全住民に個人認証型住民カード(魔導教導機能・通話機能付き)・個人認証型収納袋機能付き腕輪を配布して、過去アクリス王国で所持していた物を金貨等の貨幣以外を全住民に返却した。
そして、所持貨幣に付いては住民カードに記録として記載しており、今までより便利になったと住民から好評だった。
住民約八万人に、直接住民カードの教導機能を活用して、今後の住まい・仕事等を斡旋し、解凍後の数日で全住民に活気が溢れる様になった。
●ブルーアース世界暦一年一月三日(アルグリア大陸暦千五百三十八年二月十六日)
【アルグリース大陸~迷宮都市バベル】
異界ブルーアースに約八万人の旧アクリス王国の住民が定住すると決定した瞬間に、システムメッセージが鳴り響き、ある者が新たに創造された。
【システムメッセージ】
『ぱっぱら♪ ぱっぱ♪ ぱっぱぱ~♪ ......特異個体名《カルマ》の称号《異界の創造者》が《異界の創造神》に書き替えられました!』
【???】
『ぱちぱちぱちぱち! おめでとうございます! 異界惑星世界の創造神様~♪ ぱちぱちぱちぱち!』
【カルマ】
「あぅあぅあぅ......(ふむ、何かでた......)」
異界の迷宮都市の上空で、青白い光りに包まれたカルマが真っ裸で呟く!
その視線の先には、真っ裸の金髪碧眼の幼女の姿が映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アルグリア大陸の北北東に位置するザッドロ王国には、奴隷同士を闘わせて勝者を当てる賭博が『闘技場』で日夜興業されていた。
近年まで約七十年間『闘技場』で、帝王として君臨していた剣闘士がいた。
祖国オルスカとエルブリタニアとの戦いで捕虜になり、奴隷となった曾て団長として傭兵団『銀狼』を率いた老獣精霊人も、寄る年波には勝てず近々引退する事を決めた。
己を買い戻さずに、曾ての仲間を買い戻し続けて、後は己を買い戻すだけになった。
最後の闘いの相手は、人では無く魔獣『キマイラ』、獅子と山羊の双頭で有翼魔獣の体を持ち、尻尾は毒蛇の化け物だった。
この闘いを望んだのは、老剣闘士だった。
闘いの中で生き抜いて来た自負と、衰えゆく肉体での最後の相手は、強敵でなければ為らない。
そんな漢の最後の闘いを、曾ての仲間達も固唾を飲んで見守るしか無かった。
時は風雲を告げる戦いのにおいが色濃く立ち込める。
その時代に先駆け闘技場で一時代を築いた老剣闘士の、最後の闘いが今始まろうとしていた。
To be continued! ......
ご都合主義にガッカリした方も、後もう少しお付き合い下さい! 新章【銀狼復活編】の締めが第12話になります! 其処までお読み頂き、合わないと感じたら、それはもうって感じです!
貴重なお時間を頂き恐縮ですが、よろしくお願いします!
真っ裸の金髪碧眼の幼女(正体が判明するのは、かなり後の話になります)って誰? と思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!
最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/13 改訂しました】