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最強が学校へ行く(仮)

作者: 二酸化炭素

俺の名前はアレク=エイクリード。十六歳だ。

俺は今、フェアリース王国にある冒険者育成学校の入学試験会場で、校長の長い話を聞いていた。

まあ、俺はちゃんと聞いてないけどな。

暇潰しに、今日の試験について確認しておこう。

試験は、筆記試験、体力試験、そして魔法試験の三つがある。

この試験の結果は、合格や不合格を決めるのにも使われるが、合格者のクラス決めにも使われる。

クラスはSからEまであり、卒業後にクラスによっていろんな特権が付いたりする。

例えば、Sクラスで卒業すると、普通は冒険者ランクFからスタートするが、Fランクの一つ上のEランクからスタート出来る。

さらに、冒険者登録した後すぐに昇格試験を受けることができ、その結果次第では、Eランクよりさらに上のランクから、スタートすることが出来たりする。

他にもあるが面倒なので説明しない。

ちなみに、Eクラスは最初冒険者登録する時のお金がタダになるだけだ。

クラスは学年末のテストの結果で、上がったり下がったりするらしいが、まあ、俺としてはどうでも良いことだ。

おっと、話がそれたな。

筆記試験は、冒険者の基礎的な知識を見る。

体力試験は読んで字の如く、その人の体力や運動能力を見る。

どっちも俺なら大丈夫だろう。

問題は、魔法試験だ。

魔法とは、体内の魔力を使って炎の矢で貫いたり、風の刃で切ったりする事を俺らは魔法と呼んでいる。

魔法には下級、中級、上級というように、威力や魔力の消費量などで分けられている。

魔法試験は魔法の威力や、魔法の制御力、その人の魔力量を見る。

今の俺だと、魔法試験では頑張っても最低点を出すだろう。

なぜなら、今の俺の魔力量は物凄く少ないからだ。

俺の魔力量は、普通より少ない人の魔力量の十分の一ぐらいだ。

魔法の威力は魔力量に比例するから、俺の魔力量だと魔法の威力も低くなる。

魔法の制御力は多少自信があるが、おそらく焼け石に水だろう。


「・・・・それでは皆さん頑張ってください。健闘を祈ります」


やっと、校長の話が終わったみたいだ。まあ、頑張るしかないだろう。

幸い、今年は今までで一番志願者数が少なく、定員数より少し多いぐらいみたいだから、よっぽど点数が悪くない限り合格できるだろう。


数時間後


あれから、筆記試験と体力試験をやり終えた。

今度は魔法試験だ。

まず最初に、魔力量を測るみたいだ。

この時、魔力測定器という直径三十センチぐらいの水晶球を使う。

これに手をかざすと、水晶球が光る。

その光の強さで、大体の魔力量が分かる。

他にも、光の色でその人の属性が分かる。

属性とは、その人が使える魔法の種類のことで、火、水、風、土、闇、光、無の七つがあり、無属性は魔力そのものなので皆んな使える。

光る時の色はそれぞれ、赤、青、緑、茶、黒、白、無色に光る。

あとは、色の濃さでその属性の適性の高さが分かる。

濃ければ適性は高く、薄いと低い。

ちなみに、無属性は無色なので適性の高さは分からない。


「・・・・次の人」


俺の番が来た。

やれる事はやろう。


「まず最初に、貴方の魔力量を測ります。この水晶に手をかざしてください」


試験官の人がそう言ったので、俺は水晶球に手をかざした。

すると、水晶球がすごく薄く、赤く染まった。光るのではなく染まったのだ。

これが意味するのは、光っていることに気づかないぐらいの魔力量しか無いと言うことだ。

これを見た他の志願者が何か言っているようだが、そんなのは無視だ。


「魔力量の測定は終わりました。次に、自分の使える中で一番強い攻撃魔法を、的に打ってください」


そう言って、試験官の人は十メートルぐらい先の藁人形を指差した。

俺はその的に向かって、右手を前に出した。


「ファイヤーボール」


そう言うと、俺の手のひらから十センチぐらいの火球が出て、人が小走りする位の速さでまっすぐ的に向かって飛んでいく。

そして的に当たると「ボッ!」と音がし、藁人形が徐々に燃えていった。

俺が使った魔法は、火属性の下級魔法ファイヤーボールだ。普通の人だと藁人形を一気に燃やしたり、魔力量が多い人だと当たった時に、爆発して藁人形が消し飛んだりしていたが、俺の魔力量だと、火球に当たった藁が燃え、その火が他の藁に燃え移るようなショボイ魔法になる。

周りの反応は、魔力量の測定をした時と同じ様な物ばかりだったが、その中に


「え、今の無詠唱だったよな」


と、いう様な反応があつた。

普通、魔法を発動させる時には「我が魔力を糧にし・・・・」や「精霊よ。我が願いを叶えたまえ。我が望むは・・・・」などの、詠唱という文を読み発動するが、詠唱は言葉にすることで発動したい魔法のイメージを高めるためにあるから、魔法の制御力が高く、イメージがしっかりしていたら、俺がした様に詠唱せずに発動出来る。

まあ、他の奴らは詠唱してやっていたから俺も詠唱しても良かったが、無詠唱することにより魔法の制御力の高さはがアピールできると思ってやった。


「はい、これで全ての試験は終わりました。お疲れ様でした」

「ありがとうございました」


そう言って、試験会場から出た。

やっと終わった。後は結果を待つだけだ。

結果発表は五日後にあり、合格の場合そのまま教室に行き、新入生説明会を聞く。


五日後


さて、今日は合格発表だ。


「俺の名前はあるかなぁ。・・・・あっ!あった!良かった、受かってた。えーとクラスはEクラスだな。よし、じゃあ説明会行こう」


そう言って、教室に行った。


数十分後


特に何もなく説明会は終わった。

先生も普通の先生だった。

クラスメイトの一部は、俺の魔法試験の事を知っているのか、俺のことを見下す様な目で見てたいた。

まあ、俺は気にならないからいいか。

そういえば、すごく可愛い子を見つけた。

腰まである銀色のストレートの髪に、銀色の目、身長は百六十五センチぐらいで胸は大きかった。

席が近いと良いなぁ。

入学式は一週間後にある。

それまでに、いろいろ準備しないと。

今は、王都にある宿から学校まで来ているが、入学式が終わったら寮に入れるので、うまくいけば三年間、寮から通うことになる。


一週間後


入学式も何事もなく終わり、今は自分たちの教室に行く途中だ。

また、校長の話が長かった。

っと、教室に着いたみたいだ。


「それじゃあ、前に書かれている席に座ってください」


さて俺の席は・・・・お!一番後ろの窓側だ。

俺は席に着き、あの可愛い子がどこに座るか見ていた。

すると、あの子は俺の隣に座った。

よっしゃぁぁ!!!これだけで、学校生活が十倍楽しくなる気がする。


「全員席に着けましたか?では、まず自己紹介をしましょう。最初は私からで、その次は、一番前の列の廊下側から順にしていきましょう。では、皆さん改めまして。この一年Eクラスの担任をします、フィリス=レッシーナです。歳は秘密です。属性は水です。これから、よろしくお願いします」


なるほど、自分の名前と適性のある属性を答えればいいんだな。

順番的に俺が最後になるな。

それにしても家名がある人があんまりいないな。

まあ、冒険者育成学校だからしょうがないか。

おっ、あの子の番だ。


「シエル=エルフィール。適性のある属性は闇。よろしく」


名前シエルって言うんだ。

可愛いなぁ。


「なあ、闇属性って・・・・」

「ああ、多分そうなんだろ」

「え、闇属性。なんでこんなところに・・・・」


ん?闇属性がどうしたんだ?・・・・あ、闇属性は魔族が使う属性だから、シエルさんも魔族の仲間とか思われてんのか。

魔族とは人間と敵対関係にる種族で、過去何回も人間と魔族との戦争が起きていた。

でも、普通に人間でも持っている奴いるけどなぁ。


「皆さん、シエルさんは魔族とは何も関係は無いので、安心してくださいね。では、次の人にいきましょう」


俺の番がきた。


「はい。アレク=エイクリードです。適性のある属性は火です。よろしくお願いします」


俺の自己紹介が終わった後も少し話す人がいたが、前よりすくなかった。


「はい。これで全員、自己紹介しましたね。この後、学校を案内して今日は終わりです。明日からは本格的な授業があるので、皆さん頑張りましょう」


その後、学校のいろんなところを案内してもらって、そのまま解散となった。

皆んなが次々と帰っていって、俺も寮に行こうかなっと思った時、シエルさんと三人の男子が出て行くのが見えた。

なんだろう?っと思って後をつけてみる。

すると、校舎裏に着いて、男子達がシエルさんを囲んで何か話していた。

その後、シエルさんが逃げ出そうとしたが、近くにいた男子が腕を掴み、そのままシエルさんを投げ飛ばした。

男子達はそのまま、シエルさんを蹴りだした。

あいつら、シエルさんを蹴りやがって、ぜってー許さねー!!そう思いながら、シエルさん達に近づいて行く。


「おい!お前ら何やってんだ!」

「誰だい君は」


男子達のリーダーらしき男がそう言う。


「俺は、一年Eクラスのアレク=エイクリードだ。そう言うてめーこそ誰だよ」

「なんだ、Eクラスのカスか。僕は、一年Bクラスのルイス=リアナークだ」


Bクラス?なんで、Bクラスの奴がここにいるんだ?

まあ、聞けば分かるか。


「お前らここで何していやがる」

「何って、魔族の仲間の疑いがあるこの女に尋問していただけだよ。君も知っているだろ、この女が闇属性だってこと」

「ああ、知ってる。だけど、フィリス先生が、シエルさんは魔族とは何も関係はないって、言っていたぞ」

「その先生が言っていたことが、本当なのか、君は証明できるかい?」

「いや、できないが・・・」

「ならば口を出さないでもらいたい。それとも、もしかしてこの女を助けようとするということは、君も、魔族の仲間なのかな?ならば僕が倒さないといけないね」


何言ってんだこいつ。


「いや、俺は・・・」

「言い訳なんて聞かないからね!ほら行くよ!」


それから戦闘が始まった。

まあ、結果だけ言うと俺の圧勝だった。

こいつら弱すぎだろ。

Bクラスでこれなら、上のAクラスやSクラスもあまり強くないのかな。


「馬鹿な!この僕が、Eクラスのカスなんかに負けるなんて、嘘だ!!」

「嘘だと思うなら、もう一度やるか?」


そう言って剣先を向ける。


「くっ!次会ったら必ず僕が倒してやる。その時まで、首を洗って待っていろよ!」


そう言って、ルイス達は逃げていった。


「シエルさん大丈夫でしたか?」


そう言って、シエルさんに手を出した。


「大丈夫」


そう言って、シエルさんは自力で立ち上がった。


「そうですか、良かったです」


その後、シエルさんも寮に行くと言っていたので、念のため、シエルさんを寮まで送って行くことにした。

その途中、シエルさんが俺に質問してきた。


「ねえ、なんで私を助けたの?」

「なんでって、シエルさんみたいな可愛い子が蹴られてたら、普通は助けるよ」

「私が可愛い?」


シエルさんが首をかしげた。


「うん、俺はシエルさん可愛いと思うよ」


そう言うと、シエルさんの顔がどんどん赤くなっていく。


「シエルさん大丈夫?」

「あなたの名前を教えて」

「ああそういえば、まだ、名前言ってませんでしたね。俺はアレク=エイクリードです。よろしくお願いします。シエルさん」

「シエル」

「え?」

「シエルって呼んで。私もアレクって呼ぶから。あと、敬語もダメ。分かった?」


そう言って、シエルさんは顔を近付けてくる。


「わ、分かったよシエル」

「じゃあ、寮に行こう」

「あ、ああ」


それから俺は、なんでシエルさんがデレたのか、考えながら寮に向かった。

考えているうちに、女子寮に着いた。

寮は男女で別れている。

シエルを女子寮に送っり、俺も男子寮に行った。

寮に着き、部屋を確認した。

この寮は二人一部屋だ。

同じ部屋の人が、嫌なやつじゃなければいいが・・・。

そう思いながらドアを開ける。

そこには、赤い髪で目は茶色、身長は百七十センチぐらいの男がいた。

身長は大体、俺と同じぐらいだな。


「おっ、あんたが、もう一人の部屋の住人か!俺はジーク、呼び捨てでいいぜ。属性は火だ。よろしくな!」

「ああ、俺はアレク、アレク=エイクリードだ。アレクと呼んでもらってかまわない。属性はジークと同じで火だ。こちらの方こ、そよろしく頼む」


そう言って、ジークと握手する。


「なあ、アレクって、魔力量すごく少ないんだろ」

「ああ、そうだがそれがどうかしたのか」


俺は少し嫌そうな顔をした。


「いや、別に魔力量が少ないからって、アレクの事を見下そうとしてる訳じゃなくて、周りの反応が嫌にならないのかなって思ってさ」


どうやら嫌なやつではないみたいだ。


「俺はそもそも、そういう反応は無視してるから、気にならない」

「へー、そうなのか」

「なあ、そんなことを聞いてきたって事は・・・」

「ああ、御察しの通り、俺も魔力量が少ないんだ。アレクみたいに、すごく少ない訳じゃないが。っと、そろそろ飯の時間だな。食堂にいこうぜ」

「ああ、そうだな」


その後、食堂に行ってご飯を食べて寝た。


朝日が出る数時間前


まだ、誰も起きていない時間に、俺は起きた。


「昨日は、夜出来なかったから、いつもより気合い入れてするか」


まずは、準備運動をして筋肉をほぐし、それからランニングをする。

その後、筋トレや素振りなどした。

終わった時には、皆が起き始める時間になったので寮に帰る。

ドアを開けるとジークはまだ寝ていた。


「おい!ジーク起きろ!朝だぞ!」


声を掛けても全然起きる気配がない。


「おい、ジーク早く起きないと、飯がなくなるぞ」

「飯!!!・・・って、なんだアレクか、笑ってるけど、どうしたんだ?」

「いや、ジークが全然起きないから試しに、飯がなくなるぞって、言ったら、飯!!!って、言いながら起きたのが面白かっただけだ」

「マジで!?俺そんな起き方したの!?」

「まあ、それは置いといて、飯食いに行くぞ」

「あ、ああ」


次からジークはああやって起こそう。

そんな事を考えながら、食堂に行き、食堂でご飯を食べていた。


「あの、隣良いですか?」


と声が掛かった。

声を掛けてきたのは女の子で、身長百六十センチぐらい、緑色の髪を肩ぐらいまで伸ばしており、メガネを掛けていた。


「良いですよ」


と俺は言い、椅子を出してあげた。


「ありがとうございます。あの、私エリスって言います。えっと、良かったら友達になってください」


そう言って、エリスは頭を下げた。


「はい、もちろん良いですよ。俺はアレク=エイクリードって言います。よろしくお願いします」「俺はジークだ。よろしくな」

「あ、ありがとうございます。わ、私、私、・・・ふ、ふぇえええん」


は!?泣いた!?


「ど、どうした、何かあったのか!?」


ジークが、慌てた様子で質問する。


「わ、私、田舎から出て来たばっかりで、友達誰もいなくて、昨日、クラスの人に友達になってって、頼んだけど、なってくれなくて、もう友達出来ないんじゃ無いかと、思いはじめてて、でも、今さっき二人が何にも躊躇なく、友達になってくれるって言ってくれて、私とても嬉しくて・・・ふ、ふぇえええん」

「ちょ、ちょっと落ち着こう。一回落ち着こう。なあ、アレクこうゆう時ってどうすりゃいいんだ!?」

「知るか!俺に聞くなよ!ってか、お前も落ち着け!」


それから数分、エリスが落ち着くのを待った。


「すみません!友達がすんなり出来て安心しちゃって・・・本当にごめんなさい!」

「いえ、別に気にしていませんから」

「そうだぞ、俺らもう友達なんだから、細かいことは気にしない」

「本当に友達になってくれて、ありがとうございます」

「それより、早くご飯を食べましょう。今日から本格的に授業をするって、フィリス先生言ってましたし、ご飯食べて授業頑張りましょう」

「おう!」

「はい!」


そう言って、俺たちはご飯を食べ始めた。


「そういえば、エリスさんの属性はなんですか?」


色んなことがあって聞けてなかった質問をする。


「あ、はい。私の属性は風です。あと、私のことは呼び捨てで呼んでもらって構いませんし、敬語も、やめてもらって構いませんよ。もちろん、ジークさんも」

「では、お言葉に甘えて。エリスも俺たちのこと呼び捨てで呼んでもらっていいよ。あと、敬語も」

「いえ、この口調は癖みたいなものなので。あと、呼び捨てはまだ恥ずかしいというか、なんというか・・・」

「ん?何か最後言ったか?」


最後の方、エリスがボソボソと何か言ってたが、よく聞き取れなかった。


「い、いえ、何も言っていませんよ。そ、それより、お二人の属性はなんですか?」

「俺らはどっちも火属性だぜ。な!」

「ああ、でも、どっちも魔力量が少ないから、魔法はあまり使わない」

「そうなんですか?アレクさんは強そうに見えましたが」

「まるで、俺は弱く見えたみたいな言い方だな」


ジークが不機嫌そうに言った。


「ご、ごめんなさい。そういう意味で言った訳ではなくて・・・」

「ああ!すまん。別に怒ってる訳じゃないんだ」

「ダメじゃないかジーク。女の子を怖がらして」

「うるせぇ!」

「まあ、魔法の撃ち合いなら負けるだろうが、実戦ならだれにも負けない自信がある」

「どういうことですか?」

「やってみれば分かるよ」


そんな話しながら、俺たちはご飯を食べ終わり、教室に行った。


「皆さん、おはようございます。昨日にも言いましたが、今日から本格的な授業が始まります。怪我をしないよう、先生の話をよく聞いて、授業を頑張ってください。最初の授業は、戦闘訓練の授業です。第一訓練場に、着替えて集まってください」


俺たちは、着替えて、第一訓練場に行った。


「はい、皆さん注目してください。今から戦闘訓練の授業を教えてくださる二人の先生を紹介します。では、どうぞ」

「一年Eクラスのみんな、初めまして!俺が戦闘訓練の授業で主に体術や剣術を教えるガンザークだ!よろしくな!」

「私はロザーク。主に魔法の事を教える。」


なんか、テンションに差がある先生達だな。


「では、さっそく授業を始めよう。体術が学びたい奴は俺の所に、魔法が学びたい奴はロザークの所に集まれ」


そう言われたので俺は、ガンザーク先生の近くに行く。

暫くすると、他の生徒も、自分が学びたい分野に、別れたみたいだ。

やっぱり魔法が学べるロザーク先生の方が少し人数が多い。

ちなみに、俺とジークはガンザーク先生の方へ、シエルとエリスはロザーク先生の方へ行った。


「それじゃあ指示を出すぞ。まずは、三人一組のグループを作れ。作れたら、準備運動をしておけ。様子を見て次の指示を出す」


それじゃあ、まずはジークと合流して、あと一人どうするかなぁ。


「おーい、アレク。一人連れてきたぜ」


そう言いながら、ジークが手を引っ張っていたのは、身長百七十五センチぐらいの茶色の髪の男子だった。


「すまない、うちのバカが勝手に連れてきてしまった」

「誰がバカだと!」

「お前だよ。この人だって、同じグループになりたい人が、いたかもしれないだろ。それなのに、お前は勝手に連れてきやがって・・・」


そう言いながらジークの頭をグリグリする。


「もう、その辺でやめてあげてください。別に僕は、同じグループになりたい人もいなかったですし、逆にジークさんが引っ張ってくれたことに、感謝しているぐらいですから。あ、僕の名前はイルダスです。呼び捨てで良いよ。属性は土。よろしくね」

「ああ、俺の名前はアレクだ。こちらも呼び捨てで構わない。属性は火だ。よろしく」

「俺の名前はもう知ってるだろうがジークだ。俺も、呼び捨てでいいぜ。属性はアレクと同じで火だ。よろしくな」


お互い自己紹介を済ませ、準備運動をし終わったところで、ガンザーク先生から指示が出る。


「お前達、準備運動はきちんと済ませたか!今から指示出すから、よーく聞いとけよ!まず、一対一で模擬戦をしてもらう!余ったやつは審判と戦闘を見た後にアドバイスをする役をし、それをローテーションでしてもらう!全て組み合わせをしたら、後の組み合わせは自由にする!時間いっぱい模擬戦をしてくれ!以上だ!」


ガンザーク先生は放任主義なのか。

あっちで魔法を教えているロザーク先生は生徒一人一人に教えている。


「まず最初は誰がする?」

「僕は、審判をするよ」

「おう!分かった。じゃあ、アレクやろうぜ!」

「ああ、その次ジークが審判してくれるか?」

「了解、それじゃあ始めようぜ。イルダス合図よろしく」

「分かった」


そう言って、俺とジークは、訓練用の刃が潰してある剣を持って、三メートルぐらい離れる。


「それじゃあいくよ。・・・始め!」


開始の合図がされたと同時に、ジークが突っ込んできた。

俺はジークの剣を、鍔迫り合いになるように受け止めた。

数秒間そのまま鍔迫り合いをしていたが、どちらも一回後ろに跳んだ。

それから、今度は俺がジークに突っ込んで行った。

俺は下から斜めに切り上げると見せかけ、途中で剣を引き、そのまま突きをした。

切り上げる攻撃を、少し後ろに下がって避けようとしたジークは、突きがきたことにビックリして、反応が少し遅れていた。

だが、ギリギリのところで剣で逸らして対処していた。


「ジーク、やるなぁ!」

「アレクだってめっちゃ強いじゃねーか!今さっきの突きで、終わるかと思ったわ!」

「じゃあ、今度はジークが攻めてこいよ」

「それじゃあいきますか・・・ね!」


それからは、ジークの猛攻撃を俺は避けたり、受け流したりしていた。

そろそろ終わらせようかなっと、思った時にちょうどよく、ジークが切り上げる攻撃をしてきた。

それを受け止めた俺は、少し後ろに仰け反るような体勢になった。


「もらった!」


と言いジークが突きをしてくる。


「だが、あまい!」


と言って、俺は剣を持っている方のジークの手を横から蹴り、剣の軌道を逸らして、そのままジークの首に剣を当てた。


「そこまで!」


と、合図がかかったので、ジークの首から剣をひく。


「いやー、二人共すごく強いね!」

「まあ、魔力量が少なくて魔法がほとんど使えないからな」

「へー、剣術は誰かに習ったの?」

「俺は、我流だな」

「まじか!?我流であの強さなのかよ。俺は、親父が冒険者で小さい頃から教えられてたんだ」

「じゃあ、そろそろやろうか。イルダス」

「あ、うん」

「俺は審判だな」


そう言い、それぞれ配置に着く。イルダスは剣ではなく槍を持っていた。


「槍使いは苦手なんだけどなぁ」

「へー、そうなんだ。もしかしたら勝てるかも」

「さあ、どうだろうな」

「じゃあ、そろそろ始めるぜ。・・・始め!」


合図がかかったが、イルダスは動こうとしていない。


「来ないなら、こっちから行かせてもらうぞ」


そう言って、イルダスに突っ込んで行き、斬りかかろうとしたが、いきなり出てきた土壁に阻まれてしまった。


「なるほど、土魔法をそんな風に使うとは、思わないかったな。しかも、無詠唱か」

「まぁね。それじゃあ、もう勝たしてもらうよ!」

「いや、それは無理だと思うぞ。だってお前、無詠唱だからか知らないけど、魔法発動する時、目線が発動したい場所に向くから、トラップを仕掛けてもすぐにバレるぞ。バレたトラップは敵に利用されやすい」


そう言って、突いてきた槍を掴んで手前に引くと、イルダスは体制を崩して前に倒れる。

すると、そこに仕掛けてあったトラップが発動した。

どうやら仕掛けてあったのは、落とし穴だったようだ。

穴に落ちたイルダスに剣先を向ける。


「こんな風にな」

「そこまで!」


と、合図がかかった。

俺はイルダスに手を出し、穴から引き上げた。


「ありがとう。それにしても、よく気がついたね」

「ああ、敵の弱点を見つけるのは得意なんだよ」

「よし、じゃあ今度は俺とやろうぜ」

「うん!今度は目線も気をつけて戦うから負けないよ」


そう言って、二人が最初の位置に着こうとしていたが、その前に俺はジークを呼び止めた。


「ああ、そうだジークは盾を持って戦ってみてくれ」

「ん?なんで?」

「なんか、ジークの戦い方って盾を持った人の戦い方に似てると思ったんだ」

「やっぱりバレるか・・・。アレクが言ったように俺は普段、盾を持った戦い方をしているぜ」


そう言って、ジークは盾を持った。


「それじゃあ、始め!」


それから、ジークとイルダスが戦った。

どっちも同じぐらい強さだったみたいで、戦闘が長く続いた。

最初は、イルダスの土魔法にジークが反応出来ていなかったが、段々と反応していけるようになり、最後はジークがイルダスの首に剣を当てて勝った。

その後も、俺がアドバイスしたり、二対一で俺に挑んできて、返り討ちにしたりしていた。


「よし、お前ら!今日はここまでだ!昼飯食ってこい!」


ガンザーク先生がそう言うと、生徒は食堂へ行き始めた。


「俺らも行こうぜ」

「ああ、イルダスも一緒に行くか?」

「誘ってくれてありがとう。でも、僕は知り合いと食べようと思ってたから、遠慮しておくよ」

「そうか、じゃあ俺らはエリス誘っていこう」


そう言って、エリスを探そうとしていたら、奥の方から声が聞こえた。


「おーい、イルダスー!。ご飯食べに行こうよー!って、この人たち誰?」


そう言って来たのは、青い髪の女の子で、その隣にエリスとシエルがいた。


「あれ?アレクさんとジークさんじゃないですか。まだ、食堂に行ってなかったんですか?」

「ああ、そう言うエリスもまだ行ってなかったのか」

「はい、レーナさんが、知り合いの人も誘って皆で食べようと言ったので」

「レーナさんってのは誰のことだ?」

「ああ、レーナは彼女の事だよ。僕の幼馴染なんだ」


そう言ってイルダスは、青い髪の女の子を指差した。


「レーナでーす。よろしくねー」

「俺はアレクだ。よろしく」

「俺はジークだぜ。よろしくな。立ったまま話すのもあれだから、食堂に行って飯食いながら話そうぜ」

「ああ、そうだな。他の人もそれで良いか?」

「私もそれで良いよー」

「まあ、レーナが良いなら良いか」

「私も良いですよ」

「アレクが行くなら私も行く」


みんな、それぞれ返事をした。


「あれ?シエルさんはアレクさんの知り合いなんですか?」

「いや、前から知り合いだった訳じゃなかったんだが、昨日いろいろあったんだよ」

「もういいから、さっさと食堂に行こうぜ」


そう言って俺たちも食堂に行く。


「じゃあ、ちゃんとした自己紹介をしよう。まずは、俺から。俺はアレク=エイクリード。属性は火だが、魔力量がすごく少ないから魔法はほとんど使えない。よろしく」

「俺はジークだ。属性はアレクと同じで火だ。俺もアレクほどではないけど魔力量は少ないから魔法はあんまり使えないぜ。よろしくな」

「私はエリスと言います。属性は風です。よろしくお願いします」

「僕はイルダス。属性は土だよ。よろしくね」

「私はレーナだよー。イルダスとは幼馴染で小さい頃から一緒にいたんだー。属性は水だよー。よろしくねー」

「私はシエル=エルフィール。属性は闇。よろしく」

「それで、シエルっちとアレクっちはどういう関係なのー?」


とレーナが聞いてきた。

呼び方・・・。

まあ、いいか。


「別に俺とシエルは・・・」

「アレクは私の未来の旦那様」


は?ダンナサマ?


「え、ええ!?アレクさんがシエルさんの、だ、旦那様!?」

「アレク、君はシエルさんに何をしたんだい!?もしかして、ハ、ハレンチなことでもしたのかい!?」

「まて、皆んな落ち着け!俺はシエルに特に何もしていない!」

「特にってことは何かしたのかなー?」

「そうなのかい!アレク!」

「ああ!もう!お前ら一回黙れ!」


それから、なんとか皆んなを納得させることが出来た。


「っと、言う訳で、俺はシエルに対してハレンチなこともしていないし、シエルが俺のことを未来の旦那様と思ってるなんて今さっき初めて知った」

「そうだったのか、良かった。俺、アレクが悪いものに取り憑かれたのかと思って攻撃しようかと思ったぜ」

「ぼ、僕も」

「えっと、私もです」

「お前ら酷いな!?」

「それじゃあ、シエルっちはアレクっちに助けてもらったから好きになったのかなー?」

「それもある」

「と、いうことは他にも何かあるんですか?」

「私の属性は闇だから、今まで周りの人にさけられてた。でも、アレクは何も気にせずに接してくれた。あと、私のこと可愛いって言ってくれた・・・」


最後の方があまり聞こえなかった。


「へー、やるじゃんアレクっち」

「え?何が?」

「いや、何でもないよー」

「そういえばアレク、お前模擬戦の時、身体強化してなかっただろ」

「ああ、そうだが、いきなりどうした?」

「え!?アレク、身体強化してなかったの!?」

「イルダスー、私達アレクの模擬戦見てないから、分からないんだけどー、どうしたのー?」

「ああ、ごめん。どうやらアレクは身体強化無しで僕や、ジークを倒したみたいなんだ。もちろん僕達は、身体強化をしていたよ」

「それってすごいじゃないの!」

「すごいです!」

「さすが、私の旦那様」


最後なんか変な反応あったけど、まあ、良いか。


「皆んな、どうしたんだ?そんなにびっくりして」

「アレクさん、身体強化する前とした後だと最低でも、二倍ぐらい身体能力が高くなるんですよ。それを、元々の身体能力で上回るなんて、普通だったら無理です!それをアレクさんはやったんですよ!びっくりするに決まってます!」

「お、おう」


あれって、そんなにすごいことだったのか・・・。


「まあ、俺が聞きたいのは、どうやったらそんな身体能力が高くなるのかだ」

「僕も気になります」

「私もー」

「私にも教えてください。アレクさん」

「私にも、聞かせて」


皆んなが興味津々に聞いてくる。


「別に特別なことはしてないぞ。ただ、朝と夜にトレーニングしているだけだぞ」

「それだけ?」

「ああ、それだけだ。何なら今日の夜から、一緒にやるか?」

「俺はやるぜ」

「じゃあ、僕も」

「私もやるよー」

「わ、私もやります」

「私も」

「じゃあ、夜になったら、第一訓練場に集合な」


その後、ご飯を食べて、職員室に行き、第一訓練場の使用許可を貰ってから、教室に行って午後の座学の授業をした。

そして夜になり、俺達六人は、第一訓練場に集まっていた。


「それじゃあ、始めるぞ。まず、この訓練場で走ってもらう。だが、ただ走るだけじゃない。全力でスピードを落とさずに走ってもらう」


第一訓練場は一周五百メートルぐらいだ。


「それじゃあ行くぞ。付いて来れる奴は、俺について来てもいいぞ」


結果だけ言うとジークは五周、イルダスは三周半、シエルとレーナは二周、エリスは一周だった。ちなみに俺は十周走った。


「じゃあ、次いくぞ」

「ちょっと、休憩させてくれ」

「いや、次いくぞ」

「身体がもたないよー」

「大丈夫。慣れるから大丈夫」

「それは、大丈夫とは言えないんじゃ・・・」

「まあ、兎に角、次いくぞ」


その後も、色んなことをして五人の身体能力を把握した。


「もう、動けねー。アレクは俺たちより動いてたのに、まだ、ピンピンしてやがる。あいつ、化け物だろ」

「ジーク酷いぞ。俺はこれでも、いつもより抑えてる方なんだぞ」

「やっぱり化け物じゃねーかよ」

「まあ、それは良いとして、そろそろ次行くぞ」

「今度は、何をするんですか?」

「次は、皆んなの魔法制御力をみるから、これに身体強化魔法をかけてくれ」


そう言って、俺は卵を沢山出した。


「それ、卵だよねー。それに身体強化をかけて、何するのー?」

そう言って、レーナが首を傾げた。

「身体強化をこの卵にかけて、地面に落としてもらうんだよ」

「それだけ?」

「ああ、それだけだ。だけど、これを甘く見ない方が良いよ。身体強化を均等に卵にかけないと、卵は割れてしまう。まあ、これは実際にやってみたら分かると思う」


皆んなが卵を手に取って、身体強化をかけて地面に落とすが、落とした卵は全て割れてしまった。

その後も、次々と卵が割れていく。

結局、持ってきた卵は、全て割れてしまった。


「あーあ、卵がもったいねーな」


落とした卵の残骸を見てジークが言う。


「ああ、そう言えば言ってなかったな。俺が持ってきた卵は全て処分される筈だったものだから心配しなくても良いぞ」

「そうなのか、それなら良かったぜ」

「じゃあ次は、身体の隅々まで魔力を循環させてみてくれ」


そう言うと皆んな、体内に魔力循環させ始めた。

だけど皆んな、指先とかつま先とかまで魔力が行っていない。

一番酷いのはジークだ。

あいつ全然魔力が回っていない。

あれじゃあただ魔力を放出しているだけだぞ。

それから色々指導して、シエルが少しの間出来るようになって、エリスとレーナが後少しで出来るぐらいのところで、イルダスはその次に出来るかな。

ジークは全く進歩しなかった。

これは時間がかかるな。


「じゃあここで、休憩にするぞ」

「やったー!休憩だー!」


そう言ってジークが大の字に寝転がった。


「ちょっといいかい、アレク」

「なんだ?」

「もしかしてなんだけど、このまま朝の特訓に入るわけないよね」

「いや、入るけど」

「もしかして僕達、寝ずに特訓させられないよね」

「そんな訳あるか。そこまで鬼じゃねーよ」

「そうだよね。ちなみにいつ寝かしてくれるのかな」

「この休憩だが」

「この休憩はどのぐらいなの?」

「まあ、二時間ぐらいかな」


そう言っていると、だんだんイルダスの顔色が悪くなっていく。


「それだと、僕たちの身体がもたないような、気がするんだけど」

「大丈夫。そのうち慣れるから」

「それは大丈夫ではないと思うよ」


そんなことをいって俺たちは眠った。


二時間後


俺以外は誰も起きていなかったため、皆んなを起こした。

皆んな起きたら身体の色んなところが痛いと言っていたが、俺は構わず皆んなを走らせて、一人ずつ模擬戦をした。

ジークとイルダスは戦った事があるので省く。

次にレーナと模擬戦をした。

レーナの武器はイルダスと同じで槍だった。

戦い方は、水魔法で作った水球で俺を捕らえようとしたり、動きを鈍くさせたりしてから槍や水魔法で攻撃する、というような戦い方だった。

結構てこずったが、最後はごり押しでいった。

その次にエリスとやったが、すぐに終わった。

エリスは近づかれると、何も出来なくなるタイプだったようだ。

最後にシエルとやったが、もの凄くてこずった。

シエルは闇魔法で精神に干渉してきたり、幻覚を見せてきて、その間に死角から矢を放ってきたりした。

俺は精神に直接何かしてくものも耐性があると思ってたんだが、シエルの闇魔法が強くて少し効きにくいぐらいにしかならなかった。

でも、ギリギリ俺が勝った。

それからは俺が一人ずつアドバイスをしていった。


「まずは、ジークからだな。ジークは兎に角身体を鍛えることだな。ってことで走ってこい」

「分かったぜ」


そう言って、ジークは走りにいった。


「じゃあ、次はイルダスとレーナだな。イルダスには言ったことあるけど、魔法を発動する時に目線がその方向に向くんだよ。イルダス。無詠唱をするには何をしないといけないか言ってみてくれ」

「えっと、無詠唱は高い魔法制御力とイメージをしっかりと持つことで出来るよ」

「ああ、そうだ。じゃあ、イメージって具体的には何をイメージするんだ?レーナが答えてくれ」

「発動したい魔法がどう言うものかとかー、その魔法を何処にどう言う風に発動するのかとかだねー」

「そうだな。じゃあ何処に発動するかをイメージする時、二人ともどうしてる?」

「どうって、一回発動する場所を見て、その場所を頭の中でイメージするんだよ。というか、これしか方法ないよね」

「私もそのやり方でやってるよー」

「イルダスが言っていることは、俺からしたら間違いだな」

「え?他にもやり方があるのかい?」


そう言って、イルダスが首を傾げた。


「ああ、ある」

「それって、どういうやり方なのー?」

「無属性のマップを使うんだ」

「それって、二つ同時に魔法を使うってことだろ。僕達には無理じゃないか?」


過去、魔法の同時使用に成功したのは、魔法を極めた賢者や、魔王を倒した勇者などだった。


「いや、そんなことはないよ。イルダス、魔法の同時使用に必要なのは何だと思う?」

「え?うーん、大量な魔力かな?」

「いや、違う。魔法の同時使用に必要なのは、魔法の制御力だよ」

「え!?そうなのか!?じゃあ、僕やレーナも魔法の制御力を高くすれば、魔法の同時使用が出来るようになるのかい?」

「ああ、そうだ。と、言うことで、イルダスとレーナは魔力の体内循環を、ひたすらしてもらうよ」

「分かった」

「分かったよー」


そう言って、イルダスとレーナは体内循環の特訓に入った。


「じゃあ、最後の二人は俺とひたすら模擬戦かな」

「わ、分かりました」

「分かった」


そう言って、俺たちはそれぞれの特訓を日が昇る少し前までしていた。

その後、寮に戻ってご飯お食べて、教室に行った。

今日は座学が午前中にあったが、俺以外の五人は授業中に爆睡していた。

先生が何回か起こそうとしたが、諦めていた。

そんな風に、毎日を過ごしていた。


そして、一年の月日が流れた。


この一年で皆んなは、もの凄く強くなった。

まあ、強くしたのは俺だけど・・・。

ジークは身体強化した俺と、普通に打ち合えるようになったし、イルダスとレーナは魔法の同時使用が出来るようになって、前より十倍ぐらい勝ちにくくなった。

エリスとシエルも、俺と模擬戦をやっていく内に、相手を観察する力がどんどんついていって、今では、二人とも俺の弱点を数えきれないほど知っている。

あと、シエルを蹴っていた三人組も、定期的につっかかってきたから、適当に返り討ちにしていた。

そんな日々も今日で終わりだ。

今日は一年生の最後の授業だ。

授業の内容は、王都の近くの森で実際に魔物と戦いながら、森の奥にある湖まで行って戻ってくるというものだ。

そして俺たちは今、その森の入り口にいた。


「よし!お前らよく聞け!朝にも言ったが、今回は魔物との実戦だ!実戦は模擬戦とは違い、死ぬ可能性が出てくる!今まで以上に気を引き締めて行くぞ!まあ、他のクラスのやつらもいるし、ここのモンスターは弱いからよっぽどのことがない限り死ぬことはない!それにSクラスには勇者様がいるから、強いモンスターが出たとしても倒してくれるだろ!はっはっはっ!」


今日は、ガンザーク先生が言ったように全クラス合同で行く。

先頭にSクラス、その後ろにAクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラス、Eクラスの順で歩いていく。

なので、戦闘をするのはSクラスやAクラスなどの、前にいるクラスだけで、後ろの方にいる、DクラスやEクラスはほとんど戦闘をしない。

そうしていると湖に着いた。


「よし!お前ら昼休憩だ!好きな奴らで集まって飯食え!」


そうガンザーク先生が言うと、皆んな各自で集まってご飯を食べ始めた。

まあ、ご飯といっても干し肉と硬いパンと水だけだが。


「おーい!アレクもこっち来いよ!」

「おう!今行く!」


そう言って、ジーク達のところに行く。

そうして、ご飯を食べているとこっちに近づいてくる反応が一つあった。


「皆んな、戦闘準備だ」


そう言って、俺は立ち上がった。


「どうしたんだアレク?」

「一匹こっちに来る」

「分かった」


そう言って、皆んなが食べるのをやめて、武器を持つ。

俺たち以外の奴らはまだ、ご飯を食べていた。

こいつら馬鹿だろ。

そうして、しばらく待っているとそいつは現れた。

黒い鱗に赤い目、二十メートルぐらいあるドラゴンだ。


「暗黒竜・・・」


そう誰かが言った。


「に、逃げろー!!!」


そう言って、皆んなが逃げて行く。

あれ?Sクラスの勇者様も逃げてるな。

なんだ、ただのヘタレだったのか。

まあ、それは置いといて、あれはちょっとやばいな。


「なあ、アレク流石にあれは俺たちじゃ無理じゃねーか?」


ジークがそう言う。

暗黒竜は、Sランクの冒険者のパーティでやっと、狩れるぐらいの強さがある。

俺なら無理ではないが、この姿のままだときびしいな。

どうする?本気をだすか?いや、本気を出すということは、俺の正体がバレるということになる。

そうなると、俺は学校にいられなくなってしまう。

どうしようか・・・。

そんなことを考えていると、どこのクラスかは分からない女の子が、石に躓いてこけた。暗黒竜はその女の子に向かって行った。


「危ない!」


そうシエルが言って、女の子の所まで行き、女の子を庇おうとしていた。

暗黒竜はシエル達を爪で攻撃しようと、前足を上げていた。

何を俺は迷っているんだ!今、目の前で、知らないやつに好きな女の子が殺されかけている。

それを見て、本気にならない男はいないだろ!そう思いながら俺は左手の手首につけていた腕輪を外し、投げ捨ててシエルのもとに行った。


シエルside


どこのクラスか分からない女の子が、石に躓いてこけた。


「危ない!」


そう言って、私はその子のもとに行き、その子を庇うような体勢になった。

暗黒竜は、私達を爪で攻撃しようとしていた。

私、死んじゃうのか。

アレクの近くにもっと居たかったなぁ。

そう思いながら目を閉じた。

だけと、しばらくしても衝撃や痛みは来なかった。

ただ、何かが倒れるような音が聞こえた。

不思議に思った私は、ゆっくり目を開けた。

そこには、首を切られて倒れている暗黒竜と、二メートルぐらいの身長で、二本の角と二枚の羽が生えたアレクが立っていた。


アレクside


ふう、なんとか間に合った。


「大丈夫か?怪我とかないよな?」

「うん、大丈夫。それよりも、その姿どうしたの?」

「俺達にも教えろよ」


そういってジーク達が集まって来た。


「まあ、この姿みられて隠すのは無理か・・・。俺は魔王なんだよ」

「魔王・・・」

「この学校には人間の調査で来ている。って、言っても、何も言わずに来たから、実際は家出みたいなもんだ。この姿に戻ったから、多分もうそろそろしたら迎えが来るな」


そう言った直後に、暗黒竜の倍以上ある黒い竜が、こっちに飛んで来た。


「おっ、来たな」


その竜は俺達の頭上に来ると、身体が光ってどんどん形が変わっていき、最終的に人の形になって降りて来た。


「おい!アレク!お前今まで何してやがった!お前がいない間どれだけ俺とセリアが苦労したと思ってる!さっさと帰るぞ!」


そう言って、ガルドは俺の服を掴んで引っ張ってきた。


「ガルド、お別れの挨拶ぐらいさせてくれよ」

「はー、すぐ終わらせろよ」


そう言って、ガルドは俺の服を離した。


「分かったよ」


と、言って俺はジーク達のところに行く。


「って、訳で俺は魔王城に帰んないといけないんだ。皆んな元気でな。じゃあな」


俺は、短く挨拶を終わらして、ガルドの方に歩き始めた。


「待って」


そうシエルが俺に声をかける。

俺は止まってシエルの方を向く。


「私も連れて行って。私はもうアレクと離れたくない」

「アレク、俺も連れて行ってくれよ。何でもするからさ」

「僕も連れて行ってもらえるかな」

「私もー」

「私も良ければ連れて行ってください」


皆んなの口から意外な言葉が出て、少し俺はビックリした。


「皆んなの気持ちは嬉しいんだけど、連れていけないな」

「なんで?」

「皆んな弱いから。俺達の住んでいるところは、強くないと生きていけないんだ。皆んなの強さだとすぐに死ぬよ」


そう言うと、皆んな黙った。


「じゃあ俺、そろそろ行くよ」


そう言って、また歩き始めようとした。


「待って」


そう言って、シエルにまた止められた。


「弱いからダメなら、強くなったら側にいてもいいの?」

「まあ、そういうことだな」

「じゃあ、私強くなってアレクのところに行くから、その時まで側室の人は作っても良いけど、正妻の席は空けていてね。私がそこに座るから」


そう言って、シエルが俺のほっぺにキスをした。

いきなりされたからビックリした。


「俺も行くぜ」

「僕も行くよ」

「私もー」

「私も行きます」


皆んながそう言ってくれて、俺は嬉しくなった。

こんなに嬉しくなったのは、久しぶりだな。


「じゃあ、皆んなが来るのを楽しみに待っているよ。それと、心配しなくても、正妻はシエルにするって決めてるし、側室も作らないよ。あと、シエル、左手を出して」


そう言うと、シエルが左手を出した。

俺はシエルの薬指に、今作った指輪をはめた。


「今はこれぐらいの物しか作れないけど、次会う時に、もっと上等なものを用意しておくから、今はこれで我慢してくれ」

「うん、分かった」

「それじゃあ皆元気でね」


そう言って、今度こそガルドのところに行った。


「遅かったな」

「ああ、ちょっと別れるのが辛くてな」

「まあ、何があったかは帰ってから残りの書類全部片付けてから聞くからな」

「分かったよ。じゃあ帰るか」

「ああ」


そう言って、ガルドは竜の姿に戻った。

その背中に俺は飛び乗った。

そして俺達は魔王城に帰った。


十年後


「お願いだから考え直して!いくらSランクのシエルちゃんやジークさん達のパーティでも、魔王のところにまでいけても、魔王に殺されてしまうわ!だってあの勇者様でも勝てなかったのよ!お願いだから行かないで!」

「ナタシアさん、それでも私達は行きます。ごめんなさい」


そう言って、私はギルドから出た。

後ろからナタシアさんの止める声が聞こえたが、無視して歩いた。

そして、そのままジーク達のいる東門まで行く。

東門に着くとジークやイルダス、レーナ、エリスの四人が待っていた。


「シエルっち遅かったねー。何かあったのー?」

「うん、ちょっと、ナタシアさんにすごく止められて遅れた」

「あー、ナタシアはシエルの事、気に入ってたからねー」

「よし!それじゃあシエルも来た事だし、さっさと行こうぜ!」

「そうだね」

「はい!」

「それじゃあアレクの家に向かって全速前進ー!」

「おー!」

こうして、私達の新たな旅が始まりました。

待っててねアレク、今いくよ。

読んでくださりありがとうございました。m(_ _)m

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