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勇者のかわりに魔王退治  作者: ミコにゃふ
【勇者のかわりに魔王退治】
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第五話 毒に侵された村

『ほらほら!きりきり歩く!』


『ちょっ!俺様はこう見えても四神流拳闘技の伝承者だぞ!この仕打ちは無いだろ!』



『なにそれ?そんなロートルでマイナーな拳法なんて知らないわ!』


『うわ!この女ムカつく!』



現在街道を徒歩で移動している三人と一匹がいる。



先頭を歩く《ふわふわドレス》を着た女性はピクニックよろしく道端の雑草類を見ては…

「なずな!」「セリ!」「トリカブト!」など植物の名前を言い当てながら歩いている。


肩まで伸びたストレートヘアがキラキラなびいて、どこかのお嬢様的な雰囲気の女の子は観光地で薬局を営む女の子マリー・ネットだ。


マリーは幼なじみに無理矢理拐われる形で旅に同行させられているが、持ち前の前向きな性格故に拐われた雰囲気は感じない。



そのマリーを拐った張本人は犬を散歩させる様な感じでロープを引いて歩いている。



名前はリリアン。


髪は栗色のショートカットで革鎧(レザーアーマー)と短剣を装備して一見すると旅の軽戦士に見えなくも無いが自称魔法使いである。


得意技は《鍵開け》。

魔法使いなのをアピールしたいのか手には豪華なサファイアをあしらった日光を吸収したかの様に輝く魔法の杖を持っている。


杖の名前はブルークリスタルロッド


ボルン国宝だったのだが魔法学校で免許取得途中で国王から無断で拝借した代物だ。


おかげで窃盗容疑で指名手配中である。



さて…リリアンの持つロープの先には、裸ん坊の男が犬の首輪を装着させられて歩いていた。


何故か両手にビーチボールを持たされ大事な部分をかろうじて隠している。



「そのビーチボールを落として見苦しい物を見せらたどうなるか判るよね?」


「くそっ…こんな姿…師匠に見せらんねぇよ…」



男は先日、リリアンの持っている高価なアイテムに目を付けて襲ったまでは良かったがリリアンの自爆魔法に返り討ちにあった武闘家である。



「ほらほら!立ち止まらいの!おしっこはしないでね!」


『誰がするかぁああ!!!!』



リリアンの旅の目的は怪物が無限に沸く大穴に挑んだ行方不明の勇者を探す旅をしている。

そしてあわよくば大穴を封印するつもりなのだ。



リリアンの夢はお嫁さんとか素敵な男性と恋をしたい…とは微塵も思わずに《勇者になりたい》と思っている。


ただ…ちょっぴり歪んだ性格なのか、勇者を目指す方向の斜め上を進んで現在前科二犯状態だ。



「ところで犬!あんたの村はまだ着かないの?」


『犬言うな!日が暮れる頃にゃ着くってばよ!』



「…それにしてもだんだんこの遊び飽きてきたわ。」


リリアンが武闘家の首に繋げたロープをめんどくさそうに持っている。



『飽きたなら首輪外せよ!故郷の連中に見せたくねぇんだからよ!』


「いやよ!あんた信用出来ないもん!」



襲われたのだから信用が無いのは当然と言える。



「野党さん野党さん!何か集落が見えて来ましたよ!」


遥か前方を歩いていたマリーがリリアンと武闘家の所に走って戻ってきた。



『野党じゃねぇ!昨日説明したよな!賞金稼ぎだよ!あんたを父親の所に送り届けたら謝礼が出るからだ!』


実は武闘家は過保護なマリーの親父が雇った男なのであった。



「へぇ~…じゃあなんで襲って来たのよ…」


「いや…あの…目の前に売ったら一生遊べる高価な物が犯罪者の小娘が持ってたら頂きたくなるだろ?」


「…むぅ…そういうシチュエーションで言われると確かに頂きたくなるかも…」



『こらこら!野党さんとリリアン!泥棒はいけない事なのですよ!』



マリーは子供を叱りつける様に説教するが、リリアンに関しては手遅れだ。



村に近寄ると、村全体が紫色の霧に満たされていた。


『何やら冒険の香りがする!』


リリアンが目を爛々と輝かせて村の中心広場で万歳\(^O^)/している。


ちなみにミーシャは村へ入らなかった。

多分、紫色霧が苦手なのだろう。



「ケホッ!リリアンこの村は煙いですわ。皆さん料理を焦がしたのでしょうかぁ…」


マリーが咳をしながら村の上空を見る…

うっすらと紫色の霧に覆われた村は行き交う人々がみな落ち窪んだ表情で明日はどっちだと言う雰囲気で生活していた。



一人だけ張り切るリリアンを村人は迷惑そうな目で見ているのだが、一人の老人がリリアンに繋がれた武闘家に気付く。



「お主…ガルフォードでは無いか!爆破のオーブは買えたのか?」


ガルフォードとは武闘家の名前である。



「うわっ犬の癖に豪華な名前!」


「わぁ野党さんかっこいい名前ですわぁ」



『犬でも野党でもねぇって言ってんだろうがよ!』


そんな奴隷状態の武闘家を見て老人がやれやれと首を振る…



「ガルフォード…その性癖を治さんといつかキツい鬼嫁を貰う事になるぞぃ…」


『うは!犬ってそういう趣味だったんだ!どうりで街道沿いを嬉しそうに歩いてたと思ったわ!』



『誰が嬉しそうにだ!って言うかジジイ!誤解される事言うな!』


この老人は武闘家ガルフォードの師匠で、ちょっぴりお茶目な性格をしていた。



『ええ!大穴がこっちに出来たの?』


リリアンはガルフォードの師匠から霧が現れた経緯を聞いて驚いた。



師匠の話しによると半年前この村に大穴が空いて怪物が沸くのと同時に紫色の毒霧が発生したらしい。


「そうじゃ…ボルンの大洞穴程の大規模じゃないが間違い無く同質の代物じゃろな…」



ボルンの大洞穴とは行方不明の勇者が向かったとされる大穴だ。



「なるほど…で、この犬が穴を塞ぐアイテムを買うために賞金稼ぎをしていると。」


「うむ…そういう事じゃ、いやはや犬が大変ご迷惑をかけた様ですまなんだ…」


武闘家の師匠がリリアンとマリーに土下座と謝罪の遺を陳べる。



『師匠まで犬言うな!』


ゴミ扱いのガルフォードの訴えは誰も聞いていない。



「ヨシヨシ!可哀想な野党さん。お手!」


マリーが手を差し出すとガルフォードは条件反射で手をマリーの手のひらな乗せてしまった…


決してガルフォードを責めてはダメだ…

武闘家が組み手を行う場合、相手の手刀をかわす時には手を合わすのが当たり前だからだ。



そう…決して犬の立場に甘んじている訳では無い…多分。



「規模は小さいとは言え大穴じゃからのぉ…ただ塞ぐだけじゃ毒霧が漏れてくるでの…根本的解決には魔力がこもった爆弾《黒のオーブ》で大穴を塞ぎたいのじゃが・・」


「なるほど、《黒のオーブ》も高いからねぇ…」


リリアンは道具屋の娘なのでアイテムの値段と効力には詳しい。



ちなみに黒のオーブとは込めた魔力の量で爆発力が決まるオーブ。


爆発の属性は物理では無く魔力の暴走であり、リミットまで魔力を貯めると大陸ごと破壊出来る危ない代物なのだ。

幸い人間はそこまで魔力は無いので一般的な土木工事用爆弾として販売されている。


とは言うものの、どのみち使い捨てなアイテムなのに値段が高いので普通の一般人は持っていない。



「ん?ん?そういえば…」


リリアンが実家から盗んできたアイテム軍団を収めた唐草模様の風呂敷を広げた…



すると、なんと都合の良い事か…はたまたリリアンは高価なアイテムばかり盗んだのか《黒のオーブ》が三個程風呂敷に入っていた…


ちなみにミニチュア丸太小屋と同様に売り払えば一生遊んで暮らせるとは言わないが、慎ましく暮らせば1年は食べて行けるくらいの値段だ。



どうでも良いがリリアンは実家からどんだけ高価なアイテムばかり盗んだのやら…



『おお!これは神の思し召しか!リリアン様ありがとうございます!』


師匠が《黒のオーブ》を一つ手にしてリリアンに例を言う。



『ほほぅ、幼い頃から商人魂を叩き込まれた私から無料で貰おうってのかな?』


その時マリーがリリアンを制して両手を胸元で組んでお願いポーズを取った。



「あのねあのね…リリアンあまり高いお金をふんだくったら駄目だよ!」


「師匠よぉ!この女から買うな!絶対にボラレるに決まってる!」


マリーとガルフォードが師匠とリリアンの会話に割り込んだ。



『ちょっと…マリーと犬。私を何だと思ってるのよ!

べ…別に最初から《黒のオーブ》は譲渡する気なんだからね!勘違いしないでよね!』


《黒のオーブ》を無償であげる気だったリリアンだが、心の奥底で銭勘定していたのも事実である。



「偉いわリリアン!さすが親友ですの!」


別にリリアンは悪党では無いし、夢は勇者になる事である。

だからこそ純真なマリーがリリアンの旅に付き合ってる訳だが…



「うわっ胡散臭っ!絶対この女何か企んでやがるぜ…」


ガルフォードはここまでの道中をワンだふるピヨ彦で歩かされた恨みは忘れない。



「…ふぅん。犬は一生私に繋がれていたいのねぇ…」


『すいません!マジすいません!』



ガルフォードは土下座をした!



「それはそうと、《黒のオーブ》に誰が魔力を込めるの?小さな爆発でも結構洒落にならない魔力を込める必要があるんだけど、この村に魔法使いって居る?」


一般人もMP(魔力)を持っているが、黒のオーブに魔力を籠めるなら出来れば最大MPの多い魔法使いの方が都合良い。



「…それが…居るには居るんじゃが…この毒霧ですっかり弱っておってのぉ…魔法使い…僧侶…賢者…軒並みやられてしもうたわい。」


「…まぁ…魔法使い系は体力無いからなぁ…」



ちなみにリリアンは屈強なマッチョ親父の娘なのでHP(体力)は高い。

更には魔法使いにもなれるMP(魔力)もある。



「マリーはどう?」


「私ですか?修行すれば…とは言われましたけど、所詮は薬剤師なので…」


要するに現在この村で一番元気な魔法使いはリリアンだけである。



「私だけかぁ…。」


「あらあら、リリアンは魔法使いさんですから大丈夫ですわ!」


マリーは幼なじみの親友をこれっぽっちも疑ってはいない。



「へっ…アバンストラ〇シュを《黒のオーブ》にかまして自爆すんのがオチだぜ。」


前話で自分の唱えた魔法サンダーを自ら避雷針にして武闘家に突っ込んだアレである。



「…そこの犬は一生ワンだふるピヨ彦ね。」


『マジ勘弁して下さい!』


再び土下座するガルフォード。



「まぁ…やるだけやってみるわよ。

小さな大穴くらいで手間取ってたらボルンの大洞穴なんて話しにもなんないわよね。」


結局リリアン自身が集落に開いた大穴に挑む事となったのだ。



「しかし…勇者を追いかけてみたら変な事件に出くわしたわねぇ…」


「おや?リリアン様は勇者殿をお探しですかな?」



師匠は行方不明の勇者を知っているらしい。



「半年程前かのぉ…大穴が空いた時に湧き出た怪物をお一人で全て退治なさったのじゃ。


その時は《黒のオーブ》が無かったので大穴を塞ぐまでには至らなかったのじゃよ。」


「…はぁ…なるほど、要するに勇者の後始末って訳ね。」



怪物が出ると思っていたリリアンはちょっと拍子抜けした。

ちなみにリリアンはまだ怪物を倒した事が無いので魔法使いLV1のままである。



「あらあらリリアン良かったじゃないですか。平和が一番ですの。」


平和主義のマリーは怪物が出ないと知ると解り喜んでいる。

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