【3ー3】
その日の深夜、静かに寝息を立てていたマリーの寝室に侵入者が現れた。
「ほぇ…誰ですかぁ…妖精さんかなぁ…むぐぅ!」
侵入者に気付き上体を起こしたマリーは誰が来たのか確かめようとしたが、寝ぼけてるマリーの口を手でふさいで侵入者は起き上がったマリーをベッドに押し倒した。
「へっへっへ…お嬢ちゃん無防備過ぎるぜ!」
マリーは押し倒されて胸に手を入れられも目をパチクリとしたまま、侵入者にされるがままであった。
「あぁ!もう!本当に無防備なんだから!いつか襲われちゃうんだからね!このけしからん胸!」
「あらあら…リリアンこんばんはですぅ」
侵入者はお約束のリリアンであった。
そもそもこの薬局は過保護な親父さんが厳重なセキュリティを掛けており、
そんな特殊なセキュリティを無効化出来るのは、色々な防犯アイテムを取り扱う道具屋の娘であるリリアンくらいだ。
そしてこの夜這いモドキもリリアンの昔からの十八番である。
「ところでどうしたんですかぁ?こんな夜中にぃ…」
マリーはまだ少し眠そうで、リリアンに乱されたネグリジェを直そうともしない。
「馬鹿父ちゃんに勘当されたから村を出るのよ!危うく尼寺行きにさせられるところだったわ!それで頭に来たから店のアイテムをごっそりさらって来てやったわよ!」
リリアンがプンプンと怒りながら指した方向には大きな唐草模様の風呂敷包みに包まれたアイテムの数々が収まっていた。
あれからリリアンは昼間に実家の道具屋に帰った後も親子喧嘩が勃発したあげく、父親に軟禁されてどこかの修道院に放り込まれそうななったが、やはり隙を見て鍵をこじ開けて逃げるついでに店のアイテムを奪ってマリーの寝室まで来たのだ。
「もう…私に帰る場所なんて無いんだわ!いざ行かん!冒険へのプロローグ!」
「ほぇ…」
「じゃ行こうかマリー!」
「ほぇ?」
「冒険者に必要なのは何か知ってる?」
「…ほぇ?」
「ファイター・アタッカー・ヒーラーよ!」
「ほぇ…」
「私は魔法使いだからアタッカーにはなれるけど回復は無理!」
「ほぇ…」
「てな訳でヒーラーよろしく!」
リリアンは寝ぼけてるマリーを着せ替え人形よろしく着替えさせた後、マリーをズルズル引っ張りながら日が昇らない時間にリゾート村の出口を目指すと‥
「私を置いて行くとはどういう了見かしら?」
人化したミーシャがリリアンとマリーの行く手の前に立ち塞がっていた。
「おお!アタッカー発見。」
「何よそのアタッカーって。バレーボールの事かしら?」
「冒険者の役割に決まってるし。」
「冒険者ってあんた。何も出来なさそうな娘二人と猫一匹。冒険ってのは近所の公園で散歩でもする事かしら?」
ミーシャの呟きを無視したリリアンはマリーとミーシャの手を引いてリゾートを後にした。
とにもかくにも二人と一匹の冒険が今始まったのである。
一方その頃、夜中…リゾート村に存在するリリアン実家の道具屋では…
「…あら?店のアイテム保管庫にセキュリティが掛かって無いじゃない!最近泥棒が出現してて物騒なんだから戸締まりはしっかりしないと。」
道具屋の従業員が店内中の防犯装置がオフになってるのに気付いた。
従業員が店主(リリアンの父親)にその事を伝えると…
「あぁすまねぇ!酒呑んでて忘れてたぜ!がははは!」
「…もう!私はお先に失礼しますが戸締まりよろしくお願いしますよ!」
「おう、お疲れ!明日もよろしくな!」
店主が従業員を見送ると手にした酒瓶を一気に煽り、夜空を見上げて一言呟いた。
「これは俺からの餞別だ…頑張れよリリアン。」
そして翌朝、リゾート村では一つの事件が世間を騒がせた。
薬局の名物美少女マリーが何者かに拐われたとの事で、第一容疑者にリリアンが浮上。
これでリリアンは事実上前科二犯となるのだ。
~第四話へ続く~