第14話 死霊の鉱山
冷徹の鎧を求めて斜陽の町に来たリリアン達。
商店街の元締めであるエルダーリッチの情報を元に、死霊やアンデッドが渦巻く魔鉱石鉱山へとやって来たのであった。
鉱山は斜陽の町より北へ徒歩二時間。
取れたての鉱石はすぐに加工されインゴッドに整形される為に、鉱山のふもとには温泉宿泊施設と精製所や武器屋が多い。
『むぅ...何かイメージと違う...』
『まったくじゃのぉ...』
リリアンとジーニアスが鉱山へとたどり着いた時の感想である。
リリアン一向は死霊渦巻く危険な鉱山と聞いていたので、斜陽の町での旅芸人スタイルを解いて本格的な冒険者スタイルへ着替えていた。
リリアンはいつものボブカットの頭に魔除けをアクセサリーに付けて、愛用の短剣もハッタリ用のブルークリスタルロッドにチェンジ、女の子用革鎧も天空国産ローブに着替えているのでパッと見ると白魔導師スタイルだ。
ジーニアスは吟遊詩人の変装のまま。
マリーもリリアン同様に踊り子衣装から天空国産のふわふわドレスに戻した。
ドルトンだけが何故かシルクハットにタキシードと英国紳士風だ。
太った体型に豚頭だけに極めて怪しげなインチキ詐欺師妖怪という感じ。
ミニチュア丸太小屋に色々な衣装があったので、リリアンがドルトンのイメチェンをしようと試みた結果である。
『どうヅラ?男前に見えるだか?』
「あ~はいはい、見える見える。」
正直なところ失敗とも思ったのだが、ドルトンが満更でもなさそうなので、このまま行く事にしたのだ。
さて魔鉱石鉱山である。
ふもとは大変賑わっていた。
温泉施設に飲み屋街にそして吉原も真っ青な風俗店の数々だ。
『何よ!この如何わしい町は!私の冒険心を返して!』
『むぅ、昔は単なる荒野だったんじゃがのぉ。』
一応死霊やアンデッドが確かに渦巻いている。
いるのだがゾンビが(いらっしゃいませ)と刺繍されたハッピを来て客引き。
ゴーストたちは両手にお盆を持ち、料理を忙しそうに運んでいるし。
スケルトンがプラカードを持って店の宣伝をしていた。
どうしてこうなったのかと言えば⋯
鉱山に一攫千金を求めて人が多く出稼ぎに来る→
人が集まれば宿屋や浴場が増える→
出稼ぎする人は大抵働き盛りの男性だ→
飲み屋や風俗が増える→
空前絶後的に働き手が足りない→
結果鉱山を寂しく迷っていたアンデッド達まで働き手に...
→今ここ←
といった具合なのであった。
『うわははは!どうですかな!うっかりJk国王よ!この発展ぶり!素晴らしきこのエルダーリッチのなせる技!トレビアン!』
いつの間にか斜陽の町の商店街元締めのリッチが鉱山の繁華街にいた。
『うわっ!びっくりした!あんた付いて来てたの?』
『うわははは!娘よ!そんな訳が無い!テレポート魔法に決まってるではないか!』
テレポート魔法は普通の人間だと制御が難しく、壁や障害物にテレポートすると死んでしまうのだが、壁抜け出来るエルダーリッチならなんの問題も無い訳だ。
「何か存在自体がズルいわ。」
『うわははは!ならば娘よ!お前も仲間になるか?我が最大奥義のドレインタッチで即仲間入りだ!』
「ごめんいらないわ...」
エルダーリッチは触れれば相手の寿命を縮めるドレインを使い。リッチに殺された場合は殺された人間もリッチになる。RPGでは中盤以降のボスとしてお馴染みだ。
「よくよく考えたら、元締めは(お友達)が沢山いるって言ってたのは、そういう事だったのね。」
「でもでもなんだか楽しそうなのですよ!」
マリーは危険がなさそうな上に賑やかなので嬉しそうだ。
だがマリーはこの後、風俗嬢のスカウトと男達のナンパとすれ違いざまのお尻タッチを数十メートル毎に喰らう事になるのをまだ知らない。
リリアンまでもがナンパとスカウトをされるのだが、リリアンの背後には英国紳士風の豚妖怪が鬼の形相で睨むものだから、欲求不満な男達もドルトンを見て退散するのであった。
『さあさあ!こちらですぞ!そこの君!うっかりJk国王様に最高級の部屋を用意したまへ!うわははは!』
リッチが繁華街で一番の温泉施設へ案内すると番台のゾンビに向かってリリアン達に最高級のもてなしをするように命令した。
本来リッチは国王への接待を行っているつもりらしいが、ジーニアスは国王の身分を隠したいのでリリアンの背後に隠れている。
さらに偉そうな英国紳士風豚妖怪を執事に付けているリリアン。
マリーは温泉施設にたどり着くまでに道行く人々にセクハラを受けて、護身の為にリリアンにぴったり寄り添い。
元締めからうっかりJk国王と聞かされたゾンビはリリアンに向かって土下座を始めたのであった。
だってこのメンバーで一番偉そうなのはどう見てもリリアンしかいない。
『ぷぷぷ!リリアン君うっかりJk国王に昇格おめでとうじゃのぉ』
『ぜんぜん嬉しくない!』
斜陽の町商店街元締めのリッチから冷徹の鎧のありかを聞いた。
リッチが生前に冷徹の鎧を装備したまま死んだ訳なのだが、当然の事だがリッチの死体がいまだに装備したままらしいのだ。
しかも厄介な事に、死んだ瞬間の記憶が無いので鎧が鉱山のどこにあるか検討もつかない有り様。
『うわははは!なので我が鉱山を案内してしんぜようではないか!』
それにしても...とリリアンは思う。
今更こう言っちゃあれだが、リッチが親切過ぎて気持ちが悪いのだ。
アンデッドと言えば、生者を襲い仲間を増やすだけが本能の存在と思っていたからだ。
実際この鉱山はアンデッドだらけだし、後で襲われそうな気がしてならない。
「エルダーリッチさんって親切だけど、報酬はどのくらい必要なの?」
『???。何を言うておる娘よ!うっかりJk国王に恩を売るのが何よりの報酬ではないか!長い物に巻かれろ!No.1よりNo.2だ!
良いか?商人に国のコネとは、鬼に金棒と同じ位強力なのだぞ!商人の娘なら覚えておきたまえ!』
単なる商人魂の打算尽くしだった。
「てか、良く私が商人の娘って判ったわね。」
『当たり前である!娘の魂から金の匂いがするのである!うわははは!実に素晴らしい!』
なんだか良く解らないがリリアンはリッチに気に入られていた。
その日の夜はリッチ主催による宴会があったのだが、宴会を盛り上げる芸人や給事さんがことごとく死人だらけであり、リリアンはどうにも盛り上がる気分になれない。
リッチだけが嬉しそうにしている。
「リリアン君ちょっと良いかのぉ?」
ジーニアスがリリアンを連れて宴会場の隅にやって来た。
そして周りにだれも居ないのを確認した後、リリアンに告げた。
「リリアン君、この町の死者数が異常じゃ。」
「へ?そうなの?この町の事を知らないからこういうものかと思ってたわよ。」
「多分じゃが鉱山で事故が発生したとしか思えんわい。」
「それならもっと大騒ぎしてそうだけど?」
「ところがじゃ、死んでもアンデッドとして鉱山から出て来るもんじゃから、人口がプラスマイナスがゼロのままなのが厄介なんじゃ。」
「はぁ...鉱山じゃなくてアンデッド生産工事ね。」
「とにかく明日の鉱山での鎧探しは気を付けておくべきじゃ。」
ジーニアスに言われるまでもなくリリアンは準備万端で臨むつもりであった。
なんせリリアンの座右の銘は『用意周到』なのである。
そして翌日、リリアン達は魔鉱石鉱石の入り口までやって来た。
が...入り口の半分が崩落していた。
『これ、完全なアウトじゃん!』
『うわははは!問題無い!現在労働者の大半がゾンビゆえに、多少の崩落など無関係なり!』
「これから私たちが入るんですけどね。」
リリアンはマリーとドルトンに町に残ってもらい、ジーニアスと二人で鎧を回収しようと相談したのだが、マリーに却下されてしまった。
「だって、エッチな店へのスカウトが困るんですよ。」なのだそうだ。
そんな訳で四人と案内人のリッチで鉱山へと足を踏み入れたのであった。




