表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のかわりに魔王退治  作者: ミコにゃふ
第一話 誰がやらねば誰がやる?
2/8

【1ー2】

リリアンが魔法学校に入って半年程経過した頃だろうか…国中を騒がす一つのニュースが飛び交った。


ボルン国王からの依頼で大穴に挑んだ勇者が行方不明になったらしいのだ。

ボルン魔法学校は国王の住む王城の一部を改築使用しているので噂はすぐに学校内に広まる。


その勇者はボルン国王がその高い能力を評価され、自信を持って送り出した勇者が行方不明と聞いて城の大臣達が動揺するのは仕方の無い話、そこで国王はすぐに第二の勇者の募集を始めた。


だが…生きて帰れるとは限らない冒険を志願する冒険者はなかなか存在しない。

冒険者の総数は山ほど存在する。

特にカルラーム大陸の住民は特に先天的に魔法が使える者が大多数だ。


志願者が少ないのは仕方の無い事。

ある意味国から死刑宣告される様な物なのだから。

それでも命知らずの若者や、それなり腕の立つ者の志願者が無い訳では無いのだが、前勇者に比べるとどうにも見劣りしてしまう。


次第にボルン城全体にあきらめ感が漂い始めた頃、ボルン城謁見の間に勇者志願の知らせが飛び込んで来た。


そして王城謁見の間に現れたのは…リリアンだった。


リリアンは国王に一礼を済ませ、颯爽と国王に向かい勇者志願を宣言。


「さあ!未来の勇者たる私に任せるのよ国王様!…ってジーニアス教官じゃん!」


魔法学校講師ジーニアス教官は表向きは教官だが、実は裏の顔は国王その人なのであった!

……と言うのはボルンに住む住人なら大抵知っている。

隣村の出身のリリアンが国王の顔を知らなかっただけだ。


「あのなぁ...リリアン・ローズ君…勇者とは概ね男性が名乗る者だぞ…」


一応リリアンは直接な担当教え子なのでジーニアス国王は少し形式的な相好を崩し、呆れ顔で教え子に答えた。


『男女差別はいけない事だと思いま~す!』

リリアンは授業中の様に片手を挙げて国王に返す。


「…まぁ…仮に女勇者を認めるとしてじゃ、お主は魔法使いに分類される身じゃぞ?

前衛に立たない魔法使いの勇者はさすがにどうかと思うぞぃ…

しかも魔法無免許のリリアン・ローズ君は魔法使い以前の問題じゃろ…」


リリアンは魔力総数‥いわゆるMPは一般人より遥かに高めではあるものの、魔法は国から発行される許可書‥いわゆる免許証を所持が無ければ魔法を使う事を禁じられている。

許可も無く魔法を使った者は犯罪者となり、被害に応じて流刑地送りとなる。

その流刑地には無法者の集まりなので生きて帰る保証は無い。


『魔法が使えるかどうかは些細な問題だと思います!』


「前から思ってたが、お主世間をなめてるじゃろ‥

魔法が使えない魔法使いじゃと、さすがにそれは大問題だとおもうんじゃが…まぁ一応了承した。リリアン・ローズ君!本日をもって魔法学校を退学処分とする!」


ジーニアス国王が座席から立ち上がって宣言する。


『ちょっと国王!それは無いですよ!私魔法免許証貰って無いです!モンスターをやっつける手段が無いじゃないですか!』


リリアンが両手をぱたぱたと振り上げて抗議をしている。

しかし…とても国王と市民との会話とは思えない程の会話だ。


「早合点するでない!リリアン・ローズ君は大穴探索を許可すると同時に仮免許を発行しよう。仮免許があればワシが許す限り魔法を使う事は出来る。

‥出来るんじゃが、リリアン・ローズ君。

お主まともに魔法を発動した事があるのか?」


「大丈夫よ!目標が2~3匹なら3~5割当たるから!」


「‥10匹以上なら1割以下じゃ‥授業中ワシに何度も変な魔法を喰らわせたのを忘れんぞ?

じゃがまぁ良かろう、万が一生還した場合、学校にて残りの学科の習得を命ずる。」


「…万が一生還って…。」


つまり国王はリリアンが生きて帰れるとは思っていない訳だ。


「ふん…まぁ良いわよ!それじゃ教官…じゃなくて国王様、魔法以外の主戦力になりそうな強い武器を頂戴!」


「無いぞぃ!」


「ちょっ…大穴探索に丸腰で行けと?」


「勝手に志願したのはリリアン・ローズ君じゃろが。そもそもボルン国最高の武器は前の勇者に持たせてしまったのじゃ。

文句があるなら準備金も仮免許も無しにするぞい!」


国王の機嫌をこれ以上損ねても仕方ないリリアンは、魔法使用仮免許と多少のお金で我慢する事に決めた。

しかもそのお金には、きっちりと借用書が添付されており、要するに単なる借金である。


「まぁ良いや…こんな事もあろうかと、国王…ジーニアス教官の机から魔法の杖を拝借しちゃったもんねぇ~♪やほぉ~い♪」


リリアンは気楽に盗んだ杖をバトン代わりに振り回しながらボルン国を後にした。

実はリリアンが盗んだジーニアス教官の魔法の杖は国宝であり。

世界に一本しか無い伝説のレジェンパーツと呼ばれるブルークリスタルロッドとはリリアンが知るよしも無かった。


そしてリリアンがその日のうちに首都ボルンを旅立ったのは正解だ。

何故なら次の日には国宝窃盗容疑でお尋ね物扱いにされるからである。


かくして勇者(自称)兼魔法使い(仮免)兼盗人のリリアンは元気良く旅立ったのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ