まさか僕に奇跡が起きたとは!
「誰にも等しく、唯一度の奇跡が起きる」
信じる者にだけ、奇跡は叶う。
「誰が奇跡なんか信じるものか! パーマンじゃあるまいし!」と吹く脂茶ざかりな光。
奇跡を懇願すると起きません。vs. 心の中で何を本気で信じるのか!?で起きるのです。
善い考えだと善い現象が起こります。 考えや行ないが悪ければ、次ぎから次ぎへと悪いことがやってきます。
これが大宇宙の真理という御仁おり。
箱根生まれの山峡育ち。元気溌剌な紅顔の美少年、ここに住む。
ぶっ飛び系な少年コウ、今日は甘いヤマボウシの実を口にしながら肩で風を切ったふうに山の途をスタスタ歩いていく。草木も生き物もニッコリ微笑んで道を開けてくれる。
向こうの方の山間からヨタヨタとした歩幅を進め寄って来る老女。踉めき千尋の谷に落ちそう――颯っと手を差し出し体を引き戻す。不意、コウの足下に在る筈だった崖っ縁が消えてた。少年は数百メートル断崖の谷に転落。絶命してしまった。
「おおっお! ノ―ッッ!!」の叫び声。
悲鳴ともつかない泣き喚く声。森に住む生きる者たちへ忽ちに響き渡る惜しむ詩。
遠く山背の遥か空の彼方から呼び掛けて来た詩がした。
♪「箱根の山は 天下の嶮
函谷關も ものならず
萬丈の山 千仞の谷
天下に旅する 剛氣の武士」♪
(瀧廉太郎作)
ハッ! と息を吹き返した。
奇跡の始まりだった。
コウは某国に居る。
見たことあるような無いような峠。
が、昔からここに住んでいた風な地……。
宮廷に咲く花に目がゆく。
白色の桔梗の花――清爽!――純な気持ちになる。
青紫色した桔梗――星!――心に灯かりが点る。
花言葉は「永遠の愛」――「気品」――気高い心持ちに誘われる。
そんな香りがコウを「ふぅー!」と深く息を甦らす。
階段を二歩三歩と下ると、三歩四歩と駆け上ってくる少女順。麗国の姫君と後に知る。
お伴の女官らと早足で宮殿に向かう、突、足を留め、振り返ったスの目元がクラッと電波を発す、コウは確かに受信した。往き交う電波、以心伝心。
振り返り会釈をする、彼女の見詰める眼に魅入られて――微笑みは最強の武器となって。
宮殿から臨む山肌から吹き下ろす風がそう電気を起こした。スの初恋となった。
只一度の擦れ違いで!? そうです!
初恋は電気。いくら毎日会っていても電気の起きない人はいくらでもいるのだ。実は、電気を発し慥かに受信する人は百人に一人なのだ、「それしかいないの!?」 「んだ!んだ! それしか居ないんだ」
唯本人たちが気付いてないか? タイミングか? で電気が往き交わないだけなのだ
併、今度はコウがクラッとした、そのクラッとではなく胸の痛みが再び起こった。そのまま倒れ込んでしまう。
「如何ですか?」の声がした。そこには茫とした顔が上から覘いて来た屋内。スの部屋であった。
覗いたスはコウの口元に水を湿らし、傍らの母が「服装から見ると、どこぞの貴族とは判るがお主は何処の者なのだ?」するとスは「この首輪、先代の王家の紋章!」つづいて母は「あらーぁ! 先代の生まれ変わり! 左胸のほくろ、亡くなられた王様と瓜二つな位置に赤紫」
さっそく王様に、先代の王の息子だが、報告をあげた。ここに集った一同深く頭を垂れた。
先代の王とは、当時、隣に強国ファ国と大国シアを控え緊張状態にあったが、城を中心とした大門を四方に建て、これらのよって取り囲まれた領土内へは一兵たりとも許さなかった勇者として尊敬されていた聖王であった……が、死後は度々侵攻される羽目になっていた。
それでも隣国のリョ国はこの時、1世紀から独立国家として躍進を始めていた。
躍進の原動力を支えたのは人海を一つにまとめ導くという優れたリーダーシップがあった事は無論、戦争が日常的であったことから、近くに普通の岩石以上に頑強な岩山があり、その岩を積み上げて作った城・要塞・基地・外門、に加えて、伝来時の銅剣は直ぐに止め、独自に鉄製造のテクを学び鉄剣を率先して取り入れ、一方他国は、弓は木弓を使用し、その木弓は下部が短く、上部が長くなって、矢は竹製で、石や骨を使ってる国々が多いなか、鉄を使い始めていた。
この文明は後後、海を隔てた隣国の倭国にも輸出され当時の弥生時代繁栄の礎ともなったのです。
コウは、さきほど突然襲ってきて気を失っていたときの胸の痛みも癒え「度々皆さまにはホントにありがとうございますと申し上げます」。
すると徐に傍らの臣下の一人が口を継ぎ「そういえば三日前の夜空に東海上のワコクの方向より雷鳴が、それは長く轟き『汝らを救う者現わる』という御声を伺ったのですが」と云う。
すると家臣一同は「王様そうです、王様そうです」と右へ倣え。
再び神々しい空気に包まれる。
何のことか薩張訳がわらないコウ。
沐浴済ませ真新しい服を与えれて手を通すと「ワオ―、王子様、お似合い」と周りから燥ぎたてられる。
一変、空気が一遍、「てーへんだ! てーへんだ! 東門が落ちそうです」という緊急ニュースを持って汗泥だけの見張り役が馬を飛ばしてやって来た。
皆騒然!喧喧諤諤、いやいや! こうで!そうで!ああだ! 「やはり来たか。例の取り決めていた軍機の通り動け!」と王の鶴の一声。
戦争に胸を高鳴る人の気が知れない、と異口同音に皆は云うが、いざとなると、勇敢な男よ! 国の英雄よ! と唱える。
この変り身の速さは、なんと愚かな者達よ。コウも例外ではなくなってゆくが……。
この世は矛盾の上に正義という名の名分を創っているのだ。相手が弱いとみると「世界平和のために戦争を以て正義を正す!」と言い出す。
強国と知ると只見て見ぬふりして「我が国は平和を尊ぶ民よ!」と唸ってみせる。
これが人間動物が行ってる「正義」ってやつなのか。
一旦戦争になると、包丁のデッカイのを振り回して当ったら痛いだろ、身体の肉にグッさと刺さる矢は何所から飛んでくるか、血が出るだろ、危ねったらありゃしね、目に当ったらもうご飯が見えなくなるんだぞ。
「一方的に攻められてる、このままじゃ国が乗っ取られる、姫も盗まれる、うーんー!?……なんとかしてやりたい!」とコウは紺碧な空を見上げ胸高くに腕組みをする。
すると、飛んだ! 空高くに! 数十メートルも、いや、数百メートルも高く遠くに、城壁を超えていた。
気付くと民家の軒下に居る。居眠りをしていた「なーんだぁ、夢だったのか」。
それにしても摩訶不思議。
胸が急に痛くなって倒れたり、胸辺りに腕組みをすると飛んでいたり――まぁ、いいっか。
「こらっアア! あんた誰!?」と怒鳴るオバサン。「なんだコノヤロウ! 乞食! 出てけ!」と血相を変えて出てきたオッサン。
「まぁー、キレイな目。きっとこの子はあの子の生まれ変わりじゃないの!?」というオバサン。
この夫婦は、名をムキというが、いくら励んでも子宝に恵まれることはなかった。 願掛け二年後漸っと念願の子をゲット。可愛くて可愛くて目に入れても痛くない可愛がりようだった。
家業としていた生まれたての卵を持たせ遊ばせているうちに赤ちゃんが高熱。
三日三晩、看病、願掛け、高熱、看病の甲斐もなく亡くなってしまった。
赤ちゃんが卵を持った手は必ず洗うべきだった。鶏の尻から出てくるものが衛生的である筈がない。その後は何年も又又願掛け暮らしていた。
そんな話を聞きならが旨旨!とご馳走、大したものでないありきたりの物だったが超腹ペコたったため、「こんな美味しいとわ! 初めてですよ」と、頬張るコウを見て「うちで働くかい?」と勧められ、ご厄介になることにしたのです。
飼っている数十羽の鶏の卵を売って金を稼ぐ。その際、漁師達が獲った魚と物々交換するが、その貰った魚を家に帰ってから天日干しにして卵で甘辛く焼いておく、すると、卵を売る際には、玉子一個の値段より数十倍も高くなった利益をあげる商売となっていたのです。
お世話になってるムキさんの家を出て直ぐに右の曲がり角、そこにはそれはそれは大きな大木が立っている三差路があって、ここを左に曲がるとフリーマーケットで賑わう通りに出る。
通り外れにトンテンカンチン!と鳴る鍛冶屋さんがあった。
なんでも名刀を作る店で有名らしい。
偶、一行に見たことのある人物が!
あのお城で会った軍司長官である。知らぬふりした。
「戻ってこい」と云われるのを避けるために、通り過ぎようとすると「コウ様!」と呼び止められた。
「いやー、『様』なんか付けないでください。コウで十分すっから」
「あの時一瞬で消えたあなた様を魔法使いと呼ぶ者も居て宮廷内騒然としました、が、あの後大変だったんのです」
「何が遭ったんですか?」
「東門はようやっと鎮圧はしたけど今度は北門が囲まれ三日間もかかる攻防の末追い払ったが、問題はロシ勢だったのです」 「ほーぉ、もしかしたら中ファ国とシア国の共謀があって同時に両挟みでリョ国の軍事力を分散し潰しに来たのかもしれませんね」
「私もそう思ってる。ところで姫さまがご心配なされてますけど……」
「あーあ、よろしく云っておいてください」
「ぶっちゃけ云うが、どうして逃げたのですか?」
「とんでもない。命を救ってくれた人・姫さまは大恩のある方。逃げてなんかいません。よくわらない成り行きってやつで……」
「それとも、コウさんには別に好きな人がいるとか?」
「うぅ……。『ぶっちゃけ』と仰ったから俺もぶっちゃけ云うね」 「女の子は気を遣ってイケネエ。それよりもっと自由に生きたいんだ」 「って、女子は、好きになったのかどうかは別にして自分の力が吸い込まれて無くなっていくような気がして」
「ハハハハハハッハ」
「そうだよね、可笑しいよな。笑ってくれ!w」
「そうじゃなく。コウさんが幼すぎ。というかいずれその吸い込まれる方がよくなるときが来ますから。ほろ酔い酒のように」
「誤解しないでください。姫さんに万が一の事が遭ったら助けに行くので」 「それに未だ恋に集中してくより、何か特別はっきりしてるものがあるわけじゃないけど、やりたいことがある気がしてさ」
「わかった。姫さまに『コウさんが心配してる。いつでも味方になりたい!』とお伝えしておきましょう」
「ところで鍛冶屋さんに、わざわざ軍司令官ともあろう方が何か?」
「近々宮廷内でファ国から使節団が参るのでその時に名刀を差し上げるですが、その進捗具合を。近くに来たついでに寄って」
「ところで、コウさんは今は何所にお住まいで?」
「卵屋さん一家にお世話になっています」
「おぉー、それはそれは」と云い終わらないうちに部下がそっと耳打ち。すると「さらば! コウ様」
「様なんて呼ばないでくださいって!」
急遽と一行は往ってしまう。何やら緊急事態でも又又しても生じたのだろうか!?
トンテンカンチン・トットッ・トントン!汗で紅くなった顔と腕を拭く体育会系の厳丈した図体のオッサン。
「武器には違いないけどもはや芸術品ってカンジがしますね、鍛冶屋さん!」
髪を吹き上げジッと一瞬ガン見、いや、長く感じたが「芸術は人間性の発揚だからな」と応えた。
「へー! 芸術ってカッケー!」
「君は何所に住んでるんだ?」
「あぁ、卵屋さんちに。毎晩寝る前になると健康維持とかいってあの林で汗雫になって帰って来るときもあるんですよ。『健康優良児だ!』と威張ってますけど」
ヒューッ! ズッサ! 夜の闇を切り裂く音。何だ何だ??こりゃああ!
暑くて寝返りをしてなければ心臓か頭に撃っ刺さっていた。
物音に気付いたムキさん「どうした? 何が遭った?」と布団を貫いて床に刺さってる矢を抜くと「石鏃に毒が塗ってある。遠くまで勢いよく飛ばすために鉄じゃ重くなる方を使うファ国人がよく用いる石の矢じりだ」……何でそんなことをイチ商人のムキさんが知ってるのだろう?
「いやーあっ、押っ魂消げた。虫の知らせだったのかなぁ、寝返りをうってなければ今頃俺は死んでいましたよ」
「狙いはおれだったんだ」
「違いますよ。窓が開いてたから外から見れば俺だったわかるし」
「いや、暗いからな。この部屋はよく以前は仕事の途中途中で仮眠用として使ってとこだ。だから俺だ」
「ねーぇ! 見ましたよ。黒陰の三人程が一目散に逃げて行くのを」と云って現れた奥さん。
「何だ? 外を眺めていたのか?」
「違いますよ。トイレに行ってて」
「…………」三人とも沈黙。恐怖を改めてリピートしていた、ホッとしていた、必ず又狙われる!? 恐怖心がドクドク湧いてきた。
突、矢庭に包丁を片手にすくっと外に立ち尽くすムキさん、そこへ再び矢が!ムキさんに向かって飛んできた、間一髪、身を翻すと今度はムキさんが出刃包丁をサッと投げる。その先に居た者は身を翻し木立ちより高くピョンピョンと軽やかに飛んで逃げる、その人影が闇にのまれた。
その木立の辺りに行くと、点々と血の跡が残っている。松明を持て!
付けて行くと鍛冶屋さんの所、そして、目の前に隣接する川の前で途絶える。
それにしてもムキさんって凄いなぁ、どんな人なんだろう?
旨いなーぁ! ここへ来て鳥の唐揚げは初めてです、しかも朝からこんな大盛りで。
「沢山食べて!」
「遠慮くなく頂きます、ありがと―う。うちのニワトリなの?」と、コウが応える。と、お上さんは「うちのよ」。
ゲッ 一遍で食べる気が失せた。
鶏舎を掃除したり餌遣りをしていて親しみも懐いていたし、あれほど大切にしていた商売道具のニワトリさんを……。
しかもムキさんは「ゼッタイ殺さない、金の卵を生んでくれる家族だ」と云っていたのに……。
お弁当に入れてくれた南蛮漬けの唐揚げは外し卵売りに出掛けました。
途中、鍛冶屋さんに寄って「斯々然々の如く昨夜は九死に一生を得た気分、その後もよくは眠れなくて云々」というと「これあげるわ」と差し出してくれた短剣、握る箇所は太く刃は幅があって厚みがある上に先に行くほど鋭く尖ってる。
「いいんですか」と云い頂くことにしました。
奥から弟子が出て来て臀部に巻くと動き易いし、他人からも目立たないといって鹿の皮の入れ物も呉れました。
「大将! 貰っていいんですか?」
「ンソと呼べ。また殺しに来るってこともあるからな」
ここの民族はどちらかというと、戦闘心旺盛というと聞こえがいいが、主我が強そう。
我がコワ国ていうなら、全身織田信長。宛然貌付きもリョ国系。秀吉も信長もそっくり系なつり上がった目に貌の輪郭あり……そういやー、聖徳太子さんも、つり上がった目鼻だち。徳川家康は? 顔立ちからシア国係、かもね。
(そりゃーア!そうだ! 双方の国々は、ン十億年ン千億年の悠久の中で共通の遺伝子が、混じり合い、出来上がって、いたんだよ。
今でも次のような到来人、帰化人、らの子孫たちがあっちこっちで活躍してらー!
――リョ国出身者だけでも。松坂慶子、山口百恵、西城秀樹、ソフトバンクの孫正義、ロッテ大財閥創業者の重光武雄、金田正一、上田剛史、幸田シャーミン、アン・サリー、映画監督の井筒和幸、高山都、水沢エレナ、伊集院静、伊藤ゆみ、アンミカ、大鶴義丹、張本勲、藤本美貴、木下優樹菜、崔洋一、つかこうへい、井原剛志、水原希子、錦野旦、南果歩、安田成美、井川遥、椎名桔平、小池栄子、五木ひろし、都はるみ、岩城滉一、玉山鉄二、松田優作、政治家の福島みずほ、同・小沢一郎、豊川悦司、布袋寅泰、矢沢永吉、和田アキ子ら始めスポーツ界、他に、知識人、著名人、財界、芸能界等に多々活躍してる。
ちな、福岡ソフトバンクホークス取締役会長、日本プロ野球名球会顧問を務める王貞治さんはファ国出身校。
「おれわ! ヤマト民族よ! 純血サムライ魂だ!」
「あら、そうなの。最初の最初、ニッポン国には、誰一人住んでいなかったんだよーん」)
ところで、あなたはどこの出身ですか?と、訊くこと自体が可笑しい。
重箱の隅をつつく
『重箱の隅をつつく』といって、『どうでもいいような細かいことばかりネチネチ取り上げて、口うるさく言うこと』だからです。
優劣はどれだけ(人にモテるか。じゃなく!)、人々に、生き物に、自然に、仕事に、そして、愛に、満ちたか?醜い生き方をしてしまったか?なんだよね。
だからね、私たちは、国名にこだわるようじゃ、気の小さな雑魚で終わるようになってはイカン!のだよ。
自分の家は良い。が、他人の家はどうでもいい。これでは、猿の縄張り争いを威張ってる猿山の、人間の顔をした、お猿さんになるだけじゃないか。
いつものように卵は全部魚と交換してその漁師街で少し油を売って帰途につこうとしていた。
ピーヒャドンドン・ピ〜ヒャラ〜ラ〜と楽隊が奏でる何処か演歌ちっくというか盆踊り的というか、どこかに哀愁をいざなう曲に併せた曲芸団の一行の手品を演じているのを観て、手を叩き大声で燥ぎ、コワは一日の疲れを紛らわせていた。
立ち去ろうとするとき団長が近付いて来て「種明かしをしてやるわ」と云ってくれた。
何か大きな宝物でも貰ったみたいになった気分ていたら団長が「あの飛び跳ね方は何処かの山猿のようで人間ワザじゃない。サーカスに向いてるぞ。俺の名はクパ、いつでもよければ入らないか!?」とのお誘いでした。
「光栄すっ! でも悪いからいいすっ。今はお世話になってる人がいるんで……。その方たちからクビにでもなったら、そのときは、お願いします」
只今ー!と家に帰る。と、いつもと違う。静寂としている。
「どうしたんですか?」
「夫が急死した」
「えぇーえ!」 「お線香をあげたいので」
「もう埋葬しました」
「えっ! えぇ?」 「…………」 「で、これからどうなさるんですか?」
「実家の弟が来いというから帰ります」 「何処ですか?」 「…………」
(亡くなって直ぐにその遺族を埋めるか? 亡くなったら普通悲しむ動作があるんじゃないか!? なんじゃこの不自然さわ)
「はーい? 何かおっしゃいましたか?」
「いや、何も言ってませんけど」
なんとも後味の悪い会話……。
やや多めの給金と魚等をドッカリ貰ってお世話になっていた家の方を振り返りつつ、家を跡にする。
「これ、その前の短剣のお礼に!」と、魚全部とニワトリさん五羽を鍛冶屋さんにあげる。
「あのーぉ、お願いなんですけど。ニワトリを唐揚げにして食べないで、産んでくれた卵を育てるとか何処かに売るとかしてもらえないでしょうか」
「お、助かる、そうするよ。堅い仕事だから柔らかいものに接したいと思ってたとこだ。そうだな、そこの小川にはいろいろな草花も生えてるし、そこでニワトリと遊ぶか」
「そうですよ! 鶏糞以上の肥料はないっていうし。そこに植えた作物からは恵みイッパイな果実だって得らるし」
「ところで、コウくんと云ったけ、あんたは誰なの?」
「はぁ?」
「そん前お城のお偉いさんと親しげに話していただろ」
「うん、よく分からない経緯だけど気絶してたところを助けて貰ったのが偶偶お城のお姫さまだっただけ。その関係で」
「縁と倖は隣り合わせ」
「ん? どゆ意味ですか?」
「往き交う人によって幸福になったり不幸になったりする。俺の歳になれば解るよ」
「何才ですか?」
「34だけど。それは先代の師匠からの受け売りだ。余計な事訊くな」
「全部、幸せにしてみせるさ!ウソウソw」
「コウくん。これから何所に住むんだい?」
「あーぁ、魚売りの途中で何回も『来なさい。城内がやなら城壁外の一角に重臣たちの住む区域もあるから。どちらに住んでくれて構わないよ』とお城の警備の一行らと行き交う度に誘われていたので取り敢えずはそっちへ行ってみようかと」
「そっか、良かったじゃないか」
「ンソさん、また寄りますから―。短剣ありがとう」
「あ、ニワトリさんよろしく頼みまーす!」
「シッコイな。卵食えなくなるから殺しやしねって」
「そうです! 健康維持は真心の継続から!」
「知った風な言い方するな。もういから、さっさと行け」
小高い丘を超えると、ドキッ! 背中に靡く旗をした頑強な目付の鎧いに身を包んだ兵の三人が待ち構えている。
咄嗟にケツの短剣を手探る。
馬を降りた三人の兵がつかつかと歩み寄ってコウを取り囲む。
和やかな表情の三人(助かった!)。
「ここから先は我らがご案内を務めさせていただきます」と云い晄晄と光る名馬懸った毛並みの美しい栗色の若馬にコウの荷物を括り付け(荷物とはいえない只の小さな野営用毛布と火を起す道具の二点しか入ってない袋だが)「さー、どうぞお乗りください」 「いやぁ、大丈夫ですから」 「それでは我らが長官に叱られますので」
馬上のコウは「凄いなぁ。馬にまたがると馬の筋肉の躍動まで伝わって来て、見降ろす気持ちは、眺めも天下人に成ったよう。
テクテクパカパカ通りすがりの者は一往に皆んなが道を開け、なかには跪く庶民まで。そりゃそうだ、王家の紋章入りの旗だもんなーぁ。「悪いなぁ」と思いつつ。
先に一人偵察に行っていた斥候の戻った顔が青ざめてる。
「東門、今でいう有名な東大門。只の城壁門ではない。そこには小宮殿が建てられ兵士達が常駐。
いわば国を守るこれを含め八つの門によって城と庶民の領地を守る軍事基地の一つ。火の手があがって南門まで落ちそう」と逃げてくる庶民からの情報が伝えられ震えあがってる。
過去にも国の根幹を揺るがす一大事に係る事変で幾度となく国が潰れかかった事がある。ファ国人は捕えると老若男女子供赤ちゃんに関係なく一往に売り買い、つまり、奴隷にするからであった。
「何ーぃっ! 破られたら庶民の居る城領域に入り一遍に城は落ちる」と隊長がいうと斥候は「ファ人とゴルモン人の混成隊で数が半端ないそうです。落ちるのは時間の問題かと(おろおろ泣きっ面、諦め顔)」するとコウは奮った。
「姫を助けに行く!」というが早く、胸に手を! 誓ったように左胸のほくろを握る。すると、なんと上空の馬上の騎士となって空高く跳び往く。
呆気にとられる兵士たち、どっちが護衛だか? 後につづき疾走するが、既にコウの姿は空の彼方に消えていた。
東門辺りは既に蟻の行列のごとく大地が見えないくらいファ軍で埋めすくされていた。
宮殿に舞い降りた時はここも非難しようとする者たちで皆が浮足立っている。
煙硝する煙の臭いはここまで届く。「あ! コウ様だ! コウ様だ!」と親衛隊の一人が口から唾を飛ばし、二人が、三人もツバを飛ばし、大勢で取り囲む。既に「魔法使い」そして今も「空から舞い降りた」を見てそう思っているのである。
「そちがコウか。我が城によくぞ参られた」と王様自らコウに近付いていう。
「取りあえず、用意してある洞窟に非難するが、コウよ、どんな魔法を使って貰えるのか!? 頼みますぞ」と軍司長官は託す。
「お任せを」 「あれ!? あらら? スイッチが入らない……」いくら左胸のスイッチを押しても握っても反応ナッシング。すると皆は一歩退け、二歩、三歩、みな居なくなってしまった。
「お帰りなさい。無事でよかったーぁ」 「あ、お姫様こそ無事で何より」
「いやだー、スって呼んで」
「お! ス様。心配になって戻ってきた。助けて貰った恩返しに」
「それだけ? でも嬉し」
「だって、好きっと言ったら殴られるだろ。高貴な方だもんなー」
「しないよ。ばっか~ぁ」
「そ! 恋をする者は皆んなバカになるらしいよ」
「どうして?」
「なかには命を賭けてその人を好きになるから」
「いいもーん、バカだって。できない人の方がよっぽど馬鹿だよ」
「バカはバカでもバカ正直に尽くしたい、尽くされたい」
「かっちょい―!」でも「こんな国じゃイヤだぁ……私が生れる前から、その後も、大きな戦争だけでも何回も何回も、もぉウンザリ。そのうち死んじゃうよ」
「よーし! なんとしてでも守るぞー!」 「恩返しじゃないぞ。俺の気持ちだぞ」
「私も戦う」 「ねぇ! どうやって? 一人じゃ無理だよ」 「あ、私の親衛隊10人いるからどう? って無理だよねぇ……」
「いや、一人より二人。力を合わせればできないことはない!」
アイディアがある!
先ず二班に分かれ同時攻撃をしよ! 攻撃しては退却し又攻撃しての繰り返しで出来るだけ殺さないで捕虜にしてその者たちに「働きに応じて『土地』を与える」と言い広め、味方の軍隊に組み込んでいく。
「コウさん、何云ってるんですか、自分の国つまり故郷に残した家族を裏切ってまでこっちの敵国に鞍替えなんてあり得なーい……」とスの親衛隊隊長が一笑に付す。
そうだね。違うぞ!
リョ族って知ってますか? ファ国内に大勢住んでファ国のために働き自らの生計を成して家族を養い平和で愉しい生活を選んでる人たち。
昔、どっち道、両国は陸続きの都合上リョ国もファ国もなかった、偶偶根を下ろしたのがファ国でありリョ国であったはず。
だから、彼らには祖国観念はない、家族と楽しく暮らせる地が心の祖国になるんだ。
そこで。
領地をあげる!といやー、いい。
マジであげるんかい? 占領と同じだろ、敵国人にそれは無い無い。
いや、あげます! 田畑を領地としてではなく土地の所有権をあげる。貰った者は皆必ず喜ぶはず!
次は、そこから税金を頂く。住民はいざというとき兵として徴用する、一石二鳥。
もち、彼らの家族は故郷から呼び寄せ伴に暮らしたがるはず、という政策は!?
来ない、来れない、場合は?
そのような捕虜は最初から選考から外す。
家族恋しさにいつなんどき裏切って何をするか!?
しないまでも必ずそのうちに故郷へ帰って居なくなってしまう。
「うん! 良い考え。最初はお金で釣るって手も」
「スさん、そんな金あるのか?」
「お父様に相談してみる。どっち道、戦費は掛かるから、いや、むしろ安上がりになるくらいで出してくれると察う」
数時間にわたる軍議を経てさっそく「夜桜隊」を編成する。
スの親衛隊10名、それに王から回して貰った兵500名の合計510名。指揮官はコウ、副官には老練なつわものを配下に置く。王から兵を直接頂いた際の、脚が速い者、視力と嗅覚に優れた者、言葉巧みな者、をそれぞれ確保することを基準にして選ぶ。
武力に秀でた者は20、30名ずつの班部隊としておけば十分。
そこへ現われました、ピーヒャララのサーカス団の一行。猿飛佐助擬や伊賀の忍者上月佐助張りだったり諜報活動調子屋な木下藤吉郎的だったりが一挙に集結。
このリョ国の惨状を普段から見兼ねての義侠心か、正義魂か、憂国の志士か、勝ち馬に乗って後の商売に備えておきたかったのか、兎にも角にも一癖も五癖も持つ連中の参加は大きい。
「我らこの時を待っていた!」と胸を張って豪語するクパ団長。いつもになく髭は剃り真面目なツラをしていた。覚悟の程が窺がえる。
人が口を開け唾液が垂れる熟睡時間帯は深夜12時から2時くらいの間。
夜陰に紛れ東門に先ず小隊20名程の兵が近付き「馬鹿野郎―ッ! 死ねえー!」と、とにかく気狂いみたいに叫んで騒ぐ。たちまち数十名の、時に数百名からの反撃が始まって来る来る! 馬上の兵も槍をかざして逃げる逃げる! 併、待ち構えていた屈強な味方兵が一斉に腕や足に矢を射って取り囲み(死なせては元も子もなくなる)と控えていた数千の王隊は臨機応変に現れて敵兵を駆逐、或いは、コウ作戦を援護する、同時に「金は倍出す」と言い振る舞う。
続いて「今の荘園は何所までも永遠に中国政府の物」 「自分の私有地にしたいだろ!?」 「そこからあがる利益は全部自分のモノにしたいでしょ」 「これを保証するのがこの証明書」と逐一告げて周る。高級食材でつくったメシを与える。
作戦は大成功! その契約書欲しさに投降する者を連れて帰った。
この話は即敵陣一帯に広まり、言わずと、自然投降して来る者が増え出す。敵陣の統制は乱れた。
そこへ王本隊の大部隊が一斉に、コウの部隊と入れ替わり波状攻撃を繰り返す。こうなると勢いはどっちにあるか? 攻め側に
分がある!
こうして東門も南門も奪還成功となった。
実際に加わった敵兵にはその契約書を授与してリョ国の国民として、労働力として、兵として、員数を増やしていくことなった。
が、敵兵が去った後はそれ以上は、投稿して来る者が居ても受け付けなかった。逆にリョ国で投降したふりをしてスパイ活動をされかねないからであった。
と或る日の夕刻「申し訳なった。この通り謝る。許して下さい」と死んだはずのムキさんが現れる。卵売りは表の顔。死亡したも嘘。
実はファ国によって潜り込まされたスパイだったのです。
これを裏付ける証言あり。鍛冶屋のンソさんは逆にリョ国の諜報員で密かな内偵の末にムキをスパイと断定(林で運動は嘘で仲間のスパイらと破壊活動をしていた)。見習いの若者があの夜、ムキ宅に矢を射ったのである。誤認と気付き「罪滅ぼしに短剣」をとコウに与えたのでした。
道理であの時、左腕を半身で隠していたわけだ。痛かったろうな、あの出刃包丁じゃ。
「無機さん、で、どうゆうことですか? 今更」
「ファ国では永遠に土地は自分のもにならない。農奴として終わるしかない」 「私が投降するとした誠意は次の事を以てご報告します」 「軍司長官の副官の一人は実はやはりファ国から息のかかったスパイで……」
早々その副官は逮捕、が、その後従順に投降した態度から土地を与えられ平民として家族共共リョ国に留まり平和に暮らしていくようになる。
すると雪崩現象、実はスパイは私も俺も僕もと出て来る!出てくる! 結局、愛国心なんてもんは二の次三の次、自分中心! これでいいのだと思う。
国あっての民ではなく、民あっての国なのだから。
だからね、国のトップが勝手に宣戦布告するような国なら脱出した方がよろしいのだよ。何処の国に行っても「住めば都」なのだから。
かりに、自国に留まっていたとしても、また、自分は巻き込まれなくて済んでも、必ず、自らに、子孫に、付け(ツケ)が回るからです(徴兵制で子が呼び出され、戦死するリスクが増える。或いは、膨大な資産ないし労務を「国家のため!」と奪い取られるだけ)。
(実霊が語ってる。
第二次大戦の日本軍の犠牲者数総計44万6500人、戦争と関係の無い民間人犠牲者は総計20,365,000人と云われています。たった一握りの数名の政治家のためにだ。
この夜桜隊攻撃の功は、史上初めて、リョ国が完全独立国家を果た地となった。
その最盛期にはファ国東北地方南部とシア国沿海州の一部までも戦い抜き領地として奪い取ることに大成功。今でいうリョ国半島の大部分を支配したのです。
スさんと初めてのデート。お伴の者たちを遠くに置き。
花は咲き陽は高く細流の水音。
桔梗の花一輪、そしてもう一輪、を採って髪に挿す。
碧い星の輝きのよう、太陽のような白の眩しさ。微笑む口元へそっとキスをする。
肩に廻した力強い白いスの両腕が返ってきた。
うれしーィーイイ!とまたもコウは卒倒する。
気付くと「箱根の山は 天下の嶮函谷關も ものならず……」
アンビリバルー!
彼の老婆がここで再び現れ「ありがとう」
「んん?」 「って、どうゆうことですか?」
「もう魔法は使えません。コウさんも私も。使えたのは他に選択肢がナッシングになってやむを得なかった時だけだったのです」
「いや、その話はどうでもよく」とコウが云い終わらないうちに「私だよ」と見る間にスが現れそこに彳んでいました。
ふたりそれはそれは仲の善い夫婦となって。
やがて生まれた子は箱根足柄山の金時山に住む「金太郎」と名乗ったそうな。
この子も蛙の子。
金太郎が歩き始めると母のスは腹掛けを作ってやる。
が、ブカブカでした。
それでも金太郎よ! 早く大きくなれ! という願いを込めてのことだったのです。
父のコウと同じように山峡生まれの山間暮らし。
金太郎の遊び仲間は鳥さんや動物さんたち。元気な仲間と遊ぶうちに金太郎はどんどん生長して成長した男の子になった。
腹掛けもピッタリになっていました。
そこでコウとスは相談をして。
五百万円を与えました。
そして告げました「いつか困ったときは使うのだよ、人は腕力では動かなくて金には靡くからね。あと一つ、力とは腕力ではなく勢いだよ。この勢いが正しければ必ず奇跡は起きるのだからね」
では!と身支度して出発する金太郎。
途中に栗の林がつづき、栗の実が沢山落ちている。付いて来た仲間と一緒に栗拾いをしていました。そこへ突然、茂みの方からワッサワッサと大きなワイド熊が現れた。皆は震え上がる。
が、金太郎は妙な気勢を発し、ダダダッッッ!!!と突進してく。
いつもと勝手が違った熊ではあったが立ち止る。そこへ縄をクネクネと投げ入れた。熊は蛇が大っきらい。意気を失った方の負け。
「参った」とその騙し知恵にクマさんは感心する。金太郎に魅かれていたクマさんも「仲間にして下さい」と頼み込んで来た。
この金太郎はのちに坂田金時と名を改め、源頼光四天王のひとりに数えられる立派な武士になって活躍した。コウそっくりであった。
あの五百万円はすでに五百億円となっていた、大袈裟!と人はいう。
やがて坂田金時は色白歯並びグッな女の子と出逢う。
全然
リョ国系な、母親酷似。
コウの気質はまるまる日本男児、これを受け継いだ。
話は続いて。
その時の女の子は母となり又その子は、令和の時代に日本国の初女王(総理大臣)になった。
リョ国の女王を先祖に持った運命。
今日も風は吹く、奇跡は起こる「箱根の山は天下の嶮」に、「アリラン アリラン アラリヨ アリラン峠を越えてゆく」に。
4世紀末 - 6世紀。古墳時代には、ヤマト王権に仕える知識人や技術者や様々な亡命者が、ファ大陸やリョ半島からの人々が多く渡来した(その証拠は、各地に彼らの墓が至る所に残っている。また、文献の多くが語っています)。
国家を統一した武士達をはじめ、天皇となった方のうちに、金時山の金太郎の子孫が居た。