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異世界代理執行者-The Agent Executer-  作者: フィーエル
序章
4/12

第4話 決断の時

 賊の幹部とレナードは間合いを取って互いを睨み合う。


「よう、副隊長さん。隊長さんはどこいったんだ?もしかして自分だけ助かるために逃げやがったか?」

 賊は更に挑発する。


「違う!そんなことをする方ではない!」

「ふーん、そうか。ならどうしたんだ?」

「くっ、言い返したいのは山々だが、そう簡単に口車に乗せられる訳にはいかないんだよ!」

「はっ、そうかい。だがまぁ、どうせ俺ら反逆者のことを近隣まで知らせに行ったとか、そんな所だろ」

「くっ…」

「は?なんだ図星か?」

 賊は嘲笑して更に煽る。


「くそ、お前はここで俺が倒す!」

 レナードは刀を正眼に構えそのまま賊へと斬りかかった。

 賊はレナードの攻撃をダガーで軽く受け止め、半身をずらし受け流す。


「はっ、所詮副隊長さんはそんなもんか。隊長さんと殺りあったときはもっと痺れたぜ?」

「まだだ、俺の本気はここからだ」

「はっ、そうかい。本気を出しそびれて殺されてくれるなよ」

「見てろ!【水剣】スキル発動![流水]!」

「【邪剣】スキル発動…[毒牙]」

 賊は小声でスキルを唱えた。


 レナードの姿が一瞬消える。

 次の瞬間、レナードは賊をすり抜けるように移動して立っていた。すり抜けざまに賊を倒そうとしたのだろうか…

 しかし賊はレナードの攻撃をうまくかわしたらしく平然と立っている。


「ぐっ…」

 対するレナードは無傷では済まなかったようだ。

 レナードの脇腹に裂傷が刻まれている。


「ふっ、攻撃が単調すぎるんだよ。直線的に突っ込んでくるなら攻撃を与えるのも簡単だな」

「ま、まさかスキルホルダーだったとは…」

「はっ、俺が賊だからってスキルを持ってないとでも思ったか?隊長さんはそんな慢心も油断もなかったぜ?」

賊はやれやれと言った感じで腕を上げる。


「うぐっ、冷静を欠いてしまうなんて…いつもの訓練でも冷静に立ち回れと言われ続けていたのに。とんだ失態だ」

 レナードは痛む傷口を抑え立ち上がる。

 傷口には禍々しい毒素が纏わりついている。


「ほう。俺の[毒牙]を喰らっても案外余裕だな。普通なら痛みで立ち上がるのも苦痛だろうに。体だけはしっかり鍛えてるようだな」

「ああ、次こそは外さない!」

「ああ来いよ!もっと俺を楽しませてくれ!」


 再び二人は対峙し睨み合う。

場にピリピリとした雰囲気が伝染し、両者共に次の一撃で決着が着くような気配を漂わせている。

そして二人同時にスキルを叫んだ。


「[水刃乱舞すいじんらんぶ]!」「[邪龍霊波カースドミネーター]!」

 レナードの剣から水の刃が放たれ、賊のダガーからは禍々しいオーラが放たれた。

 エネルギーがぶつかり合い大きな衝撃を生み出す。

 レナードの放った水の刃は四方から賊を襲い切り裂いていく。

 賊の放った邪悪なオーラはレナードに纏わりつき汚染していく。


 しばらく力は拮抗していたが遂にレナードが膝をつき倒れた。

 賊は至る所に裂傷を作り血を滴らせていたがしっかり立っている。

「ハハハ、その程度の攻撃じゃ俺を倒すには百年は早いわ!」 

 賊は高らかに笑い、疲れたのかその場に座り込んだ。

「はぁはぁ…やっぱりこのスキルを放った後は疲労がやばいな。威力が強力なだけある。しかも結構攻撃を喰らっちまったし…少し休もう」


 僕は呆然とその戦いを見ていた。

ただ、騎士の副隊長が賊に負けたという事実しか理解ができなかった。

(な、なんなんだあの超常現象は?!まるで魔法じゃないか!)

 そんな時、誰かの嘆きが僕の心に届いた。


(ああ、俺は全くの役立たずだ。エドワルド様を守るという使命も果たせず、その上俺は死んでしまった…冷静さを欠いて負けるなど不甲斐ないばかりだ。願わくばエドワルド様だけでも救いたかった…)


 すると機械の合成音のような音が頭に直接伝わってきた。

『シークレットスキル【代理執行者エージェントエグゼキューター】が覚醒しました。以後使用可能です』

(な、なんだ?!【代理執行者エージェントエグゼキューター】?)


『ミッションが発生しました。』


 ==========


 ミッション

 内容:賊(幹部)の撃退、及び城主(エドワルド)の救出

 難易度:★★★


 ==========


『ミッションを受注しますか? YES/NO 』


(え!?いきなりなんだ?!これは選択しないといけないのか?ぼ、僕はどうすれば…このミッションを受けたらレナードさんの無念が晴らされるというなのか?)


「ふぅ、少しは体力も回復したし城主に止めを刺してやるか…」

 賊は休憩を終えたらしく立ち上がる。


(あぁ、もう迷ってる暇はないじゃないか!答えはYESだ!)


『ミッションを始めるためにはレナードに憑依してください』

 僕は迷わず憑依と念じた。

([憑依]!)


 視点が一転し地面が見えた。顔を上げると立ち上がった賊の後ろ姿が見える。

 まずは素早くレナードのステータスとスキルを調べる。


 ==========


 種族:人間(Lv20)

 職業:騎士団副隊長

 生命力:0/2500(+0)

 魔力:50(+0) SP:100

 攻撃力:500(+100) 防御力:250(+50)

 敏捷値:175(+25) 魔法力:10(+0)

 〈上限突破〉


 ==========

 ==========


 スキル

【水剣】位階:2〈最上級開放〉

 [流水][水刃][水刃乱舞][水龍波動ジェットストリーム

【忠誠】位階:5〈スキル開放〉

 [閃光波][守護壁][自動回復]


 ==========


(ん?〈上限突破〉とか〈スキル開放〉ってのはなんだろ?もしかして【代理執行者エージェントエグゼキューター】の影響かな?…って、それよりもエドワルドさんを守らないと!)


 賊の幹部は傷を抑えながらゆっくりとエドワルドに近づいていく。

「[閃光波]!」

 僕は手をかざし賊の背後から迷わずスキルを放つ。

 賊は僕の声に気づき驚き振り返る。

 放ったスキルは賊の頬を少し切り裂き空の彼方に消えていった。


「な、なんでお前。まだ生きてたのか…息の根は止めたはず…」

賊は動揺して問いかけた。


「残念ながらレナードは死んでしまったようです」

「じゃあ、お前は、お前はいったい何なんだ!」


しばしの沈黙の後、僕は言う。

「僕は…敢えて名乗るのであれば【代理執行者エージェントエグゼキューター】ですかね」

レナードの本来のステータスは表示されている値から(+〇)と武器の攻撃力(50)鎧の防御力(100)を引いた値です。

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