第1話 新たな世界へ
僕は死んだ。
死因は衰弱死。
もともと病弱でずっと入院してる有様だった。
学校には行ったことはなく、自分の移動出来る所は限られていた。精々病院内の公園が良いとこだ。
そんな僕は現世を去る前、ある不思議な夢を見た。
何者か分からないが突然僕に問いかけてきたのだ。
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僕は真っ白な空間に立っていた。
『こんにちは』
(ん?だれ?なんか聞こえたけど…空耳かな?)
『はじめまして。トオルさん。私は人類との交信役を任されている神です』
(え?神様?!……あーなるほど。僕もとうとう死ぬ時が来たってことか。どうぞ連れてってください。その死後の世界とやらに)
『残念ながら死後の世界というものは存在しません』
(え?それじゃあなんで僕は神を自称する得体のわからないモノに話しかけられてるんだろ?)
『か、神に向かってなんて言い草ですか!ま、まぁいいです。本題に入らせてもらいます。
このまま何もせず死なれるのですか?』
(は?いきなり何を…僕に何が出来るっていうんですか。今では病室から出ることも出来ず寝たきりで暮らすだけだというのに。)
『あなたは幸運にも異能力を取得する権限が与えられたのです。』
(今更異能力が手に入ったところでどうにもならないでしょう…)
『いいえ、そんなことはありません。能力次第ではあなたが自由に動くことも出来るでしょう』
(あんまり興味ないですね…もう僕は死ぬんです。あ、ちょうどいいし死んだらどうなるか教えてくれませんか?神様ならそれぐらいは知っているでしょう?)
『はぁ、しょうがないですね。人は死ぬと消滅します。物質も心などを形作っている[情報子]も虚無へと帰るのです。』
(ふーん。何も無いのか)
『ええ、稀に肉体から開放された情報子が赤ん坊に宿って転生を果たす者もいますね。もちろん完璧に移動出来る訳ではないので記憶は失います』
(ふーん。転生とかほんとにあるんだ…)
『ありますよ…ってそんなことはどうでもいいんです!異能力、どうするんですか?』
(え?あーいいです。そんなもの要らないです。大人しく消滅させてもらいますので…)
『残念ながらそれは出来ません』
(え?なんで出来ないんですか!人は死んだら消滅するんでしょ?それは僕も例外じゃないでしょう)
『実は上の偉い神様に、ここままだったら可哀想だし何か与えてあげようという話になったらしく。受け取らないという選択肢はないそうなんです』
(えー!?そんな…やっと楽になれると思ったのに…)
『なんかすみません。あ、でもでも神の力を使えば異世界転生とか出来ますよ?どうです?』
(異世界転生ですか…子供からやり直しってことになるんですよね?)
『はい、まぁそれはしょうがなく…肉体を作ることは出来ますが赤ん坊から始めないと体に負荷がかかってしまうので…』
(何とか成人ぐらいから始められないですかね…赤ちゃんプレイとか御免ですよ…)
『あるにはありますが…』
(どんな方法ですか?)
『ある世界の人物の情報子を消滅させてそこにあなたのものを入れ込むんです』
(うーん。それはさすがにやりすぎな気がしますね…自分の肉体をどうにかすることは出来ないんですか?)
『残念ながら…無理ですね』
(そうですか。まぁ、分かってはいたけど…あ、あれはどうです?)
『あれ、ですか?あれってなんです?』
(降霊とかいうやつです)
『なるほど。それなら確かに情報子に干渉することはないですね』
(じゃあそれでお願いします)
『でも、いいのですか?』
(何がです?)
『自由に動くのは制限されますよ?肉体なしの存在となるわけですから』
(今までも寝たきりだったわけだし僕は別にいいですけど…)
『そうですか。では能力ギフトを行います。いいですか』
(はい、大丈夫です)
『能力付与後、あなたの情報子を保護し異世界へと飛ばします。そこであなたの降霊したい宿主を見つけて「憑依」と念じてください。そうすれば宿ることができます』
(はい。一応確認させて欲しいんですが異世界じゃないといけない理由は何故です?)
『簡単に説明しますとこの世界は上位世界と言いまして神の施しなくとも安定しているんです。逆に言うとそれだけ干渉するのに力が必要ということです。そしてさっき申しました通り情報子などの異物質は時間とともに消えていくんです。なので精神体では存在するのが難しいのです』
(なるほど。そういうことですか。)
『はい、では能力ギフトを行います』
(よろしくお願いします)
『はい。では良い人生を』
視界が暗くなっていく。
そして僕は夢の終わりとともにこの世での人生を終えた。
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そして僕は異世界へと精神体の状態で旅立つことになった。
手に入れた能力は【降霊】。
僕は精神体という変わった姿で世界を生きることになる。
まずは宿主を探さないとな。
よろしければ、続きも見てください。
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2話は与えられた能力についての確認。
3話からストーリースタートです。