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二階演劇部

 約束の火曜日はあっというまに来た。

 その間にミズキが僕の寝ているベッドに二回ほど入ってくるという珍事があったが、なにもしていないので安心してほしい。

 福浦瑞稀が学校に来ると混乱をきたす可能性があるので、なるべくわからないような格好して来てと言ったら、そのままの格好で来た。そして、彼女の近くを通る生徒は全く彼女が福浦瑞稀だということに気づいている様子ではなかった。

 ミズキに会って開口一番に言ったことは、「いやねー、ここに国民的アイドルがいるのに気づかないなんて」だった。

「気づいて欲しいのかよ、やめてくれよ」と僕は心の中でヒヤヒヤしてしまう。

 ミズキと合流すると部室棟に案内する。ミズキは部室棟のことを知らない。

「こんなところあったんだ。へー」

 さしたる驚きはなかったようだ。

 演劇部の部室は二階だった。文芸部は五階なのに、演劇部は二階とはなんなんだろう。いや、とにかく引っ越したい。五階から別の階に引っ越したい。それが四階でもかまわない。

 なんてくだらないことを考えているのは一瞬だった。部室の前に着いてドアをノックしようとした時に自然と開いた。

「お待ちしていました」

 背の小さいショートカットでグラマラスな女の子が立っていた。

「あっ、あー。どうも」

 なぜか、ミズキから軽く蹴られた。

「こちらへどうぞ」

 彼女の後ろをしずしずと着いて行く。テレビでよく見るような演出家が座るような長机の席に通された。先に黒崎先輩はいた。

「どうもです」

 軽く頭をさげる。

「はじめまして、服村ミズキです」

「はじめまして。話は聞いているわよ」

 黒崎先輩は笑顔で言った。

 その笑顔が僕には怖く感じた。なんでも知っていますよというようなニュアンスの表情だった。僕は、先輩に対しては事件以降のことしか話してない。 ミズキの顔を見るのが怖い気がしたが、勇気を出して見たらなんともなかった。

 全部は僕の心の中で起きている葛藤みたいな現象なのかもしれない。無駄にエネルギーを使っている。

「はい、じゃあ、次、滑舌の稽古ー」

「はい!」

 練習しているのは、女性八人で男性五人だった。今、稽古を仕切っているのも女性だし、部長も女性だった。なんとなく女性の花園みたいな感じのところに来た感じがして場違いな気持ちになる。

 一通りの練習が終わるまで三十分かかった。その間、先輩もミズキも一切席も立たずに飽きずに練習を見ていた。僕は飽きてしまって別のことを考えていた。

「基礎練おしまい! お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした!」

「十五分休憩ねー」

「はい」

 返事をして部員たちは各々休憩をしている。

「ちょっと外行ってくるわー」

 基礎練を見ていて飽きていた僕は、外の空気を吸って気分転換をしようと思った。


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