91.ダンジョン視点
「・・・飽きた」
何かゲーム以外の別の刺激が欲しい。
そんなこんなでダンジョンコアでお買い物をゲームとお菓子以外のを見ている。
すると・・・出てくるわ・・・血塗れの分身装置。ドッペルゲンガー。ホムンクルス製造機。VR。転魂機。
ゲーム以外の刺激・・・それは・・・異世界探索!!冒険!!でもさ・・・
知ってるか?画面の中のような世界があるのに、いつまでも・・・このダンジョン内に閉じこもってゲームしている地球人がいるんだぜ?
そんなこんな考えながら、その商品を見ているとマリウスさんがこちらにやってきて、画面のほうをみて固まっていらっしゃる・・・これは・・・今こそ畳みかけるチャンスなのでは?
「出れる方法あるやん・・・?」
「ちっ・・・見つけたんですね・・・で、僕の知る限りそんなのが出る方法だと思いますよ、僕の知らないのも混じってますけど」
なにか前半のほうにちょっと・・・何かしらの音が聞こえたような気がしないでもないな・・・いや、うん、きっと俺の気のせいだな。うん。
「ちなみに知らないのは?」
「VRだけは知りませんね」
「へ・・・へぇ・・・」
ゲームの枠組みだからかな・・・ゲームのを除外してるけど・・・俺の知ってるVRなら、ヴァーチャルなんだから、触れないから除外だな・・・値段も結構するし・・・
それに血濡れの分身ってのもなんか一番安いけど、絶対何かしらヤバい、絶対ヤバい、そんな予感がビンビンする。感じる。俺はこの自分の感性を信じる。なら・・・転魂機は・・・名前からして、誰かの魂を入れ替えるってことだよな???たぶん・・・他人の体で無双はな・・・なんか嫌だな・・・ゲーム内では全部他人の体操って無双してるようなもんだけど・・・生々しい現実では拒絶反応が・・・
すると・・・ドッペルゲンガーとホムンクルス製造機か・・・
「なんですか?そんなずっと沈黙して・・・」
考えていたら、マリウスにそう投げかけられたので、いったん自分だけで考えるのをやめる。
「マリウスはどっちのほうがオススメ?」
「僕ですか?まぁ・・・マスターですし、ホムンクルス製造機のほうがいいんじゃないですかね?」
少し考えた後に、そう答えてくれた。
「ちなみになんで?」
「ドッペルゲンガーは一応自意識があるので、弱いマスターの真似なんて命令されなきゃまずやりませんし、このダンジョンから離れれば離れるほど命令の拘束力がなくなってネームドにしていても命令から逸脱した行動をとるかもしれません、それに見つかれば即魔物として殺されますからね。ホムンクルスのほうは禁忌の技術ですけど、まぁ・・・魂のない入れ物なら、作ってるところ見つかれば即処刑ですけど、普通の人には分からないでしょうし、マスターが動かしているときはちゃんとマスターの魂を鑑定すると思いますから、まずバレませんから・・・それにある意味何度でも使えますしね・・・」
最後にボソッと何かを言っていたような・・・
「ちなみになんで外に出れないなんて言ったの?」
「間違ってませんよ・・・だって、マスター弱すぎて外に出たら死にますよ?普通に」
そう呆れたようにマリウスは答える。
「なら、鍛える!」
「本当にやるんですか?」
疑るかのような声音で私の目を見て言ってくる。
「やる」
「絶対にやりますか?」
胡散臭そうな目でこちらのほうを、俺の全身を見ながら、再度私の目を見て言ってくる。
「うむ」
自信満々にこたえよう!このゲーム以外ポイントが溜まらなければ、適当に運営するしかないダンジョン生活とはおさらばさ!!!
「本当の本当にやるんですか?」
「やります」
「ふぅーなら、今日から体動かすことをやりますよ、移動しましょうか?マスター」
ポキポキと手を鳴らしながら、農場のほうへと行こうと俺を促している。
「なんで?」
「これは自分の肉体の複製を作ってやるようなものです。当然、今のマスターの肉体データをもとに生成したとしても元の体よりも劣るものができます・・・それにマスターのデータですし、何かしらの痛みがあれば死ぬようなものができあがります」
「・・・」
え?そんな貧弱じゃないよ?足の小指をぶつけたとしても・・・ちょっと大げさに痛いっていうぐらいだよ?
「それだけマスターがこの世界では貧弱というものです」
「俺だって・・・」
「僕がやってきて、何かしら身体を動かすような鍛えるようなことを一度でもした記憶がありますか?」
思い出せ・・・何かやったことを・・・・
「毎日・・・動いてるぜ・・・部屋と部屋の間を」
「鍛えるようなことは?」
「茶碗を毎日持っている・・・」
「ある程度のポイントを使ってそんなクソ雑魚なものを作りたいというなら僕は止めませんが、僕にあとでなんでもっと強く止めてくれなかったんだよ!!なんていう文句は一切受け付けませんよ」
そんなゴミを見るような目で・・・見られても・・・ふぅ・・・質問をしよう。
「今のまま作って・・・外に出たら何日生きられると思う?」
「何秒の間違いじゃないんですか?」
お・・・おう。
「・・・」
「・・・」
数秒間。冷たい目とえ?マジ?という現実を認識できていない俺との目が見つめあった。
「鍛えれば何分生きられる?」
「どのくらい鍛えるという意味ですか?」
「1日?」
「舐めているんですか?」
「1週間?」
「数分は生きれるんじゃないんですか?」
「1か月?」
「数日」
「・・・半年?」
「数週間」
「・・・」
少し考えた後にこう答えた。
「やっぱり俺そこまでして外出たくはないかもしれない」
ほら・・・外なんか出なくてもさ・・・ここにはゲームが揃ってるからね・・・うん。
「なんでそこで弱気になるんですか!?」
「いや・・だって・・・ね?」
「この際ですから、行くも行かないも関係ないです、鍛えましょう」
「いやぁぁぁ・・・」
運動不足な俺がマリウスに敵うはずもなく引きずられていく。
こんなダンジョンマスターが最初から外に出られるなんてことはありはしなかった。